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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第五章
106/192

14話

 目を覚ますと、真っ白な部屋にいて目の前にラティファがいた。


「こんにちわ。……来ちゃいました」

「来ちゃいましたか……」


 俺を見てラティファが苦笑いをする。

 それもそうだろう。クエスト中に対象の魔物に殺されるでも、自然的な何かに殺されるでもなく、味方、それも全員に殺されているのだからもう笑うしかない。


「笑ってくれていいぞ……」

「い、いや……そんなわけには……」


 何を言っていいのかわからないらしいラティファが少し笑顔を引きつらせた。

 ユウマは泣き出した。


「あぁ! 泣かないでください! 大丈夫です! 大丈夫ですから!」


 俺が泣き出したのを見て、ラティファが慌てて俺をなだめ始めた。


「す、すまん、ラティファ……さすがに不慮の事故とはいえ、味方に殺されるのは少し辛いものが……」

「あ、あれは事故ですよ! 不幸に不幸が合わさって、そこに不幸が合わさっちゃっただけです!」

「いや、それって結構すごいことだと思うんですけど……」

「た、確かにそうですね……。あっ! でもほらっ! おみくじを引いて大凶が出たりすると、逆に嬉しくなったりするじゃないですか! 今回もそんな感じにとらえましょう! そうしましょう!」

「いやいやいやいや! 大凶引くのと、死ぬのじゃ全然違うからね!?」


 ラティファに意外な茶目っ気があることを知った俺。

 アイリスをそのまま大人にした感じだと思っていたが、少しかんがえを改める必要がありそうだ。

 アイリスは天然でこういうことを言うが、おそらくラティファは冗談で言っているのだろう。

 反応がアイリスと違って口元に手を当て、クスクスと笑っているのがその証拠だ。


「それで、今回も俺はちゃんと向こうに戻れるのか?」

「はい。少し、こっちの手続きなどで時間がかかりますが、しっかりと生き返れますよ」


 俺の質問にラティファがお茶を二人分注ぎつつ、笑顔で答える。

 でも、今の答えがどうにも引っかかって仕方がない。


「なぁ、ラティファ」

「はい。なんでしょうユウマさん」

「前回はちゃんと聞けなかったけど、結局俺のチート能力ってなんなんだ? 前回ラティファは俺にもしっかりとチートを宿したって言ったよな?」

「はい、言いましたね。その言葉に嘘はありませんよ。なんせ私、女神ですから。あと、これをどうぞ」

「ならなんで俺のチートは覚醒しないんだ? 前にも言ったかもだが、俺は条件付きの能力だと思ってたんだよ。死にかけだと著しく能力上昇とか、何かを犠牲にして発動する能力とか、でも、色々やってもなんにも出ないんだよ。あと、飲み物サンキューな」


 ラティファから入れたてのお茶をもらいつつ、素朴な質問を投げかける。

 でも、やっぱり自分のチート能力は気になるのだ。俺がちゃんと自分のチート能力を理解していたら回避できることがたくさんあるかもしれない。もしかしたら今回だって死なずに済んだかもしれない。

 そう思うと、やっぱり早めに自分の能力は知っておくべきだ。


「それに隠された能力とかだと冒険者カードのスキル欄に『???』とか出るはずだろ? でも、そんなんもないしさ。正直さっぱりなんだが」


 前に一回ラティファと会ってから、しっかりと俺にもチートがあることが分かったので、改めて色々と試してみたが特にこれと言って目立った能力はなかった。

 運動能力はそのまま、武器の扱いはどれも素人同然、夜だけ能力覚醒などもなし、正直お手上げだった。


「この前は違うって言ってたけど、やっぱり俺の能力って死なない能力なんじゃないのか? 確か、蘇生魔法で生き返れるのは病気、寿命以外で一回だけで、それ以上は無理なんだろ? それにアイリスが蘇生魔法は使えないって言ってたし、可能性としては十分なはずなんだが」


 結局はそこにたどり着く。

 前にラティファは不死身や死んでも何度でも生き返れるような能力ではないと言っていたが、正直他に思い当たるものがない。


「んー……ユウマさんの言うことはある意味間違いではないですよ。今のユウマさんだったら何度死んでもここに来ても、少しの時間を置けば何度でも生き返れます。ただ、前にも言ったと思いますが、絶対に死なない不死身だったり、死んでしまったら自動蘇生のようなチートはユウマさんには与えてません。そういう能力も確かにありますが、女神マニュアルにも記載されてるのですが、そういった人の生死に関わることを能力にするのは基本的に違法なので、できません。なので、ユウマさんの考えは点数的に言えば五十点、ってところですかね」


