表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第六章
135/192

22話

 

「んあ? ここどこだ? 私はどこ? ここは誰?」


 朝の眩しい光で目を覚ますと、そこは見慣れぬ一室だった。イニティにある俺の屋敷の部屋よりも確実に大きい部屋。白を基調とした壁が光を反射して少し眩しい。

 そんな部屋で訳もわからずに起きたせいか発言までおかしくなっていた。


「って、ここは城で俺が借りてる部屋か」


 瞼を擦り、よくよく周りを見回すと、この部屋には見覚えがあった。王都に滞在する間セントラル王の好意で与えられたお客様用の部屋だ。どうりで広いし綺麗な部屋なわけである。


「でも、俺昨日ここに戻ってきたっけ? なんか昨日の夜の記憶が全然ない……。パーティー会場から出てって美少女二人と出会ったくらいしか記憶にない。……まさかっ!!」


 ここまで思い出して俺はようやく自分の考え間違いに気が付いた。


「俺が美少女と、それも二人と出会うなんてありえない! ここは異世界だけど現実だ! 俺にそんな素敵な出会いがあるはずがない! よく思い返してみれば、俺が美少女とあんなに親しげに話せるはずがない。そうだ、あれは夢だったんだ。だから俺は美少女相手に親しげに話せてたし、美少女二人も俺に好意的で俺好みだったんだ。そうだ、これですべて納得がいく。じっちゃんの名前はいつも一つ!!」


 そうだ。そうに違いない。

 なんか最後の方名探偵二人が混ざっていた気もするけど、気にしないことにした。


「でも、夢落ちなんて最低だろ……」


 自分で結論付けておきながらあまりにも残酷な結末に自分自身でへこむ。


「とりあえず起きるか。そんでミカたちのところにでも行こう。こんな広い部屋で一人とかなんか寂しい」


 我ながらなんて情けない発言をしているんだとは思うが、寂しいものは寂しい。俺は決して一人でいることが苦なタイプではない。むしろ好きだ。でも、ここが自分の家でないということが俺を不安にさせる。友達の家とかに行って、友達がトイレに立った時に居たたまれない気持ちになったことはないだろうか? その気持ちが今の俺の気持ちである。

 ……遊ぶほど仲の良かった友達がいなかった俺には本当に同じかはわかりませんでした、すいません。


「とにかく着替えてさっさと部屋を出よう。それでリリーナとミカ辺りをからかって、アイリスからちょっとした注意をしてもらって癒されよう。そうしようそうしよう」


 気持ちを切り替えたかった俺は、昨日着たまま寝てしまっていたらしい借り物の騎士の服を脱ぎ捨て、いつもの動きやすい格好に着替える。


「うん。やっぱりきっちりした服よりこういう服の方が俺好みだわ」


 慣れ親しんだ服に好感を持ちながら、脱いだ騎士の服を綺麗にたたんでおく。


「さて、行くとするか」


 着替えを済ませ、脱いだ服もたたみ終えた俺は早速心の平安を求めてミカたちの居る部屋へ向かおうとする。が、しかし。俺がドアを開ける前にノックがされた。

 規則正しいノック音にミカやリリーナではないことをすぐに悟る。あの二人ならドアの前で大きな声を出すか、ノックもせずに部屋にずかずかと入って来る。アイリスはその限りではないけど、ここまで規則正しい感じのノックはしない。ノックをしながら癒しボイスで「ユウマさーん、起きていらっしゃいますかー?」と、優しい声をかけてくれる。

 毎朝その声が聴きたくて、起きているのに寝ているふりをしている俺が言うんだから間違いない。


「だとすれば城側の人間か……」


 エイトかセツコさん辺りがきたのか? でも、それなら一声あってもいいような気もする。だとしたらそのほかの誰かか? 一般兵士とか、お堅い感じの奴が来たら嫌だなー。

 そんなことを思いながら相手の声でも聞こえないものかとドアに耳をそっと押し当てる。

 すると、もう一度ノックがされた。


「ユウマ殿。朝早くに申し訳ないんだが、起きてないだろうか?」


 セツコさんの声だ。

 間違いない。この透き通るような切れのある声はセツコさんの物だ。

 俺はすかさずドアから耳を離し、改めて身だしなみを整える。日本にいたころミカから教わったスマホの画面を付けずに真っ暗の状態にすれば鏡代わりになるという知識も思い出し、髪を整える。

