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ネコと私  作者: 昼行灯
冒険者編
32/143

031:次元の迷宮

朝:

まだ日も昇っていない、薄明という刻だろうか

部屋の中には闇の気配が濃い、その中を静かに動く黒い影

その訓練された足取りは、一片の音も発しない


その影が見つめる先には、すぅすぅと寝息をたてる少女

その安らかな寝顔を見て、翡翠色の瞳がすっと細まる

にぃ、と笑う口からは鋭い牙が覗く、、、


足に力がこめられたのがわかる、グググッ、凄い力が圧縮される

バッ!、その力が解放され黒い影が凄まじい勢いで少女に迫る!


勝利を確信した口から言葉が発せられる

「リーンー、朝だぞぉぉ、「ガシッ!」おおおおお?」

一瞬の油断が命取りだ、あと少しで目標に到達するところで捕獲される

「はーなーせー!」

無駄な足掻きだ、布団の中に引きずり込まれる

「むきゅぁぁぁ!」

断末魔の叫びを上げ黒い襲撃者は力尽きる



朝食の支度が始まったようだ、香辛料と共に肉の焼ける匂い

何かを煮込むシチューの香り、泊り客の好みに合わせて作られる料理

何種類の料理を作っているのだろうか、そのような事を考えながら

腕の中で幸せそうに寝ている襲撃者を起す

「クロ、早く起きないと置いてくよ?」

「むーん」

「迷宮行くんでしょ」

「迷宮!」

手に頭をぐりぐりと押し付けていたクロが、飛び出す

「はやくはやく!」

私の周りをぐるぐると回る、溶けちゃうよ?


お湯で顔を洗い、温かいタオルで髪を包み寝癖を取る

体も軽く拭く、クロも拭いてあげるからお湯の中で暴れないでね?

マルアさん自慢の朝食を取り、お昼のお弁当をもらい宿を出る


茶色いローブを着てとことこと歩く、町外れまで馬車で移動し

後は徒歩だ、これもなんか久しぶりだね


景色を楽しみながら、とことこ歩く、平和だなあ



「そういえばリン、なんでカーサの同行断ったんだ?」

フードの中で私の髪にじゃれ付きながらクロが聞いてくる

「クロだって、断ってたじゃん」

「あれは、勢いだ!、カーサの顔が面白かったからな!」

「そうだねー、なんかからかいたくなるよね」

「うむ、偽りの宝石の効果に頼り過ぎだな、あれがないと

 何考えているかまる判りだ、特に耳!」

「ぴこぴこ動いて面白いよね!」


「まあ、一部のステータスは私とつり合ってるんだけどね

 クロの事も判ってるし力を制限しなくていいから問題ないんだけど

 いかんせん行く迷宮が、次元の迷宮だからね」

ぴこーん!、クロ君が閃いたようだ

「レベルか!」

「うん、カーサと一緒だと多分レベル30相当の敵が出るよね」

「むーん、30ってどれくらい強いのかな?」

「んーとね、ちょっとステータスにばらつきがあるけど

 普通にレアで出てきたキングスライムがレベル30相当で

 最後に出てきた強かったキングスライムが40相当かな」


「じゃあ問題ないんじゃ?」

「いやいや、カーサのステータスがね、HP20でVIT10だよ」

「貧弱だな!、攻撃かすったら死んじゃうな!」

「そうなんだよねー、DEXは60で55の私より上だし

 INTも150だから悪くないんだけどね」

「今度ちゃんと理由を教えておいたほうがいいな」

「そうだね、本気でがっかりしてたもんね」


「魔道具屋だからな、とんでもない装備でブーストしてくるかもな!」

「あー、ありそう伝説級の装備してきたりしてね」

「あいつは、1人なんだろうな」

ありゃ、クロも気づいてたんだ

「そうだねー」


今の私は、1人じゃないんだよね、

いつの間にか肩に移動したクロが、頬に顔をすりすりしてくる


平和だねー




次元の迷宮入り口:

「はっ?、聞いてねーぞ」

「聞いてないんですか?」

「だから、聞いてねーって!」

「いえいえ、入るための条件を確認しなかったんですか?」

「お、おぅ、聞いてねえ、、」

「普通確認しませんか?、特にこの迷宮は特殊ですし」

このソロで潜ろうとした少年、許可証の存在自体を知らないのだ

「教えないほうが悪くね?」

「いえ、事前に情報を収集するのは冒険者の基本ですよね?」

「お、おぅ」


「先ほど入ったPTが戻るまで馬車は出ませんし、どうします?」

「どうしよ?」

まったく、、質問を質問で返さないでくれよ、いらっとくるな

なんかこの雰囲気ギルバートさんに似ているな

「なんとか歩いていける距離にオークの迷宮があります」

「はぁ?」

いらっ!、いかんいかん

「行ってみたらどうでしょうか?」

「あー、んー、しょうがないな、そうすっかー」

ふー、これで静かな時間を満喫できる



街道を全力疾走するローブを着た少年

「あー、もー、こんちくしょおおおおおお!!!」

やっとこれた次元の迷宮に入れなかったフジワラだ!

