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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第五章
111/192

19話

「す、すごいですユウマさん! この短い期間と少ないお金でここまでの在庫を確保しちゃうなんて!」

「まぁな。数々の店を救い、成功させてきた俺にかかればこんなもんよ」

「そ、そうなんですか!? まさかユウマさんが他にもお店を救っていたなんて!」


 ファナが本気で俺に感心してくれている中、ミカが静かに横に来る。


「それってゲームでしょ?」

「う、嘘は言っていない……」


 そう、嘘は言ってない。


「それより店の売り上げの方はどうなんだ?」


 この一週間、朝には軽い睡眠、昼から夕方かけて商談相手との交渉と、暇な時間にライターなどの便利グッズ作成、夜には明日の商談を有利にするための準備をしていて、店の状況をほとんど知らない。

 ただ街中でライターを使ってる人や、ファナの店の話しをしている人を多く見かけるので、ひどいことにはなってないはずだ。


「はい。今日までの売り上げで三百万。ユウマさんの仕入れや便利グッズの作成費で五十万減るので、ちょうどあと半分です」

「おぉ、思ったよりもすごい売り上げだな。明日からは俺も店の手伝いに回れるし、少しは楽になるだろ」

「そうですね。アイリスちゃんなんかもう疲れて寝ちゃってますし」


 ファナがそう言って、テーブルに半身を預けて眠っているアイリスを見る。


「そうだね。わたしもなんかメイド服着るの慣れてきちゃったよ」

「そうね。私ももうなんかどうでもよくなったわ」


 最初はメイド服を着ることに抵抗を見せていた二人も、今ではちゃっかりメイド服を気に入ってるみたいだ。

 こんな調子でいけるなら、今度もっとコスプレ衣装を作って着てもらおう。


「でもまだ安心するなよ。神様ってのは俺たちがこうやって油断したころにトンデモナイ爆弾を落としてくるんだ。だから全員、最後まで絶対に気を抜くな。一瞬でもこのままいけば楽にお金を払えるとか考えるなよ」


 俺の言葉にみんな頷き、最後までのやる気を見せる。



 それからは本当に順風満帆だった。

 俺が店の手伝いに戻ったことと、ここ数日のたくさんのお客を捌いていたアイリスやファナが効率を覚え、ミカとリリーナも羞恥心を捨て客寄せをしながら列整理をしてくれているおかげで、客の回転率が劇的によくなってきた。

 忙しいには忙しいが、初日のバタバタが嘘のように客が捌かれていき、面白いように売り上げが上がっていく。

 まさか俺にここまでの商才があるとは思わなかったが、これはひとえに俺だけの戦果というだけでなく、他の四人の美少女たちのおかげもある。

 リリーナやミカを美少女と呼ぶのは少々抵抗があるが、本当に見てくれは美少女なのだから仕方がない。


 在庫の方も俺が余裕を持って集めておいたおかげで一週間は十分に持ちそうだし、懸念事項であった俺製作のライターなどの便利グッズも日本に居た頃に手にしていたスキル『完徹』を使用してどうにかなっている。