 大丈夫だ。どこも変なところはない。


「すいませんセツコさん。起きてます。俺は起きてますよ。今開けますね」


 嬉しくなってつい声を高くしながらウキウキしてドアを開ける。

 今日はいい日になりそうだ。


「おはようございますセツコさん。すいません、少しぼーっとしてまして対応が遅れました」


 なぜかセツコさんには一向に敬語の滑ない俺はらしくもない敬語を並べ立てる。

 エイトには普通に話せるのにセツコさんに対しては無理なのは俺が単に俺が女の人と話しなれていないのが原因だ。

 後はセツコさんが年上なのも大きい。具体的に年齢を聞いたわけではないけど、二十歳くらいに見える。大学生くらいのお姉さん。……素晴らしいな。


「いえ、こちらこそ朝早くに申し訳ない。それで早速なのですが、ユウマ殿に会いたいと仰っている方がいらっしゃるのだが、ぜひともあってはいただけないだろうか?」

「え? 俺に? 誰です?」

「えぇ、実はこの国の第一王女ルーシア様がぜひともユウマ殿にお会いしたいと言っておりまして、会ってはいただけないでしょうか? 私の方からもお願いします」


 そう言って軽く腰を曲げて頭を下げるセツコさん。

 そんな俺に頭を上げてくださいと、両手を胸の前でぶんぶんと振る。


「にしても、第一王女様がなんで俺なんかと会いたいなんって言ってるんです? それに、今の話し方だと会いたいのは俺だけみたいに聞こえるんですけど、ミカたちはいいんですか?」


 正直なところ、変に会って失礼なことをしないためにも王女様となんて会いたくもないが、会わないと会わないでそれは失礼に当たる気もするし、もしかしたら洋二さんの娘さんなんだから話のわかる人かもしれないと、俺はこの話を了承したが、わからないこともなる。

 まるで接点がない俺なんかとどうして会いたいなんて言ったのかだ。


「はい、実はルーシア様が昨日のパーティーが行われている時間に、騎士の格好をしたおもしろい人に会ったそうなんです。その特徴がユウマ殿に似ておりまして、その話を私がしたらぜひとも会ってみたいと」


 その話を聞いて、一瞬夢のことを思い出したが、あれは夢。

 夢であって現実じゃない。夢だけど、夢じゃなかったなんてことはないのだ。


「そういうことですか。いいですよ。どこに行けばいいんです?」


 俺がルーシア王女の所在を聞くと、セツコさんは「実は……」と、なんとも言えない顔をした。

 セツコさんの表情の意味が分からずに俺は可愛げもなく首を傾げる。


「どうかしましたか?」

「い、いえ……。ルーシア様の所在なのですが……一緒にここに来てるんです」

「え? ここにですか?」


 セツコさんの言葉に自分の目と耳を疑う。だって俺の目の前にはセツコさんしかいない。顔を少し左右に振ってもセツコさんの素敵な顔しか見えない。確かルーシア王女はミカやリリーナと同じくらいの体格で年齢だと女子三人がドレスを借りる時に聞いたはずだ。なら、俺の視界に入らないのはおかしい。

 俺がきょろきょろとしていると、セツコさんは恥ずかしいものを見せる様な仕草で大きくため息を吐きながら斜め後ろ、そしてやや下に目線を動かした。

 俺は「え?」と、疑問に思いつつも、セツコさんの視線を一緒に追う。


「ルーシア様。この方がユウマ殿ですよ。あと、失礼なのでちゃんとお一人で立ってください」

「ん~? ユウマの部屋に着いたの~?」

「はい、とっくに。すでにお話は通してあります。ですから王女らしくしゃんとしてください」

「しゃ~ん~」

「口で言っても駄目です。ちゃんと態度で示してください」

「も~。もっと優しく~ゆるゆるいこうよ~」

「私までルーシア様みたいになってしまってはルーシア様がダメになってしまいますので!」


 コントみたいなやり取りをしているセツコさんとなぜか床に寝転がっているルーシア王女のやり取りを眺めながら俺は絶句した。その理由は最後の最後でセツコさんが声を荒げたからではない。


(なんで、昨日の夢の中の女の子がここにいるんだ!?)


