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最弱ニートの異世界転生  作者: Rewrite
第五章
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11話

 お店を出て、またどこに行くでもなく、気の向くままにアイリスと二人で歩く。


「そういえば夏の風物詩ともいえるものを俺はこっちでもほとんどしてないんだなー」

「夏の風物詩ですか?」

「うん。もう夏は終わちゃったけど、今思いだせばそうだったなって」

「ユウマお兄ちゃんは前に住んでたところではどんな夏を過ごしてたんですか?」

「えっ!?」


 俺の日本での夏というと、一緒に出掛ける友達などいない俺は、ミカに連れ出されるでもない限り毎日ジャージでゴロゴロして、ネトゲして、ゲームして、ラノベ読んで、マンガ読んで、好きな時に寝て、ミカが来たときはミカをいじって……。

 うん。ロクな夏じゃない。アイリスにそのまま伝えるわけにはいかない。


「そ、そうだな。俺は向こうでも冒険者みたいなことをしてたよ。世界を守るために冒険してた」

「そ、そうなんですか!」

「あ、あぁ……。四人で行動してて、色んな人が俺の名前を知ってるくらいには有名だったよ……」

「すごいですね! 色んな人に名前を知ってもらえるくらい有名だったなんて! でも、そうですよね。ユウマお兄ちゃんですもんね。この前もヴォルカノを倒しましたし、有名になってもおかしくないですよね!」

「ま、まあね……。俺くらいになるとね」

「そういえば、その時のパーティーの人は今どうしてるんですか? 一緒のイニティに来てるんですか?」

「えっと……あいつらはもう引退してるよ」

「そうなんですね。でもユウマお兄ちゃんは冒険者を続けてるんですね。それでユウマお兄ちゃんはなんでイニティに来たんですか? やっぱりパーティーを組んでた人が引退したからですか?」

「そ、それもあるかなぁ……。あとは場所を変えて気持ちをリセットしたかったというか……」

「あー、なるほどです。その気持ち、なんとなくわかります!」


 どうしよう……アイリスの尊敬の目が辛い。

 嘘は言ってない。嘘は言ってないけど辛い。

 だってさっきの全部ネトゲの話だよ? パーティーだって全部自分で一人四役でのパーティープレイだよ? たまにミカに手伝ってもらったくらいで、基本一人だよ? 引退っていうのだって俺がこっちに来てログインできないからなだけで、こっちに来たのだってたまたまだよ? 気持ちのリセットも特にできてないし、元々は冒険者じゃなくてオタクのニートだよ? 毎日深夜アニメ見てヒャッハー! とか叫んじゃうニートだよ。


 ―――辛い―――


「あ、アイリス。もう、この話はやめよう……な?」

「え、もっとユウマお兄ちゃんのお話が聞きたかったのですが……」

「それならさっきの夏の風物詩の話をしよう! うん、そうしよう!」

「ユウマお兄ちゃんがそういうなら……」


 どうにかアイリスの期待を掻い潜った俺は、話を元の方向に戻す。


「それでユウマお兄ちゃん。夏の風物詩って何ですか?」

「あぁ、例えば湖でみんなで遊んだとか、ああいう感じの奴だ。他にも夏祭りとか、かき氷とか、花火とか」

「ハナビ? ユウマお兄ちゃん、花火って何ですか?」

「え? アイリス、花火知らないのか?」

「はい。知りません」


 驚いた。

 この異世界、基本的には日本と似たような感じのくせに、やっぱり変なところで日本と違う。


「ハナビってどんなものなんですか?」

「んー、そうだなー。空に火属性の魔法を打ち上げて爆発させるみたいな感じかな?」

「それだけですか?」

「いや、その打ち上げたものが綺麗なんだよ。いろんな色を使ってて、形も基本は丸だけど、作り方によっていろいろ変わって、それがたくさん夜空に上がるんだ」

「んー、想像がつきません。でも、ユウマお兄ちゃんが言うからにはすごい綺麗なんでしょうね」


 んー、どうしたものか。

 どうにかしてアイリスに花火を見せてやりたい。と言ってもさすがに俺も花火のちゃんとした作り方なんて知らないし、今となってはネットもないので調べようもない。


「あ、ユウマさん。少しあのお店を見てもいいですか?」


 アイリスが近くの小物店を指さしている。


「あー、いいぞ。でも先に行っててくれるか? 少しそこの鍛冶屋のドワーフのおっちゃんに用があるんだ」

「はい。わかりました! 先に行ってますね。ユウマお兄ちゃん」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「特に何もしてない間に暗くなってきちゃいましたね……」


 あれからちょこちょこ気になるお店に入っては中を物色し、また歩いて物色を繰り返し、ちょっとしたお買い物デートのような感じになっていたのだが、楽しい時間は早く過ぎるのは世の常であり、それは異世界でも関係なく訪れる。


「そうだな、楽しいとあっという間だ。あとは季節的にもしょうがないな」


 今の季節は冬。

 夏に比べて太陽が沈むのが早い。現に今の時刻はスマホで確認したところまだ夕方の五時三十分。夏ならまだまだ明るくクエストに行った時には帰るのを検討し始める時間だ。それに比べて冬は暗くなるのが早く、冒険者たちの帰りも早くなる。

 これは前にアイリスやギルドのお姉さんに聞いた話だが、魔物にも活発な時期というものがあるらしく、夏は魔物も夏のうだるような暑さに苛立ち活発に、冬には魔物もあまり動きたくないらしく大人しくなる。中にはクマのように冬眠をするような魔物もいるらしい。