 在庫、レジ、列誘導、客寄せ、すべてがおもしろいくらい上手くいっている。

 ただし油断は禁物。俺の予想だともうそろそろだ。


「オウオウオウッ! なんだよこの長い列は! 通行の邪魔だろうが!」

「そうだそうだ! 俺らがまともに道を歩けないだろうが!」


 やっぱりだ。

 俺は外に出て、いきなり店の前で騒ぎ始めたチンピラの様子をチンピラ共にバレないように『潜伏』スキルを使って見に行く。

 外はチンピラ共が何やら暴言を吐いていることから、お客たちが少しおびえ始めている。中には列から抜けて帰っていく人もいた。


「ったく。営業妨害とかたまったもんじゃないな」


 愚痴を零しながら、『潜伏』で姿が見えないのをいいことに、チンピラの登場で乱れ始めた列の整理を頑張っているミカとリリーナの元に向かう。


「おう、大丈夫か?」

「あ、ユウマ! 大丈夫じゃないよ。あいつらが来てからお客さん怖がっちゃって、さっきから何人も帰っちゃってる」

「ホントなんなのよアイツラ! いくら自分たちが底辺だからって、人生が上手くいってる私の邪魔をするなんてふざけてるわ!」

「お前の方がふざけてるというツッコミを入れつつ、こんなこともあろうかと作戦は立ててある。お前らもちょっと付き合え」

「作戦? そんなの考えてたの?」

「そりゃあな。作戦を簡単に説明してやるから一回で覚えろよ」


 俺はそう言ってミカとリリーナに考えていた作戦を話す。


「わかったわ! そういう仕事がしたかったのよ!!」

「ねぇ、ユウマ……本当にそれでいいの? なんか逆にお客さんが逃げそうなんだけど……」

「大丈夫だ、安心しろ。お前たちは俺の言ったとおりにやってくれればいい」

「すごい心配なんだけど……」


 やる気満々のリリーナに比べてミカの反応が薄い。

 まぁ、それもしょうがないだろう。ロクに説明をしてないし。

 むしろ、あんな適当な説明でここまで調子に乗れるリリーナはある意味すごいと思う。


「あ、あの……お店の邪魔になるのでやめてください」


 少しチンピラの様子を伺ってみると、アイリスとファナがチンピラにどうにかお店の前で騒ぐのをやめてもらおうと説得している。

 しかし、ああいう連中は自己中なので他人が困るのを見ると、逆に楽しくなってさらに調子に乗る。


「なんだよ姉ちゃん。俺はただ列が邪魔だって言ってるんだよ。ここはみんなの道だろ? それなのにこうやって姉ちゃんたちが自分たちのために道をふさぐのは間違がってねえか?」

「そうだぜ。俺たちは別に邪魔をしてるんじゃなくて常識の話しをしてるんだよ」


 案の定チンピラ共はおとなしいファナやアイリスを下に見て調子に乗り始めた。


「それにしても……姉ちゃん中々いいおっぱいしてるじゃねえか。なぁ、ちょっと触らしてくれよ。ぎゃはははははははっ」

「それじゃあ俺は尻でも触らしてもらおうかなぁ。あははははははっ」


 終いにはセクハラまで始めた。

 俺のハーレムパーティーの一員と、候補に手を出そうとはふざけたやつらである。


「や、やめてください! ファナさんが嫌がってます!」


 ファナが困ってるのを見て、アイリスが前に出て杖を構える。

 しかし、それは相手の思うツボだ。


「あれーっ? お嬢ちゃん一般人の俺らに武器向けるの? 冒険者でもなんでもない俺らに魔法でも使うの? いいのかなぁ、そういうことしちゃって」

「おー、怖い。何もできない一般人は武器なんか向けられたら怖いなぁ」

「え……?」


 チンピラ共に杖を向けたアイリスが固まる。

 アイリスは見事にあいつらの作戦にハマってしまったのだ。あいつらの目的は営業妨害。そして、その方法として相手に武器を向けさせるのは大いに有効だ。

 武器を持ってない人間に武器を向ける。それだけで武器を持ってる側は悪く見えてしまうのである。

 それに今この店に並んでいるのはほとんどが冒険者じゃない一般人だ。中には冒険者の奴もいるだろうが、騒ぎに巻き込まれるのを恐れて出てこないのだろう。

 冒険者よりも冒険者じゃない武器を持たない人の方が多い。そのせいもあって、アイリスは本当に不利だ。

 文句を言ってるのは悪いけど、そこまでやる必要はないんじゃないかって周りに思わせてしまったんだから。


「この店は邪魔なやつには武器向けんのかよ」

「なんだよそれ。ちょっとした脅迫じゃん。俺らは常識を言ってるだけなのにさ」


 さすがにもうアイリスとファナが可哀想だし、あのチンピラ共の発言にもイラッときたし、お客も帰りそうなので動くことにする。


「それじゃあ頼むぞ」

「わかった……でも、本当に知らないからね」

「任せなさい!」


 もう半分どうにでもなれ状態のミカとやる気満々のリリーナがチンピラの方へ歩いていく。

 俺は二人が行動を起こすよりも前に少しやることがあるので、速足でアイリスたちの元へと向かう。


「さぁさぁ見てってください! チンピラ二人に虐められる美女と美少女! 助けられる人は誰もいない! これは困ったぁ!!」


 その場にいる人全員に聞こえるように大きな声で叫ぶ。


「な、なんだてめーはっ!」


「「ゆ、ユウマさん!」」


 突然の俺の登場に腹を立てるチンピラと、嬉しそうにするファナとアイリス。

 今の俺、チョーカッコいい。


「このままお店の美人店主と、美少女看板娘はチンピラ共にいいようにされてしまうのか! だ、誰か! 近くに冒険者の方はいませんか!? ……いないみたいです。くそー……もしこの場にあの方々がいてくれれば……」


