11話
新キャラ登場!
どうにか無事に魔法使いの女の子を魔物の群れから救出した俺とアイリスは、近くの木陰で女の子の様子を見ることにした。
あんな危機的状況だったにもかかわらず大したケガがなかったのは不幸中の幸いだが、もしもということもあるので状況によっては今日のコボルト討伐を諦めて帰ることまで考えている。
「アイリス、『ヒール』を頼む」
「はい、ユウマさん。『ヒール』!」
アイリスの回復魔法のおかげで、体中かすり傷だらけだった魔法使いの女の子の傷は塞がった。さっきまで少し苦しそうだった表情も少し和らいでいる。
「よし、これで少しはよくなっただろう。回復魔法サンキューなアイリス」
「いえ、この人を助けるとき、私は遅れてしまってて何にもしていませんから。それに回復は私の取り柄ですからね」
そう言ってアイリスは笑顔で笑った。
最後の言葉に対し、魔物にも回復魔法使っちゃうぐらいだしな。と言いかけたのはここだけの秘密である。
「それにしてもこの方はどうしてあんなところに一人で倒れていたんでしょうね? 少し前の私みたいに一人で冒険に出ていたのでしょうか?」
「んー。ないとは言い切れないけど、正直考えにくいな。魔法使い一人で冒険だなんて無謀すぎる」
今言った通り、魔法使いだけの冒険なんて普通はありえない。アイリスに聞いたところ魔法には詠唱がいるものがほとんどらしく、強力な魔法ほど詠唱時間は長くなるようだ。しかも、その間は身動き一つ取れない魔法すらあるという。俺がやっていたみたいに一応速攻で魔法を撃つこともできるが、その場合は威力と安定性に欠けるのだとか。そんな魔法使いが一人で冒険に出るとは少し考えづらい。
ゲームでやったとしてもそれはもう縛りプレイだ。
「それにしてもこの娘。……かなりかわいいな」
「むうー。ユウマさん。こんな時にそんなことを言うのは不謹慎だと思います」
アイリスに聞こえない様に呟いたはずなんだが、アイリスに聞こえてしまっていたようだ。俺の言葉を聞いていたアイリスは頬を膨らませて明らかに怒りを露にしている。
怒っているアイリスも可愛い。あの、リスみたいに膨らんでいるほっぺを両手で挟んで萎ませてみたい。
とはさすがに言えず、俺はアイリスをなだめようと言葉を掛ける。
「確かに少し不平等だったな、ごめんアイリス。アイリスもこの子と同じくらい可愛いよ」
「かかか、かわいいっ!? わわわ、私がですか!? ……ってそういうことを言ってるんじゃないです。お言葉自体はうれしいですが……その、ありがとうございます」
頬を赤く染めて俯くアイリス。うん、かわいい。
「それにしても起きないな……って、起きるか?」
全然起きないと思っていた女の子の眉の辺りが少し動いた。
そう思った瞬間、女の子の目がパッと見開かれた。
「『ファイヤーボール』!」
「うおっ!?」
女の子が起きそうだったので顔を覗き込んでいたら、起きた女の子がいきなり魔法を唱えた。その攻撃をスンのところで回避する俺。
危なかった。回避してなかったら今頃俺の顔はひどいことになっていたことだろう。
そんな俺を心配してかアイリスが俺のところに駆け寄ってきた。
「ゆゆゆ、ユウマさん! 大丈夫ですか!? お怪我は? 『ヒール』いりますか!?」
半分涙目になりながら俺を心配してくれるアイリス。マジ天使。
「あ、ああ、なんとか回避出来たから大丈夫だよ……」
心の中では少し余裕を見せていたが、実際は冷や汗だらだらのガクブルである。
「あ、あなたひどいじゃないですか! あなたを命を懸けて助けてくれたユウマさんにいきなり魔法を放つなんて酷すぎます!」
これは珍しい、アイリスが怒っている。
そしてアイリスに怒られている魔法使いの女の子はというと、なにやらもじもじしながら言った。
「……だって、その男が私に乱暴……というよりはエッチなことをしようとするから……」
「いやいやいやっ! 何言ってんのっ!? 俺が何したってんの!?」
あまりにも突拍子もないことを言いだす女の子に混乱する俺。
ほんと、まだ何もしてないのに何言ってるのこの子。
「ななな、なにをしたですって! そ、そんな恥ずかしいこと女の子に言わせないでほしいわね……!」
終いにはそんなことを言い出す魔法使いの女の子。
なんだかアイリスの視線まで、少し冷たい気がする。
「ちょちょ、ちょっと待て、俺はまだ何もしてない。神に誓ってしてない。アイリスも見てただろ? だからそんな冷ややかな視線はやめてくれ。アイリスにそんな目で見られたら俺は生きていけない」
「そ、そうですよね。ユウマさんがそんなことするわけ……。……あれ? 今、まだって言いました?」
「言ってない、言ってない」
めっちゃ言ってました。
「それよりあんたたち誰よ」
さっきまでの大人しそうだった態度から打って変わって、魔法使いの女の子がそれはこっちのセリフだと言いたい言葉を言ってきた。
でもまあ、俺も大人、自分より頭のお子様な奴にそんな過酷なことは言わない。自分から名前を名乗ることにしよう。
「俺はユウマ、駆け出しの冒険者だ。職業は……冒険者」
なんでだろう。憧れの冒険者だったのに、なんで名乗るときこんなに恥ずかしいのだろう。
「それでこっちは……」
「あああ、アイリシュ……。……アイリスです。職業は……ヒーラーです」
