038:冒険者の平凡なる日常5
街道:
少し迷宮探索を粘り過ぎた
日が暮れ始めている、早く街に戻らないと
この街の周辺は魔物が出ないので、危険度は低い
周りを見渡せば畑も散見できる
しかし、魔物の危険が無いから治安が良いという訳でもない
無差別に人を襲う魔物がいないのだ
「お姉さん、女性の一人歩きは危険だよ」
急いでいたため注意力が散漫になっていたらしい
声を掛けられるまで男の存在に気がつかなかった
「兄さん、いきなり女性に声をかけるなんて失礼だよ」
身構えたところに、後ろから声が掛かる
「ひっ!」
思わず声が出てしまった、どうしよう
帰路を急いだためまだ魔力が回復していない
「ほら、怖がらせちゃったじゃないか」
チクッ、何かが刺さった?
「後ろから声を掛けるほうが失礼じゃないか?」
私を挟んだ前後で言い合いが始まる
隙が無い、前の男が行く手を塞ぎ、後ろの男は常に死角にいる
さっきのは麻痺か睡眠、もしかしたら毒かもしれない
早く対応した薬を飲まないと、迷っているひまはない
魔力を高める、後ろは向かずに腰の剣を抜き振る
「おっと!」
前の男に向かって走り出す
「ウィンドカッター!」
今のMPで撃てるのはこれだけだ
「うお!」
風の刃は魔力を感じ取れないものにはよく見えない
男が大げさによける、そのままスピードを落とさず走る
このまま走って逃げるしかない、まだ体力は残っている
荷物は捨てよう、剣も走るのに邪魔だ諦めよう
薬だけは持っていかないと、あっ
体が宙に浮く、なんで?
すぐ後ろで男が嗤っている、足をかけられたのね、あぁ
地面が近づいてくる、、、
「がっ!」
地面を転がる、誰かが近づいてくる
「このクソ女が!」
ドカッ!、お腹を蹴られ、る、、
「兄さん、せっかくの獲物なんだから大事に扱わないと」
別に攻撃されただけで当っていないのだから、蹴らなくてもいいのに
「当ってたら大怪我だっただろうが!」
ドカッ!、ああ、また蹴っている
「せっかく睡眠薬打ったのに痛みで起きちゃうよ?」
「俺に魔法を撃った償いをしてもらわないとだからな起してんだよ」
兄さんは、ほんとに女性をいたぶるのが好きだな
「いたぶってもいいけど、跡の残る傷はつけないでよね」
ああなった兄さんを止めるのは面倒だ
「彼女どうするんですか?」
んー、そうだな
「取り合えず、飽きるまで楽しんだ後に奴隷商に売るかな」
ん?
「いつもこんなことしているんですか?」
まあな
「この辺りは、魔物も出ないし安全に狩りが出来るからな」
あれ?
「まさに下種の極みだな!」
「んー、そうだね」
「な、な、なぴゃ」
「おい、どうしたぴゃ」
「変な言語だね」
「どこかの方言だな!」
「こいつはどうするんだ?」
「んー、ヒール!、魔物も出ないしほっとこう」
「キュアはいいのか?」
「え、だって目が覚めちゃうじゃん?、面倒くさいよ」
「そうだな」
「魔物は出ないから、次に来る人がいい人だといいね」
「一か八かだな!」
そうだね!、とことことことこ
宿屋:
「おかえり、今日はずいぶん遅かったね」
宿屋の女将マルアさん、気の利く女性なのです
「ただいま、お腹ペコペコです」
「にゃ~!」
「はいはい、じゃあすぐ部屋に夕食を持って行くね」
お願いします、といい部屋へ向かう
しかし、さすがにこのまま食事する気になれないので
先にお湯をお願いする、取り合えず顔と足だけでも洗いたい
「とぅ!」
バシャ!、いきなりクロがお湯に飛び込む
「もー、クロは迷宮出る時に洗ったじゃんかー」
クロはわざわざ敵を殴りに行くのでいつも汚れるのだ
なので迷宮を出る時、宙に作った水の玉でひと泳ぎさせている
「ふっ、我は綺麗好きなのだ!」
じゃあ敵殴んなー!
