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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第一章
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13話

 

「……それじゃあ、ギルドのお姉さんの説教が終わったところで行くか……」


 リリーナがいきなり魔法をぶっ放してくれたおかげで、俺たちは一時間近くギルドのお姉さんに怒られた。今回は被害が軽傷だったからいいけど、次やったら弁償してもらいますからね。と、まで言われてしまった。

 まあ、その場合はリリーナに全部任せてしまおう。


「ちょっと待ちなさい」


 テンションが下がってはいても、スモールゴーレムに復讐したい気持ちは変わらない。だから俺はギルド

の出口に向かおうとしたのだが、リリーナに止められた。


「……なんだよ。どうかしたか? もしかしてさっきのことまだ怒ってるのか? そうなんだったら確かに悪かったよ。俺も言い過ぎた」


 俺が素直にリリーナに謝ると、声には出していないがアイリスがよく謝れましたね、偉いです。的な視線を送ってくれていた。


「……違うわ」


 しかし、俺がせっかく謝ったのにリリーナが俺を止めた理由は違うらしい。


「じゃあ、なんだよ」

「……カード」

「……なんだ? もう一回言ってくれ」

「だーかーらーっ! アンタの冒険者カードも見せなさいって言ってるのっ!」


 なるほど、なにをリリーナが怒っているのかと思えば、そんなことか。


「そう言えば、俺のを見る前に怒られたんだっけな。でも、そんなすごいもんじゃないぞ」


 そう言って俺はポケットにしまっていた冒険者カードをアイリスとリリーナに見せる。


「な、なにこれっ! すごいわっ!」


 リリーナがすごい驚いている。

 まあ、なんでリリーナ0が驚いているのかなんて言われなくてもわかっているのだが……。


「レベル一っ!? あははっ、笑っちゃうわね。冒険者だって聞いてたけど、まさかレベルまで最低だなんて、ホントやめてよね。お腹痛いわっ!」


 俺の冒険者カードを見て、大笑いでその場を転げまわるリリーナ。

 やっぱりこいつとパーティーを組んだのは失敗だったのかもしれない。

 なんで俺があんなにクエストをこなしているのに未だレベル一なのかと言うと、基本的に俺はサポート中心でとどめを刺してないから経験値がもらえていない。ということに尽きる。


 俺たちのパーティーの基本的な動きは、まず俺が先頭を切って敵陣に突っ込み、少しでも多くの魔物の目を引きつつあわよくばショートソードで切り付けダメージを当たえる。そしてその間にアイリスが魔法を詠唱、そして詠唱が終わり次第、弱っている魔物から倒していくというやり方だ。

 このやり方は非常に効率がよく、かなり立ち回り安い。しかし、これには一つ欠点があって、それが経験値だ。

 この方法はさっき説明したとおり、かなり俺もアイリスも立ち回りやすい。そこにリリーナが加わったら魔法の手が増えるので、さらに効率が上がる。適材適所ってやつだ。そんないいところだらけに見えるが実際は違う。

 この世界の経験値配分は倒した奴の総取りである。

 つまり、弱い冒険者一人を強い冒険者数人で守って戦っても、守られているだけの弱い冒険者は経験値が一切もらえない。ちゃんと最後にとどめを刺せば経験値をもらえるが、それはダメージが与えられることが前提だ。

 そんな俺の知っているゲーム知識とは違う経験値配分のせいで、俺にはほとんど経験値が回ってこない。

 だから俺は未だにレベルが一なのだ。


「……まあ、好きなだけ笑え」


 少し弱気になっている俺を見て、リリーナがさらに笑い出す。

 アイツ、いつか絶対にブッ飛ばす。

 しかしアイリスは何も言って来ない。レベルの低い俺に幻滅したのだろうか? ここ数日一緒に冒険に出ておいてレベルの上がらない俺に不安を覚えてしまったのだろうか。そんな不安に苛まれる俺にアイリスが話しかけてきた。


「ユウマさん。ユウマさんって『逃走』スキルなんて持ってましたっけ?」

「ん? ああ、それはこの前リリーナを助けるときに取ったんだよ。ほら、俺あの時一気に足が早くなっただろ? あれは別に本気を出して走ったんじゃなくて、『逃走』スキルを使ったんだ」


