14話
セントラル王の会見準備が整ったと報告を受けた俺たちはすぐに訓練場の見学を止めて、セントラル王との会見場前の扉までやってきた。無駄に大きな扉は必要以上の圧力があり、せっかく解けていた緊張が嫌でも戻ってくる。
「それではみなさん。この扉の向こうに既にセントラル王がいらっしゃいます。みなさんと少し話した感じですと大丈夫そうですが、くれぐれもセントラル王の前で失礼なことはしないようにお願いします」
「はい。わかりました」
さっきタメ口で良いと言っていたエイトが敬語を使っているのに、俺がタメ口を使うわけにはいかないので、エイトに倣って俺も話し方を敬語の丁寧語に戻す。
一応、他のメンバーの心の準備も心配だったので後ろを向くと、それそれメンバーらしい行動をとっていた。アイリスはいざセントラル王との会見を前にして微かに震えており、リリーナは本当に初日の動揺はどうしたのかと言いたいほど落ち着いている。ミカはさっきの事で怒ってるのかと思ったら、特にそんなことはなく、「変なことしないでよ、ユウマ」なんて、いつもの調子でいってきやがった。
そのセリフ、まんま配達料も一緒に返してやりたいところだ。
「それでは、準備が整い次第中に入ります。その際はお声掛けください」
エイトの最後の確認に俺たちは全員で一回顔を合わせ、大きく頷きエイトに言った。
「「「「大丈夫です」」」」
セントラル王との会見が、今―――始まる。
「失礼します。セントラル王、ユウマ殿御一行をお連れしました」
「うむ。連れて参れ」
大きく大仰な扉を開け、エイトが先頭を切って中に入っていく。
俺たちは事前にエイトから聞いていた通り、エイトに少し遅れた形で中に入り、常にエイトの三歩後ろ位を四人横一列に並んで歩く。
それにしても、なんというか想像通りというか、実際に見ると想像以上というか、豪勢な部屋だ。いや、これは部屋というよりは、もはや廊下に近い。
学校の体育館ほどの横幅の長い廊下。壁や床は一面白く、だからこそ敷かれた赤い絨毯がその存在を大きく主張している。壁には手紙にあった王家の刻印を金の糸で表現している垂れ幕のようなものがいくつも飾ってあり、ここが一国の王の城だということを俺たちに嫌というほど主張している。
そして最後に、さっきから俺が何よりも気になっているのは、壁際に並んだ王国の兵士達だ。
全員が全員、剣なり槍なりを装備しており、なにかしたらすぐに殺すと言わんばかりの歓迎である。
「こんな歓迎、まっぴらごめんだなー……」
誰にも聞こえないように小さく呟き、この場で一番心配なアイリスの様子を覗う。でも、話しかけるわけにはいかないので、横目でちらっとだ。
案の定アイリスは周りの兵士たちを見て、震えていた。見かねた俺は自分の緊張を解す意味も兼ねて、アイリスの手を握る。
小さくて暖かい。子供の体温ってなんでこんなに温かくて気持ちいの?
