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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第六章
134/192

21話

 のじゃロリ美少女と別れてすぐに俺は扉の前から距離を取ろうと速足気味にその場を後にし、今度こそ夜の王都でもぶらつこうかと足を進める。もうついさっき通ったばかりの道をもう一度一人で歩きながら、窓から見える月を眺めてみる。


「今夜は満月か……」


 綺麗な丸い満月に見惚れながら、大ざるになるとか、狼になるとか、能力に情報補正も特になく、さっきのじゃロリとぶつかった場所まで戻ってきた。


「……もう一度誰かとぶつかったりとかしないよな? ぶつかるならまた美少女が良いんだけど」


 少しの不安と少しの期待を胸に喉を鳴らしつつ角を慎重に曲がる。

 来いっ!!


「……」


 曲がり角を曲がり切った俺になんの変化も訪れない。誰かの声が聞こえたり、呼び止められたり、お腹の辺りに小さな衝撃があったりなど、なにもなかった。


「そう都合よくはいかないか。まぁ、一回でも美少女ロリと仲良くやれただけでも最高だったと思うことにしよう……」


 大きなため息を吐きながら少し遅くなった歩を進める。その後も曲がり角の度に小さく胸を躍らせてはみたものの結果は全部残念のままに終わった。


「全滅か……」


 俺の記憶によれば城を出るのに通る最後の曲がり角を曲がったところで気落ちする。


「んー。やっぱり受け身はダメなんかね。さっきはたまたま上手く言っただけだし、自分から行くのがやっぱり良いのか? だとしたらあらかじめかわいい女の子に目をつけておいて上手くタイミングを計るかして自分からぶつかりに行くしかないな」


 これから先のことを見据えて頭を全力で回転させながら城の外に出る。

 空を見上げると、窓からちらちらと見えていた満月が俺を照らしていた。パーティー会場の方へ視線を向ければ僅かながら楽しそうな声が聞こえてきた。


「俺にはやっぱりリア充イベントとか無理だわ。パーティって言ったら自分の部屋でポテチにコーラにアニメ映画だわ。なんならそこにポップコーンとチョコまでつけちゃう」


 そんな負け惜しみ染みた言葉を口にしつつ、絶対に負けた気分にはならないと意地を張る。ただ、これ以上会場の方を見るとなんだかよくない気がするので視線を逸らした。

 別に負けた気分になるからじゃないんだからね!


「さてと、どこ行くかなー。酒場でも探して行ってみるか? この世界だとお酒を飲んでいい年齢とか具体的にないみたいだし、お酒行っちゃうか? でも前にそれで二日酔いで嫌な目に合ってるんだよな……。やっぱり大人のお店とか行くか? 俺も大人の階段上っちゃうかー? 王都ってんだからたくさんそういう店もあんだろ。金なら……明日考えればいい」


 金のことを考えると頭とかお腹とかいろいろと痛くなってくる。なんで日本での一般人で、異世界に来たところでロクなチートももらえなかった一介の冒険者の俺が国家予算並みの借金を抱えなくてはならないのか。

 どうせ抱えるなら小さくてかわいい女の子の方が絶対にいい。


「そうと決まれば即行動だな。ないとは思うけどミカとかアイリス辺りが俺のことを気にして連れ戻しに来るかもしれないし。ミカだったらどうにでもなりそうだけど、アイリスに嘘は付けないもんな」


 後ろ向きな思考をその辺に捨て去り前向きな思考のみを残す。後のことは後で考えればいいのだ。とにかく今を楽しんでやる。


「ん? ……誰かあそこにいるな。てか、寝てないか?」


 気持ちを切り替え意気揚々と夜の街へ繰り出そうとした俺の目にそんな光景が飛び込んでくる。


「距離があるからそんなに良く見えないけど、ドレスは着てるよな? ってことはパーティーの招待客か? でもなんでこんなとこにいるんだ? 夜風に当たりに来て具合が悪くなったとか?」


 出てきた疑問にそれらしい回答を出しては新しい疑問が生まれるというなんとも意味のない無限ループに陥りそうになる。無限ループって怖いね。でも、俺なら大丈夫、問題ない。


「さすがに放っておくのはなしだよなー。あとで何かあっても気分が悪いし……」


 俺が見て見ぬふりをしたせいでこのお城で何かありました。なんてことがあったらすごく気分が悪い。俺は基本的に面倒ごとは嫌いだし、自分から首を突っ込むなんて絶対にありえないのだが、状況が状況ならさすがに動く。それくらいの良心は俺の中にも僅かながら残ってはいるのだ。

 決して、助けたことでお嬢様と仲良くなって、いい感じになって、あわよくば結婚とか……。なんて思ってない。

 思ってないからな!!


