6話
あの後、四人でぶらぶらと街を回ってどうにか格安の宿を見つけ、王都にいる間はここを拠点にすることにした。
問題は王都ということだけあって人が多く、俺たちのような貧乏冒険者が泊まれるような宿はさらに多くの人が集まっていて、部屋が二つしか取れなかったことだ。
色々と話し合い、もとい言い争った結果、リリーナが「ユウマと同じ部屋何て私はお断りよ! 寝ている間に何されるかわかったもんじゃないわ!」などど因縁をつけてきたので俺とリリーナは別室。
まったく、あいつはこんなに紳士的な俺が何をするってんだ。せいぜい寝顔の写真をスマホで撮るだけだってのに。
それ以上のことなんてコミュ障、ヘタレな俺にできるはずがない。
せいぜい寝れずに一晩中もんもんとするだけだ。
最終的には俺とミカ、アイリスとリリーナという部屋割りになった。
俺とリリーナはまだわかる。だが、俺とアイリスの件に関しては俺は納得いっていない。
「なんだよ、俺とアイリスが一緒だとアイリスが心配って! 俺は紳士だぞ! 少しロリコンが入ってたって紳士だぞ! イエス、変態、ノータッチをこれまで守ってきた兵だぞ!」
「ユウマ……今の発言がもうアウトだよ……」
俺がさっきの決定に文句をつけていると、同室のミカが俺を冷たい目で見てきた。
「だっておかしいだろ! 同じ家に暮らしてて何もないなら同じ部屋で寝ても何もないだろ! お前たちは俺を変な奴に見すぎなんだよ!」
「いや、ユウマ……。今までの自分の行動を思い返してみなよ。イニティでのさ」
「はあ、そんなの王様も認める輝かしい俺の戦績くらいしかないだろ」
とは言いつつも、一応今までの出来事を思う返してみる。
街のチビどもを引き連れスカート捲り。
悪い金持ちから財宝を盗んで問題解決した上に、その金持ちの家を財宝を売った金で購入。
大会の賞金欲しさに出場、目つぶしなどの卑怯な手を使って勝利。
オークの大群から街を守ったものの、街に多大な被害を出して多額の借金。
ファナの店の手伝いをして、ファナの店を奪おうとしていた子悪党を騙して憲兵からお金をゲット。
……あれ、俺って結構屑なことしてね?
「……」
「私たちがなんであんなこと言ったのかわかった?」
「はい……。それはもう痛いほど……」
くっ! せっかく理想の異世界に来れたのに俺はここでも黒歴史を増やし続けんのかよ!
自分の人生に若干不安になりつつも、頭を振って全力で思考放棄。
「そういえばミカ。お前城に行くまでに変な願望は捨てとけよ」
「変な願望って?」
「だーかーらー。イケメンの王子様とかだよ」
「えーっ! なんでよー!」
「お前イケメンの王子なんているわけないだろ。王国の子供って言ったらクソ生意気で人生舐めきった、すねかじりの親の七光りしかいねえんだよ。アニメやマンガの王子様なんてただの幻想だっつの」
そう、アニメやマンガのイケメン王子なんて実際にいるはずがない。
ここは俺たちの居た日本と違ってるからたまに勘違いするけど、ここは異世界というなの現実であってゲームでも夢でもない。
つまり、理想が絶対とは限らない。
理想が絶対なら俺はもうハーレムパーティーを築き、お金持ちになっているはずだ。
「そんなことないもん! いるよっ、イケメン王子!」
「いねーよ。もし居たとしても性格が捻りに捻りまくったクソ王子だよ」
「もし、イケメンな王子がいなくったってユウマにはそんなこと言われたくないと思うなー」
「なんだとっ!? 俺が今言ったような王子に負けるってのか!」
「だってさっきユウマが言ったこと思い出してよ!」
ミカに言われてさっき自分で言ったことを思い出す。
クソ生意気。
人生を舐めきった。
すねかじり。
親の七光り。
性格が捻りに捻り曲がってる。
「ほらっ! 人生を舐めきったとかすねかじりとか日本でのユウマじゃん!」
くそっ! 反論できねー!
真面目に働かなくても将来はネットで稼ぐから学歴とかどうでもいい。
貯金が溜まるまでは実家で暮らせばいいや、なんなら結婚できるまで。
二つとも俺の名言である。
「お、お前っ! 幼馴染を悪く言って楽しいか!」
「ユウマこそ、こんなかわいい幼馴染の夢を壊して楽しいの!」
数秒の睨み合いの末、二人同時に戦意を失った。
俺が日本での自分を最低だと思ってるのと同じように、ミカも自分の言ってることが夢や幻想だとわかってるのだ。
だからお互いが戦っても無意味だということが幼馴染ということもあって似たようなタイミングでわかる。
こういう時だけ、幼馴染も悪くないと思……
「あれ? でも、王子がユウマと同じなら親がお金持ちの王子の方がマシなんじゃ……」
「おいっ!てめー、ミカ! お前今もっとも口にしてはいけないことを言ったな! 言っとくけどな、俺んちの親父だって普通以上には稼いでたよ!」
「でもそれユウマが誇れるところじゃないよね? それにユウマのお父さんには悪いけど、一国の王様より稼いでるとはとても思えな……」
「『フリーズ』っ!! 『リスント』っ!!」
我慢の限界を迎え、ミカの口を『フリーズ』で塞ぎ、身体を拘束魔法の『リスント』で拘束した。
相変わらずなぜか俺の『リスント』は、ミカを妙にエロい拘束の仕方をした。
なんで毎回こうも胸を強調した縛り方になるんだ俺の拘束魔法は!!
……グッジョブ!
「フハハハハハハハッ。ミカ、お前は少しやりすぎた……」
俺は大魔王のごとく両手を上にあげながら指をわしわしと動かし、声色を少し変えて、「んーっんーっ」と、喚くミカにじりじりと近づく。
なんかこれ、完全にエロマンガ的な展開だよな?
いや、エロマンガというより、エロ同人みたいな……。
まずいか……? いや、相手はミカだ。今だって別に変な気は起こしてない。息子も静かに寝息を立てている。
うん。大丈夫だ。他の人に見られなければ大丈夫だ。
念のためにドアノブに『フリーズ』掛けて、誰も入ってこれないようにしよう。
「……」
「ご、ごゆっくり……。……は、はうあ~っ!」
……やらかした。
『フリーズ』を掛ける前で人が来た。
……アイリスが。
すごい可愛い声を上げながら両目に手を当てて、でも指の隙間から円らなお目目を覗かせてた。
ちょっとおませなところも可愛い。
「じゃねーっ!! アイリスーっ! 違うんだーっ! 誤解なんだっ! とりあえず話を聞いてくれーっ!!」
俺はすぐにアイリスを追いかけた。
「んーっ! んんーっんっ!」
拘束したままのミカを放置して。
この後、説明をしようとアイリスを連れ戻った俺がボコボコにされたのは言うまでもない。