 そう。目の前で床に寝そべりながらセツコさんに怒られ、のんびりのほほーんとしているこの国の第一王女ルーシア様が、昨日の石の椅子のあった小さなテラスのような場所で会った女の子だった。

 夢だったはずのことが現実の可能性が出て目に見えて冷や汗を掻く俺。


「ほら、ちゃんと立ってください! どうですか? お名前的にもルーシア様の言っていた特徴にも合っていると思うのですが、昨日会ったという方はユウマ殿ですか?」

「ん~。そうだよ~。このユウマだよ~」


 眠そうな顔で俺を見たルーシア様が笑顔で小さく手を振る。あまりの驚きに俺は手を振り返すどころか返事をすることでもできなかった。


「昨日ぶりだね~、ユウマ~。元気だった~?」


 それでも話しかけてきてくれるルーシア様にこれ以上は無視しているようになってしまうと感じた俺はどうにか曖昧な返事をする。

 そして、俺はすぐに行動を起こした。思い立ったら吉日。昔の人は良いことを言う。


「おはようございますルーシア王女様。それでですね……例の昨日の夜の件なのですが、大変よろしくないことを言ってしまったと言いますか、冒険者風情が馴れ馴れしかったと言いますか、水に流してほしいと言いますか、その……どうか昨日のことはお忘れになってもらえませんでしょうか!!」


 土下座した。

 この異世界に来てから俺のプライドは大安売りである。むしろ無料なので大安売りですらないまである。


「ゆ、ユウマ殿!? 突然どうなさったのですか!?」


 昨日の件をルーシア様から聞かされていないのかセツコさんが驚いた顔をする。俺はそんなことを気にせずに額で床を掃除でもするように頭を擦りつける。今の俺ならモップにだってなれるはずだ。

 それにしたって、ドレスを着てたからパーティーに呼ばれた貴族の子だと思ってはいたけど、まさかセントラル王の娘さん、この国の第一王女のルーシア様だって誰がわかるんだよ!

 もう二度と会わないだろうから敬語使ってないのに気がついても碌に直さなかったのにこれじゃあ意味ないぞ!


「なにしてるのユウマ~。床のお掃除~?」

「そうでございますルーシア王女様。なのでどうか……どうか昨日のことだけは!」

「昨日のことって~?」

「いや、昨日の発言のすべてです。敬語を使ってなかったとか、過度な冗談を言ってしまったとか、その他もろもろです!」

「え~。私きにしてないよ~」


 王女様はなんてことないように俺に笑いかけてくれている。でも、セツコさんはこういうことに厳しそうな印象がある。美人なお姉さんにきついお説教。

 ……いいかもしれない。


「そういうことでしたか……。ユウマ殿、頭を上げてください。元からルーシア様はこういう方です。敬語を使わなかったですとか、冗談を言ったですとか、そういうことを気にしたりはございません。むしろ、嫌っているくらいです」

「……ほんとですか?」


 セツコさんの言葉に助かったという安心感が少し生まれ、首だけを上に向けてセツコさんの表情を見る。なぜか、疲れた顔をしていた。


「そうだよユウマ~。私は気にしてないよ~。もっとゆるゆるしていこうよ~」

「は、はあ~。えっと、ルーシア王女様、許していただいてありがとうございます」

「敬語ダメ~。固いから嫌い~。名前も呼び捨てにして~」


 さすがにまずいのでは? と、セツコさんの方を見る。

 セツコさんは諦めたような顔で言った。


「ルーシア様がそう言うのでした私は別に構いませんよ」

「そ、そうですか……」

「それよりユウマ~」


 なぜか セツコさんに新しい属性が追加される予感を覚えながら俺はルーシアに話しかけられたので向き直る。


「なんだ?」


 自分でも驚くほど、すんなりタメ語が出てきて少しびっくりする。やっぱりのんびりした感じとか、話しやすさからミカたちと同じような雰囲気だからだろうかと勝手な推測をしつつ、話を聞く。


