7話
「ふう……トンデモナイ重労働だったぜ……」
「だったぜ……。じゃないよユウマ! 女の子をあんなえっちな縛り方をした上に、襲おうとして、他の女が来たから浮気して追っかけて、しかも縛りっぱなしのドア開けっぱなしで!!」
「言い方ぁーっ!! 合ってる、確かに大半合ってるけども! でも浮気じゃねぇ!!」
「そこはどうでもいいの! 問題はこんな可愛い幼なじみをえっちな縛り方をして、その上事情が事情だったとはいえ、縛りっぱなしのドア開けっぱなしが問題なの!!」
アイリスにミカとの変なところを見られた所の誤解を解いて戻ってきたところ、今度はミカと口論になった。
議題は見てわかる通り、ミカを縛ったまま、ドアを開けて出て行った俺が悪いか悪くないかだ。
結果はわかりきってる。
絶対に俺が悪い!!
いや、絶対にこれは俺が悪い! わかってるよ?
幼馴染で顔だってそこそこは可愛いミカを変な縛り方をして、ドアを開けっぱなしでアイリスを追ったのは俺が悪いよ?
だってそれで俺たちの部屋の前を女に飢えた野獣が通りかかったらミカは抵抗もできずにエロ同人みたいな目にあうもん。俺だったらそうするもん。
そんなのミカだって嫌だろうし、俺だってさすがに現実にそんなの見たくないよ?
でもね、俺はそれを踏まえた上でね、言うよ?
この罪を絶対に認めるわけにはいかない!
だってこんなのリリーナとかイニティの街の人に知られたらまた鬼畜呼ばわりだよ!?
そんなの嫌でしょ!?
だから俺は決めました。
どっかのお偉いさん方のごとく、俺は罪を認めず、時間という薬でうやむやにしてしまおうと。
俺、天才!
「もし私に何かあったらどうするつもりだったのさ!」
「その時は……」
「その時は?」
「……その時だよね」
「そこは俺が責任取るよって言うところでしょ!!」
当たり前の返事をしたつもりなのになぜか怒られた。
だって、本当にその時にならないとわからないよね?
「つーか、責任取るってそれ俗に言う結婚ってことだよな? お前さんざん俺のことバカにしといて俺でいいわけ?」
「そ、それはしょうがないじゃん! ほ、ほら、私は幼なじみだし……ユウマみたいな鬼畜で変態なニートと話が合うのなんて私くらいだし……」
「ミカ……お前……」
「ユウマ……」
お互いが無言で数秒見つめあう。
「俺にはアイリスがいるから」
「このロリコンっ!!」
「ごふっ」
ミカの渾身の拳が鳩尾に直撃した。
「な、なにすんだ……」
「乙女心を弄んだユウマが悪い!!」
俺が何をしたっていうのか。
それに俺が乙女心をわかってないだと?
そんなはずはない。俺は少年誌や青年誌だけじゃなく、成年誌や同人誌、少女マンガまで網羅していたんだぞ。
なんでもとまではいかないにしても、乙女心もそれなりは理解しているはずだ。
「もういいよ。それよりほら、明日は今度こそお城に行くんだから最低限の礼儀作法くらいマスターしとこうよ」
本当なら文句の一つでも言いたいところだが、ここで蒸し返すとかえって厄介になる。
ここは俺が大人になろう。
ふっ、ミカ。俺が紳士でよかったな。
「そうだな……つっても手本もいないし、日本みたいに本とかネットで調べるのも無理だし、知ってそうな奴の心当たりもないぞ?」
「リリーナは? 頭良いし、見た目もお嬢様っぽいじゃん。もしかしたら知ってるかもよ?」
「リリーナは見た目だけだろ。確かに紅茶とか飲む時とかはそれっぽいけどそれ以外は普通じゃん。魔物に魔法使いに突っ込むし、ボコボコなって帰って来るし、言葉遣いだって普通だろ」
「それはそうだけど、頭が良いんだから礼儀作法とかの知識もあるんじゃないの?」
「そう言われればそうかもしれねえけど、やっぱりなしだな」
「えーっ、なんでさー」
「リリーナに何かを教わるってのが癪だ。絶対にあいつに何かを教わる気はない。絶対に俺にだけ超上から目線でドヤ顔で、「そんなことも知らないのーっ? これだから引きこもりは世間を知らなくて困るわねーっ」とか、言うに決まってる」
絶対に言う。
だって俺の想像の中のリリーナはすでに俺をバカにした目で見てる。
くそっ、腹が立つから想像の中で暗い服を脱がしてやる!!
……ユウマは想像力が足りなかった。
くそーっ!!
彼女いない歴=年齢、ミカ以外の女子と、最後にまともに話したのは小学校の低学年の頃の俺に女の裸なんて想像できねー。
「ユウマ……今変なこと考えてたでしょ?」
「は、はあっ!? 考えてねえよ」
「ウソだっ!!」
「ミカ……さすがにそのネタは使い古された感が……」
ミカがやたら怖い顔をして懐かしいネタを披露してきたので乗ろうかと思ったが、ツッコミが先に出てしまった。
「でも、変なこと考えてたでしょ。具体的にはエッチなこと」
「否定はしねーけど、幼馴染ってこういう時嫌だわ……」
本気で幼馴染は良いものなのか考え始めようとして、本来の目的を思い出した。
「それより明日のために最低限の礼儀作法だろ」
「あ、忘れてた」
「忘れんな」
こんな若干天然の入ったミカに任せてたら絶対に明日までに間に合わない。
ここは世界一の紳士と俺の部屋の中でだけ言われていた俺がしっかりせねば。
「そうだ! いくら本がなくても記憶は残ってる! 執事ものとかそういうのを思い出せばそれっぽくなるはずだ!」
「それだ! それだよユウマ!!」
俺の名案にミカも名案だとばかりに立ち上がる。
「よし、早速やってみっか!」
「おーっ!!」
こうして、俺とミカの朝までに最低限の礼儀作法を覚えよう。が始まった。




