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ネコと私  作者: 昼行灯
冒険者編
41/143

040:非凡なる日常

イレーヌ様の様子がおかしい


最初は急遽同行が決まった勇者の遠征、そして原因不明の失敗

失意の中帰還した城でもたらされた報告は

お気に入りだったリンと言う勇者が死んだという事実


遠征時イレーヌ様も一度死に蘇生による復活を果したが

死後ある程度の時間が経ってしまったからか死因は覚えて無いと言う


城でも残った勇者達と宮廷魔術師による訓練中に事故が起こり

参加していた人達全てが消滅してしまったらしい

死体さえも残らなかったので蘇生も不可能で

どういう訓練をしていたかも詳しくわからないらしい

この中にリンと使い魔のクロというネコもいた


そして、


たまに、ぼぅ、とするのだ


最初は物思いにふけっているのだと思った

リンと言う勇者と、その使い魔のネコを大変お気に入りで

毎日一緒にいたくらいだ、遠征の時も私達の同行より

彼女の同行を強く望み、なかば強引に連れて行こうとしたくらいだ

この時は幼い頃よりずっと仕えてきたのに、と少し嫉妬してしまった


しかし、最近よく一緒に居る、勇者鷹山と遠征に同行した騎士

3人が同じタイミングで、ぼぅ、と止まるのだ


ある時、姫様は本物か?、と聞かれた、誰に聞かれたんだったか

なぜか相手の事がよく思い出せない、顔見知りの誰かだったと思う

当然本物だ、私が間違うはずも無い


ただ、たまに、ぼぅ、となっている時だけは、よくわからない


今も目の前で虚ろな目で虚空を見つめる3体の何か、、


トスッ、何かが背に当る、スススと何かが体を通り抜ける


「カフッ!」

はしたない、咳をしてしまった


口から零れる赤いもの

胸から生える綺麗な銀色の、、刃

「実験してみないとね、、」




ローラン城前:

「わし忙しいんだが?」

ギルバートが、とぼけた顔でとぼけた事を言う

「今から行われる会議より大事な用件があるんですか?」

「うん、リンってやつと遊んでみたい」

先日、フジワラという勇者と模擬戦をしたらしい


「サラから聞きました、負けたそうですね?」

思わず本気を出して殺してしまう所をサラに止められたらしい

「負けてないもん、引き分けだし」

「レベル6の新米相手に引き分けですか、凄いですね?」


「で、リンって奴は強いのか?」

都合の悪い事は聞こえない耳らしい

「私のギルドの冒険者にちょっかいを出す気なら

 まず私が相手になりますよ」

「お、いいねぇ!」

戦闘ボケ老人ですね


「それに、興味半分で女性に暴力を振るうなんて

 サラやテレスが知ったらどうなりますかね?」

さすがに困った顔をする

「別に、ちょっと戦ってみたいだけじゃ、召喚士なんだろ

 おぬしも戦闘方法を見てみたいと思わないか?」

確かに興味はありますが

「彼女は、光魔法と水魔法だけしか使わないと思いますよ」

「なんじゃ、そっちも力を隠しているのか、用心深いのお」


「フジワラも隠してたんですか?」

ギルバートがにやりと笑う

「ああ、けど、ちょいと挑発したらボロが出たぞ」

どんな挑発をしたのやら



「最近、楽しそうに笑うんですよ」

「ん、なんじゃ?」

最初に私達に向けた笑顔は何の感情もこもっていなかった


「初めの頃は、使い魔にだけ見せてたんですけどね

 最近はテレス達にも見せてくれるんですよ」

「...ちぇ、ずるいな」



「まあ、冒険者を生業とする以上何が起きてもしょうが無いのですけど

 本来、冒険者の敵は魔物であるべきなのです

 今から向かう魑魅魍魎の相手こそ我々が戦う相手でしょう

 ギルドの長なんですから、こちらと戦いましょうね?」


「はっ、わしはお前のそう言うところが嫌いじゃ!

 あいつ等の相手をわしにやらせると、力尽くで解決しちゃうぞ?」

ギルドと国が戦争になったら、全員が困るでしょうに


「私も貴方のそういう所が嫌いです」




ラーファ神殿:

生命の女神ラーファを祭る神殿、教会の象徴でもある


礼拝堂に横たわる死体、遠征から帰還した物言わぬ勇者と

それに同行した騎士、魔力持ちの騎士は多くないので

当然ここに横たわる数も少ない、騎士でさえ魔力が足りなかったのだ

同行したメイド達でここに横たわるものは1人もいない


しかし、メイドが1人、彼女だけ他の死体と違い薄汚れてなく新鮮だ

大規模な蘇生の儀式が実行されようとしている



ささやき、、いのり、、女神ラーファよ!、光が礼拝堂を包む、、



...ここは?

周りを見る、、遠征に行った勇者と騎士、そして灰

蘇生魔法?

確か失敗すると死体が灰になり、蘇生不可能となる、、、

何で私が、ここにいる、、、の


皆、復活直後で意識がはっきりしていないのかと思ったが、違う!

虚ろな目で虚空を見つめ、ぼぅ、としている

礼拝堂入り口付近にいる勇者鷹山も騎士も、そして、、


イレーヌ姫だけがこちらを観察している?

「ふむ、やはりジェーンでないと駄目か、、、」




執務室:

「揃いました」

「待たせておけ」

伝令が出て行くと、影が語りだす

「蘇生されたものはメイドを除き全て、じぇーんと言う者の配下かと」

「そうか」

増やせるのは、そのじぇーんという者のみという事か


「どう思う?」

「わかりませぬ」


じぇーんと言うものに殺されたものは蘇生後

意思の疎通、もしくは共有または支配を受けている

イレーヌはこのまま隣国へ贈るか?

もし、じぇーんを捕らえその秘密を解明出来れば

本人にその自覚が無いまま、最高の情報源となる

支配も可能ならば、勇者も付けて贈与してもいい


「魔術師達の失踪と関係あると思うか?」

「別、かと」


先日起こった失踪事件、訓練中の事故により全員死亡と体裁を整えた

魔術師のなかに入れておいた影ごと全てが消えてしまった

現場に残った血の量から全員生きてはいないだろうと判断したが

宝物庫も荒らされていたことも考慮すると

魔術師のなかに何人かいた出自が曖昧なもの達の犯行だろうか


「教会は関与しているか?」

「わかりませぬ」


じぇーんの件は蘇生が絶対条件になる

いま王都で蘇生が出来るものは、司祭と司教のみ

先日も蘇生呪文取得の可能性がある勇者を連れて行っている


「可能性でよい、話せ」

「話せませぬ、、まずは鑑定かと」


そうか、偽者の可能性自体が消去できていないのか

しかし、鑑定持ちの魔術師は失踪事件で消えてしまった

城には鑑定持ちはいない


「鑑定は、どうする?」

「冒険者ギルド所有の冒険者か、、魔道具屋かと」


ウィリアムとギルバートは会議室にいる

魔道具屋は、教会と同じで下手な手出しが出来ない


「エリックの手の者に情報を伝えよ、後、しばらく戻るなと」

「イレーヌは、じぇーんに関して目処が立つまで勇者達と共に監視」

「鑑定が来るまでに、事故で勇者と騎士を1人づつ殺し調べろ」


「魔道具屋に伝はあるか?」

「ありませぬ」

「そうか」


「では、冒険者ギルドに鑑定の依頼を出すか、、ゆくぞ」

「はい」


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