069:テレス
「くゎぁああ!」
小さな口を目一杯開けあくびをする
「暇なのだ、、」
馬車の天辺に移動し周りを見回す、
前に水の旗を掲げた馬車、後ろには炎の旗の馬車
組合せが珍しいのか周りから注目を集めている
そして馬車の屋根に黒猫、こちらも注目を集めそうなものだが
隠密4を発動した我に気づく者は皆無!、ふははは、この愚民共め!
...丸くなる、振動と日差しが気持ちいい
目を瞑り、中の音を聞く
「...」
静かなものだ、目的地に着くまでは何もしないという事か、、
...Zzz
......Zzz
ゴトン、、コロコロコロ、、、、スタッ!
ふふふ、このような奇襲攻撃、造作も無し!
ふむ、着いたのか、粗末な屋敷だな!
「ここにイリスが居るのですか?」
手錠姿のテレスが馬車を降りる、後ろ手に手錠は座り辛かったろう
「こちらへ、、」
表情の伺えない魔術師が先導する
水の馬車からも魔術師達、テレスを見ている、暗そうな奴等だ
炎の馬車からは誰も降りてこない御者はメイド、中もメイドか
水の奴等から何か受け取るために着いて来たのか?
テレスかな?
とことことこ、テレス達についていく
ふふふ、テレスも気づかないとは、流石隠密4無敵だな!
なかなか広いな、後で散策しておくか、我への貢物があるかもしれん
ギ、ギ、ギッ、頑丈そうな扉が開く、仕掛け付きの部屋か
宮廷魔術師共のときもあったな、隷属か封印か碌な物じゃないな
しょうがないな、ついててやるか、、共に部屋へ入り見守る
「イリスはどこですか?」
それでも望みを捨てていないのか、それとも決別のためか
請われるまま部屋の中央へと歩を進めるテレス、、魔法陣が光る
「くくく、発動しましたね」
くくくが好きな一族だな!
「その封印の腕輪と魔法陣でお前のスキルは全て封じられたぞ!」
ババン、とかいいそうな勢いで勝ち誇る魔術師
奥から人が出てくる、魔術師、戦士、商人風と様々だ
「美人ですね、火の一族に渡すのはもったいない」
「ああ、たしかに似ていますね」
「懐かしいな、最後まで誰かの名前を呼んでたが、テレスと言うのはお前の事か、イリスよりも良い体をしているな、くくく」
中央に佇むテレスを見て下卑た笑みを浮かべ口々に感想を述べる
最後までって、、まあ、こんなところだろう、どうするかな
戦士がテレスの正面に立ち、剣を抜く、なかなか隙が無い
「イリスはどこですか?」
おそらく腕輪と魔法陣でユニークスキルも封印されているはず
それでも妹の事を聞く、何か策があるのか?
「?、何を言っているんだこの女は、壊れているのか?」
戦士がテレスの言動に違和感を持つ
「ああ、違います、妹が生きていると言うことで連れてきたんです」
魔術師が説明する
「妹さんは貴女ご自信で、私の所から買い取っていったではありませんか」
商人が言う、壊れたイリスを取り扱っていた奴隷商だったのだ
パキ
「あれが売れたのか、ああ、妹だもんな」
「ええ、処分しようと思っていたんですがね、対応したのは私ではありませんが金貨10枚も出していただきましたよ、その節はありがとうございます」
笑みを貼り付けた顔が挨拶をする
ペキ
「で、どうするんだ?」
戦士の剣がテレスの服を浅く切る
「生きていれば良いそうです、隷属処理をして今日中にとの事なので」
魔術師がローブの中で嗤う
「では、最近色々と不満がたまっているものが多いので、夜までの間ですがその捌け口になってもらいましょうか」
「勇者ですか?」
「ええ、使えなくなってしまいましてね」
勇者?
「イリスは居ないのですか?」
テレスが何の感情も無く同じ事を聞く
「おい、おかしくなってるんじゃないかこいつ」
戦士の剣が胸元を切り、その大きな胸に舌なめずりをする
「この現実を認めたくないのでしょう、妹に似て馬鹿な女だ!」
はだけた胸元を見つつ言う魔術師
「貴女が買っていった物が本物ですよ」
妹を物と言い嗤う奴隷商
「お前の妹は、暴れるからこの剣で動けなくしてやったぞ、お前も同じようにしてやる、膝と肘から先はいらないよな、ははは」
嗤いながらテレスの服を切る戦士
「お前の妹は最後まで、頑張るからとか言っていたぞ、お前も頑張れよ?」
魔術師が言う、頑張ったんだね、イリス、、、
ゴキンッ!