 ラティファが何度か言葉を選びつつそう答えた。

 でも、今の俺は何度死んでも生き返るというのは間違いでもないらしく……ダメだ。本当に意味わからん。


「あっ、そういえば言い忘れてたことがありました」

「おっ? なんだなんだ?」


 もしかしたら俺の能力に関わることかもしれないと思い、胸を躍らせる。


「おぉ、ユウマよ。死んでしまうとは情けない」

「またそれかよ! ってか毎回それ言うの!?」

「はい! 女神マニュアルの記載事項ですので」


 女神マニュアル。

 何度か出てきた言葉だが、本当にふざけたオタクが作ったんじゃないかって不安になってきた。


「それにしても、ラティファは楽しそうだな。俺が死んだのってそんなに楽しい?」


 確かに愉快な死に方はしたけども……。


「いえっ! そんなことは思ってませんよ。何度も言いますが、私、女神ですから。そんなことを思ったりしたら天罰が下っちゃいます」

「そうか。というか、女神さまに罰を与えられる奴なんているんだな。神様なのに」

「いますよ。他の女神たちが罰するんです」

「え? 女神ってラティファだけじゃないの?」

「違いますよ。たまたまここの世界の管轄が私なだけです」


 驚いた。てっきり女神はラティファだけだと思っていた。


「他にはどんな女神がいるんだ?」

「そうですねぇ……私の知ってる方ですと、やたらと喧嘩が好きで、死んで来た人と私と戦って勝ったら生き返らせてやる、ってすぐに喧嘩する方とか、常に睡魔に襲われてて、本当は説明しないといけないことを全然説明しないままあの世に送っちゃう方だったり、博打の好きな女神もいますね」

「なぁ……そんな奴らが女神で大丈夫なのか……?」

「え? 全然大丈夫ですよ?」


 なんでラティファがその女神たちのことをおかしいと思わないのかはわからないが、この世界の女神がラティファでよかったと心から思う俺だった。


「それじゃあ話し戻すけどさ。なんで楽しそうなんだ? 今の話しを聞くに、別に女神だからって終始ニコニコしてないとダメなんてことはないんだろ?」

「そうですね。そんなことはないです」

「じゃあどうして……」

「それはユウマさんとお話しできるからです」

「あぁ、俺と話ができるからですか。……って、え!?」


 え!? 今ラティファ俺と話しできるから楽しいって言った!?

 まだそんなに会話してないけど、俺ってそんなに好感度上がってんの!?

 俺がラティファとしたことって適当な話と、胸もんじゃったくらいだよ! あの時の感覚が忘れられないくらいだよ!

 それなのに、もう好感度マックスなの!? チョロインなの!?

 でも、今の不意打ちはロクに女の子と話すことのできない童貞には効果てきめん過ぎる!


「あああ、あの、それってもしかして……俺の事、好きってことか……?」


 動揺して、我ながら気持ち悪く指と指を合わせて、腰をクネクネさせながら聞いてみる。


「そうですね。ユウマさんのこと好きですよ」


 屈託ないラティファの笑顔。

 俺の心はもう崩壊寸前である。もうパンツ一枚でラティファにダイブしたいくらいには俺の心はぐらついている。


「私は、私の管轄している、あの世界の皆さんが大好きです。いつも楽しそうで、みんなが笑ってて、協力して生きていて、いつも私もそこに入れたらなぁ、とか考えちゃいます。中には悪いことをしている人もいるにはいますが、その人もいつかは自分に反省してくれるって信じてます。だから、私はあの世界の皆さんのことが大好きですよ」

「……」


 知ってたよバカヤロー!!

 べべべ、別に勘違いなんてしてねーし! ちょっと嬉しくなっちゃっただけで、こんなことだと思ってたし! 俺がモテるはずないし!

 彼女いない歴=年齢の三十まで童貞を貫いて、女子小学生の魔法少女になるのが小さい頃からの夢だし!

