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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第五章
112/192

20話

「や、やりました……」


 チンピラ共が営業妨害をしてきた日からもファナの魔道具店は順調に売り上げを伸ばしていき、目的の一千万を稼ぐことに成功した。

 今日はちょうどファナから依頼を受けた日から二週間が経った日で、それはつまり、場所代とやらを請求しに悪質な奴らが来る日だ。


「ユウマさんのおかげでどうにかお金を集めることができました! 本当にありがとうございます!」


 ファナが感激で目から涙を流しながら、俺の手を取り、ブンブンと振る。

 しかし、あまりにもファナが激しく振るものだからファナ自身の大きなメロンちゃんも一緒に激しく揺れている。

 そんなところを見せられれば俺の息子もファイト一発したくなるもので、眼が離せない。


「ゆ、ユウマさん……えっちです……」


 あともう少しで充電が完了してしまうところだった俺のマグナムがアイリスの一言で一瞬にして落ち込む。マグナムと一緒に俺も落ち込む。

 ファナはアイリスの言葉にキョトンとしており、俺はアイリス以上にファナがこういうことに疎いのだと知った。

 天然系ロリ巨乳エルフお姉さん……ありだな。


「ファナ。喜んでくれて何よりだが、まだ依頼は達成してない」

「はい? どういうことでしょう、ユウマさん……」

「俺らが受けた依頼はファナの店の場所代を稼ぐことじゃなくて、それを払い終えて無事にファナの店を存続させること。つまり、しっかり払い終えるまでは俺たちの依頼は終わらない。俺のいたところではこんな言葉がある。遠足……」

「に行くときのおやつは三百円まで!」

「あってる! あってるけど黙ってろミカ!」


 ミカがトンダ茶々を入れてきたので咳を一つ挟んで、改めて口を開く。


「遠足……」

「のおやつにバナナは入りますか?」

「だぁー! 茶々入れるなって言ってんだろ! しかもそれは、先生! バナナはおやつに入りますか! だ!」


 再び、ミカの茶々が入ったので、もう一度息を整える。


「俺らの住んでたところでは、遠足は家に帰るまでが遠足。という言葉がある。意味は遠足に行って遊んだら終わりなんじゃなくて、元気に家に帰るまでが遠足だということだ。つまり、今回のことで言えばちゃんとお金を払い終えるまでが遠足だ」