「さっき水に流してくださいって言ってたけど~。あれって昨日言ってたお風呂を手伝ってくれるっていう……」

「セツコさん今日もお綺麗ですね!!」


 俺はルーシアの話そうとしたとんでも発言をごまかすべく、セツコさんに半ばナンパ男のような言葉を投げかける。


「ゆ、ユウマ殿!? と、突然何を言っているのですか!」


 咄嗟に出た言葉だったんだが本心だったのが功を成したのか、セツコさんが冗談だとも思わずに本気にしてくれた。きりっとしていた顔が赤くなっている。

 こういうギャップ萌えみたいなの大好物です。


「い、いえね。やっぱりセツコさんはいつ見ても綺麗だな~と思いまして。つい口にしてしまいましたよ。あはははは……」


 乾いた笑いを漏らしつつ、ルーシアが機嫌を悪くしていないか盗み見る。

「む~」と言いながら、少し唇を尖らせていたが、そこまで機嫌が悪そうには見えないので、たぶん大丈夫だろう。

 でも、少し不安なので手は打っておくことにする。


「『ゲート』」


 もはやお馴染みになってきた『ゲート』を使って自分ちとこの場所を接続する。そして俺はあるものを取り出した。


「ルーシアとセツコさん。チョコでもどうです?」


 俺は『ゲート』で取り出したチョコを二人に差し出す。

 二人は俺の突然の行動に驚きながらも俺を見た。俺はこのまま話の流れを自分の好きなように持っていってしまおうと笑顔を返す。


「もらえるものはもらっておこ~。チョコ好きだし~」


 そう言ってルーシアがチョコを口の中に放り込む。


「ん~。おいしい~。けど、いつものとちょっと違う~?」

「いつものってのが普通のチョコなら少し違うな。それは生チョコって言って、わかってると思うけど柔らかくて舌溶けがいいんだよ」


 そう。俺が差し出したのはただのチョコではない。普通のチョコよりも生チョコの方が好きな俺は何かの漫画で見た生チョコの作り方を頭の片隅から引っ張り出し、作った。こちらもミカたちから好評であることは言うまでもない。

 ミカに「ユウマは異世界パティシエでも目指し始めたの?」なんて言われたが、気にしないことにした。


「セツコさんもどうぞ」

「じ、自分は勤務中ですので……」


 食べたそうにしながらも目が離せない様子のセツコさん。

 なんだこの人は、ギャップが強すぎる。普段のきりっとした感じからふと見せる女の子なところが半端ではない。


「なぁ、ルーシア。頼みがあるんだけど」

「な~に~ユウマ~。もう一個チョコくれるならいいよ~」

「じゃあやるから聞いてくれ。セツコさんに生チョコを食べる様に命令してくれ」

「なっ!? ユウマ殿! 何をおっしゃっているのですか!」


 慌てるセツコさんを横目に俺はルーシアに報酬の生チョコを一つ渡す。ルーシアは迷うことなく生チョコを口の中に頬張り、幸せそうな顔で俺の頼みごとを聞いてくれた。


「セツコさん命令で~す。ユウマのくれる生チョコを食べなさ~い」


 命令にはちっとも聞こえないルーシアの命令にセツコさんが顔を引きつらせる。



「命令だそうですよセツコさん。どうぞ」

「あ、ありがたく頂戴します……」


 俺の策略に見事にハマってしまったセツコさんはなんだかんだ言いながらも食べたそうにしていたチョコが食べられることが嬉しいのか、頬を小さく綻ばせる。

 今の俺の紳士的な対応をイニティの街のみんなに見せてやりたい。いつも鬼畜だの外道だの変態だのと俺を罵ってくる奴には特に。


「お、おいしい……」

「それはよかった」


 素直なセツコさんの感想に俺も嬉しくなりながら、どうにか話の方向性を逸らすことに成功したことにほっとする。


 そんな時だった、さらなる嵐がやってきたのは。


「あれ? セツコさんとルーシア様。どうしたんだい?」


 爽やかな顔をしながらこっちに来たのはエイトだ。今日も相変わらず爽やか腹黒笑顔が眩しい。なんて腹が立つ。


「お前の方こそどうしたたんだエイト? お前もユウマ殿に用事か?」

「質問に質問で返さないでよセツコさん。まあいいや、ユウマに用事があるってのは正解だよ。ただ、用があるのは僕じゃなくてルリ様の方なんだ」

「ルリ様が?」

「うん。なんか昨日のパーティーの時に会場に来る前に変な騎士の格好をした人に会ったって言っててね。その話をよく聞いてみると、ユウマにそっくりなんだよ。体格とか、話し方とかがさ。それでルリ様ができることならもう一度会いたいって言うからその確認にしたのさ。ですよね? ルリお嬢様」

