19話
「ユウマさん、大丈夫ですか?」
セントラル王の部屋でちょっとした冗談から、ミカに見せられない顔になるまでボコボコにされ、パーティーの準備をしなくてはいけなくなったセントラル王の部屋から最低限の回復を受けた俺は、現在俺たちのために用意された寝室でアイリスに治療を受けていた。
おかげで俺の見せられないほど悲惨な状態だった顔も、まぁ見れるくらいには回復している。その証拠に俺を回復させんと頑張っているアイリスを見て顔を弛緩させても全く痛まない。
やっぱりアイリスはいいなぁ~。
「やっぱりアイリスはいいなぁ~」
「ふぇ……ふぇえ!?」
どうやらあまりの癒され具合に思ったことを口に出してしまっていたらしい。
アイリスの顔が赤く染まる。
天使かな? 天使じゃないよ。女神だよ。
うん。アイリスを表すのにこれほど良い言葉はないな。
「アイリスちゃん。もうそのくらいでいいよ。本当なら回復もしてあげなくてもいいくらいなんだから」
すぐ傍でリリーナと一緒にアイリスに回復される俺を見ていたミカは膨らませていた頬を萎め、刺々しい口調で言う。
「で、でも、そういうわけにもいきませんよ……。さすがに放っておけないです」
俺のことを言葉の刃で突き刺してくるミカに対してアイリスがおずおずという。ただ、すぐに俺の方を見て、早く謝ってくださいという視線を向けてくる。小さな女の子に見下ろされるかいか……げふんげふん。
「なぁ、ミカ。さっきのは本当に悪かったって。ちょっと悪ふざけがすぎた。この通りだ。ゆるしてくれ」
「ただアイリスちゃんに治療してもらったままの体勢なだけじゃん。ただ仰向けになってるだけだし」
「これは究極の土下座を追及した」
「そういうのいいから」
取り付く島もないとはまさにこの事である。
アイリスは俺に謝るように視線を送ってきたが、俺だって最低限の良識は持ち合わせている。だからちゃんと謝りはした。が、今回の一件は本当に悪ふざけが過ぎた。
一応洋二さんとミカはお互いに日本から来たという話は済ませたようだが、その前の一件のせいで少しぎこちない会話だったそうだ。
「ミカ、絶対にこんな女の敵を許しちゃだめよ。アイリスは甘すぎるから私たちがユウマを調教するの」
ミカの隣で腕組みをしているリリーナが言う。
腕に乗っかっているおっぱいが素敵とか、美少女に調教してもらえるとかただのご褒美という言葉をグッと飲み込む。
「あんな屑は放っておいてそろそろ行きましょ。着替えの時間が無くなっちゃうわ」
「そうだねリリーナ。早くいこ」
そう言って二人は仲良く並んで部屋を出て行った。
二人の言葉の意味はこれからのパーティーでの着替えのことだ。結構ひどいダメージを負っていたせいか俺の回復にはアイリスの魔力をもってしても時間がかかった。
今はパーティー開始の三十分前である。
女の子にいろいろ準備があるというし、城の中は広いしで、様々な時間を計算するとそろそろ確かに厳しい時間帯だ。
「ユウマさん……」
「気にするな、アイリス。今回は本当に俺が悪いんだし。それよりもほら、アイリスも二人について行かないと迷っちまうぞ。俺のことは放っておいて早く行きな」
「で、ですが……」
「俺もそろそろエイトが着替え持ってきてくれることだし、大丈夫だって。それにセツコさんを待たせるのも悪いだろ」
「は、はい」
優しい、優しすぎるアイリスをどうにか説得して部屋から出す。
俺がほっと一息入れるとほとんど入れ替わりのような形でエイトが部屋に入ってきた。
「やらかしちゃったみたいだねユウマ」
「まぁな」
部屋に入ってくるなり傷口を抉ってくるエイト。さすが腹黒騎士。
「もしよかったら後でミカの機嫌取りでもしてやってくれ。いつまでもミカがピリピリしてるとアイリス困るし」
「こんな時でも他の女の子の心配をするんだね、ユウマは」
「なに当たり前のこと言ってるんだよ。自分より美少女のことを優先するのは当然だろ」