ちょっとはしたないけど足湯をしながら食事を取る
個室ならではの贅沢
「そういえば私魔法全属性揃ったね」
ひとつは上位魔法になってるけどね
「ずるいのだー!」
ワシッ!、クロがまたお湯に飛び込もうとしたので捕まえる
「はーなーせー!」
もー、あばれるなー!、ひざの上に転がして撫でる
「にゅーん!」
火魔法と風魔法、自分で使えると便利だ
自分でお湯も作れるし、風で髪も乾かせる
部屋にロックを掛け、明かりを小さくして布団に入る
クロも布団にもぐりこんで来て、私の腕の中に納まる
「初めて魅了使ってみたけど、結構便利だったね」
頭を撫でながら話す
「下種に質問してた時か?」
翡翠色の目を細めながらこちらを見る
「うん、名前的には相手を虜にする見たいな感じだけど
警戒心をなくすとか他にも色々出来そうだね」
「我はそういうのは苦手だから、要らないな」
そうだね、、、明日はギルドに行こうかな
「...Zzz」
おやすみ、クロ
朝:
「む!」
もぞもぞ、、
「むむ!」
ぐりぐりぐり、、
「むむむ!」
じたばたじたばた、、
「リン、うごけんのだ、おきろー!」
腕の中でクロがじたばたしている
「今日はもう少し寝てようね、、、」
じたばたしているクロを撫でる
「むにゅー!」
観念したみたい
少し遅めの朝食を取り、ギルドへ向かう
「リン、今日はどうするのだ?」
フードの中からクロが聞いてくる
「治療士の仕事して、早めに上がってカーサの所に寄ろうかな」
「お茶会か?」
「んー、いいよ、じゃあカーサの所行く前にケーキ買っていく?」
「うむ!」
毎回甘いものというのも飽きてくる
なにか甘くないお茶うけないかな、チーズはクロ嫌いみたいだし
クラッカーとかスコーンでジャムとかフルーツを載せる感じかなあ
ドライフルーツとかあるかな?
あ、けどハーブティなんだっけ、和菓子って売ってたかな
餡子とかちょっと懐かしいな
紅茶を買っていくのもいいかなあ
「リーン!、ギルドについてるぞ」
ありゃ、考え事をしていたらついちゃった
「おはようございます」
「にゃ~!」
テレスさんに挨拶する
「おはようリンちゃん、クロちゃん!」
テレスさんが嬉しそうに挨拶を返してくれる
「おい!、なに無視してんだよこのアマ!」
おおぅ、なんか柄の悪い人達が怒ってる、テレスさん大丈夫なの?
「すいません、先ほどから説明していますがギルドランクD以上か
紹介状のない方は当ギルドに登録できません
中央通を北に行くともうひとつギルドがありますので
そちらで登録していただけますか?」
クールに対応してる、出来る女って感じだね!
「ざけんな!、いいから黙って登録しろや、殺すぞクソアマ!」
周りの冒険者が殺気立つ、うーん、テレスさん看板受付嬢だしね
というか、この殺気とはいわないけど雰囲気に気づかないとか
ある意味凄い人達だなあ
見ててもしょうがないし治療室に行っとこう
「待てよ嬢ちゃん、人の会話の邪魔しといてそのまま行くつもりかよ!」
うわー、からんできた、勘弁してよ
「ちょっと外でろや、話し合いしようぜ?」
なんか話し合いする気無い感じで近づいてくる、うーむ
(殺すけど問題ないな?)
いやいやクロ君ここで殺っちゃダメだって
ドゴン!!!
