008:クロ
ローラン王国、王都ローラン
国の南を走る広大な山脈を背に王城、そして貴族が住む貴族街、それを城壁が囲み
さらにその外に市民や商人が住む居住区が、さながら迷路のように広がる
この世界には魔素というものが存在し魔法という力がある
魔素による影響からか、魔物と言う生き物が無より誕生し
さらに動物が変異し魔物と成り人を襲う
国家間での争いの絶えない世界であったが、人類共通の敵の対抗手段として
魔物対策を主とした独立機関、冒険者ギルドが設立される
国に属さない公平中立な機関
設立当初はその存続自体を危ぶまれていたが、国に縛られないその存在を利用し
貨幣価値の統一、魔物よりのドロップ品の販売とさまざまな展開を見せた
特に旅をする者たちにとって、ギルドカードを持つことによる現金の所持が
必要としなくなったことが大きい、ギルドがいわゆる銀行として機能するのだ
そして、命知らずな荒くれ者だけが登録していた冒険者の色合いが一気に変わる
今では魔物対策のみでなく、薬草採取、護衛、子守と町の便利屋として
なくてはならない存在となっている
ギルドは、基本各町にひとつ存在する
例外として各国の首都など一定以上の人口や階層の違う人達が多数いる町では異なる
王都ローランには、貴族街にひとつ、市民街にひとつ、計ふたつ存在する
そして今、貴族街冒険者ギルドのギルド長であるウィリアムは、王城の会議室にいる
議論している彼等からすれば形式上出席させているだけで、一切意見は求められない
市民街のギルド長であるギルバートはいない、サボりだ
本人曰く「どうせろくでもないことだから、出ない」だ
実際ろくでもない話が展開している、いや胸糞悪い話か
先頃召喚した勇者の付属品についての扱いとのこと、勝手に召喚しておいて付属品か
先日迷宮探索に行く勇者一行を見たが、子供だった
「戦闘スキル持ちは、我ら騎士団で貰うという事で」
と、騎士団長殿
「では、魔法持ちはこちらで預かります」
事実上今回の召喚を行った宮廷魔術師殿
「光魔法持ちは教会に寄付をお願いします」
ローランに派遣されている教会の司教殿
「戦闘と魔法の複数所持者はどうしますか?」
「騎士団にもらいたい!」
「待ってください、光魔法持ちは聖騎士候補として!」
「貴方は先日、光と火魔法持ちを自分の物として持っていったでは、、、」
王を見る、特に関心は無いようだ
「スキル無しはどうする?」
「奴隷にして勇者の誰かが望むなら与えるというのでどうでしょう?」
「教養は高いので奴隷商も高額で買い取るとのことですが」
「ならば、国からの褒美として功績のある騎士に、、」
「教会として召喚魔法持ちも寄付をお願いしたいのですが」
「申し訳ない、あれだけは譲れません」
「しかし神降ろしの可能性もありますし」
「いえ、既に使い魔を召喚しておりますので、召喚が神降ろしの可能性はありません」
「そうなのですか、、、」
召喚魔法所持者もいるのか
「では、どうしますか?、今夜の食事に睡眠薬を混ぜますが、、」
「我らが貰うのは全員女だ、寝ているならそのまま連れて行く、隷属の必要もない」
「こちらも処置は教会で行うので、寝かせてくれればいいです」
「では、そういうことで、、、」
みなの視線が王に向く
「任せる」
終わったようだ、王の退出を合図に皆それぞれの仕事に戻る
魔力を込めおわる
「ふぅ、」
「リン、毎日何してるのだ?」
作業中おとなしく見ていたクロが聞いてくる
「ん、魔力余らせておくのもったいないでしょ、だから、ね」
探索組みが出発してから数日、特に何もなく過ごしている
本当に何もないのだ、イレーヌ姫もエリック王子もいないので会食もない
かといって、特に集められることもなく毎日部屋に食事だけが運ばれてくる
コンコン、ノックがする、食事かな?
「クロ君、今日の食事は睡眠薬入りです、じゃーん!」
「おー、とうとう実力行使か!、腕がなるぜ!」
肉球をぷにぷに押し付けてくる、なってないよ?、気持ちいいからいいけど!
「じゃあ、寝た振りする?」
「あいつ等は、使い魔の我も食事して寝ると思ってるのかな?」
ん、あれ?
「だよね、まーけど、いいや寝た振りしてようか」
「うむ」
布団の中、、、
「リン、今のうちに逃げた方が安全じゃないか?」
クロは、自分が無鉄砲なくせに私も巻き込むとなるとこういうことを言う
「心配してくれてるの?」
頭を撫でる
「リンは、足手纏いだからな!」
撫でてる指をかぷかぷ甘噛みしてくる、ふふ
「多分、見張りとかいると思うから今行動起すと全部こっちに来ちゃうよ」
「そうか、」
外が騒がしい、悲鳴も聞こえる
「食事取らなかった子もいたみたいね」
断末魔の声が聞こえる
「殺しちゃうのか」
残ってる子達はその程度の価値ってことなのかな?
相当時間が経ち静かになった、もしかして私は何もされない?