これだからイケメンは。と心の中で付け足しつつ、アイリスのおかげで痛みのなくなった体を起こす。
「それより俺の服はどうなったんだ?」
「あぁ、やっぱりユウマのドレスは用意できなくてさ。僕のスペアの軍服で我慢してくれるかな?」
「あぁ、最高だな」
俺は美少女を見るのが好きなのであって、自分が美少女のようになりたいわけじゃない。ただし、美少女になれるんだったらなりたい。美少女のようにようになるのは本当にごめんだが。
「それじゃあこれを。サイズは多分大丈夫だと思うよ。もしかしたら少し丈が余るかもしれないけど」
「なにお前、自分の方が俺より少し顔が良くて、少し身長が高くて、少し筋肉質だからって俺に嫌味言ってんの?」
「まさか。僕はユウマと違って魔王幹部は倒せないよ」
そう言って笑うエイトにやっぱり嫌味じゃねえか、と返しつつ、さっさと着替えを始める。
俺がエイトと同じ白と青を基調とした服に身を包んでいると、エイトがじろじろとこちらを見ているのに気づく。
「え、なに? もしかしてエイトって男好きか何か?」
「ははは。面白いこと言うねユウマ。でも、生憎僕は美しい女性の方が好みなんだ。ごめんよ」
「なに俺が告ったみたいな返事してんだよ。冗談でもやめてくれ。……で、男好きでもないのに俺の身体に何か用か?」
大変腹立たしい返事に大人な対応を返す。さらには質問を投げかけた。
「別に深い意味はないよ。ただ、いたって普通の身体付きだなって見ていただけさ」
「悪いか?」
「そんなことはないよ。ただ、魔王幹部を倒したとは本当に思えないって思ってたのと、人は見かけによらないんだなって改めて実感していただけさ」
「結局悪口じゃねえか!?」
本人に悪気がなさそうなのが、なおさらたちが悪い!!
「着替え終わったみたいだね。それじゃあそろそろお姫様たちを迎えに行って会場に向かおうか」
「お姫様たちって……お姫様はアイリスしかいないだろ」
「ユウマ……本当にリリーナさんとミカさんに殺されちゃうよ?」
割とマジな感じで心配されて、そんなわけないだろ。と言おうとして今のあの二人ならあり得ると思えてしまって口を閉じる。
「気をつけなよ、ユウマ」
「お前こそ、いろんな女の人と仲良くして後ろから刺されるなよ」
「騎士として背中を切られるのは嫌だから気を付けるよ」
「ちっ。いちいち返事がかっこいいなお前は」
そんなやり取りをエイトとしつつ、俺は部屋を後にした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「うっわ。さすが天下のセントラル王主催のパーティーだな。冗談抜きでもう帰りたい」
あの後すぐにエイトと一緒にセツコさんたちと合流した俺達は、現在パーティー会場に足を踏み入れていた。
「あうぅ~……。も、もうお部屋に戻らせてください~」
俺とエイトのやや後ろを歩いてきていたアイリスが俺とは違った意味で帰りたいと零す中、俺は変に目立たないように首を軽く動かしながら会場を視察する。
まず最初に目が行ったのは、あまりに現実離れしている光景から少しでも視線を逸らしたくて上を向いていたおかげで目に入ってきた、学校の体育館が三つくらい並んだ広さのこの空間をたった一つで照らし出す巨大なシャンデリア。家にもロレンスの忘れ形見のシャンデリアがあるが、ここまででかいシャンデリアを見ると家にあるのは普通の照明に思える。
そして次に目が行くのが当然ここにいる貴族たちだ。みんながみんな明らかに高いであろうスーツやらドレスやらに身を包んでいる。おっとりしたタイプのゆるふわお嬢様、古き良き偉そうな傲慢系お嬢様、キリッとしていて王女騎士とかをやっていそうな勇ましい感じのお嬢様、そんなお嬢様たちの胸元が大胆に開かれているドレスが目に毒である。
え? 男はどうなんだって? 何が悲しくてむさい男を見なくちゃいけないの?
