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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第六章
118/192

5話

 

 あれからまた馬車酔いに苦しみながらも俺たち四人は王都に到着した。

 馬車を降りると、そこは始まりの街イニティとは全く違った街並みが広がっていた。

 雰囲気はイニティと変わらないものの、規模が違う。イニティに比べて人が多く、ドワーフのような亜人も多い。それはつまり商店街を訪れる人も多くなるわけで商店街の活気がすごい。

 建物も中央に向かうにつれ大きく立派な建物が多くなり、街の真ん中にはバカみたいに大きな城が建っている。

 その近くには城よりは小さいものの大きな十字架を掲げた建物もある。教会だ。


「おいリリーナ。お前ちょっとあの教会に行って来いよ。たぶんお前には妖怪ノウキンニナールが憑いてるから祓われて来いよ」

「ユウマこそ今までの自分の行いを懺悔しに行った方がいいんじゃないかしら?」

「あはははは。おもしろいことを言うなリリーナは」

「うふふ。ユウマこそ今までで一番面白かったわよ」


 王都に来て早々俺とリリーナの間に火花が散る。


「もう、二人とも馬鹿言ってないで早くお城に行こうよ。王様からの呼び出しでしょ? 早くいかないとまずいんじゃないの?」


 珍しく正論を言うミカに俺とリリーナは二人で告げた。


「バカ(じゃないの)! まだ心の準備が整ってないんだよ(のよ)!!」


 俺とリリーナの意見が初めて一致した瞬間だった。


 そう、俺は王様のいる城に行く心の準備なんて全然できていない。

 それはそうだろう。馬車の中では常に吐き気と戦い。小休憩の時には猫の預かりの了承を得て、土に埋められ、どこで心の準備を整えろというのか。


「えーっ。どうせ行くんだからいつでも一緒だよー。心の準備なんてしてったってお城に着いたらどうで緊張するって」


 ミカのくせにまたしても正論を!

 正論っていうのは正しいだけにタチが悪い。


「で、でも、ほら! このの生活用品を買いに行かないといけないわ!」

「そ、そうだな! 育てる以上、飼い主はしっかりと命を預かる責任を取らないといけないな!」


 ふっ、これでどうだミカ。

 基本的には頭のいい魔法使いリリーナと、悪だくみをさせたら日本一を目指していた俺のそれっぽい理論を合わせたこの言い分は。

 さすがに正論では返せまい!


「それはお城から帰ってからでいいんじゃない? それにほら、私たちこの街のこと全然知らないんだからついでにお城で誰かに聞いちゃおうよ」

「それだけじゃないぞミカ。ほら俺たちの今泊まる宿も探さなくちゃいけないだろ?」

「宿だってお城で聞けばいいよ。それにもしかしたらお城に泊めてもらえるかもよ? 私一回でいいから本物のお城で寝てみたかったんだー。それでね、呼んだらすぐに執事のおじいさんが来るのーっ!」


 なんでこんな時だけ頭の回転早いんだよ(のよ)ーっ!


 俺とリリーナが頭を抱えた。

 それになんで今日のお前そんな乙女全開なの!?

 確かにお前日本でも千葉にあるのに東京を名乗る某ネズミ―ランドとか好きだったけどさ。

 中学の時に散々連れまわされて人ごみに酔ったけどさ。


「それじゃあ反対意見もなくなったところで、夢のお城に向かってレッツゴー!!」


 ミカが回れ右をして右手をグーにして空に向かって腕を伸ばす。

 止まるんじゃねぇぞ! じゃなくて今だけは止まってくれ!


 結局反論する名目のなくなった俺とリリーナは大人しくミカに付いていくことに……するわけもなく。


「おいリリーナ。なんかミカを止める方法ないのかよ。自称天才魔法使いだろ。天災魔法使いじゃないところ見せてみろよ」

「誰が天災魔法使いよ。ユウマの方こそいつもの悪知恵でどうにかミカを説得しなさいよ。幼なじみでしょ? なんか昔のミカの弱みとかないわけ?」

「バカ野郎、そりゃあいくらでもアイツの弱みなんて思いつくけど、それ以上にアイツの方が俺の弱みを握ってるっての! 俺の黒歴史の多さなめんなよ。なめ猫だって逃げちまうよ。てかお前、さらっと親友に対してひでーこと言ったよな!?」

「ユウマのことなんてこの際どころかいつでもどうでもいいのよ。今はどうやってお城行きを遅らせるかが問題でしょ!」

「おいちょっと待てや!」

「さっきから何二人でイチャイチャしてるのさユウマ、リリーナ。ねえ、アイリスちゃん」

「ふぇっ!? わ、私ですか!? わ、私は別に何とも……」


 俺たちの勢いで若干空気になりかけていたアイリスが突然話題を振られて驚く。

 それにしても今のミカは少し怒っているように見えたけど気のせいか?