なんか凄い音と共に近づいていた人が吹っ飛んでいく
「なに私の可愛い天使ちゃんに手を出そうとしているんですか?」
テレスさんでした、ちょっと怖いです
「ギルド職員が冒険者に手を出していいと思ってんのか、ああ?」
おー凄い、あれ見て実力差を理解できてないのか
「何言ってるんですか、貴方達まだここの冒険者じゃないでしょう?」
ドゴン!
一瞬で男の前に移動したテレスさんの拳がお腹にめり込む
結構重そうな男の人が宙に浮いた
ゴン!
なんか容赦ないなあ
落ちてきた男のこめかみを殴りつつ床に叩きつける
残った1人は、言葉もない、テレスさんが男の前に立ち
「当ギルドの冒険者に危害を加えようとしましたので制裁しました
あと、慰謝料として金貨50枚出してください」
「え、あ、あ」
「邪魔なゴミを運んでもらうために貴方を残したんですけど
要領を得ないようならば貴方もゴミとして処理しますよ?
その場合、装備品一切は没収します」
「あ、あ、ま、まってくれ、金貨50枚だ、ですね!」
男が金貨を払い、気を失ったままの仲間を引きずりギルドを出て行く
テレスさん、こわいっす!
「ごめんね、リンちゃん治療室いきましょ」
いつものテレスさんが声をかけてくる
そういえば、ウィリアムさんが出てこない、いないのかな?
いればもっと穏便に解決してると思うんだけど、聞いてみる
「あの、ウィリアムさんいないんですか?」
テレスさんが、むっとした顔になる
「ギルド長は今朝死にました、天罰です!」
王城に会議に行ってるだけだよーと、他のギルド員さんが教えてくれる
「横領がばれて弾劾裁判中です!」
嘘だからねー、と聞こえてくる、意味もなんか間違ってるしね!
「今は私が法律です!」
ある意味ほんとだよー、と聞こえてくる、なにそれー!
「そういえば私ここ入るとき初心者で紹介状もなかったですけど」
聞いてみる
「ギルド長が許可したんです」
おっと、まともな答えが返ってきた
やっぱりウィリアムさんは、なにか気づいてるのかな?
王城行ってるという事だしその辺の情報もきちんと把握してそうだね
はい、とテレスさんが金貨50枚を渡してくる
「あ、いや、いらないですよテレスさんに助けてもらったんだし
テレスさんが貰って下さい、壁とか床も壊れてたし
それで直しましょう」
「大丈夫です、あれは経費で落ちるのです」
んー
「じゃあ、半分こで!、お揃いですね!」
金貨25枚をテレスさんに渡す、多分これで受け取ってくれるはず
「お、お、お揃い!」
受け取ってくれる、にやり
(見事だリン!)
「そういえば、手大丈夫なんですか?」
テレスさんの手を取る、特に傷もない、格闘術か凄いなあ
(リン、我も欲しいのだ!)
そうだね、鎧ごと殴ってて無傷って結構凄い事だよね
一応ヒールを掛けておく、なんか幸せそうだ
(そういえば格闘術使う魔物にあったことないね)
(む、たしかに!)
興味なかったけど、武技の巻物あるかカーサに聞いてみよう
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名前:楠木 凛 種族:人族 性別:女 年齢:16
レベル:7
HP:80/80 MP:240/240
STR:75 VIT:65 DEX:75
MND:65 INT:240
スキル:(特殊)言語翻訳、アイテムボックス、鑑定
(技) 罠解除1
(魔法)召喚魔法(式神)、空間魔法2
火魔法1、水魔法2、雷魔法1、土魔法1
光魔法3、闇魔法1
装備:ミスリルの糸、普通の服、偽りの宝石、魔法の鞄
白のローブ:INT20
素早さの靴:DEX10
魔力の腕輪:MP20
力の腕輪 :STR10
金貨:24225(25up)
使い魔:クロ
スキル:火魔法3、風魔法2、土魔法1、光魔法2
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物語が進まないとか言う突っ込み入りそうですが
前回や今回みたいなリンとクロの日常が本編です
じりじりと強くなっていくのとお馬鹿な会話を楽しんでね