みんな色が違うだけのスーツ着てるだけだよ? あとは髪の色とか、年齢とか、体型が違うだけだよ? お腹がでっぷりしてるおっさん貴族の話なんてみんな聞きたくないでしょ? 俺もしたくない。
「いででででででっ!!」
俺が様々なお嬢様方々に目を奪われていると、いきなり頬をつねられた。
こんなことをする奴はこの近くに二人しかいないがどちらがやってきたのか確かめるため、視線をすぐ横に戻す。
「なにすんだ、ミカ! 俺が何したってんだ!」
「ふんっ! お嬢様たちを見て鼻の下を伸ばしてるからだよ」
「伸ばしてねえよ!」
「見てたのは否定しないんだね」
「そりゃあ美女美少女が目の前にたくさんいたらこうなるだろ。普通の男の子の反応だろ?」
想像してみてほしい。目の前に美人だったり可愛い女の子たちがたくさんいるその光景を。
誰だってその素敵な女の子たちを見ますよね? ねっ? ねっ?
「むー……。そんな知らない人たちなんて見なくてもすぐ側にもいるんじゃないの? 美少女」
なにやらさっきよりは機嫌を良くしてくれていて安心していた俺に、チラチラと視線を送ってくるミカ。ウインクが上手くできてないところがミカらしい。
「そうだな、いるな」
「なら、その美少女に適切な言葉を掛けてあげるのが男としての当然の行動なんじゃないの? それともユウマはアニメの主人公みたいに女の子を言われないと褒められないような鈍感系モブン公なの?」
「モブン公ってなんだよ! そこは主人公にしろよ! 誰だって自分の人生においては自分が主人公なんだよ!」
「やりたかったストーリーには進めないけどね」
「くっ! 嫌なこと言いやがって……」
俺の影響で色んなアニメや漫画を見てきたミカは俺には及ばないものの、中々のオタク知識がある。下手なオタクどもは黙らせられるほどの知識があるんだから驚きものである。
まぁ、それもこれも全部俺のせいなんですけどね、はい。
自分が教えたオタク知識で自分がひでーこと言われてるとかマジで自業自得だな。
「でもまぁ、俺は鈍感系主人公にはなりたくないしな。やることはやっておかなきゃな」
ミカに言われたからというわけではないが、俺はかわいい子には可愛いと言える男の子になりたい。そこから始まるラブコメがきっと俺にもあるはず。
あるよな……?
「アイリス、そのドレス似合ってるな。色がアイリスにあってるし、可愛いアイリスに可愛いドレスなんか合わせたら可愛いが相乗効果を生んで大変なことになっちまうな。てかなってるな!」
後半はテンションが上がりすぎて声が大きくなってしまったが、周りの貴族たちの会話をしているのでこちらに目を向けるようなことはなく、俺はおびえることなくアイリスにその可愛さを伝えることができた。
ユウマは満足です。
「ふぇ、ふぇええ……。あ、ありがとうございます」
白い肌を真っ赤に染めるアイリスもまた可愛い。
自然と頬の筋肉が緩むのも仕方がないことだと俺は主張したい。
「ユウマ。私は?」
「あ? なんか言ってほしいの?」
「むーっ!」
美少女には適切な言葉を掛けるべきだというからアイリスという美少女に感想を伝えたのに、ミカが少しふくれっ面で俺を見ている。だから返事をしてやったらさらにミカが頬を膨らませた。
いや、俺だってばかじゃない。ミカがどんな言葉を望んでいるのかくらいは幼馴染じゃなくてもわかる。ただ、その……気恥ずかしいのだ。
なにが嬉しくて小さいころからずっと一緒のミカのことを褒めてやらねばならんのか。
ただ、さっきのセントラル王とのことがある。さすがにあれは俺もやりすぎたと反省している。だからこれはその謝罪としてのあれだ。
そう、謝罪だ。罪滅ぼしだ。それ以外のなんでもない。
「あれだな。まあ、着るものが一流だと来てるやつもそれなりに見えるもんだな」
