15話
「ユウマぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ユウマぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ユーウーマー!!!」
目を覚ますと、俺はミカによって激しく揺らされていた。
俺が死んでからずっとされていたのか、なんか頭がボーっとして気持ち悪い。
「や、やめろミカ! 起きた! 俺ってばちゃんと起きた!」
「うわーーーーーーーっ!! ユウマの幻聴まで聞こえてきたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「み、ミカさん! ユウマさん起きてます! 起きてます!!」
もうそろそろ限界だった俺の代わりにミカのことをしっかりと止めてくれたアイリス。
この状況で一番冷静なのが一番年下ってどうなのさ、これ。
「い、生きてたんだねユウマ!」
「ぐががががががっ。ミガァ……く、苦しい! 胸のところ以外苦しい……」
「ユーウーマ!! よがっだぁ!!」
「く……やば……なんか一周回って気持ちよく……」
「ちょ!? ミカ! ユウマ死ぬわよ!? せっかく生きてたのに今度はちゃんと死ぬわよ!?」
リリーナとアイリスが筋力上昇の魔法をかけて俺からミカを引きはがした。
俺はというと、もう一度ラティファの所に行きそうになって焦った。
今も呼吸が荒く、なんか骨に異常があるんじゃないかと不安になるほど腰の辺りが痛い。
「それにしても、良く生きてたわね。正直もう死んだかと思ったわよ」
息を整え、状況の整理というのと休憩をとるのを合わせて行うことにした。
そしたら珍しくリリーナが俺を心配したような言葉を掛けてくる。
「明日は大雨だな」
「そうね。明日とは言わずに今すぐ血の雨を降らせてあげてもいいわよ?」
なにやら脳筋魔法使いが怖いことを言っているがスルー。
「そういえば、豪雪グマはどうしたんだ? 倒せたのか?」
「いえ、ユウマさんが意識を失ってしまったので、ミカさんにユウマさんを運んでもらいながら私が『ヒール』で回復しつつ、リリーナさんが豪雪グマに適度に攻撃して逃げてきたんです」
アイリスのわかりやすく適切な説明。
そしてこいつ等の的確な行動。
こいつ等、俺がいない方が上手く立ち回れるんじゃないか?
「でも、よく逃げ切れたな。あのクマ結構早かったと思ったけど」
「うん、危なかったよ。私は転んでユウマと一緒に雪だるまになっちゃうわ。リリーナがすごい魔法使って雪崩が起きて巻き込まれちゃったりとか」
……どうやら、自分たちの実力で逃げ切ったようではないようだ。
俺とミカはミカのドジで雪だるまになって転がって戦線離脱、アイリスとリリーナは今言ってた雪崩に巻き込まれて戦線離脱ってところだろう。
よく見れば全員服が少し濡れてるし、雪が髪についている。
「よく、生きて逃げられたな……」
「ほとんど死んでたユウマには言われたくないわね」
確かにリリーナの言う通りなのだが、こいつにだけは言われたくない。
「まぁ、とりあえず全員無事ならよかった。それじゃあもう一回豪雪グマを探しに行くか!!」
さっき体を少し動かした感じでは、前回と同じく体に異変はないようだ。体を動かしても痛くないし、変な傷も残ってない。本当に死んだのか疑わしくなるくらいにおかしなところはなかった。
なら、今からすることは一つだ。
俺を殺した一番の原因のである豪雪グマの討伐である。
あいつがもう少し俺たちに気を使ってくれれば、俺は死なずに済んだはずだ。
「よーし! 次こそは絶対に倒してやる! いくぞお前ら!! って、あれ? ミカさん……? なんで急に走り出すんですか?」
せっかく気合を入れたというのにミカがいきなり何も言わずに走って行った。
さっき俺が死んだと思って泣いていたのが、今になって恥かしくなってきたのだろうか? それともここは雪山だし、腹でも冷やしてお花摘みだろうか?
「それじゃあミカが戻り次第出発だ……って、リリーナ! お前なに魔法の詠唱なんてしてんだ! この後また戦うんだから無駄な魔力は使うなよ!」
走って言ったミカから視線を残った二人に戻すと、リリーナが無駄に魔法の詠唱をしていた。
俺が注意しても話を聞かないし、あまりの寒さに頭がおかしくなってしまったのだろうか? ……いや、こいつは元からおかしいか。
「はぁ~……。まったく、このパーティーはどうしてこうもおかしな集まりなんだ。あっ、でも、アイリスは違うからなって……アイリス? どうした?」
話し掛けるとアイリスは固まっていた。さっきリリーナの魔法のせいで雪崩に巻き込まれたとか言ってたし、寒さに凍えているのかもしれない。
ここはひとつ、男として、アイリスのお兄ちゃんとして、抱きしめて温めてやろう。
「アイリス。こっちにおいで、お兄ちゃんが抱きしめて温めてやる」
「……」
アイリスが反応しない。いつも何かしらの反応をしてくれるはずのアイリスがだ。
いつもなら恥かしがったり、照れたり、適当にあしらったりしてくれるのに、今回に限って反応がない。
俺の想像以上にやばい状態なのかもしれない。
「ホント、大丈夫かアイリス。冗談抜きに抱きしめるか?」
たき火をするための薪などなく、近くに山小屋も洞窟も見えない。
風よけにできそうなものもなさそうだし、ここは少しでもくっついて温まるしか方法がなさそうだ。
勘違いしないでほしいが、俺はロリコンじゃない。ロリコンだからアイリスとくっつきたいとかじゃなくて、これは一つの医療行為だ。
そこを間違えてもらっては困る。
「ゆ、ユウマさん……後ろ……」
「おー、よかった。……って、後ろ?」
アイリスが寒さに指を震わせながら俺の後ろを指さす。
さっき走っていったミカが悪戯でもしようと後ろに回り込んででもいるんだろう。
それをアイリスが優しいから教えてくれた。とか、そんなところだきっと。
俺はいつでも動けるように意識しながら後ろを振り返る。
そこには―――腕を振りかぶった豪雪グマがいた。
「……また、来ちゃいました……」
「また、来ちゃいましたか……」
俺はラティファと数分ぶりの再会を果たした。