「ユウマさん……ありがとうございます」
「気にすんな。セントラル王の前までだけど、少しは安心するだろ」
いきなり手を取られたアイリスは一瞬大きく身震いをしたものの、その手が俺のものだと知って、ほっと息をこぼした。セントラル王の座る王座の前までは運よくなのか、結構な距離がある。それにエイトはゆっくり歩いてくれてるので、時間はさらに増えている。
アイリスが気持ちを改めて整えなおすには十分な時間だろう。
「さて、他の二人は―――」
念のためリリーナとミカの様子を覗う。ミカは俺の右隣を、リリーナはアイリスを挟んで俺の左にいる。リリーナ依然変わらず堂々した態度で歩いている。それどころか、心なしか、いつもよりも気品があるというか、風格があるようにも思う。
まぁ、それもこの場の雰囲気がそうさせているだけだろう。だって、リリーナだぜ? 確かにお嬢様っぽいとは何度も思ったことあるけど、脳筋の魔法使いだぜ? お嬢様とか貴族とか、そんなのあり得ない。
ミカはと言えば、あいつもあいつで結構落ち着いている。正直、ある意味において一番この場に連れてくるのが心配だったミカだが、この調子なら大丈夫そうだ。
緊張して、混乱して、暴れまわるとか、そういうのはマジで勘弁だぜ、ミカ。
「とりあえず、みんな大丈夫そうだな。あとは、俺がしっかりするだけか。はぁ~……就職活動の面接とかもこんな感じだったのかね……」
就職活動と、一国の王との会見を一緒にするのはどうかと思うが、例えがそれくらいしか浮かばなかった。
そんなこんなしているうちに俺たちはセントラル王の座る王座の前までやってきた。
「……ん? 案外普通だな」
セントラル王を見て、まず俺が抱いた感想は普通。
俺はてっきり、厳つい顔をしてるか、柔らかそうな顔をした六十を過ぎた感じの白い髭を鼻の下と顎にもっさりと生やし、でっぷりとした体形をした、赤と白と黄色を基調とする、みんなのイメージする王様ナンバーワンみたいなのを想像していたのが、結構色々な点が違う。
まず、顔はその辺にいるちょっと元気なおじいちゃん。どちらかと言えば、優しそうな顔つきだ。この辺は大方予想通りだ。ただ、もっさりとした髭はなく、少し長いかなくらいの長さで、髪の色も若干白いくらい。何というか、年のせいで白髪が増えてきたみたいな感じ。
体形は予想の真逆ですらっとしてるとまでは言わないが、細身だ。服もなんか豪華ではあるものの、俺の想像していたものとは全く違う。首元にポンデリングみたいなのはないし、王様と言えばという王冠すらも被っていない。
大変失礼なことを言うなら、普通の服を着て街中に歩いていてもおかしくない。というのが、俺がセントラル王を見た第一印象だった。
まぁ、どんな人でも普通の格好をしていたら、普通なのかもしれないが。
「おっといけね」
想像と違うセントラル王を前にして、少しの間黙りこくってしまった。
俺がそんなことをしている間にエイトはいつの間にか横の兵士たちの中に紛れていた。よく見れば隣にセツコさんもいる。
あっ、目が合った。そしてすぐ逸らされた。
しょぼん。
「えっと、本日は我々のような一冒険者を、セントラル王のお住みになっている城にご招待いただき、誠にありがとうございます」
「「「ありがとうございます」」」
俺がお礼を言って腰を曲げると、予定通り後ろの三人が少し遅れてお礼を言い腰を曲げる。よし、順調だ。
「それと、お声をお掛けいただいてから今日まで時間が掛かってしまったことも同時に謝罪させていただきます。申し訳ございません」
「「「申し訳ございません」」」
なんだろう……卒業式みたいに感じる。
あの、楽しかった運動会(運動会)みたいなやつ。
みんながみんな楽しかったわけじゃないのにな。
「はっはっはっ! そんなに畏まらないでくれ。私はそういうのが苦手なんだ。頭を上げてくれたまえ」
