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ネコと私  作者: 昼行灯
魔法の一族編
74/143

073:水の勇者

鬱な話なので、読まなくてもいいです

水の一族の屋敷:

その屋敷では今日、何かのパーティーでも開催されているのか

バキッ、ドゴンッ、と奇妙な音楽がいたる所で奏でられている


そんな中、

広い廊下の中央を優雅に歩く漆黒の影

その艶やかな毛並みは漆黒に輝き

翡翠色の瞳は宝石のように魅惑的だ

長い尻尾をゆらゆらと揺らし歩いて行く姿は、、王者の威厳!!!


何か目的があるのか、それともただの散歩なのか、、


ふと、ひときわ豪奢な扉を見つけるとその前に移動する


スッ、と音も無く飛ぶ漆黒

頂点でくるりと回転したその前足には、いつの間にか伸びた鋼鉄の爪!


ひょう、と風を斬る音がしたかと思うと


スタッ、っと華麗に着地する、その足には既に先程の爪は存在しない!


その影は何の変化も無い豪奢な扉の前に歩を進めると


てし!


前足で扉に可愛いパンチを見舞う、それで開けるつもりなのか?


異変はすぐに起きる、主の命令に従うかのように

その部分から亀裂が縦横無尽に走ったかと思うと

がらがらと音を立てて崩れ落ちる!


「またつまらぬものを斬ってしまったのだ!」

悲しげにつぶやくと、トトトと嬉しそうに部屋へと駆け出す漆黒


きれいに整頓されたその部屋は、宝物庫であるようだ

入るためには開錠専用の魔道具が必要なこの部屋

当然、力尽くで入る事など適わない


「水魔法の巻物と、変な杖と、たいした物置いてないのだ!、ここはただの物置だったか!」

その価値がわからないのか、価値が無いほどこの者が凄いのか



興味を引くものが無かったようだ、また散策を開始するネコ



ネコ散策中、、



ふと気付くと屋敷が静寂に包まれている

どうやらパーティも終わってしまったらしい


飽きてきたし引き上げようかと思った所、地下への扉が目に入る

「ふむ?」

ここで最後にしておこうか


スタッ!

華麗に着地し、周りを見回す


研究室か実験室か、様々な装置や魔法陣、、、そして


大きな水槽が目に入る、中の水も綺麗だ、よく見える


人間がひとり、、、いや、違う

正確には水槽の中にはふたりいた、つまりこれは女ということか

よくみれば、それは女と言うより少女と言ってもいい年齢だろうか


天井から伸びる四本の鎖、

それは水槽の中の少女の手足のあった部分に繋がっている

そして、大きめの管が口の中へと続いている


コンコンッ!

鉄の爪で水槽を叩く、ビクッっと反応する少女


「勇者か、、」

話に出ていた使えなくなった勇者という事だろう

使えなくなったというのは死んだという事でなく




つまり、こういうことなのだ




水の壁を仰向けに吊られている少女の下に作り、鎖を切る


キンッ!

水槽を切断する、流れる水は魔力を含んでいるのか


水の壁の上に移動する、

「聞こえるか?」

管が外れないように縫われている口の糸を切りながら聞く

ただ体を強張らせるだけの少女

「我は、ここの者ではない、、お前は、勇者なのだろう?」

ビクッ、と反応するがそれだけだ、どうするか、、、


まあいいか

「我が誰かは見ればわかる、お前を害したりはしないから安心しろ」

縫い合わされている目の糸も切り、回復魔法を掛ける


む、手足が治らない、この金具に何かあるのか?

口から管を抜き、場所を移動する


少女は目をぎゅっと閉じたまま動かない


ああ、見たことがある

変わり果てた姿でわからなかったが、居残り組みにいた少女だ

特に意見を言うでもなく、王子とのお茶会とかに参加していた


「大丈夫だ、お前も覚えているだろう、我はリンの使い魔のクロだ」


「え?」

回復魔法で復活した舌はうまく動くみたいだな

その口から全て抜かれていた歯もみて伺える


何回か自殺したのだろう、、ああ、本当にこの世界は、、


おそるおそる目を開く少女、

「!!!」

最初に目に入ったのは、自分の体


わかってはいた、


逃げ出せないように、抵抗出来ない様にと、手足が切られたこと


自殺しないように、魔法を唱えられないようにと舌を抜かれた事


男を楽しませるために、歯を抜かれた事


そして、死ねないように水槽に入れられた理由


いやでも目に入る、大きくなっている、、わたしの


「イ、イヤアァ「大丈夫なのだ!」」

目の前に黒いネコが現れる、私の醜い体を隠すように目の前に



懐かしい、、、


まだ一年もたっていないのに、、大昔の事の様


帰れないかもと言う不安はあった


けど、御伽噺に出てくるような王子様や豪華なお城や食事


そして、可愛い猫


ずっと続くと思ってた夢




昔話をする、、、そう、、、私にとってはもう戻れない昔の話


「クロちゃんって、やっぱり喋れたんだね」

「むむ!、気付いていたのか!」

「うん、だって楠木さんと意思疎通してたでしょ?」

「むむむ!、念話してたのもばれてたのか!」

「え、念話?、も出来るの?」

「にゅ、秘密なのだ!」

頭をぐりぐり押し付けてくる、お髭がくすぐったいよ


「楠木さんたちは、元気、、なの?」

おそるおそる、聞く

「うむ、リンは我が付いているからな!」

いいなあ


私達が売られた経緯を聞く、私だけじゃなかったんだ、、


みんなばらばらになっちゃったんだ、、


なんでこんなことになったんだろう



体を動かすと、ジャラリ、、と手足の鎖が鳴る


「ねぇ、クロちゃん」

「なんだ?」

「お願いがあるのだけど」

「うむ」


助けてくれたのに、、


「あのね、」


見捨てる事もできたのに、、


「私を、」


気を遣ってずっとそばで話を聞いてくれたのに、、


「殺して」


ごめんね




「リンなら元の体に戻せるぞ?」


「うん」


「それがいやなら、無かった事にしてやるのだ」

私には見えないように、お腹を指す


「うん」


「我が守ってやってもいいのだぞ?」

うれしい


「うん」


「男が怖いなら、滅ぼしてやってもいいぞ?」

フジワラも一緒にな!

ふふ、藤原君は滅ぼさないでいいよ


「ありがとう、、、ごめんね、、」





「...わかったのだ」




ありがとう





眠りの魔法で、眠らせる


静かな寝顔、似ていないのにリンの寝顔とかぶる


名前を聞いていなかった、、、いいか、、リンに伝える気は無い


起きないように、、、、殺す




眠っているようだ、






燃やす、、、ゴミ共が蘇生など出来ないように、、燃やす


手向けだ、魔力を全て使い、一帯を燃やす





燃える屋敷を見ながら、丸くなり目を瞑る







はやく、リンに会いたい

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