091:管理迷宮06
管理迷宮40F:
魔物が現れる!!!
侍が現れた!
暗黒戦士が現れた!
忍者が現れた!
闇魔術師が現れた!
司祭が現れた!
司祭に向かい縮地を発動!
HPが消費され、世界から音が消える...
縮地:
魔闘技の技のひとつ、HPを消費し高速で目的地へと移動する
連続発動可能、発動中の攻撃は不可、発動中キャンセル可能
そのスピードゆえ音の無い世界を移動する事となる
無音の世界にいる間、HPが消費され続ける
音の無い緩慢な世界を駆け抜ける!
右手を振り被り力を溜め、縮地をキャンセルする
いきなり現れた紅の拳をその魔物特有の赤い目が認識する
状況を理解出来ていない司祭の胸をそのまま撃ち抜く
紅の籠手が皮を破り、骨を砕き、心臓を破壊する
その籠手の名は、復讐者の籠手(ガントレット オブ アベンジャー)
名前の示す通り呪われた装備だ、アベンジャーシリーズ
装備したものに究極の攻撃力と防御力を与え更に
永遠の苦痛(HP消費)と苦しみ(MP消費)を与える
しかし!
鑑定を持っているものが見ればわかるだろう
既にその呪いは解呪されている、本来ならば解呪で壊れるべき装備品
その高い防御力故か、解呪後もただの硬い籠手として残ったのだ
ならば!
高レベルの魔物を一撃の下に撃ち砕いたのは、この者の力量なのか?
そう!
その肉体を武器とする格闘術、それを超えた技、その名も
魔闘技!
そのスキルの希少性により謎が多い
攻防に魔法を使え、その拳は敵の魔力さえも己の武器に変えるとか
魔物のような獰猛な攻撃を繰り出す事ができるとか
脳まで筋肉になってしまったとか
習得の条件は、
高いHPとMPに加え、高レベルのHP回復とMP回復能力
そして高い耐性ステータスかそれに類するもの
それをフルに活用して初めて資格を得るという
まさに、魔の格闘術!!!
突如現れ、司祭を一撃で葬った女闘士、しかしここは敵の領地だ
飛び道具での先制攻撃ならまだしも単騎先行など愚中の愚!
侍が居合いを発動!
忍者が手裏剣を投擲!
闇魔術師が闇の炎を発動!
暗黒戦士が迎撃体勢を取る!
居合いを抜きしな、刀の柄をその長い右足で押さえ!
手裏剣を司祭の体で受け!
「破ッ!」
気合一閃、闇の炎が掻き消える!
強引に抜いてきた刀の軌道をずらし、その力を利用して飛ぶ
その先には闇魔術師!
宙でバク転しつつ、闇魔術師の頭を掴み捻る、ゴキンッと音がし
無防備な胴には軌道をずらした侍の居合いが入る、斬!
ふたつになった闇魔術師の背後に着地と同時に縮地を発動!
その直後、侍に複数のボルトが刺さり、闇戦士が切り伏せられる
残るは、「えいっ!」ボゴンッ!!!
「サラは、未来予知とか持っているんですか?」
装備の手入れをしながら聞く
「そんなの持ってたら王宮に仕えたほうがお得じゃないかな」
それもそうか、しかし適当に振り回しただけに見える攻撃が必殺とか
「私のは不意打ちみたいなものだから、まともに戦ったら手も足も出ないんだけどね、認識されてないとか油断してるとかが前提だから」
私とは真逆の性質のスキルなのね
「お主はもう少し自重してくれんかの?」
だまれじじい
「そうです、私もボルトが撃ち難いんですがね?」
じゃあ連れて来るなアホギルド長
無言で見つめていると、
なんか、わし新しい何かに目覚めそうじゃ...
そういう冗談は、勘弁してくれませんかね?
ゴミ虫共め!
た、たまらんのじゃ!
テ、テレスもやめてくれませんか?
40Fボス部屋前:
サラが魔道具で一番近い小部屋に安全地帯を形成している
40階攻略のための前準備だ、安全地帯に転移魔法陣を展開する
数日しか持たないものだが、攻略のためのPTが無傷で転移できる
一度しか起動できないのだが起動後一定時間は転移が無制限だ
後日、攻略希望PT数組と治療班PTで万全の体制で挑む
安全地帯と転移魔法陣、これを作る魔道具は高価だ
国家予算並みの値段がするし数もそう無い
手に入った宝は全て鑑定され競売にかけられる
売却された金額から魔道具や治療班等の経費が引かれ
それぞれのPTへと報酬が渡される
良い装備品ならば入手したPTが競売にかけず買い取りも可能だし
各々手に入れる転移カードはそのまま報酬となる
二日後の攻略に向け、
各国のギルドからも腕に覚えのある冒険者が集まって来ている
本来ならば、
既に転移魔法陣は展開されている予定だったのだ
前回隣国で行われた攻略時に、魔法陣展開を行った冒険者達
彼等が既に潜っていたのだが、消息がわからなくなった
管理迷宮だ、入り口も出口も管理されているし
迷宮からの転移による脱出も転移地点が管理されている
国家予算並みの魔道具といっても売れば足は付くし
持ち逃げしたとは考えにくい
40階まで到達できる彼等ならば、それ位の金額は己で稼げる
不慮の事故があったと考えられ、再度募集が掛かった
が、依頼を受ける冒険者はいなかった
彼等を倒しうる魔物が存在するのではないか?