卒業式みたいな言葉を受けたセントラル王が豪快に笑い、俺たちに頭を上げるよう言う。
俺は下げた頭さらに少し下げ、後ろの三人に視線を送る。
それに気が付いた三人が小さく頷いたのを確認してから俺はゆっくりと頭を上げた。
「うんうん。そうして顔を見せてくれた方がずっといい」
頭を上げ、顔を見せた俺たちに笑顔で頷くセントラル王。
どうやら、俺の想像のような厳かな感じではなく、アイリスやリリーナの言っていた通り親しみやすい感じの良い王様っぽい。
かといって、こっちも気を楽にするつもりはないけど。
「ん?」
内心少しほっとしたのもつかの間、セントラル王が俺たちを見てなにやら疑問の声を上げた。自分の服装や態度に何かまずいところがあったのではないかと心臓をバクバクさせていると、まるで死刑判決を言い渡す。みたいな感じでセントラル王が口を開く。
「そこの魔法使いのお嬢さん……確か、リリーナだったかな? もしかして、君はあのフ―――」
「あああああああああああああああああああ、ファイ―――」
セントラル王が何かを口にしている最中、リリーナが突然大声を出し方と思えば、どこに隠し持っていたのか、いつもの杖ではない小さな杖を取り出し、セントラル王の方へ向けて魔法を唱えようとした。
アイリスとミカはいきなりのことに驚くばかりでリリーナを止める気配はない。というか、止めれそうにもない。なら、俺が動くしかない。さすがにここでみんなで生首になるのは嫌だ。俺はリョナは好きではないのだ。
覚悟を決めたからにはすぐ行動を。リリーナの明らかにおかしい行動に困惑しつつも、緊張していたおかげか冷静さを残していた俺は、ここに唯一持ってきたものをポケットの中で握った。
「おっとーっ! 手が滑ったぁーーーっ!!」
俺は小さな野球少年のように振りかぶり、リリーナめがけてそれを投げつけた。コントロールにそれほど自信のない俺でも、さすがに三歩ほど離れているくらいならどうになる。
そして、それはフラグになることなく、リリーナの頭に直撃した。
「ひにゃっ!」
めずらしいくらいかわいらしい声をあげ、リリーナは詠唱を中断する。
しかし、事態は明らかに不味い状態だ。セントラル王の前で、ましてやセントラル王に向けて杖を向け、呪文を唱えた。
これは国家なんたら罪とか言われても言い訳できない。現に周りの兵士たちも、あまりのことに混乱しているものの、戦闘態勢に入っている。セツコさんとエイトも信じられないといった顔をしている。アイリスとミカはもう唖然としている。
もう、ここでどうにかできるのは俺しかいない。
これでも日本では、母さんや父さんの早くそのニートどうにかしなさい。という言葉を数々の言葉で交わしてきた男だ。言い訳をさせたら俺の右に出る者はいない。
「おいこら、リリーナ! セントラル王の前で模擬戦闘を見せようって話は危ないからなしになったじゃないか。緊張してるとはいえ失礼だぞ! ほら、とにかく謝れ!」
その場で作り上げた割には完成度の高いと思える言い訳を口にすることができた。あとは勢いのままこの言い訳を突き通すだけ。言い訳の絶対条件は、それらしい、勢いのまま、相手にしゃべらせない、これに尽きる。
愛想笑いを振りまきつつもリリーナの隣まで来た俺は、小さい子の母親が子供に謝らせるようにリリーナの頭を強引に掴み、頭を下げさせる。もちろん俺も下げる。
あと、リリーナの髪すげーサラサラだった。
「セントラル王。申し訳ありません。仲間が緊張のあまり少し暴走をしてしまいました。決して敵意があったわけではないのです。どうか、どうかリリーナのことをお許しになってはもらえませんでしょうか?」
言い訳が上手く言ったのか、周りの兵士たちが疑問符を浮かべながらも次々を武器を下していく。そして俺も胸を撫で下ろしたいところだが、肝心のセントラル王のお許しがもらえていない。
まだ、安心するのは早い。
―――胸を撫で下ろすって……エロくね?