 俺はリリーナを助けようとしたあの時、冒険者カードを取り出しスキルポイントを2消費して『逃走』スキルを取っていた。いつの間にか取得可能欄に入っていたので取るかどうか悩んでいたのだが、状況が状況だったので、迷わずに取ったのだ。

 なぜ取得可能欄に入っていたのかは想像だが、たぶん俺がいろいろな魔物から散々逃げ回ったおかげだろう。


 あとからスキルの能力を確認したところ『逃走』スキルは相手に標的にされている時に発動可能なパッシブスキルのようだ。

 パッシブスキルとは、自分の力で条件もなしに発動のタイミングを決められるスキルではなく、常に条件さえ揃えば自動的に発動するタイプのスキルのことを言う。

 アイリスの魔法詠唱時間減少や、リリーナの魔力アップなんかがそれにあたる。


 俺の『逃走』スキルは、相手に標的にされている時に逃げたいと思いながら走れば、敏捷が何倍にも膨れ上がり必ず逃走できるというスキルらしい。

 俺はあの時それを逆手にとって、わざとコットンラビットに攻撃をして標的にしてもらったのだ。リリーナを連れてきたときも同様である。


「ゆ、ユウマ、悪かったわね、私のせいでそんなスキルを取ってただなんて……。笑ったりして本当に悪かったわ」


 さっきまで笑い転げていたリリーナが真面目な顔をして謝ってきた。


「何言ってるんだよ。俺はただリリーナを助けたかったから取っただけだ。それにいつかは取ってただろうしな。それでも罪を感じるなら、今度少し魔法を教えてくれ。生憎俺は冒険者だから自分で覚えられるスキルが少ないんだ」

「任せなさい。スモールゴーレムを倒して私が役に立つ魔法をいろいろ教えてあげるわ」

「ゆ、ユウマさんっ。私も何か魔法をお教えします!」


 リリーナが俺に魔法を教えてくれると言ったら、アイリスもなぜか教えてくれると言い出した。

 まあ、教えてもらえるのなら俺は迷わずに教えてもらう。取るか取らないかは後で決めればいい。


「よしっ! そうと決まったらさっさとスモールゴーレムをやっちまうかーっ!」

「「おーっ!!」」


 俺が手をあげて気合を入れるのに、アイリスとリリーナも乗ってきてくれた。

 なんだろう。今の俺たちってすごい冒険者っぽい。


 ♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


「いたぞ、スモールゴーレムだ」


 俺たちは現在、あの時俺とアイリスが全く歯の立たなかったスモールゴーレムのいる岩石地帯に来ていた。

 そして来てそうそう、スモールゴーレムの姿を見つけることに成功した。


「リリーナ頼むぞ。この前戦ったけど俺とアイリスの魔法は大して効果がない。アイリスはレベルが上がってるし手助けはできるだろうが俺は囮ぐらいしかできない。このクエストはリリーナにかかってると言ってもいい」


 俺はスモールゴーレムから目を逸らさないまま、リリーナに声を掛ける。


「ええ、わかってるわ。任せておきなさい。私は世界最強の魔法使いを目指してるのよ。あんなの一発よ、一発」


 リリーナはスモールゴーレムを見ても、物怖じけひとつしないで勇敢にそう言った。


「それは頼もしい限りだな。じゃあ、今回は俺がこの前と同じく囮をやる、アイリスは俺のサポートを中心にリリーナの護衛。リリーナはあいつを倒せるようなでかいのを一発頼む」


 視線はスモールゴーレムのまま二人に指示を飛ばす。


「わかりました。……でも、ユウマさん。……大変言いにくいんですが……リリーナさんが……」


 アイリスが良い返事をしてくれたと思ったら、なにやら不穏なことを言い出した。

 嫌な予感がして、一旦スモールゴーレムを視界からはずし、後ろにいるはずのアイリスとリリーナを見る。

 見る。……アイリスの姿だけを……。


「……リリーナのやつどこ行った! あ、アイリス、リリーナはっ!?」


 俺は嫌な予感がさらに加速していく中、リリーナの居場所を知っていそうなアイリスに声を掛ける。俺に声を掛けられたアイリスは、なにやら指をプルプルさせながらある方向を指す。

 その方向はさっきまで俺が向いていた方向。つまり、スモールゴーレムのいる方向。

 まさかっ!

