026:冒険者の平凡なる日常2
朝、
貴族街冒険者ギルドそば、各迷宮行きの馬車乗り場
「おはようございます!」
既に待合場に来ているサンド君達に挨拶をする
装備はいつもの靴と腕輪に昨日買った白のローブをまとっている
クロは、今日普通のネコとして過ごすのでやる気が無く
ローブのフードの中から顔だけちょこんと出している
たまに私の髪にじゃれついて遊んでいる、ネコみたいだね!
「おはよう、リンさん!」
「お早うでござる」
「おす」
「おはようございます、リンさん」
(殿中でござる!)
馬車乗り場でござる!
「ローブを新調したんですね、白がとても似合っています!」
さすがサンド君、貴族だけあって褒め殺しが上手いです
(殺られるまえに、殺れ!)
クロの目がきらりと光る!
(なにしてるの?)
(目で殺す!)
なにそれ?
「リンさん、それ聖なるローブですか?」
ウィン君が質問してくる、聖なるとか凄そうだね
「いえ、白のローブです、INTアップの効果があるみたい?」
まあ、INT20も上がる結構な装備なんだけどね!
「あ、じゃあ僕とおそろいですね、これ黒のローブなんですよ!」
おっと、さらっと言うけど、彼もやっぱり貴族なんだね
黒のローブも金貨1000枚だよ、たしか、白と黒迷ったんだよね!
ウィン君は何気に今の時点で凄いお金がかかってる
「土魔法:大地の守り」で金貨2000枚、黒のローブで金貨1000枚
締めて金貨3000枚、期待されているのかな?
しかし、サンド君は「光魔法:回復」で金貨10000枚なんだよなあ
次期当主じゃない彼にこんな高価な単体魔法覚えさせるんだもんな
どんだけお金持ちなんだろうね
(あくどい事をしていそうだな!)
「聖なるローブって、どんな効果があるんですか?」
興味があったので聞いてみる
「MPとVITとMNDアップ、あとMP回復効果があるらしいよ!」
MP回復とか凄い効果だね、しかもVITもあがるのが何気にいいね
「もしかして、回復職の最終装備とかですか?」
「うん、いまだと教会の司教様や聖女様が装備してるみたいよ」
おー、それは確かに最終装備っぽいね、しかし聖女ってなに?
(説明しよう!、聖女とは光魔法4まで行った女性僧侶のことである)
補足しよう、光魔法4で死者蘇生が使える様になるのだ!
(え、じゃあ聖女って結構いるの?)
(しらん、しかし光魔法4はそうそうなれないと思うぞ)
聖女になるには魔法以外に聖女たる資質も問われるのだ!
(あー、もしかして教会に連れて行かれた娘たちって聖女候補?)
(そうだな、勇者は最初から光魔法持ってるものがいるからな)
(けど、連れて行かれた娘たち奴隷だったよ?)
(奴隷聖女、背徳的だな!)
うーん、なんだかなあ
(リンあえて聞こう、彼女達を助けないのか?)
(うん、助けないけど?)
(なぜだ?)
(なぜって、薄っぺらい正義感で助けてもいいけど、その後どうするの?
奴隷になった娘は自分で戦う事を拒否して残ってた人達だよ
ずっと宿屋に匿っておくの?、宿代とか食費とか全部私一人で稼いで
しかも自分の身も守れない人をずっと守るとか、神様ですかってね
私が男の子なら、ハーレムだぜ!、とか思うだろうけど違うし
結局、同姓のそんな歪な依存関係の結末は悲劇しかないよ)
(そうなのか?)
(そう思うよ、それに本気でそれこそ死ぬ気でどうにかしようと思えば
自分で状況を打破出来るからね、色々鑑定したけど
スキル無しの娘はステータスがこちらのレベル20くらいだし
スキルある娘はこちらでは高等とされている無詠唱とかも
発想力の違いか、結構簡単に出来るから
自分でどうにかできる娘は既にどうにかしているよ
誰かがどうにかしてくれると思っている娘は助けたとしても
私が中瀬さんみたいな立場になるだけだろうしね)
(最初のころに消えたリーダー的存在の娘か?)