「はぁ~。俺ってばマジで優しいよな。女の子がこんな寒空の下で一人でいるのを放っておけなくて自分の時間を削るなんて優しいの塊だわ。だから絶対に下心なんてない。玉の輿とか全然考えてない」


 この場には俺一人しかいないのに、誰にでもなく言い訳がましい言葉を吐きながらゆっくりと寝ていると人の元へ近づいていく。


「おぉ……。思った以上に可愛いぞ」


 人を見ていきなり外見についての感想を述べるというのは問題な気もするが、褒めてるんだから問題はないはず。それに二次元ばかりに目を向けて三次元の女子に対しては全くと言っていいほど興味のなかった俺に可愛いと言われるのはすごいことだ。自分で言ってるからあまり説得力はないかもしれないが。


 そんなことより寝ている彼女の容姿だ。綺麗な長い白髪に、白く透明感のある肌、妙に色っぽい唇、整った顔立ち、身長は……俺と同じくらいか? いや、少し大きいかもしれん。胸も結構あるな、ミカとリリーナの間くらいか? 年齢も二人と同じくらいだ。あと、寝ててドレスの裾がまくれあがっているおかげで見える細く、けれど確かな柔らかさを感じさせる太ももがふつくしい。

 ……これ以上はやめよう。童貞には刺激が強すぎる。


「……寝てる女の子に無言で近づくのってなんかヤバい気がするな。全くもってこれっぽっちもいかがわしい気持ちなんてないのになんでなんだ」


 いざ近くにやってきて、目の前の女の子の美少女力に気おされる俺。

 しかし、ここで怯んでは男の恥。またミカ辺りに、「ユウマは欲深いくせに妙に後先のこと考えるヘタレだよね。ほら、好き放題生きてる主人公がヒロインといい感じになるとヘタレるあれ!」とか言われてしまう。

 俺はそんな主人公にはなりたくない。いけるときにはいく。そんな主人公になりたい。


「い、いくぞ……!!」


 若干まだ心が決まっていないものの、気持ちの整理ができるまで待っていたらいつまでたっても何もできないことを俺は自分で理解している。だから考えがまとまる前に動いてしまおう。そうしよう。


「す、すいませーん……こんなところで寝てたら風邪ひいちゃいますよー」


 情けないほど引け腰で、さらに声まで小さいという情けなさすぎる俺の言葉が夜の静寂に溶けていく。


「お、おーい……」


 声をかけても起きないので肩に手を置いて軽くゆすってみる。

 返事がない。ただ睡眠中のようだ。


「こんなところでそんな大胆なドレスで寝てたらいろいろされちゃいますよー。パンツ見られたり、隠しても隠し切れなさそうな豊満なお胸の谷間とか見られちゃいますよー。なんなら知らないうちにお持ち帰りされますよー」


 なんでだろう。さっきまでの緊張が解けて、少し調子出てきた。


「……これってそういうことか? 俺は誘われてるのか? でも、違ったらどうする。てかたぶん違う。思い出せ、女子って生き物は男を誘惑するだけしておいて簡単に手の平を返す生き物だ。さんざんそれを見て聞いてきただろうユウマ」


 アニメ、漫画、ラノベの中で見てきた残念系主人公たちの末路を思い出す。俺はああはなりたくない。ああなったら間違いなく俺は心が折れてこの世で生きていけなくなる。


「……とりあえず毛布でも掛けてやるか。『ゲート』」


 生憎、そんな都合よく暖を取れるような掛け物は持っていない。なので意外と便利な商人御用達スキル『ゲート』で自室の毛布を取り出す。


「こんなんでもないよりはマシだろ。運ぶにしても運んでる途中で目を覚まされて変な感じになっても面倒だし、まず運ぶ場所もわからんし。俺に出来るのはこのまま起きるまでここにいてやるくらいか」


