21話
というわけで、今回のオチ。
「そういえばユウマ。警察に事情話すときにあんまり人数が多くても迷惑だからってファナさんと二人で話に言ってたけど、どうやってあいつらの悪事を証明したの?」
あの出来事から数日経った今頃になってミカが聞いてきた。
「あの、スマホ録音しておいたという声の情報を使ったんでしょ? あとはファナの証言もあったでしょうし。ユウマ一人だと逆に逮捕されてるでしょうしね」
「おうこらリリーナ。やっぱりお前とは決着をつける必要があるな。表に出ろや」
「上等じゃないの! ユウマみたいな最弱ニートは魔力でも筋力でも簡単に勝てるのよ!」
「んだと? 舐めるなよ。俺には目つぶし、スカート捲りといろんな技があるんだ。簡単にやれると思うなよ」
「あんた少しは正々堂々戦いなさいよ!」
こんなくだらないいつもの会話をしていると、ようやく平穏な日常に戻ってきたという感じがする。
いや、まぁ、今回は命も懸けてないし、危ない橋を渡ったわけでもないので戻ってきたもなにもないんだけどさ。
「でも、本当にどうやって証明したんですか? あの時言ってた録音とかいうものですか?」
アイリスがリンゴジュースの入ったコップをかわいらしく両手で挟むようにして持ちながら聞いてくる。
俺はこれほどまでにコップになりたいと思ったことはない。
「あぁ、それは使ってないよ。というか使えなかったってのが正しいか」
「どういうことですか? あれも多少なりとも証拠になると思うんですけど……」
「アイリスの言う通りなんだが、あれはあいつを嵌めるための嘘だったんだよ」
「えっ!? あれ嘘だったの!?」
「そりゃあそうだろ。だって本当に録音してたならあの時にそのセリフの部分を聞かせるだろ? そうしなかったってことはできなかったんだよ」
「えー……結構かっこよかったのに」
「何言ってんだ。俺はいつでもカッコいいだろ」
「あー、うんうん。多少、少し、ほんの少しはかっこよかったよ」
ミカの投げやりな言葉に少ししょんぼりしながらも、まぁ、ミカにならそんなこと言われても気にしなくてもいっか。ということに全俺が意見をまとめた。
「それじゃあどうやって警察にあのことを証明したのよ」
リリーナもなんだかんだ今回の件について興味があるのか、気にならない風を装って入るが、話に割って入ってきた。
「まぁ、さっきお前が言ってたけどファナの証言と俺の証言。それに加えてあいつの言ってた金貸し屋の名前と、これを聞いてもらった」
俺はそう言って最近大活躍のスマホを取り出し、録音を再生する。
(んー……どうやったらリリーナみたいなナイスバディになれるんだろ? やっぱりマッサージかな……こんな感じ……?)
「すまん間違えた。これはこの前ミカが部屋で自分の中途半端なおっぱいをどうにかリリーナみたいにできないかとマッサージに励んでいる動画だった」
「ちょっと待って! いつそんな取ったの! ていうか今動画って言った!? ねぇ今動画って言った!?」
「本当はこっちだ」
「ちょっとだけ待とうユウマ! これはちょっと会議が必要だよ! この場にいる全員でプライベートを守るための会議が必要だよ!」
ミカが何やら騒いでいてボイスが聞こえないので、仕方なくミカを慰めることにする。
「大丈夫だミカ。男はみんなおっぱいが好きなんだ。大きさにこだわるやつもいるが、本物を目にしたら大きさなんてどうでもいいんだよ。それに俺みたいな巨乳でも貧乳でも構わないってやつもいるんだ。安心しろよ」
「ちょっと! この男、女の子三人の前でトンデモナイ発言したよ! セクハラだよ!」
「うるさいなー。元はと言えばリリーナのせいなんだ。お前もなんか言ってやれよ」
俺が面倒になったのでリリーナに丸投げすると、リリーナは立ち上がってミカの傍まで行った。
「気にすることないわよミカ。それに胸が大きくてもそんなにいいことないのよ? ユウマみたいな変な男にジロジロ見られて不快だし、肩も凝るしでいいことの方が少ないの。わかったわね……」