名前持ちのユニークモンスターや、いると噂のある魔王では?
ただの事故だったとしても、もし魔法陣展開作業で何か起きたら?
PTメンバーが欠けたら攻略に参加できなくなる
そう、攻略のほうが安全なのだ、無傷でボスと対峙出来る
転移カードが手に入れば、以降も40Fから始められるのだから
そして、今に至る、
既に40Fまで何度か到達しているギルバートとウィリアム
ウィリアムの制御でボスには挑戦していなかったし
その当時のPTメンバーは他の街や国でギルド長をしている
変わりに雇った司祭や冒険者はなぜか体調不良で脱落
しょうがなくギルド職員で実力のある2人を加えた
テレスは回復要らずの前衛として
サラは回復薬と回復の杖をもって擬似回復役として
魔力の高い魔道具は迷宮に放置されても数日は吸収されない
全滅したならば、と魔道具の回収も兼ね全ての階を回ったが
結局、魔道具は発見できなかった
「それで、どんなPTだったんですか?」
バカギルド長に聞く、正直それほど苦戦する魔物はいなかった
噂で聞くレアボスの更に上のボスにでも当たったのだろうか?
「確か、リーダーがナイトでプリーストとマジシャン、それにマスターニンジャにマスターサムライでしたかね」
「なんか、さっきの魔物PTと構成が似てますね」
「そうですね、さっきの魔物を後一ランク強くした感じですね」
今来れる最下層の魔物より強いのに全滅?
嫌な感じだ、
「終了しました!」
サラの作業が終わったらしい、もうここに来ないで済む
「ウィルよ、ちょっと挑戦してかないかの?」
じじいが、ボス部屋を指差している
「ギル、なぜ安全に挑戦できる日があるのに今やらないといけないんですか?」
聞き捨てならないことをいいやがりましたね
「私はもう参加しませんよ?」
「あ、私もやです!」
「え~、やじゃやじゃ!」
イヤイヤをするじじい、殺意が抑えられないんですけど
「ギル、気持ち悪いからやめてください、それに後日なら回復班から参加者を募ればいいでしょう、他のPTの結果を見れば戦力分析も出来ますし」
ギルド長などと言う人種は、結局は戦闘バカなのだ、爆発しろ!
ああ、癒しが足りない、じじいなど癒しにならない
リンちゃんとクロちゃん成分が足りないのだ!
余りにも飢えていたからか、
この前など迷宮でリンちゃんの気配を感じてしまった
管理迷宮に潜ってるといっても流石に30階までは来れない
「じゃあ、脱出用の魔道具使うので集まってください」
結構高価なものだが、ボス部屋に挑戦しないのだ
脱出手段はこれしかない、サラが魔道具に魔力をこめる
言い合いをしながら魔道具へ向かうギルド長達
これでリンちゃんとクロちゃんに会える!
少し浮かれていたのかもしれない、
安全地帯付近には、魔物が近づいてこない
そう、普通の魔物は避けるのだ、普通の魔物は、
それに気付いた時は、既に手遅れだった、
光の届かぬ暗闇の中、輝く瞳は紛れもない赤!
安全地帯の光を恐れぬその者達は、元は何であったのか...
暗黒騎士が現れた!
暗黒侍が現れた!
上忍が現れた!
暗黒司祭が現れた!
暗黒魔術師が現れた!
道化師が現れた!
魔道具は発動している
使い捨ての魔道具だキャンセルは出来ない、そして予備も無い
暗黒騎士の暗黒の波動!
暗黒侍のムラマサブレード!
暗黒司祭のダークヒール!
暗黒魔術師の暗闇!
「破ァァァァァ!!!」
気を周囲に展開し、魔力をこめて震脚発動!、ドンッ!
大地が震える!
霧散する暗黒の波動と暗闇、迫り来るムラマサブレードの斬撃!
ズガガァァ!
腕をクロスさせ斬撃を受ける、
特殊効果発動、裂傷レジスト!、呪いレジスト!
問題ない
胸に激痛が走る、ダークヒールか、ダイレクトアタックは防げない
スキル再生が発動しダメージを回復する!
ガッ!
頭上で上忍がスラッシュを受けたところにボルトが刺さる
空蝉の術!
上忍が薄っぺらい人型の紙になって、爆発する!
「くっ!」
「テレス早く!」
サラが叫ぶ、魔道具が発動するのだろう
縮地を発動する!
「サウザンド・ブレード!」
「サウザンド・アロー!」
無数の斬撃とボルトが敵に向かっていく
高速移動といっても攻撃の合間を移動するのだ
見えなくても軌道は当然読まれる!
軌道上に上忍が出現し
呪縛の術!
レジスト!
私に状態異常は効かない、縮地をキャンセルし肩からタックルをする
「お前も一緒に来い!」
魔道具から転移魔法陣が出現し、光が辺りを包み
道化師が嗤い、その鎌をクルリと回転する
光の中に消えていく、三人の男と女がひとり
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