扉が開く、ありゃ、ただ単にクロが寝ないかもだから最後になっただけか
(クロは、取り合えずおとなしくしててね)
(うむぅ、ちょっとだけだからな!)
「寝ているな、使い魔はどうだ?」
「寝ているようです」
魔術師みたいな人と騎士の2人、騎士はレベル5で魔術師はレベル20かあ
うーん、INTとかは40だから私のほうが倍以上あるけど、うーん
「いくぞ」
魔術師がクロを持ち上げる
「はい」
騎士が私を肩に担ぐ、必要以上に色々触ってくる、気持ち悪い
顔を近づけてくる、やめろー、舐められる、ぎゃー
「何をしている、早くしろ!」
うぅぅ、舐められたところが臭い、死にそう
わざわざ籠手を外して胸とお尻を触ってくる、吐きそう
(殺るか?、こいつらだけなら問題ないだろう)
(殺ろうかな、想像以上に気持ち悪い)
前から誰か来る、魔術師と貴族?
クラスの子が後ろをふらふら歩いている、なんだろう、鑑定
貴族の奴隷になってる、奴隷って本人の意志関係なく契約出来ちゃうの?
あれ?、もしかしてヤバイ?
次々と魔術師付きの貴族とすれ違う、全員奴隷にされて貴族に買われているのかな
と、すれ違う貴族がこちらに来る、髪を乱暴に掴まれ顔を上げさせられる
「おぉ、こいつも欲しい、売ってくれ!」
体中を乱暴に触られる、うぅぅ、もうやだ
(リン、我の怒りが有頂天なのだが?)
(私の鳥肌も有頂天です)
(意味が違うぞ?)
(うぅぅぅ、クロに間違いを指摘されたぁ)
目的地についてしまったみたいだ、うー
なんか魔術師がいっぱいいる、これはまさかの詰みかも、鑑定
真ん中の人レベル40だ、INT私と同じだぁ、ちょっとやばい気がする
!!!!!!
見られた!
「ふむ、スキルの詳細が見えぬ、どういうことだ、レベル1だろう?」
.......鑑定で睡眠の状態異常じゃないのもばれた!
「まあいい、やれ」
魔術師の1人が呪文らしきものを唱える、、、魅了レジスト!
ああ、これで本人の意志関係なく契約してたのか
「レジストされました!」
「ほう、、連れて来い」
「はっ!」
数人の魔術師が奥へ向かう
「起きているのだろう?」
「ふむ、おい、そいつの腕を折れ」
騎士に命令する
ああ、騎士がこちらを見る、嬉しそうだ、腕を折るのが嬉しいの?
目を開ける、騎士と目が合う舌なめずりとかして、もうやだ
首に手を当て水の刃を発生させる、騎士の首が落ち血が噴出す、これもあげる
クロが肩に駆け上がってくる、クロを捕まえていた魔術師も風の刃で死んでいる
扉を、、開かない!
「空間魔法のロックだ、アンロックか無理やり壊すしか無理だぞ?」
クロの風の刃が扉を斬り刻む、効かない!!
「ははは、耐魔加工がしてあるのだよ、残念だったな」
先ほど奥に向かった魔術師が戻ってきた、誰かと、、
「凛!」
「楠木さん、助けて!」
ああ、
「クスノキ リン、トモダチを助けたければ、大人しく従え」
「お願い助けて!、友達でしょ」
「大人しく言うことを聞いて、お願い!」
既に奴隷になってるじゃんか、どう助けろと?
(リン、四面楚歌だな!)
(うん、まいったね)
「行け」
魔術師の言葉で、お友達がこちらに向かってくる
「大丈夫だから!」
「心配ないよ!」
もう、
風の刃が、お友達を切裂く
「まさかと思ったが、その使い魔、魔法まで使うのか!、素晴らしい!」
「あの少女を母体にすれば、召喚魔法が量産できるのでは?」
「まず、あの使い魔から調べるべきだ」
部屋に居る魔術師達の視線が私とクロに集まる、鑑定をする
レベルは10-20がほとんど、やはり問題はあいつ
(リン、我がどうにかするから、逃げろ)
(どうにかって、どうするのさ?)
(問題なのは、あいつだろ?)
クロが、レベル40を睨む
「ほう!、意志の疎通もしているのか!」
鑑定に空間魔法、それに風魔法3、INTは私と同じとか、なんだかなあ
「お前は私の物にしてやる!、殺しはしない安心しろ」
やだよ、どうやって安心しろっていうのさ
(リン、使い魔とは、つまるところ魔力の塊なのだ、だからな)
クロの魔力が高まる、肩から飛び降り、、そして
(楽しかったぞ、また、召喚してくれ!)
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名前:楠木 凛 種族:人族 性別:女 年齢:16
レベル:1
HP:20/20 MP:100/100
STR:5 VIT:5 DEX:5 MND:5 INT:100
スキル:(特殊)言語翻訳、アイテムボックス、鑑定
(魔法)召喚魔法(式神)、水魔法1、光魔法1
装備:ドレス
お金:0
使い魔:クロ
スキル:火魔法1、風魔法1
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