 さすがに毛布を掛けるだけかけて放っておくのもあれだ。なんか気分が悪い。

 決してかわいい女の子の寝顔をもう少し見ていたいとか、借金パーティーだから毛布代すらもったいないとかそんな理由じゃない。


「しかし、よくこんなとこで寝られるな。こんな寒いのに肌の露出の多いドレス一枚ってただの自殺行為にしか思えないぞ」


 変な気を起こさないように女の子から少し離れた位置に座る。といってもここは円形に石でできた椅子があって、屋根のある外でお茶を飲む時とかのような場所なので距離はあまりかけられていない。

 正直少しラッキーと思ったのはここだけのひみつだ。


「んん……」


 女の子が軽く身震いする。


「おっ、起きるか?」


 起きそうな女の子を見て急いで俺がこの場にいる理由を考える。

 しまった。なんでそれくらいのこと考えてなかった! 正直に話すか? でも相手は貴族のお嬢様だぞ。あれだこれだと騒がれたら厄介だ。ここは毛布は諦めて潜伏で身を隠してこの場から逃げるか。よし、そうしよう。


「『潜……」

「ん~……君なんでここにいるの~」

「げっ!」


 潜伏して逃げようと思ったら一歩遅れてしまった。完全に女の子と目が合ってしまった上に声まで掛けられている。これでは『潜伏』の副効果である敵から発見時は相手からの注意が向けられにくくなるという効果も期待できない。


「どうしたのそんな顔して~。私何か変なのこと言ったぁ~?」


 目を覚ましてしまった女の子が妙に語尾が、間延びした話し方をしてくる。

 もしかしてこの娘、意外と話のわかるタイプの貴族か?


「い、いや、言ってない。俺はユウマ。こんな格好をしてるけどここの兵士じゃなくて冒険者だ。今日はセントラル王に呼ばれてここに来てる。それでここにいる理由だけど、街に行こうとしたらたまたまここで寝てる君を見つけて寒そうだし放っておけなくてここにいる」


 女の子が威張り散らすタイプの貴族じゃなさそうなのがわかった俺はなるべく丁寧にこれまでの経緯を話す。

 しかし、女の子は―――


「すう~……」

「寝てる!? この短時間で!?」


 また眠りこけていた。

 え? なにこの子。異世界ののびたくんなの? 数秒で寝れるし、どこでも寝れるの? それなら女の子のお風呂を覗きに行く時だけは呼んでほしい。


「んあ~。きみだぁれ~?」

「デジャブ!?」


 本当になんなんだこの子は。基本的にボケたおすことが多い俺がボケに回れずツッコミ倒しだと。


「でじゃぶ? なにそれおいしいの~?」

「いや、まず食べ物ですらないんだが……」


 妙に抜けているというか、あか抜けている女の子に対してどう反応したらいいのか困る。ただでさえまともに学校にも通わずに人との関わりを避けていた俺にとってこの手の珍しいタイプは対応に困る。


「と、とりあえず改めて自己紹介を……」


 結局、困ったときは自己紹介みたいなノリでさっき無駄になった自己紹介をもう一度行う。その途中で女の子がまた寝そうになったので、鼻に出来ていた花提灯を指で突いて割ったら目を覚ました。


「ほへ~。ユウマって言うんだぁ~。私わねぇ~、えっとねぇ~、すぴ~」

「おい寝るな! また自己紹介しなくちゃいけない気がする!!」


 三度目も自己紹介をするとかただの拷問だ。ただでさえ中学の自己紹介で盛大にやらかしトラウマを持っている俺なのにこれ以上トラウマを思い出させるのはやめてほしい。


「それよりなんでこんなところで一人で寝てたんだ? こんなところで寝るとか正気じゃないぞ。寒くなかったのか?」


 気になっていた質問を投げかける。女の子は眠そうに頭を揺らしながらも、特徴的な間延びしている喋り方で答えた。


「う~ん。寒いは寒かったよぉ~。でも、眠かったから寝てたのぉ~」

「そ、そうか……。でも、寝るなら城の中で寝ればいいだろ。パーティがあるにしたって調子が悪いとか言えば休む場所くらい用意してくれるだろ」


 こんなにバカでかい城だ。客用の部屋だってたくさんあるはずである。それにセントラル王こと洋二さんはさっき話した限りだとかなり優しい人だ。嘘とはいえと調子が悪いという申し出があればすぐにでも休ませてくれるだろう。