「な、なるほど……深い言葉です」

「そうですね……。行って楽しく遊んで死んでしまったら意味がないですもんね……」


 なにやらアイリスまで俺の言葉に感銘を受けてしまったようだけど、今の言葉半分くらいネタなんだけど。使い方はあってるけど、ネタなんだけど。


「とにかくだ。ちゃんとお金を払い終えるまでは俺たちも一緒にいるからなってことだよ」

「は、はい! ありがとうございますユウマさん! ユウマさんは本当にお優しくて頼りになりますね」


 ファナ嬉しそうに顔をゆがめる。


「ダメよファナ。ユウマはどんなにいい人っぽく見えてもなにか裏があるの。そうねぇ……今回だと、少しでも美人なファナと一緒に居たいとかそんなところよ」

「てめーっ! リリーナ! せっかくカッコいいことやってのに邪魔すんなよ! ほら! ファナが照れちゃってるだろ!」

「でも、どうせ間違いじゃないでしょ」

「そうだよコンチクショー!!」


 変なところで頭の回るリリーナに辱められながら時間は進み。

 とうとう、借金取りがやってきた。


「い、行ってきます」

「おう。俺らはここで待機してるから何かあったら呼べよ?」

「はい、頼りにしています」


 ファナは笑いながらそう言って、少し腰が引けた状態で店の方に歩いていく。

 その間、俺たちは店の裏の部屋で待機だ。


「ふぅ~……大変だったけど、これで私たちのバイトも終わりだね」

「そうね。メイド服も最初は嫌だったけど慣れてきたら気にならなかったし、男共が私に群がってくるのは気分が良かったわ」

「あはは……私にはメイド服は無理そうです……」


 三人の女の子が仕事が終わったと気を緩ませ始める。

 さっき、まだ依頼は終わってないって俺が言ったばかりなのにこれだ。


「あのな……さっきも言ったけど、まだ俺たちの依頼は完遂してないぞ? 前も言ったけど、こういうのは成功してもう大丈夫と気を緩めたときが一番危ない……」


「え!? そ、それじゃあ話が違います!!」


 店の方からファナの大きな声が聞こえてきた。


「それ来た……」


「だーかーらー、場所代は一千万ギルじゃなくて五千万ギルだって言ってんだよ」

「そ、そんな! 話が違います!」

「そっちが勝手に聞き間違えたんだろ? それを俺に言われてもなぁ……」


 店の方にみんなで顔を出すと、ファナとこの前のチンピラみたいなやつが言い争いをしていた。


「ど、どうしたんですか。ファナさん! 大きな声を出してましたけど」


 この中で一番ファナと付き合いの長いアイリスが意の一番にファナに心配の声を掛けた。


「それが、この方が……」


「金額が違う……一千万じゃなくてもっと高額で、ファナが聞き間違えたんだろ。ってところか?」

「は、はい! そうなんです! 私が、これがお約束のお金です。ってお金を渡したらいきなり一千万ギルじゃなくて五千万ギルだって言われまして……」


 ファナが困惑したように手をアタフタさせながら説明をしようとしたところで、俺が内容を言い当てた。


「ど、どうしましょうユウマさん……」

「とりあえずファナ、俺に任せとけ」


 俺はファナにそう言うと、ファナと席を交換して今度は俺が話を聞く番になった。


「なんだてめーは?」

「あぁ、俺はこの店のお手伝い兼お得意さんになる予定の者だ」

「ああん? お手伝いだぁ? 俺は今店主の女と話してんだ。お手伝いは引っ込んでろ!」

「まぁまぁ落ち着けよ。怒るとしわが増えるぜ」

「てめー、なめてんのか!!」

「やだなー。男、それもお前みたいなの舐めたくねぇよ。どうせ舐めるならそこの美少女たちの方がいい」

「ざっけんな!!」


 俺との会話でドンドンと男の口調が荒く、声が大きくなっていく。相当頭に血が上っているようだ。

 本当にこっちを嵌めて、自分たちの良いように交渉しようとしてるのかわからないやつだ。


「それよりも話を戻そうぜ。あんたも暇じゃないんだろ」

「くっそ! まぁ、もう誰でもいい! 借金の額は一千万ギルじゃなくて五千万ギルだ! それを勝手にそこの女店主が間違えた。つまりお前らは金が足りないんだよ」

「ほおー、それは大変だ。で? 俺らはどこでお金を借りたらいいんだ?」

「……は?」

「だってそうだろ? お前らは金貸し屋で、作戦はお人よしそうなやつを騙して借金を負わせて、自分たちの金貸し屋で金を貸し、利子だのなんだの言って金をふんだくるのが作戦なんだ。間違ってないだろ?」


 俺の言葉に男は舌打ちを鳴らす。


「でもさ、ユウマ。それならお金を貸す必要なくない? だって借金だって言って利子って言っちゃえばいいじゃん」

「そうだな。でも、この話には裏がある」

「裏って?」

「たぶんこいつら金貸し屋の仲間に不動産屋か貴族がいるんだろ。不動産屋か貴族が金がなさそうなやつに土地を貸して、ファナの店みたいに金を払えなくなってきたら、今回みたいにお前らみたいなチンピラが脅して、金貸し屋でまた借金を負わせる。こうやっていろんなところと組んで一度にたくさんの相手を相手にしながら、警察に証拠を見つけにくくする。そんな感じか?」