「うむ。エイトの言う通りじゃ」


 そう言って小さな胸を張りながらエイトの後ろから現れたのは―――


「あっ! 昨日ののじゃロリ!!」

「のじゃロリとはなんじゃ、のじゃロリとは!! 意味はわからんが決していい意味じゃないことくらい妾にもわかるのじゃぞ!」


 俺の目の前に現れたのは昨日の、のじゃロリだった。


「やっぱりユウマだったんだね。ルリ様の話を聞いてユウマだとは思ったよ」


 そう言ってエイトが笑う。

 でも、俺としては笑えるような状況じゃなかった。


「まさか両方とも夢じゃなかったとは……」


 夢だと思っていたことの一つが夢じゃなくて、さらにもう一つも夢じゃなかった。マジどうなってんだ、おい。


「それよりお主、ユウマとか言ったの。クッキーをよこすのじゃ!」

「悪い、さすがに昨日の今日でクッキーは持ってない」

「なんじゃと!?」


 本気で驚いた様子ののじゃロリ……いや、ルリって呼んだ方がいいか? いいや、心の中でくらい好きなように呼ぼう、そうしよう。


「驚きました……。まさかユウマ殿が昨日のうちにお二人にお会いになっていたとは……」

「いや、たまたまと言いますか……偶然と言いますか……神のいたずらとでも言いますか……ネブラスカ」


 なんといっていいのかわからずに口ごもっていると、最後に変な言葉が漏れた。

 俺はそれを気にしないことにした。だって、俺にも意味わかんないもん。


「それよりユウマ。ルリ様が冒険者がどういうものなのか聞きたいらしいんだ。よかったらユウマの体験談でも話してあげてよ」

「別にいいけど……俺たちの冒険ってろくなもんじゃないぞ? 冗談抜きで嘘っぽいぞ? 俺自身、嘘なんじゃないかって疑いたくなるような話ばっかりだぞ」

「別に構わぬ。今まで父上に会いに来たような連中よりはユウマの方がちゃんと本当のことを話してくれそうなのじゃ」


 エイトの提案に一応了承をしてから、あとで聞かなければよかったなどと訴えらたくない俺が牽制を入れておくと、のじゃロリがつまらなそうに答える。


「今まで来た連中?」


 俺が疑問に思ったことを口にするとのじゃロリが説明をしてくれる。


「父上は活躍をした冒険者を城に招くようにしておるのじゃがの、その度に妾はその冒険者たちに冒険の話を聞いてるのじゃ。しかしの、その話の内容が作り話っぽくて、なんというか嘘っぽいのじゃ。聞いていてつまらないのじゃ。連中のような話は本で読めるような話ばかりで退屈じゃ」


 なるほど、と俺は顎に手をやる。

 そりゃあ王様に呼ばれるような冒険者と言えば何かしら大きな活躍をして呼ばれている。その話をするように言われれば、セントラル王に呼ばれて調子に乗っている冒険者なら少しでも見栄を張って、尾ひれに背びれ、なんならエラまでつけてしまうだろう。


「でも、俺の話もたぶん似たようなもんだぞ? さっきも言ったけど、正直知らない奴が聞いても嘘っぽいと思う」


 俺達の今までの活躍と言えば、イニティの街をオークの大軍から防衛したことと魔王幹部のヴォルカノを倒したことが挙げられる。それ以外は普通の冒険者たち、それこそ始まりの街の冒険者でも体験しているような冒険者ならありふれた話ばかりだ。

 一応、ロレンスの一件も活躍と言えばそうなのだが、解決方法が方法なだけにさすがに話すわけにはいかない。話すにしても多少内容を省くか、のじゃロリの嫌う嘘を織り交ぜる必要がある。


「いいのじゃ。ユウマは今までの連中とは違う。それは昨日で確認済みじゃ。どんなに嘘っぽい話でも絶対に信じるのじゃ」

「おいおい……なんで少し話しただけでこんなに信頼度高いの俺。やっぱり俺ってば子供に好かれやすい?」

「子どもじゃないのじゃ!」

「気にしてたのか」

「おらん!」


 いや、してるだろ。と言うと、いらぬ揉め事に発展しそうなので飲み込む。

 そして、のじゃロリとエイトより先に俺に会いに来ていたルーシアとセツコさんに視線で意見を求める。ルーシアの方は「な~に~ユウマ~」なんて、気づいていないようだったが、さすがはセツコさん。俺の意図に気が付いてくれたらしい。


「ルーシア様はどういたしますか? ルリ様と一緒にユウマ殿のお話を聞かれますか?」

「そうだな~。……いい昔話みたいで寝やすそうだから一緒に聞く~」

「いや、さすがにそんなのんびりした話ではねぇよ!?」


 そんなこんなで、俺たちの約半年に渡る冒険譚を聞かせることになってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