彼の迷走はいつまで続くのだろうか、、、




とことことことこ、あ、藤原君だ、何叫びながら走ってんだろ

「とうとう狂ったようだな、あの小僧、そのうち裸で走り出すぞ!」

おおぅ、変な趣味に目覚めたのか、ちょっと距離を置こう


「楠木にあいてえええええぇぇぇぇ!!!」

私の事を叫びながら走り去っていく


ひぃぃ、私に裸を見せたいって事?、なにそれー

「あいつの事は今後、変態君と呼んだほうがいいな」

「何があったんだろうね、まともな人だと思ってたのに」



フラグクラッシャーフジワラの誕生である!



とことことことこ、、

「ん?」

なにか足音がした気がしたが、周りを見回す、、、気のせいか

(ちょろいな!)


次元の迷宮に入る、緩い下り坂を降り行き止まりの魔法陣に乗る

軽い浮遊感の後に、景色が変わる


「うおおおお!、暴れてやるぜ!」

クロが荒ぶっている、しょうがないか久しぶりに戦えるんだもんね


ドカァァァン!


ドォォォォン!


「ちょっとクロ、敵がわからないじゃんかー」

クロの周囲に火の玉が複数浮かんでいて

何か動くものがあるたびに飛んで行って爆発している

しかし、いつの間にそんな器用なこと出来る様になったんだろう

「サーチアンドデストロイだぁぁ!」

もー、クロったらテレスさんみたいなこと言ってる

「迷宮ごと破壊してくれるぅぅ!」

「もー」ぺしっ!

「むきゃ!」

「迷宮破壊したら私達死んじゃうじゃんかー」



「グギャ!」「ゲギャ!」

ゴブリンの迷宮でした、独特な泣き声と共に迫ってくる

ぴぅん!、風を斬る音と共にゴブリンがふたつに裂ける

「ギィ?」

ひぅん!

ふたつになった仲間を不思議そうに見ているゴブリンの首が跳ぶ


カーサに作ってもらったミスリルの糸を使っている

切れ味も悪くない、魔力を通さなくても切れ味十分だ

「リン、反省したのだ!」

戦闘禁止の罰でフードの中にいるクロがいう

「これからは、迷宮にやさしく戦うのだ」

ぷにぷに、背中をぷにぷにしてくる

「じゃあ、次の階から戦っていいよ」

「わかったのだ!」

すりすりしてくる、嬉しいのは判るけどちょっとはしゃぎ過ぎだよ



1Fボス部屋:

ゴブリン戦士が6匹、手を水平に払う、ひゅぃん

左右の壁に火花を散らしながら糸が走る、、、斬!

6匹のゴブリンがずれる


どうにも弱い、、まあしょうがないか

鑑定、、アンロック!

「鉄の剣」「鉄の盾」

アイテムボックスにしまう


「サンド君達と来たのと同じ迷宮かな?」

「どうだろう」

「まあいいや、4F辺りから手ごたえ出てくるかな」

「だな!」

「まあ、さくさく行こうか、あ、クロはさ」

「ん?」

「接近戦とかも試しておいたら?」

「おおおお!、肉弾戦!」

「一応それなりにHPもVITも増えたから色々やっておこう

 戦術の幅が広がるからね」

「うむ!」



2Fボス部屋:

ゴブリン戦士4匹、魔法使い2匹

「当たりなのかも、1匹闇魔法使いだよ、見てるからクロやっていいよ」

「うむ!」

トン!、クロが肩から飛び降りる

「肉球が鳴るぜ!」

鳴らないからね?

部屋の中心から闇が広がっていく、暗闇の呪文を使ったのかな?

あれ、ゴブリンって夜目きくの?

「グギャ?」「ギャ?」

えー、見えてないよね?、なんたる悪手、数の有利が台無しじゃん


「ギャー!」「ギャー!」

なんか端から順番に断末魔の声が聞こえる

闇の中のクロとか、全然見えないよね、、暗闇が晴れるとクロがいた

「つまんないのだ!」

「ライトで暗闇晴らせばよかったじゃん?」

「あ」


鑑定、、アンロック!

「鋼の剣」「?杖」

鑑定、、、「鉄の杖+1」


「鉄の杖って、殴れって事なの?」

「さあ?」

アイテムボックスにしまう


じゃあ、3F行こうか、、、、、




魔道具屋:

カランコロン、客が帰っていく

「またおいで、」

姿の消えた客に老婆が陰気な声をかける


「はぁ、」

今日は、リン来ないのかな、、、

扉のほうを見ながらため息をつく老婆、まるで恋する乙女だ


一緒に冒険したいな、、、恋する老婆、、不思議な光景だ

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名前:楠木(クスノキ) (リン) 種族:人族 性別:女 年齢:16

レベル:5

HP:60/60 MP:200/200

STR:55 VIT:45 DEX:55 MND:45 INT:200

スキル:(特殊)言語翻訳、アイテムボックス、鑑定

    (技) 罠解除1

    (魔法)召喚魔法(式神)、空間魔法1

        水魔法2、光魔法2


装備:ミスリルの糸、普通の服、偽りの宝石、魔法の鞄

   白のローブ:INT20

   素早さの靴:DEX10

   魔力の腕輪:MP20

   力の腕輪 :STR10


金貨:24200


使い魔:クロ

スキル:火魔法2、風魔法2、光魔法1

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フジワラ君は今後閑話じゃなく、本編にたまに登場する予定です

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