 俺の言ったことが図星だったのか、男が冷や汗をかき始める。


「そんなことより金の話しだ」

「な、なんだ? その話で俺を脅す気か? そのつもりなら無駄だぜ。お前らが警察にそんなことを言いに行ったってやつらは動きやしない」

「だろうな。ここの警察も問題が起きなきゃ動いてくれないみたいだし」

「ふん! そうだ。だからいくら俺らの悪事をバラしたとこで意味なんてねぇ!」

「ならせめて仲間の不動産屋とか教えてくれよ。どうせこの後紹介するんだろ?」

「あぁ、いいぜ。手間も省けるしな」


 男はそう言うと、金貸し屋の名前を教えてくれた。


「それじゃあこの話は終わりだ。これに懲りたらこれからは気を付けるんだな」


 男が話が終わったとばかりに立ち上がる。

 俺の後ろの四人がどうすんのよ! と、言いたげな目と、残念そうな目を向けてくる。

 もちろん、どうすんのよ! の目を向けてきてるのがミカとリリーナで、残念そうなのがファナとアイリスだ。

 ホント性格の差が良く出るメンバーだ。


「おい、勝手に話を終わらせるなよ」


 俺は立ち去ろうとする男を呼び止める。


「あぁ! 話は終わっただろ? 何言ってんだお前は!」


 どこの世界もチンピラというやつは面倒くさい。

 大きな声で弱いものを脅かして、脅す。それで自分が有利になったつもりでさらに偉ぶる。

 自分勝手ふるまって、自己中的に行動して、他人のことなんて考えもしない。

 もっとも奴らの標的になるオタクでニートの俺。

 現に高校デビューに失敗したのもリア充気取りのチンピラみたいなやつらが原因だ。

 あの時の俺は弱かった。

 何も持ってなくて、何もなくて、空っぽだった。

 でも、今ここは異世界で俺にもちっぽけだけど確かに力を得た。


 それに―――


 後ろにこの四人が入れば負けはまずない!!


 自分ではなく、他の女の子四人の力を頼りに俺は強気に攻める。


「終わってないって。まぁ、もう一回座れよ」

「ちっ! もう少しだけだぞ。くだらない話だったら容赦しないからな!」


 なんだかんだ言いながらも男は席に座った。


「それじゃあ始めよう。まず、お宅って透視能力とかってあったりする?」

「あぁん? あるわけねぇだろそんなもん。あったらそれで持った楽に稼いでるよ」

「だよなー。女風呂とか覗いたり、更衣室覗いたり、女の子のヒミツの花園を回るよな!」

「んなこと言ってねぇ!!」


 後ろから何やら冷たい視線を感じるけど気にしない。

 気にしたら負けだぞユウマ!!


「それじゃあさ。どんな小さな音でも絶対に聞きのがなさい。その上、音を聞いただけで音の正体、数までわかるような能力は?」

「ふざけてんのか! そんな能力なんてねぇよ!」

「だよなー。でも、あったらいいと思わないか? だって女の子のヒミツの話しとか聞き放題だぜ? その秘密の話をネタに女の子を脅して……」

「……お前、もしかして俺らよりも悪なんじゃねぇか……」


 男の視線も冷たくなってきた。

 後ろの四人からの視線もさらに冷たくなって、物理的な距離も感じる。

 でも、ユウマ諦めない! 男の子だもん!