何かが折れる音の後に、ゴトン、と封印の腕輪が落ちる
だらりと垂らされた両腕の先の手は、なぜか手首よりも細い
折られた親指、外された間接、腕輪を外すために自分でやったのか
ユニークスキル、再生発動!
「はは、自分で手を使えなくするとは殊勝な心掛けだな!」
上半身の服と共に肌が浅く斬られる
状態異常耐性発動!、麻痺を無効化しました!
「残念でしたね、せっかくご自分の手を犠牲にしてまで腕輪を外したみたいですが、彼の剣は特殊効果付きです、体が動かないでしょう?」
奴隷商が隷属の首輪の準備を始める
「腕輪はただの保険なんですよ、この部屋全体に効果のある魔法陣とその剣の麻痺効果、相当な覚悟で手を犠牲にしたのでしょうが、無駄な努力でしたね!」
ローブを脱ぎ始める魔術師
パキンッ!!!
いつの間にか掴まれたのか、指先で挟まれた剣が折れる!
「え?」
その指は細く、とても剣など折れるような、
いや、それ以前に、その指は折れていなかったか?
女を見る、、眼前に迫るきれいな拳、コブシ?
ゴンッ!!
顔面に当たるテレスの拳、ブチッと言う音と共に吹き飛ぶ戦士!
「貴女には、赤い首輪が似合いそうですね」
下卑た笑みを貼り付けた顔を上げる、とすぐ横を戦士の顔が通り過ぎる
「え?」
戦士は前に居るのに、今のは?
ズッ!
戦士の頭のあった部分に細い手が生え、そのまま下へと移動する
ザンッ!
二つになった戦士が左右に倒れ、赤く染まった女が現れ、、消える
「え?」
べちゃ、湿った音が下で、あれ、目の前にあるのは誰の体?
「えひゃ?」
後ろで奇妙な声が上がるが、おかしいな、振り返れない
ぐらり、と私の体が倒れてくる、まて私の体、私はここにいるぞ!
グチャ!
首の無い自分の体に潰される奴隷商、体の重みで潰れるものなのか?
違う!、いつの間にか現れた赤い足が踏み抜いている
背後には頭の無くなった魔術師が天井にぶら下がっている
ああ、
全て殺そう、、
扉が開く、私と遊びに来た魔術師達だ、笑いが恐怖に変わる
「ひっ!」
遊んでやるから、逃げるな!
ゴンッ!
二人が四つになる!
どうだ楽しいか?、ゴミ
ああ、外にメイド達も居たな、あれも掃除しないと
掃除とかメイドの仕事なのに、職務怠慢ね
一瞬姿が霞み、すっと消えるテレス
少しすると外から、ドカン、バキと盛大な音が聞こえてくる
その惨劇をただ静かに見つめる翡翠色の瞳
ふむ、、、出番無しだな!
魔闘技いいな、いいな、欲しいな!
...散歩しよ
勇者とか言ってたな、、、面倒だな
場合によってはクソワラに押し付けるか!
とことことこ、クロが優雅に散歩を開始する
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名前:楠木 凛 種族:人族 性別:女 年齢:16
レベル:11
HP:170/170 MP:320/320
STR:115 VIT:130 DEX:135 MND:130 INT:320
スキル:(特殊)言語翻訳、アイテムボックス、鑑定
(技) 隠密2、罠解除1
(魔法)召喚魔法(式神)、空間魔法3
火魔法2、水魔法3、雷魔法2、土魔法2
光魔法4、闇魔法2
(自動)HP回復、クリティカル
装備:普通の服、偽りの宝石、魔法の鞄
聖なる糸 :HP50、VIT25、MND25、HP回復
白のローブ:INT20
素早さの靴:DEX10
魔力の腕輪:MP20
力の腕輪 :STR10
ウサギの尻尾:DEX20、クリティカル
金貨:26225
使い魔:クロ
スキル:(武技)格闘術2
(技) 隠密4
(魔法)火魔法5、風魔法4、鉄魔法1
光魔法3、闇魔法2
(自動)HP回復、クリティカル
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