真正面から言うのはさすがに憚られた俺は少し視線を明後日の方へ向けて言う。
ただ自分の言った言葉がミカの満足のいく言葉だったのかをこれでは確かめることができない。もっと言えばエイトと面白そうな視線や、アイリスとセツコさんの優しい視線、リリーナのやればできるじゃない。とでも言いたそうな視線が俺に突き刺さってきててどこにも視線の逸らし先はない。
仕方なくミカの方へ視線を戻すとミカは少し照れたように顔を赤くしながら笑っていた。
「やればできるじゃん!」
照れ隠しのように俺の肩を叩いてくるミカ。
「止めろ! 金剛力で肩叩かれたら外れる!? アイリスにまた助けてもらわなくちゃいけなくなる! ん? ……ならいいのか?」
「よくないですよ!?」
俺の言葉にアイリスが少し離れたところから突っ込みを入れてくれたのを確認し、俺はこれ以上ミカと顔を合わせているのは少しばかり気恥ずかしいので背を向けて会場の真ん中の方へ行こうとする。
ただ、言い忘れていたことを思い出し足を止めた。
「その、なんだ……さっきは悪かった。悪ふざけが過ぎた」
頭をガシガシと掻きながら、決して後ろは振り返ることはなく言った。
日本で散々部屋に引きこもり親に迷惑をかけ続け、人との付き合い方を忘れてしまったコミュ症の精いっぱいの謝罪である。
俺が知っている謝罪はこれと、あとは土下座と土下寝だけである。
「仕方ないなー。まぁ、幼馴染のよしみで許してあげますか」
「助かる。サンキューな」
どうにか不器用ながらもミカと仲直りをすることに成功した俺は密かにほっと胸を撫で下ろし、深呼吸を一つする。
「ねぇ、ユウマ」
「なんだよ? もう一回とかはなしだぞ。結構恥ずかしいんだから」
「え? そうなの? じゃあもう一回言ってよ」
「鬼かよ!?」
あまりにもひどすぎる幼馴染の発言に本気のツッコミを入れる俺。
「くくっ」
「ふふっ」
俺とミカは同時に噴出した。
そうだ。これが俺とミカの仲だ。近すぎず離れすぎず、お互いに言いたいことを言って、笑う。これが俺たちのベストな関係だ。
ようやく自分たちらしい会話ができたことにお互い噴き出して、パーティー会場だというのに、この場に似合わないような大声で笑った。
「良かったですね。二人とも仲直り出来て」
「ミカはユウマに甘いのよ。もう少し痛めつけてからでもよかったと私は思うわ」
「まあまあリリーナ殿。せっかくのパーティーなのに笑っていない人がいるのもつまらないではないですか」
「そうですよリリーナ嬢。ユウマもミカ嬢も笑っていられるならそれでいいじゃないですか」
「その意見には私も一部賛成だけど、ユウマが一回本気で痛い目を見た方がいいのよ。それこそ私を敬うくらいには痛い目にあってほしいわね」
「聞こえてんぞ」
外野が好き勝手に言ってくれているのが聞こえた俺とミカは空気を読んで少し離れた位置から見守ってくれていたアイリスたちの元に戻る。
そういえば、空気を読むっていう雰囲気を感じるみたいな言葉があるけど、宇宙だとどうなるの? 空気ないけど何を読むの? 空間でも読むの?
「あら、聞こえてたの? 聞こえてたら都合がいいわ。私を敬いなさい」
リリーナが胸の前で腕を組み言う。
そんなことをするとドレスのおかげで大胆に晒されているお胸様が大変素晴らしいことになっていますよお嬢様、なんていう自分にとって百害あって一利もないことは言わずに俺は視線だけは逸らさずに返事をする。
「嫌だね。確かに姿かたちはお嬢様そのものだけど、ただの冒険者だろうが」
「ただの冒険者って……ユウマも同じ冒険者じゃないの」
「同じ冒険者だから敬わないって言ってんだよ」
こんなとこでするような会話であることは重々承知していながらもこんな会話しかできない俺たちはなんでこんなとこにいるのだろうか?