 ……なんか悲しくなってきた。もう止めよう……自分で自分を傷つけるのは……。


「その中でも、ユウマさんとは何度もお話しできるって思うと、私、嬉しいんです」

「ん? どういうことだ? とは、ってことは他の奴とは話せないのか?」

「さっきユウマさんもおっしゃっていましたが、ここに来れる回数はみなさん最高で二回までなんです。そして、一回蘇生魔法で生き返る時には私の記憶を消してしまうので、二回目に会っても相手は私のことを知らないんです。話せることも死んだ後の説明だけで、他のことを話している時間なんてありません。でも、ユウマさんは何度でもここに記憶を持ったまま来てくれるので、私としてはお友達みたいで嬉しいんです」


 ラティファの話しを聞いてなるほどと思った。

 ラティファは女神としてここに居なければならない。そして、どういう事情なのか知らないが、蘇生魔法で生き返るやつには記憶消去の魔法をかけてしまうので、次に会った時には相手からしたら初めまして。

 今みたいにくだらないことを話すことは許されず、やりたいことを色々と我慢しているのだろう。

 地上の様子を見て、俺らが笑っているとき、ラティファはどう思っているんだろう。

 ふと、そんなことを考えてしまった。


「なぁ、ラティファ。ラティファの方から地上に降りてこれないのか?」


 気が付けば、俺はそんなことを口にしていた。


「どういうことですか?」

「いやさ。アニメやマンガだとよく天使とか悪魔とか、神様が下界に降りてきて人間と関わったりすることあるじゃん。そういうことできないのかなって思ってさ。ラティファってことがバレちゃいけないなら姿は変装でもして、時間が空いているときにたまにって感じでも気分転換にはなるんじゃないか?」

「……」


 俺ができるかもわからない提案をすると、ラティファが固まった。

 もしかしたら、とっくの昔にそんな考えはしていて、ダメだったのかもしれない。

 だとしたら、ラティファには悪いことをした。


「いいです……」

「ん? なんて言った?」

「いいです……いいですよその案! すごいですユウマさん!!」


 ラティファが勢いよく立ち上がる。


「それです! それなら私もみなさんと一緒に遊べます! ここから見ていて楽しそうだったことができます! 最高です! 素敵な案ですよユウマさん!!」


 嬉しそうにその場でぴょんぴょんとジャンプするラティファ。


「え? 自分で言っておいてなんだけど、できるのかそんなこと?」

「はい! 女神マニュアルに書いてないことは規則ではないので可能です!」

「そ、そうか。それはよかった……」


 地雷を踏んだわけではないと、緊張をため息に変えて吐き出す。


「すごいです! 本当にすごいですよユウマさん!!」


 ラティファがここまで喜んでくれるのを見ると、俺もその場の考えなしな案だったとはいえ、案を出せてよかったと心から思う。


「あっ、ユウマさん。どうやらもうそろそろ時間みたいです。ユウマさんが生き返る準備ができました」

「おっ? そうなのか。なんか悪いな、もっといろいろ話してやればよかったな」

「いえ、ユウマさんにいい案をもらいましたし、こんなに話したのも久しぶりです。私は十分に楽しかったですよ」

「それはよかった。それじゃあ次は下の世界で会おうな。俺ぐらいの男になると、どんなに姿を変えてても一発だからな」


 可愛い女の子のことはどんな方法を使ってでも長時間眺めることをモットーにしている俺に、変装は意味をなさない。


「そうなんですか?」

「それはもう、変な目で見られないようにたくさんの技術を勉強したもんさ。手鏡に反射させて見て見たり、何か適当なものを落としたふりして近づいたり、それはもう色々な」

「ゆ、ユウマさん……これ以上はやめてください。これ以上は女神として、女の子としてユウマさんに罰を与えないといけなくなります」

「い、痛くしないでね……」

「……」

「なんか言ってくれ! 我ながらキモイと思ったけどなんか言ってくれ! 悲しいから!!」


 我ながら、ここに来てキモイことしかしてないんじゃないかと思い始めた俺。

 ラティファに突っ込みを貰えなくて落ち込み俯くと、キラキラとした光が俺の体から出ていた。


「本当に時間みたいですね」

「そうみたいだな」

「それじゃあ次は本当に下の世界で会いましょう。本当に素敵な案をありがとうございましたユウマさん」

「おう。今度は下の世界でな」


 光に包まれ、だんだんと意識が薄れていく中、最後に小さくラティファの声が聞こえた気がした。


「ちゃんと下の世界で、私のことを見つけてくださいね」



 俺の意識は完全に途切れた。



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