「なんだよ! 結局ふざけた話じゃねえか!!」


 男が俺のくだらない話に腹を立て、机を勢いよくたたきつける。


「おー、怖い怖い。それじゃあ確かめたいことも確認したところで問題。この袋の中にはいくら入っているでしょう?」


 この二週間みんなで頑張って集めた一千万の入った袋を指さし、男に尋ねる。


「あぁ? そ、そりゃあ一千万ギルだろうよ」

「正解」

「な、なんのつもりだてめー!」

「まぁ落ち着けよ」


 俺は何やら早く帰りたそうにしている男に笑って応じる。


「それじゃあ質問―――なんであんたはこの中身が一千万ギルだってわかった?」

「……は? 何言ってんだ? そりゃあこの女が約束の一千万ギルだって出してきたからだろ?」


 男がファナのことを指さしながら言う。


「あれれ~、おかしいぞ~?」


 どこのぞ少年探偵のような口調でとぼけた声を出す。


「なぁ、ファナ。なんて言って金を渡そうとしたかもう一度教えてくれるか?」

「は、はい。えっと……これが約束のお金ですって……」

「だそうだ。で、透視能力も驚異的な耳もお持ちでないお宅はどうやってこの中身が一千万ギルだってわかったんだ?」

「そ、それは……」


 男が慌て始めた。ここで一気に叩いてしまおう。


「それは、この女が自分で言ったことをとぼけてるだけだ!」

「それは違うよ!」


 一度やってみたかったカットインを入れた俺は勢いのままに話し出す。


「それは違うな。ファナはそんなこと言ってない。これがその証拠だ」


 俺はそう言うとポケットにねじ込んであったスマホを取り出す。


「これはスマホって言ってな。色々な機能があって、その中の一つに声の録音……えっと、喋っていた声をそのまま記録することができる機能があるんだ。これがその証拠」


 俺はスマホの録音機能を使って、前にとった録音データを再生する。


(ゆ、ユウマ……お兄……ちゃん)


「ふぇ!?」


 録音の声を聴いてアイリスが反応する。

 まぁ、それも仕方のないことなのかもしれない。今のはこの前のアイリスに一日お兄ちゃんと呼んでもらえる日に、こっそりと録音しておいた秘蔵の逸品だ。

 毎日この声をアラームに起きては、寝る前にこの声を聴いて癒されて眠りにつく。

 最近の俺の日課だ。


「この通り、声の記録ができるんだ。そして、さっきの二人の会話ももちろん録音してある。これを警察に持っていったらどうなるだろうな? 一千万ギルを五千万ギルと嘘をついたことがバレちゃうんじゃないか?」

「わわわ、わかった! 俺が悪かった! 一千万ギルだ! 約束の額は一千万ギルだ! 俺が間違えてた!」

「おー、そうかそうか。それじゃあこれが約束の一千万ギルだ。持ってけよ」

「うっせーっ! わかってるよ!! 覚えてろよてめーっ!!」


 男は三下よろしくな捨て台詞を残し、店を出て行った。


「あ、ありがとうございますユウマさん! 助かりました!」


 もう何度目になるかわからないファナのお礼を聞き、とりあえず問題はさったとばかりに俺は息を吐く。


「それよりもユウマさん。さっきの人そのまま返しちゃってよかったんですか?」

「そうだよユウマ。明らかにあいつ悪いやつじゃん。あいつらの悪事を暴いたならその話を警察にもしようよ」

「そうね。さっきのはさすがに私でも腹が立ったわ。もう少しで私の杖の先から火が出るところだったわよ」

「リリーナ……お前のそのセリフは比喩でもなんでもないからマジで止めろ。ファナの店が吹っ飛ぶ。新しい借金はいらん」


 アイリスに続いてミカがまともなことを言ったと思ったら、ここぞとばかりの脳筋発言だ。

 これ以上の借金は本当にシャレにならない。

 この前のヴォルカノを倒したことで借金を返済できたと思ったら、ヴォルカノを倒すのに破壊した白の補修代とやらで結局一億ギルの借金があるのだ。

 これ以上増やされてはたまらない。

 でも、この異世界だと一億くらいどうにかなりそうなのが怖いんだよな。


「それで、本当にあいつあのまま放っておくのユウマ?」

「んなわけないだろ?」

「で、ですよね!」


 アイリスが嬉しそうに顔をほころばせる。


「理由は?」

「そりゃあ俺たちは借金抱えてるからな。これを情報を警察に持ってってあいつらの悪事を暴けば報酬金の少しくらいは出るだろ」

「……やっぱり、ユウマはスターにもなれないし、ヒーローにはなれないね」

「ミカお前また嵌めやがったな! マジでふざけんなよお前! しかもそのセリフは、スターにはなれてもヒーローにはなれないね。だ! お前のじゃただの一般人だろ!」

「違うよ! 小心者の子悪党だよ!」

「なお悪いわ!! ほら見ろ! お前のせいでせっかく上がった俺の株がダダ下がりだよ!」

「大丈夫! これ以上は下がらないから!」

「喧嘩売ってんのかてめーっ! よっしゃ! かかってこい! 拳と足と金剛力を封印してかかってこいや!!」


 こんなくだらない会話を少ししてから、俺たち五人は警察にさっきのチンピラのことを話しに行った。

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