「わかんないよ! わかりたくてもわかんないよ! 私も一度でいいからそんなこと言ってみたいよ! 肩回して肩こっちゃったなー、とか言いたいよ!」
珍しくリリーナが優しい目をしてミカを慰めていたのにどうにも気に入らなかったらしく、半分涙目になっていた。
そんなミカを放っておけなかったのか、我がパーティーの良心であるアイリスがミカの背中を撫でながら慰めてあげている。
これじゃあ本当にどっちが姉かわからないな。
「それよりもこれがそのボイスだ」
とっとと話を戻したかった俺は、ある程度静かになったのでボイスを再生する。
さっきまであんなに喚いていたミカも、なんだかんだボイスを再生したら静かになった。
「これって……」
「そうだ。あの時の俺とあいつの会話だ。これが一番証拠としてよかったからな。これで証明した」
「なるほど、これ以上にない証拠です」
「だろ? 警察もこれを聞いて、即逮捕だって慌ててたよ」
あの時は本当に騒がしかった。
最初はめんどくさそうに俺らの対応をしていたくせに、このボイスを流したら一瞬で目の色を変えてあれこれ聞いてきた。
そして見事にあいつらとその一味は逮捕され、俺らには報酬金が支払われることになった。
「それで、これが報酬金」
ついさっきようやく届いた報酬金をみんなの前に出す。
「ねぇ、袋小さくない? いくら入ってるの?」
「入ってないぞ」
「はぁ!? ユウマ! あんたまさか独り占めしたんじゃないでしょうね!」
「落ち着けよ脳筋魔法使い。正確には今はもうない、だ」
「どういうことよ」
「もう、ファナの店のお手伝い代と一緒に借金返済してきたんだ。お手伝い代が百万ギル、報酬が四百万ギルで合計五百万ギル。きっちり払ってきた」
払ってきた。といっても俺った位の借金は二億ギルで、今回の五百万ギルを差し引いても、まだ一億九千五百万ギルの借金である。
先が長そうだ。
「そうだったの。それならいいわ」
リリーナだけが俺を疑っていたらしく、他の二人は最初から何か理由があると思ってくれていたのか、ただ笑っていただけだった。
これも俺の人徳のなす業だろう。
「安心したよ。またユウマが何かして報酬チャラとかじゃなくて」
「時間差の口撃はやめろ!」
ちょっと自分に自信を持ったらこれだよ!
ピーンポーン
そんな時に玄関のチャイムが鳴った。
「誰でしょう? 出てきますね」
アイリスがわざわざ断りを入れて玄関に向かう。
他の二人はというと、アイリスが行くのが当たり前というような顔で暖炉前のsファーでくつろいでいる。
うん、やっぱりアイリスがお嫁さんランキング一位だ。
女子力、かわいさ、愛らしさ、どれをとってもアイリスが一番である。
「みなさーん。ファナさんがこの前のお礼だってこれをくれました!」
どうやら先客はファナだったらしく、この前のお店のお手伝いのお礼を持ってきてくれたそうだ。
すでに報酬はもらっているので、少し申し訳ない気もするが、もらえるものはもらうのが俺のモットーである。
「なんでもレベルアップポーションと言うものらしくて、これを飲むとそれだけでレベルが上がるそうです」
「おーっ! そんなのがあるのか! そいつはスゲーな! ……でも、そういうのって高いんじゃ……その前に偽物の可能性も……」
俺の言葉にみんなが明るい顔を一瞬で暗くする。
おそらく、みんなファナならありえそう。と、心の中で思っているんだろう。
「さ、さすがにファナさんもそんな間違いはしないですよ! せっかくのもらい物ですし、みんなでいただきましょう」
ファナとの付き合いが一番長いアイリスが一番にファナを信じようと言い出し、俺たちも別にファナのことを嫌っているわけでもないので、アイリスの言うことに賛同することにした。
アイリスが箱の中からフラスコ状の入れ物に入っているレベルアップポーションとやらを取り出し、みんなに一つずつ手渡していく。