アイリスも自分の名前を噛むという事態はあったものの、無事に自己紹介を終了した。
「それで、お前はなんて言うの?」
「私はリリーナ。世界一の魔法使いを目指す者よ。職業は今言った通り魔法使い。攻撃魔法だけだけど中級魔法までなら何でも使えるわ」
「中級魔法までなら何でも!? ゆゆゆ、ユウマさん。この人すごいですよ! 中級魔法をほとんど覚えている人なんてほとんどいません!」
リリーナと名乗る女の子の説明に驚くアイリス。
でも、たしかにリリーナの言っていることが本当ならすごいことだ。ゲームの中にもかなり使えるタイプの魔法使いだ。
「とりあえず助けてくれたことはお礼を言うわ。それじゃあ私行くから」
そう言ってリリーナは俺たちと会話をする気がないのか、そのまま立ち去ろうとする。
「おい、ちょっと待てって。リリーナだってまだ万全じゃないだろ? それにリリーナは魔法使いだ。一人で街に戻るのも辛いはず。そこでどうだ、俺たちと一緒にクエストをやってから一緒に帰らないか? もちろん報酬はきっかり三等分にする。どうだ?」
こんなところでちょっと性格はきつそうだが、かわいくて優秀な魔法使いを逃がすような俺ではない。それになによりかわいいし。何度も言うが性格はちょっとあれだが、ツンデレと思えばそれもよし。
「……。……たしかにそうね。いいわ。あんたたちのクエストを手伝ってあげる。それで、あんたたちは何のクエストを受けてるの?」
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「……コボルト狩りねえ。それで何体くらい討伐するつもりなの?」
リリーナと一時的パーティー契約をした俺とアイリスは、さっきコボルトの居た場所までリリーナと一緒に戻る最中だ。
「具体的には考えてない。とりあえず夕方くらいまで狩るつもりで来たからな。でも、最低九体は倒したいと思ってる」
コボルトを九体倒せば九千ギル。三人で割れば一人当たり三千ギルだ。そこそこな稼ぎだろう。
「そんなものでいいの? 私がいるんだからもっと狩りましょうよ。私にかかれば十体くらい余裕よ?」
リリーナの実力を見ていないが、本人がここまで言うのならそうなのだろう。これは本当に頼りになる魔法使いだ。
今日はいつも以上に俺とアイリスは楽できるかもしれない。特にアイリスは昨日無茶をさせたので、今日は少し抑え目にしてやりたかったのでちょうどいい。
「まあ、俺たちもたくさん狩れるのならその方がいい。できるんだったら頼む、リリーナ」
「あんた誰に口を聞いてるの? 借りにも私は世界一の魔法使いを目指すものよ? 私を呼ぶときはお嬢様、もしくはリリーナさまと呼びなさい」
さっきから思っていたが、リリーナは少し偉そうというか上から目線だ。もしかしたらどこかのお金持ちのお嬢様とか、この世界では有名な魔法使いの一族とかか?
そんなことを考えながら大人な俺はリリーナの言うことを聞いてやることにした。
「わかったよ、リリーナさま。この最弱冒険者にお力をお貸しください」
「ふふん。悪くないわね。いいわ、獲物をよこしなさい」
どうやら俺の心にもない棒読みに心を動かされたようだ。思ったより単純かもしれない。
そんな時だったアイリスがコボルトの集団を見つけたのは。
「ユウマさん、あそこにコボルトが五体います。どうしますか?」
「こっちにはこんなに自信満々の中級レベルの魔法使い様がいるんだ、大丈夫だろう。そう言うことだからたのんだぜリリー……ナ?」
「ゆ、ユウマさん。リリーナさんなら……」
そう言ってアイリスがコボルトの集団の方を指さす。俺もそちらに視線を向けると、コボルトの集団に意気揚々と突っ込んでいく一人の魔法使いがいた。
……リリーナだ。
「お、おい……。魔法使いなのに、あんなに近づいて大丈夫なのか……?」
「わ、わかりません……。でも、普通の魔法使いはあんなに近づかないと思いますけど……」
「だよな……」
俺とアイリスはコボルトの集団に突っ込んでいくリリーナに若干不安を感じながらも、リリーナの後をゆっくり追う。
でも、本当に大丈夫なんだろうなアイツ。なんか作戦があるんだよな? 流石に魔法使いが無策で魔物の集団に突っ込むなんてことあるはずない……よな?
「見てなさいコボルトども。私がボコボコにしてあげるわ!」
なんかリリーナの奴強気だし、これなら……。
ほら、杖を振りかぶって今にも魔法の詠唱を始め……。
……始めなかった。
「ゆ、ユウマさん。私……リリーナさんが魔法の詠唱をしているようには見えないんですが……」
「奇遇だなアイリス……。俺もだよ……」
リリーナはどう見ても魔法を詠唱していない。でも、杖は振りかぶっている。俺はすごい嫌な予感がした。
「私の杖裁きを見せてあげるわ! ちょっ! 後ろからとか反則なんじゃないの!? こっちは一人なのよ!
あんたたちも一人で来な……きゃあーっ!!」
「あのバカっ! アイリス、助けに行くぞ!」
「は、はい。ユウマさん!」
結局魔法を使わないでコボルトの集団に突っ込み、何もできずにボコボコにされていたリリーナを俺たちが助け出すのに十分ほどかかった。
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