そんなことを思いながらこんな会話くらいしか自分にはできないと開き直る。
「……」
「な、なによ……?」
俺がじっとリリーナを見ているとリリーナが自分の身体を守るように抱きながら一歩下がった。
なんで一歩下がるんですかね?
なんか悔しいから反撃をしてやろう。そうしよう。
やると決めた俺の行動は早い。
「リリーナ」
「だ、だからなによ……」
真剣な面持ちで俺が喋り出すとリリーナがまるで菌でも見るような目で俺を見ながらさらに一歩下がった。
だからなんで一歩下がるんですかね!?
「そのドレス似合ってるな」
「は……はぁっ!?」
よし、上手くいった。
予定通りリリーナのやつはさっきのアイリス以上に顔を真っ赤にしている。
リリーナのやつはミカとアイリスと比べて不意打ちに弱い。アイリスも不意打ちに弱いが、いつもそんな感じなので不意打ちの時と対して差がない。それに対してリリーナはいつもがクールぶっているおかげで不意打ちの時は普段とのギャップですごいことになる。今がそれだ。
ちなみにミカの場合は幼馴染のあれで一瞬でバレるか、反撃される。
「いやさ、いつも思ってることなんだけどよ、お前ってお嬢様っぽいじゃんか。さっきはああ言ったけど、ドレスとかお嬢様っぽいもの着るとさらにお嬢様感が増すよな。スタイルもいいし、顔もいいから服に着られてるって感じもないし、なんかいつも着てるような感じだな」
ここぞとばかりにまくし立てる。
ただ、問題もある。それはこの言葉の中には嘘が一つもないことである。極端に嘘を言うとバレるというのもあるが、実際にこの三人の中で誰が一番ドレスが似合ってるかと聞かれれば俺は間違いなくリリーナと答えるだろう。
アイリスは水色の淡い感じのドレス。ミカは黄色の元気がありそうなドレス。そしてリリーナはその瞳の色と同じ真っ赤なドレスである。その中でもリリーナのドレスは一番布生地が少ない大胆なものになっている。
それが様になっているのはさっきも言ったようにリリーナの顔とスタイルと立ち居振る舞いによるものだ。
ただドレスを着るだけなら今のミカとアイリスのように機会があればできる。だが、立ち居振る舞いに関しては話が別だ。これは勉強とかと同じで普段の行動で長い時間をかけて身に着けるものだ。一朝一夕では習得することはできない。
スキルみたいにポイントを溜めてポチというわけにはいかないのだ。
「お前ならあの中に入っても違和感なさそうよな」
留めの一撃とばかりに俺は最後の言葉を放つ。
なぜかアイリスとミカから視線を感じたり、セツコさんが自分の服を見ていたり、エイトが嫌な笑みを浮かべているみたいだが今は気にしないものとする。
てか、アイリスとミカはマジでなんで? さっきちゃんと褒めたよな?「
「……る」
「ん? なんか言ったか?」
「…や…る」
「もう少し声出してくれや。周りの声で聞こえない」
さっきからリリーナが何かを言っているようなのだが下を向いているうえに声が小さすぎて聞き取れない。
おじいちゃんと孫のようなやり取りを数回交わした俺たちをみんなも不思議そうに見ている。
「ファイヤーボール!!」
「のあっ!? いきなり何しやがるリリーナ!!」
「あ、あんた偽物ね!? ユウマが私にそんなことを言うはずがないわ! そうよ! さっきのミカへの言葉だってユウマにしては出来すぎてたわ!」
「喧嘩売っとんのかお前は! てか、場所を考えろ場所を!!」
忘れてないことを祈るが、ここはセントラル王主催のパーティー会場である。
こんなところで粗相でもしでかしたら命がいくらあっても足りない。
「うるさいわよ偽物! 観念なさい!!」
「だからやめろーっ!!」
それから少しの間みんなで周りにバレないようにリリーナを押さえつけるというこの場所に一番ふさわしくない行動が行われた。