「お~。ユウマは頭がいいねぇ~。今度からめんどくさそうな行事の時はそれで断ろ~」

「さ、さすがにそれはまずいんじゃ……。ま、いっか。それよりなんでこんなとこで寝てるのかまだ答えてもらってないんだが」

「あ~、それはねぇ~。私は眠いからヤダって言ったんだけど~、どうしてもパーティーに出ろって言われて~、頑張って着替えて一人で会場に行こうとしたら~、眠くなっちゃったから寝ることにしたの~」

「お、おう……」


 なんか高校生が言いそうな、普通に学校がだるいから今日は学校休む。みたいな理由に少し驚きつつも、ついさっきの、のじゃロリとの会話で貴族の中にも俺と似たような感性の持ち主はいることを知った俺は曖昧な言葉を返した。


「それなら一回くらいはパーティーに顔を出した方がいいんじゃないのか?」

「う~ん……。そうなんだけどぉ~。めんどくさいのぉ~」

「いや、気持ちはわからんでもないが、不味いだろ。……あと、最初のほうのは取り消しで」

「最初の方~? 取り消し~?」

「あぁ、気持ちはわからんでもないがってところを取り消してくれ」

「なんでぇ~?」

「人の気持ちを簡単にわかるっていうのは嫌いなんだよ。本人にしかわからないことだってあるのに安易に言うような言葉じゃない。ただでさえ俺と君は立場が全然違うしな」


 そうだ。人の気持ちを簡単にわかるとか言っちゃいけない。専業主婦になったばかりの人がニートの女友達に言ったり、結婚適齢期を過ぎそうな女の人に中々お嫁にいけない理由を言われて気持ちがわかるとか、イケメンのくせに彼女ができないと嘆く俺に「気持ちはわかるよ。僕も先月彼女と別れたばかりでさ」とか、決して言ってはいけない。

 実際になったことはないが、交友関係の少ない俺でもまずいことだとわかる。後半のは俺が言われたくないだけだ。まず、イケメンと友達になんてなれるもんか! こっちから距離を置いてやるわ! エイトめ!


「おもしろいこと言うねぇ~ユウマは~」

「そうか? 面白いなら笑ってくれよ」

「あはは~。ユウマの顔おもしろい~」

「おい止めろ! それはブサイクだって意味と同じだぞ! そんな理由で笑うんじゃない! うっかり死にたくなるだろ!!」


 おいおいおい。この子可愛い顔してとんでもないこと言いだしましたよ。綺麗なバラには棘があるって言うけど、可愛い女の子には棘と一緒に毒までついてくるよ。毒舌とか……この子に言われるならありか? ありだな。事実俺はショックは受けているものの、嫌な感じはしない。


「それより、一回くらいは顔出しとけって。一回顔出し解けばパーティーに行ったことにはなる。誰かに何か言われた時にちゃんと言ったって胸を張って言えるようになる。少ない時間とはいえちゃんとパーティー会場には行ったからな!」


 俺が良い笑顔で言ってやると、女の子は「おぉ~」とか言いながら拍手している。

 なんか気分がいい。


「ユウマは本当にすごいねぇ~。私には思いつかないことをいっぱい知ってるよ~」

「ふっふっふっ。自慢じゃないが、悪知恵だけは働くんだ」


 本当に自慢にもならないんだけどな。


「ユウマみたいな人が私のお世話係が良かったよ~。なんでも見逃してくれそ~」

「別に何でもってわけじゃないけどな。お世話係の人厳しいのか?」

「そうだね~。優しいけど厳しいよ~。お昼くらいまで寝てたら怒るし~、お勉強しなさいって怒るし~、ちゃんと食事をしなさいって怒るし~、ちゃんとお風呂に入るようにって怒るの~。私はただ寝てたいだけなのにね~」