「ちょっ! 痛いじゃない!」
「うっせーっ! 死にたくなけりゃ言う通りにしろ!」
強引に頭を掴まれ、下げさせられていたリリーナがついに俺に牙をむいた。
俺は声を最小限に抑え、セントラル王に聞こえないようにリリーナに耳打ちする。
「とにかくここは俺に任せろ。お前は黙ってその喋らなければ美人な顔で愛想を振りまいとけ」
「なっ!? ―――わ、わかったわ」
どうにか狂犬を落ち着けることに成功した俺は、裁判の判決をおとなしく待つ。
そして、その判決はすぐに下された。
「ふははははっ! 君たちは面白いな。こんなサプライズを考えてきてくれたのは君たちが初めてだよ」
「で、では?」
「あぁ、もちろん許そう。いや、許すも何もないな。私自身が楽しめたんだからお礼を言わせてもらいたいぐらいだ」
セントラル王のありがたい言葉にリリーナ以外は全員胸を撫で下ろす。
セツコさんたちに軽く謝罪を入れておこうと目を向けると、エイトはさっきまでの驚きの表情ではなく笑顔。でも、セツコさんはその豊満な胸を撫で下ろしていた。
「ご配慮ありがとうございます」
色々とあって、ようやく安心はできたが、まだ本来の目的は達せられていない。俺は元の立ち位置に戻る前に三人に小さな声で「落ち着け」とだけ言い残し、元の一に戻ってから、お礼の言葉を口にして、姿勢を正した。
「何度も言うが、そう硬くならないでくれ。本当に私もその方が助かるのだ」
「は、はあ~……」
セントラル王の言葉に俺は渋い返事を返す。
だって、王様がいいって言ってても、周りの兵士さんは「わかってるだろうな? さっきみたいなことをしたら俺たちの剣と槍でお前たちは串刺しだぞ」というような目で俺たちを見ているのだ。たとえ王様が「命令だぞ」とか、「命呪をもって命ず」とか言っても、とても命令を聞ける雰囲気ではない。
「それでは早速だが、君たちの功績について表彰をしたい。そのためにもまず、君たちの功績について聞きたいんだがいいだろうか? 何分、私も大雑把な説明しか聞いてなくてな。詳しい話を聞きたいんだよ」
「もちろん構いませんけど……正直、たいしたことしてませんよ?」
「なにを言ってるのかね。始まりの街の冒険者たちをまとめ上げ、オークの大軍を対処した上に、魔王軍幹部であるヴォルカノの討伐までしたそうじゃないか。それを大したことないとは、よっぽどの冒険者か、謙虚な証拠だよ」
セントラル王の真っすぐな褒め言葉がくすぐったい。
褒められたのなんて小学校くらいまで遡らないとないぞ、俺。
でも、本当に褒められたのは俺じゃなくてリリーナとかアイリスとかミカなんだよなー。
俺は基本的に指示出して逃げ回ってただけだし。
「いえ、実際、私は逃げ回って適当な指示を飛ばしてただけです。本当に褒められるべきなのは後ろにいる三人や、始まりの街の冒険者のみんなです」
自分で言っててもバカらしいセリフだ。
別にそんなこと思ってないし。
さっきはあんなこと思っちゃったけど、実際俺の指示がなきゃ全滅だっただろうし―――さすがに言いすぎか? どうでもいっか。
「なんとも素敵なセリフだな。でも、私も一国の王として魔王幹部を倒した冒険者の話を聞いておきたいのだ。国の民を守るためにもな」
さすがは一国の王様ってところか。言ってることが立派すぎる。
世の中には、自分の裕福な生活のための駒としか平民を思ってもない王様だっているってのに。
「それでは、覚えている限りの話にはなりますが、お話しさせていただきます」
それから俺はセントラル王の言う通り、覚えている限りの話をした。
忘れている部分は後ろにいる三人にも補強してもらい、大まかにだが説明をすることに成功した。
「と、まあ、こんな感じでした。正直、私の実力というよりも、後ろの三人の飛び抜けたステータスと運が良かったんだとは思いますが」
「ふっ。本当に貴殿は自分のことを褒めないのだな。これだけのことをしておいて、えばりもしなければ自慢もしない。本当に謙虚なのだな」
「いえ、そんなことは。私はただ、事実を口にしていただけなので」
セントラル王と対面しておそらく一時間くらいたった。
その間に何度こういう会話をしたかは覚えていないが、調子に乗らずにここまで来た自分を褒めてやりたい。
セントラル王、実際の俺はこういうやつです。調子に乗りやすく、自分持ち上げまくります。絶対に言わないけど。
そろそろ、こういった冗談を心の中でしておかないと精神的に限界なのでしていると、セントラル王に一番近い兵士がセントラル王になにやら耳打ちをした。
耳打ちを終えた兵士が恭しく頭を上げて下がった後、セントラル王は残念そうに顔を変えて、その顔に似合った声色で話し始めた。
「すまない。そろそろ会見を終えなくてはいけないようだ。実はこの後、各国の貴族を集めたパーティがあってな。その準備をしなくてはならないのだ」
「そうですか。こちらこそ、そんな忙しそうな時に私共のような冒険者のために時間を割いていただきありがとうございました」
「なに、こちらから招待したのだ。気にしなくてもよい。―――そうだ! よかったら貴殿らもパーティーに参加しないか?」
「はい?」
ちょちょちょ! ちょっと待ってくれよセントラル王!