 気のせいだな、俺とリリーナが話しててミカが怒る理由なんて何もないだろ。うん。

 変に勘ぐってやらかしてきたバカな男ども見てきた俺の目に狂いはないぜ。

 ……その中に自分が含まれてなかったらもっとよかったんだけどな。

 それと、アイリスには少しでも嫉妬してほしかったよお兄ちゃんは。


 そうこうしている内に迷いながらも王都を歩き回り、無事にお城の門の前まで俺たちはたどり着いた。

 たどり着いちゃったよマジで……。


「「……」」


 俺とリリーナはもう覚悟を決めるしかないと想いながらも冷や汗をだらだらと流す。

 いつもならここで美少女の汗だくの姿っていいよな。相手がリリーナじゃなきゃなー、でも、見てくれはいいし……。とか、考えている余裕があるのに、今はその汗なめたらどんな味がするんだろうという、我ながら気持ちの悪い考えしか浮かばない。

 ……あれ? 割と正常運転じゃないか俺?


「それじゃあ行こうよ。あそこの兵士さんにこの手紙を見せればいいんだよね?」


 俺たちがこんなにも緊張してるのにミカの奴ときたら全然動じてない。

 天然っぽいところがあるとは前から思ってたけど、まさかここまでとは……。


「やっと超絶イケメンの王子様と会えるよー! 王国なんだからイケメンの王子の一人や二人はいるよね? それで色々あって王子たちと親密な中になっちゃってー、二人が私を取り合って「私のために争わないでー」みたいなねっ!! ああー、もう早く王子様に会いたい!」


 ……訂正。

 やっぱりあいつはただのバカだ。


「な、なあミカ……」


 俺が最後の抵抗を試みようと能天気な妄想を繰り広げている幼馴染に話しかける。


「あのな……えっとな……そのな……なずな……きずな」

「なに変なこと言ってるの? バカやってないで早くお城に入ろうよ」

「バカとはなんだバカとは! このペチャパイ!」


 よしっ! ミカのことだここは俺のペチャパイ発言に腹を当てて攻撃を仕掛けてくる。そしたら俺は間違いなく気絶する。

『金剛力』なんて物理系最強のスキルをもってんだ、俺の命を三回は持って行ってくれるだろう。

 痛いのはこの際仕方ない、ラティファに会えると思って我慢しよう。

 さあ、来いミカ! 俺は無防備だぞ!

 俺は無防備をアピールするために両手を開き、立ったまま大の字になる。


「なに立ったまま大の字になってるの? 恥ずかしいからやめなよ」


 なにーーーーっ!?


 ミカが攻撃してこない!?

 おかしいっ! こんなの絶対おかしいよ!

 だってペチャパイだよ!? 男子が女子に胸の話をするだけでもあれなのに、その胸をバカにしたんだよ!?

 怒ってしかるべきだろここはっ!?


 俺が困惑していると、リリーナが目で「何やってんのよこの役立たず!」とばかりに睨んでいる。

 だったらお前も何かしろよこのメロンパイ! って言うと怒られそうだったから目で返しておいた。


「あっ、もしかして元気球の練習? ……言いにくいんだけど、この世界でもニートで自堕落でダメダメなユウマに元気をくれる人なんていないと思うよ……」

「ちげーよっ!? てか、さり気にひどいこと言いますね幼馴染さん!?」


 物理的じゃなくて精神的にダメージを受けてしまった。

 こんなのただのやられ損だ。


「あ、あのっ!!」


 俺がミカの恥ずかしい話の一つでも披露してやろうと思ったら、今まで妙に静かだったアイリスが大きな声を上げた。


「ど、どうしたのアイリスちゃん」


 突然の、それも普段大きな声なんてださないアイリスの大声にさすがのミカも少し驚いているようだ。

 かくいう俺はアイリスの新たな一面に萌えを隠せない。


「こ、ここまで来てからこんなことを言うのは大変申し訳ないのですが……」


 アイリスがいつものように申し訳なさそうにやや下を向きながら言う。


「王様にお会いになるのに礼儀作法とかは大丈夫なのでしょうか?」


「「「……」」」


 俺とミカが顔を合わせて固まる。

 そういえば行く冒険者とはいえ、まったく礼儀知らずというわけにはいかない。大抵の異世界転生物では、野蛮な冒険者に礼儀なぞ期待しておらん。とか言ってたけど、ここの王様もそうだとは限らない。

 何も知らない俺やミカが禁止事項に触れないとも限らない。

 ミカもそれに気が付いたのだろう。さっきまでの余裕の表情はただの真顔になっていく。


「あ、明日にしようか……」


 結局、アイリスの言葉にビビったミカが情けない発言をして、お城に出向くのは明日になった。


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