 そう思ったときにはもう遅かった。


「ちょっとそこのデカぶつ、宣戦布告よ。さっさと私にやられちゃいなさい。私にやられることを光栄に思うのね。あの世で自慢できるわよ」


 やりやがったーっ! あの脳筋魔法使いやりやがったよ。

 せっかく人がこのまま隠れてリリーナの詠唱が終わるまで待機、あと少しで終わるって時に俺が飛び出して、リリーナに背中を向けるように誘導しようとしてたのに、失敗したらってもしものことまで考えてたのに、あの脳筋魔法使いは一瞬で俺の作戦をぶち壊したやがった。


「なによ。私にビビッて動けなくなっちゃったの? だらしないわねー。ユウマー、コイツ私にビビッて動かないわよー。今のうちにみんなでやっちゃいましょー?」

「……アイツはどこまでバカなんだ」


 俺は呆れて声もほとんど出なかった。

 ゴーレム系の魔物は圧倒的な攻撃力と高い防御力から、一つ一つの動きが遅い。ていうか、あんなの奴の動きが早かったら手が付けられない。

 このゲーム脳が正しいのも、この前の戦闘で確認済みだ。


「ねーえー。ユウマー? なにやってるのよー。ほらっ、アイリスもこっちに来なさい、私と一緒にこのデカぶつをやっちゃいましょー」


 そんな危険を知らず、目の前にいるスモールゴーレムに背中を向けながら、こっちに向かって大きな声で手を振っているアホ。

 そんなことをやっていたからだろうか。リリーナの後ろのスモールゴーレムがゆっくりとその重たそうな腕を降りかぶった。


「おいっ! リリーナ! 後ろだっ、早くそこから逃げろ! 死にたいのかバカっ!」


 スモールゴーレムが攻撃態勢に入ったのを見た俺はリリーナを怒鳴りつける。

 この前スモールゴーレムの攻撃を何度もこの目で見てきた俺は、アイツの攻撃がどんなにヤバいのかを知っている。アイツの横凪は近くの大きな岩をも簡単に打ち砕き、アイツのパンチは簡単に地面にひびを生む。

 そんなスモールゴーレムの攻撃だ。リリーナでなくても、食らえば致命傷は避けられない。

 この世界は異世界であってもゲームじゃない。死んでしまえば生き返るなんてことはなく、セーブ地点からやり直しというわけでもない。現実としての死が訪れる。

 そんな光景を俺は見たくない。それも仲間の死なんて!


「ちっ! あのバカ! もう間に合わない! 何か手は……。……そうだ! アイリス、リリーナに向かって手加減した『スプラッシュ』だ」


 俺は近くにいるうちのパーティーの良心であり癒しのアイリスに指示を飛ばす。

 しかし、仲間に攻撃魔法を撃てという俺の命令の意味がわからないらしく、ものすごい混乱している。両手をパタパタさせてなにやらぴょこぴょこしている。

 でも、今はそんなアイリスに癒されている時間はないし、アイリスに一から説明してる時間もない。

 こうなったら俺がやるしかない。

 俺は右手をリリーナの方に向け、念のため左手で右腕を支える。

 そして。


「『スプラッシュ』!!」


 問答無用の魔法を唱えた。

 それはスモールゴーレムがリリーナに向かって腕を振り下ろすより少し早いくらい。間に合うか。


「……え、いきなりなにしてるのユウマっ!? なに魔法を唱えてるの? なんで私に向かってそれを撃ってるの? また私が単身で突っ込んだことに怒ってわけ? ねえ、待って、話しあいましょぉぉぉぉぉぉぉーっ!」