 俺が言い終えると同時に二人のメイドがファナたちとチンピラ共の間に現れる。

 もちろん、ミカとリリーナだ。


「あ、あなたたちは……っ!!」


 俺はわざとらしく驚いた様子を作り、二人の登場を際立たせる。


「ちょっとあんたたち、私たちの店に何してくれてんのよ! 『ファイヤーボール』!」

「確かに長い列を作って道を塞いじゃってるのはこっちが悪いけど、少しやり過ぎだよ……ねっ!」


 現れると同時に、リリーナが『ファイヤーボール』を、ミカが威力を限界まで抑えたデコピンをチンピラに食らわせる。


「た、助けに来てくれたんですね! 魔法少女マジカルリリーナと爆裂少女ミカ!」


 とっさに作り出したそれっぽいヒーロー名を口にして、さらに二人の登場を際立たせる。


「す、すげー! かっこいい!」

「お母さん! すごいよあの人たち! 可愛くてカッコいいよ!」


 近くにいた子供たちがミカとリリーナの周辺に集まる。

 ただ本当に二人の傍まで来られると危ないので、先手を打つことにした。


「あー、待ってみんな! まだ悪い人たちはやつけてないんだ。リリーナとミカが悪いやつを倒してくれるからみんなは少し離れたところで応援してあげてほしいんだ!」


 ミカとリリーナの傍に集まりかけていた子供たちが一斉に足を止める。


「そうなの? それじゃあ応援するー。がんばれー、マジカルリリーナーっ!」

「ミカもがんばれーっ! 悪い奴なんてぶっ飛ばしちゃえーっ!!」


「え? なになにこの状況!?」

「な、なんか子供たちがいっぱい集まってきたわね……」


 いきなりの事に困惑する二人。それもそうだろう。

 だって俺があいつらに言った作戦内容は客に迷惑を掛けないようにチンピラだけを派手にぶっとばせ。だ。

 もちろん、ミカの金剛力も死なない程度なら使用してもいいと言ってあるし、リリーナも周りに被害が出ない程度ならどんな魔法でも使っていいと言ってある。

 それだけしか言っていない。こうなることなんて教えてない。

 もちろん、俺にとっては想定内だ。


 周りに少し目を配ればわかる。今ここに暗い顔をしている人はいない。さっきまで不安そうにしていたお客さんには、今のこの状況が一つのサプライズイベントのように見えているはずだ。

 これが俺の狙っていた作戦。

 相手が来るなら利用しちゃおう作戦だ。


 ファナの店が上手くいけば、借金取りは焦る。だってあいつらの目的はファナに借金を負わせ、金を貸し、利子だのなんだの言って金を普通以上にふんだくることだ。それなのにファナの店が上手くいっていることを知れば絶対に邪魔をしに来る。

 俺はそれが分かっていたので、こういう作戦を立てていたのだ。

 あとはミカとリリーナがヒーローのように派手に悪役を倒してくれればいい。我ながら完璧な作戦だ。


「いってーな! なにしやがる!」

「女でも容赦しねーぞ!」


 チンピラ共が起き上がり、やられた仕返しだとばかりにミカとリリーナに向かっていく。

 バカなやつらだ。だって相手にしてるのは―――


「おわっ!」

「ぎゃああああっ!」


 女神さまから『金剛力』なんてチートをもらったミカと、脳筋だけど魔力だけなら天然チートのリリーナなのだ。そこいらのチンピラが勝てるはずもない。

 ミカに思いっきり拳骨をもらい、一人は首から下を地面に埋めた。

 もう一人はリリーナに『スプレッド』を食らって気絶した。面白いポーズで倒れたので俺がこっそり『フリーズ』で固めてみた。


「た、助かりました。魔法少女マジカルリリーナに爆裂少女ミカ! あなた達のおかげでファナの魔道具店は救われました! 本当にありがとう!」

「え……な、なに言ってるのユウマ。言ってる意味が分かんないんだけど……」

「ユウマもようやく私のすごさがわかったようね。でもどうせ呼ぶなら魔法少女とかじゃなくて大魔導士リリーナと呼びなさい」


 未だに状況を理解しきれてないミカと、状況なんてどうでもいいリリーナ。


「それでは以上でサプライズショー! 魔法少女マジカルリリーナと爆裂少女ミカを終わりにします。お客様を驚かせてしまったと思いますが、これもサプライズなので許してもらえるとありがたいです。そして、このあとはファナの魔道具店で買い物をしていただけると、この二人と握手できます。どうぞファナの魔道具店をよろしく!」


 すべてをサプライズのショーとすることにして、俺はさらに売れ行きを安定させるために握手会を催すことにした。


「ユウマ! 私そんなの聞いてない!」

「言ってない!」


 ミカの反論に反論で返す。


「ねぇ、ママ! 私リリーナと握手したい! あそこで何か買おっ」

「俺も俺も!」

「私も!」


「おい、ミカ。お前はお前とあんなに握手したがってる子供たちを裏切るのか? 罪もない、お前のことをヒーローだと思ってくれてる子供たちを」

「ゆ、ユウマ……それはずるいよ……」


 こんな感じで、思った以上に作戦が成功したことに驚きつつも、この日もいい感じで終わった。


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