 春と秋はその中間ということもあり、一番狩りに向いている季節と言われているらしい。

 なぜ魔物が大人しくなる冬ではなく春や秋が狩りに向いているのかというと、冬は魔物が大人しくなる=仕事の量も減るらしいのだ。

 なので大半の冒険者は夏から秋にかけてお金を稼ぎ、冬にはそれなりの頻度でしか狩りに出かけないらしいのだ。


「つっても俺らは借金パーティー……金はいくらあっても足りないんだよな……」


 過去のオーク戦の時に活躍したのにも関わらずできてしまった多額の借金。

 他の冒険者が大人しくなるこの季節は俺たちにとっては慎重にクエストを選んでいけるありがたい季節ともとれる。


「だ、大丈夫ですよ! そうです! 明日にでもみんなでクエストに出かけましょう!」

「そうだな……。明日は今日逃げたリリーナをこき使ってやるか!」

「ゆ、ユウマお兄ちゃん。リリーナさんに無理をさせるのもほどほどにしてあげてくださいね? リリーナさんだってなんだかんだ言ってユウマお兄ちゃんの事好きなんですよ?」

「何を言ってるんだアイリス。あいつが俺の事を好きなわけないだろ。もし本当に俺のことを好きだったら今日は迷わずに俺にメイド服姿で奉仕してくれているはずだ。「べ、別に好きでやってるんじゃないんだからね!」ってな感じで」

「ユウマお兄ちゃんの好き同士ならやって当たり前のラインが高すぎます!!」

「そ、そうなのか!?」


 アイリスの鋭いツッコミに、俺のカレカノならやって当たり前の行動一覧に間違いがあるのではないかと不安になる。

 ……後でミカに確認でもしとこう。


「それじゃあ少し早いけどもうそろそろ帰るか。アイリス、最後にどこか寄っておきたいところはあるか?」

「いえ、ないです。今日はもう楽しいことでいっぱいでしたから十分です」

「そうか……。それじゃあ最後に俺のわがままにもう一つ付き合ってくれ」

「良いですけど……どこに行くんですか?」

「まぁ、それは秘密ってことで……」


 特に秘密にする必要もないが、なんとなく言ってみたかったので言ってみた。そしてアイリスに最後のわがままと言って一緒に寄ってもらったのは何を隠すことのない鍛冶屋だ。

 十円を売りに来た時からいろいろとお世話になっているドワーフのおっちゃん。ちなみにライターや銃を作る時に色々アドバイスをくれたのもおっちゃんだ。

 アイリスを少し離れたところで待機させて一人で鍛冶屋の前まで行く。


「よう、ドワーフのおっちゃん。頼んどいたもんできてたりする?」

「おうできてるぞ! 我ながら最高傑作じゃ! ここで一発試し撃ちでもしてくか?」

「いや、いいよ。それはちょっとしたサプライズだからさ。今やるとバレる」


 おっちゃんが顔を少し横にずらし、遠目にこちらの様子を伺っているアイリスを見て納得したように頷く。


「ユウマっ! お前もやるもんだなぁ! でも誘拐は犯罪じゃぞ? それもあんな幼い子を」

「ちげーよ! なに勘違いしてんだよおっちゃん! あの子はアイリス! 俺のパーティーの一員! 知ってんだろ! つか声でけーっ! 周りの人に変な目で見られるだろ!」

「すでに充分じゃろが」

「そうでしたね! すでに俺は悪目立ちしてましたね! だからこれ以上の悪評広げんなやおっちゃん!」


 周りの人が俺の方を見てまたあいつか、みたいな目をしていく中、俺はおっちゃんとバカバカしい会話をする。


「それよりも……ほれ、注文の品じゃ。お前さんの言う通りになるべくしてみたつもりじゃ」

「おう! 信用してるぞおっちゃん!」


 少ない割に濃い内容の会話が終わり、おっちゃんに頼んどいた物をゲートを使って自室に転送しておく。


「待たせたな」

「いえ、それよりもなんか頼んでいたみたいですけど、なにを頼んでたんですか?」

「んあ? あぁ、ちょっと新しく作りたいものがあっておっちゃんにアドバイスをもらってたんだ」

「そういうことでしたか。またこの前作ったジュウとかいうものを作るんですか?」

「いや、今度は戦闘用のものじゃないんだ。まぁすぐにみせる機会が来るよ」

「はい! 楽しみにしてますね!」


 今日何度目かのアイリスの笑顔に癒され、二人仲良く家に帰る。きっと今の俺たち二人は仲のいい兄妹のように見えているはずである。


(アイリスちゃん一人で大丈夫かしら? あんな鬼畜と一緒で)

(おい、誰か憲兵呼んどけよ。なにあるかわかんねぇぞ)

(いや、むしろ俺たちでアイリスちゃんを保護する方がいいんじゃ)

(((それだっ!!)))


「てめーら文句あんなら来いや! ちゃんと一人ずつ相手してやらぁ! いいか! ちゃんと一人ずつだぞ! 正々堂々だぞ!」


(おい聞いたか! あの鬼畜のユウマの口から正々堂々だってよ)

(しかも一人ずつって多人数相手だと勝てないから言ったんだろうけど、一人でも勝てないだろうよな)

(女の私にすら腕相撲で負けちゃうくらいだもんね)


「ちくしょーっ!!」


 あまりの周りの仕打ちに耐え切れなくなった俺はアイリスの手を引いて逃げ出した。


「ゆ、ユウマお兄ちゃん! 大丈夫ですよ! この前みんなで腕相撲したときにミカさんとリリーナさんには負けてましたけど私とはいい勝負だったじゃないですか!」


(((わはははははははははっ!!!!!!)))


 アイリスの必死のフォローに周りの奴らが腹を抱え始めて笑い始める。

 ちなみにアイリスとの腕相撲、いい勝負とアイリスは言っていたが、本当にいい勝負で結果は俺の……負け。


 笑いたいなら笑えよちきしょーっ!!

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