「いや、とても魅力的な生活だけど、食事はどうにかしろよ。食わないと死ぬぞ。他はそうだなー……お風呂なら俺が手伝ってやろう」


 俺はとっさに自分の口を塞ぐ。

 あまりにも女の子が話しやすいせいで、ついミカたちと話しているような感じでセクハラ発言をしてしまった。ミカやリリーナなら殴られるか魔法をぶっ放されるかで済むが、貴族のご令嬢ともなると俺の首が……。

 デュラハンになるのか。悪くないかもな。なれるならな。


「ほんとぉ~。じゃあ今日からお風呂手伝って~。自分で髪とか体洗うの面倒だったんだよ~」

「……冗談だよな?」

「冗談じゃないよぉ~」


 俺が自分の人生を振り返ろうかと思っていると、女の子からとんでも発言が放たれる。一瞬で顔が赤くなるのを感じ顔を背けた。


「……あのさ、さすがに男相手にその反応はまずいんではないですかね? 冗談だってわかってるにしても、俺たち初対面よ? あの手この手で君に悪戯するかもよ?」


 なんでだろう。なんでこんな気持ちになっているんだろう。

 あれか? 小さな子に「一緒にお風呂入ろー」って言われるおじさんっていつもこんな気持ちなの? 嬉しいのに罪悪感とかでこんなに胸が苦しくなるの? 確かに今回は自業自得だけど、自分でセクハラ発言しておいてホント恥ずかしいんだけど。無垢な心や、天然とかってホント怖い。


「別にちょっとくらいならいいよ~」

「っ!?」


 あまりにも突拍子もない言葉に驚き背筋を立たす。

 え? 今この子なんて言いました?


「あのな、一回しか言わないぞ。この先の君の人生で絶対に役に立つだろうからちゃんと聞いて覚えてってくれよ。いいな?」

「な~に~?」


 俺は自分の中の男の子を全力で押さえつけながら、いたって冷静な顔を保ちつつ、忠告することにした。

 自分でセクハラまがいのことを言っておいてななんだが、この子は危なすぎる。貴族の娘には箱入り娘で常識知らずな子もいるってのが二次元では定番の設定だが、現実にいるとなるとそれはただただ不安にしかならない。

 現に、俺が初めて会った女の子にも関わらずに心配してしまうほどだ。


「男はみんな狼。いいな? 男はみんな狼。リピートアフタミー!」


 洗脳に近い言葉か彼女に投げかける。

 彼女は首をこてんと傾げ、不思議そうにしているが気にしない。少ししても俺の言った言葉を復唱しない彼女に、もしかしたら英語がこの世界では伝わらないのかもしれないと同じ事を普通に言い直す。


「男はみんな狼」

「男はみんなおおかみ~」


 間延びした語尾で俺の言った言葉を復唱する。

 意味はよくわかってないようだが、そこは単語で意味を察してほしい。説明するのは男の俺がするのはおかしな気もするしな。


「あ~、みつかっちゃった~」


 良いことをしたと内心満足げな俺を無視して彼女は俺の後ろを見ている。見つかっちゃった。その言葉からして彼女の知り合いが探していた彼女を見つけてこっちに向かっているのだろう。俺は顔を見られないように首を少し横に向けて後ろを確認する。男か女かわからないが、誰かが一人こっちに向かってきている。

 お嬢様が一介の兵士とパーティーにもいかずに話している。何も知らない人からしたら密会をしているようにも見えるはずだ。

 ここはこの子のためにも俺のためにも、とっと退散するべきだろう。


「お連れさんが来たなら俺はもう行くよ。んじゃな!」

「え~、ユウマも一緒にいこうよ~」

「せっかくのお誘いだけど、俺はああいう場所が苦手なんだ。悪いな」

「むう~」


 形のいい唇を尖らせ、不満を露わにする美少女に若干トキメキながらも、そろそろ逃げないと危ないと理性が警告をしてくる。俺は頭を軽く振って思いを断ち切り、スキルを発動する。


「じゃあ、嫌だろうけどパーティーがんばってな」


 そんな言葉だけを言い残し、彼女が何か言いたそうにしてたのかすら確認もせず、『潜伏』スキルを発動させてその場を後にする。

 俺のこと最初から認識していたおかげで『潜伏』スキルの効果を受けていない美少女の視線が最後まで突き刺さっていた気がした。

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