 リリーナがなにやら叫んでいたようだが、俺の魔法によってそれは中断された。でも、スモールゴーレムの攻撃はどうにか避けさせることができた。

 そしてリリーナも自分の目の前に振り下ろされたスモールゴーレムの拳を目にして、今になって自分がどれだけ危なかったか気づいたようだ。


「なにっ!? ちょ、ちょっとあんた。不意打ちなんて卑怯なんじゃないの!? 確かにあんたじゃ私を倒すのに不意打ちくらいしか方法がないのかもしれないけど、さすがに卑怯なんじゃないかしらっ!」


 少しは反省したかと思ったら、あの脳筋魔法使い、スモールゴーレムにいちゃもんをつけ始めた。魔法の威力を抑えなかった方がよかったかもしれない。


「ったく、なにやってんだリリーナは……。アイリス、悪いけどとりあえず俺に支援魔法頼むよ」


 俺はリリーナに呆れながらも無事だったことに嬉しさを感じつつ、アイリスに支援魔法を掛けてもらう。


「は、はい。任せてください」

『アグレッシオ』、『スピーディオ』、『ディフェンシオ』。


 俺の体がこの前の様にキラキラとした光に纏われる。これで俺の筋力、敏捷、防御の三つが比較的に上昇したはずだ。


「終わりました。……あの、この後私はどうすればいいでしょうかユウマさん」


 俺に支援魔法をかけ終わったアイリスが杖を握りしめながら、聞いてきた。


「とりあえず、支援魔法ありがとな、アイリス。で、何をしたらいいのかだけど、とりあえずはこの位置から俺たちのサポートだ。俺がとりあえずリリーナをここまで引っ張ってくる。そしたら俺は一人でスモールゴーレムの気を引く、アイリスにはその間、俺のサポートと詠唱中のリリーナの護衛を頼みたいんだ。できるか?」

「は、はいっ! 任せてください!」


 元気いっぱいのアイリスの返事に俺は安心した。


「それじゃあちょっとお転婆魔法使いを連れ戻してくるよ」

「はい、行ってらっしゃいです、ユウマさん」


 笑顔のアイリスに見送られながら、俺はスモールゴーレムとリリーナの方へ向かって走り出した。


「おい、お転婆魔法使い! 言い訳は後で聞いてやるから早くアイリスのところに行け、アイリスにはもう作戦の説明してあるから」


 俺はリリーナのところまで来ると、面倒なのでリリーナには自分で向こうまで行ってもらうことにした。


「……な、何言ってるのよユウマ。私にかかればこんな奴一発って言ったでしょ? これから私が本気を出せば……」


 明らかなウソ、というか見栄をリリーナが張った。

 そんなリリーナに俺は。


「そうかそうか、なら俺はこのままアイリスのところまで戻る。アイリスと二人でお前がスモールゴーレムを倒すまでずっと見てるからな。いくらお前が泣きわめこうが、いくら助けを求めようが、お前がたとえスモールゴーレムの拳に潰されたとしても俺は動かんぞ」


 俺がそんな脅しを言ったからだろうか、リリーナは顔を少し青くしながら


「きょ、今日はユウマの顔を立ててあげるわ。……べ、別に私一人じゃ倒せないとかじゃないのよ。私一人で倒しちゃったらアイツに恨みのあるユウマやアイリスがかわいそうだし、それにほらっ! 私たちパーティーじゃない? こういうときは協力するべきだと思うわ」


 などと慌てた様子でそんなことを言い出した。


「まあ、いい。俺の顔を立ててくれるってんなら早くアイリスのところに行ってくれ」


 色々言いたいことはあったが、俺はリリーナを軽くあしらう。


「私が向こうに行っても気を抜くんじゃないわよユウマ、アイツの攻撃はバカにならないわ」


 リリーナは撤退間際にそんなことを言ってきた。

 そんなのこの前の一戦で体に嫌というほど、刻み込まれている。

 そして俺は、わかりきっていることを言ってくれたリリーナを見送ってから、スモールゴーレムに向き直る。


「さーて、再戦と行こうじゃないかスモールゴーレム。今度はこの前のようにはいかないぜ」


 正直、この前のスモールゴーレムと同じ個体かなんてぜんぜんわからないけど、倒せるならそれでいい。


 さあ、これからがさっきまでのようなおふざけなしの本格的スモールゴーレム戦の始まりだ。



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