もう限界なの! ユウマの精神もう限界なの! 精神を擦りに擦り切らしてるの! 今だってもう正直早くここから出たいの! ミカたちとバカ騒ぎしたいの!
わかってよ! てか、わかれ!
後ろの三人だっても限界そうなの! ―――と思ったら、リリーナはなんか余裕そうだし、ミカはエイトに見惚れてるし、やばそうなのはアイリスと俺だけだった。
でも、それでも、もう帰りたい。定時上がりしたい。
―――ここはセントラル王に失礼のないように断らなければ。
「えーと……大変嬉しいお誘いなのですが、私たちのような一介の冒険者如きが貴族様の集まるようなパーティーに参加させていただくのは悪いので、お断り―――」
「私も良い案だと思います」
を、と続けようとしたところで、エイトのやつが口を挟んできた。
「私もさっきユウマ殿とお話しさせていただいたのですが、彼はとても楽しい方です。それに各国の貴族が集まる以上、いつもよりも力を入れて魔族の警戒や、輩に対しての警戒が必要です。そんな時に彼らが居てくれれば我々も助かりますし、勉強になります。彼らには申し訳ないですが、私たち騎士団の方からもぜひお願いしたい」
そう語るエイトに俺はセントラル王に見えないようにして全力で手を顔を振り、もう無理だということを伝える。
そんな俺の気持ちが通じたのか、エイトはこちらを見てニッコリと笑うと、セントラル王の方へ向き直った。
「彼らも協力してくれるそうです。セツコさんもそれでいいかな?」
「わ、私は別に構わん。むしろ、エイトの言う通り警備にも力が入り助かる」
「そうかそうか。それじゃあ、ユウマ殿、ぜひパーティに参加してくれ。ただ貴殿らは私の客だ。あくまでパーティーを楽しむことに集中してくれ。エイトの言う通り、もしもの時には手伝ってもらえると助かりはするが」
……。
エイトォォォォォォォォォォォォォっ!!
あんにゃろーーーーーーーーーーーーっ!!
何してくれやがんだ、あの腹黒王子! いや、腹黒騎士!
声に出すわけにもいかず、表情でのみしか俺の心の叫びを伝えることはできないがエイトに向かって抗議の視線を送る。
しかし、俺の怒りや不満などの負の感情の入り混じった視線はエイトには何の効果もないらしく、エイトは「言いたいことはわかってるよ。でもダメ」と、言いたげな顔で笑っている。
「それでは私はこれで失礼する。エイト、セツコ、娘たちの面倒はもちろんだが、今日はユウマ殿たちの案内もよろしく頼む」
結局何も言い出せないまま話は進行し、会見が終わりに向かおうとしている。
このままじゃ、ダメだ。後ろの三人を見てみろ。
さっきまで涼しい顔をしてたリリーナも延長戦はさすがに勘弁してほしいところなのか、わずかに顔が歪んでるし(それでも美人なのが腹立つ)、アイリスに至っては体が震え、顔が少し青ざめてきている。ミカだって―――ダメだ。あいつはエイトしか見てないから話を聞いてねえ……。
と、とにかく! なんとか断らなければ!!
「それではユウマ殿、アイリス殿、リリーナ殿、ミカ殿、後でまた」
できるわけないですよねー。
ユウマ、ノーと言えない日本人。
将来の夢、ノーと言える異世界人になること。まる。