「それじゃあ皆さんで一斉にいただきましょう。いただきます」
「「「いただきます」」」
アイリスの掛け声と共にみんなで一斉にレベルアップポーションを飲む。
味は特にこれと言っておかしなところはなく、普通の水の味だ。レベルアップポーションなんて言われなければ、ただの水と勘違いしてもおかしくない。
色も透明だったし、ファナが水を間違えて持ってきたか、騙されたんじゃないかという想像が膨らむ。
「飲み終わったわ!」
リリーナが意の一番にレベルアップポーションを飲み終わり、早速冒険者カードの確認をしている。
「す、すごいわ! レベルが五も上がってるわよ!」
リリーナが本当にレベルが上がったらしく、自慢したいのか冒険者カードを見せつけてくる。
ただ、本当にレベルが上がっていて、レベルが二十五になっていた。
「ホントだ! 私もリリーナと同じくレベルが五も上がってる!」
リリーナが俺に自慢している間にミカも飲み終わったらしく、冒険者カードを見てはしゃいでいる。
念のため見せてもらうとミカも確かにレベルが上がっていてレベルが二十三になっていた。
「わ、私もレベルが上がってます!」
ミカの冒険者カードを見てる間にアイリスも飲み終えたらしく、他の二人同様レベルが上がっているらしい。
「見てくださいユウマさん! 私もレベルが上がってます~!」
嬉しそうに冒険者カードを見せてくれるアイリスのレベルの所を見ると確かにレベルアップしていて、アイリスのレベルが二十になっていた。
「ほら、ユウマもさっさと飲んじゃいなさいよ! いらないなら私がもらうわ!」
「ふざけるな。これは俺んだ」
どうやら他の三人は本当にレベルが上がってるし、見た目も味もただの水でも効果は本当らしい。
本当にリリーナに取られてしまう前に、俺は残りの半分を飲み干すことにした。
「ぷは~っ! これで俺もレベルアップ! 晴れてレベル二ケタだ!」
この中で唯一レベルが六という一ケタ代だった俺。
しかし、これでみんなと同じようにレベルが五上がればレベル十一。晴れて二ケタ代のレベルになれる。
意気揚々と冒険者カードを取り出そうとしたその時だった。
「ま、待ってください~!!」
誰かが玄関を勝手に開けて居間に入ってきた。
「誰かと思ったらファナか。レベルアップポーションなんて貴重で高そうなものありがとな。みんなで早速飲ませてもらったぜ」
「の、飲んじゃったんですか!?」
「え? あぁ……みんなで一本ずつ……」
「あ……あぁ~……」
ファナがいきなりその場に膝から崩れ落ちる。
「どうしたんだよファナ。大丈夫か?」
俺が崩れ落ちたファナに方でも貸そうと近づくとファナがゆっくりと口を開いた。
「す、すいません……実はあの中に一つだけレベルダウンポーションが入ってまして……」
「……え?」
「実は、さっきそれを仕入れた人に間違えて一本だけレベルダウンポーションを売っちまったって言われまして……」
「……」
みんなでレベルアップポーションを飲んだ。
リリーナ、アイリス、ミカはレベルアップ確認済み、そして、もし……もし、ファナの話しが本当だとしたら……
俺はさっき意気揚々と取り出そうとしていた冒険者カードを震える手でどうにか取り出し、レベルの書いてあるところを見る。
レベル―――1
「ノォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!」
レベルアップポーションと同じく、俺のレベルは五レベル下がっていた。
下がって―――いた。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさーい!!」
「なんでいつも俺だけこんな目に遭わなきゃいけないんだぁーーーーーーーー!!!!」
こうして、他の三人のレベルが確かに上がった中、俺は再び最弱のレベル一に戻り、最弱職の最弱レベルまで戻った。
これにて第五章終了です