(うん、お前が奴隷になれば他の娘の安全は保障しよう
とか言われたんじゃないのかな、奴隷になった途端
奴隷との約束なぞ守るわけ無いだろう!、ふはははとか?)
(あまあまだな!)
(うん、それに、彼女達とは価値観が決定的に違うからね)
まあ、もっともらしい御託を並べたけど
正直、彼女達の生死に何の興味も無いのだ、係るのが面倒なだけ
これが私を気に入らない人達から、人形みたいで気持ち悪い
と言われる所以なのだろうね
(ちがうのか?)
(私はもともと式鬼を呼ぶための巫女だからね、あちらでは必要な時
贄としていつでも死ぬ覚悟が求められていたから、、)
大事なものを作らないように心がけてきたから、、
(茨木童子?)
(うん、本来なら彼を呼ぶために巫女の命5人は必要なんだよ?)
(リンも死ぬの?)
フードから私の腕の中に移動したクロがこちらを見あげてくる
(ううん、もうあちらの事は関係ないから死ぬ必要も無いよ)
頭を撫でる、、嬉しそうに目を閉じてしっぽを揺らす
だけどね、私も彼女達と同じであちらでの考えが抜けてないんだよ
だからいつもね、いつ死んでもいいかなと思っているんだ、、
けど今はね、
クロと一緒に笑ったり、怒ったり、冒険したりして過ごせている
それだけで、私は幸せなんだよ?
初めて出来た私の大事な友達
優しげな笑顔でクロと言うペットを撫でているリン
それを見ながらひそひそと話すサンド君たち
「おい、なんか話せよ」
「いや、なんか話せる雰囲気じゃなくない?」
「眼福でござる」
「取り合えず静かにしろ」
話の途中からペットとじゃれつきだして今に至る状況だ
ともあれ話しかけづらい雰囲気をかもし出す少女とネコを見守りながら
迷宮に向かう馬車に揺られて行く、、
次元の迷宮:入り口
迷宮の入り口らしき場所のそばに小屋が建っている
今回馬車で来たPTは3組、既に他の2組は準備が終わったのか
小屋の窓口らしきところで、手続きのような事をしている
「えっと、取り合えず戦闘方法だけど、、」
話しかけづらそうにサンド君が話しかけてくる
ちょっとクロとのラブラブタイムが長過ぎたみたいで
打ち合わせを何もしてない、困ったもんでござる
(天誅でござる!)
誰をさ?
「えーと、いつも通りに戦ってもらえれば、私が合わせます
回復と補助がメインですし、戦闘の邪魔にならないように
動きますので、」
PT戦闘とか初めてなんですけどね!
「え、そ、そうですか、いやリンさんは僕がまもり」
「じゃあ、そんな感じで行こうか!」
「承知でござる!」
「うん、わかった!」
何か言おうとしたサンド君をさえぎって、バス君が仕切る
んー、サポートとかどうしようかなあ
窓口では、許可証を見せてPT各員のギルドカードを確認された
(これだけなら、ほんとに隠密があれば問題なさそうだね)
(うむ、問題は隠密の入手予定が皆無と言うととだな!)
(キングスライムから出たかもしれないのにね!)
(それはないな!)
(えー、なんで?)
(スライムの迷宮などと言うものは存在しないからだ!、ババン!)
(うん、そうだね?)
(ほ、ほらリン皆が待っているぞ?、ほらほら!)
フードに潜り込んだクロが背中をぷにぷにと押す
迷宮は緩い下り坂があり、行き止まりになっているだけだ
行き止まりには少し大きめの魔法陣がひとつ存在する
「ここに乗ると転移します、準備はいいかな?」
「はい!」と、私
「うむ!」と、ござる君
「ああ!」と、バス君
「うん!」と、ウィン君
(ござる!)と、クロ?
軽い浮遊感の後に、景色が変わる
この迷宮は少し暗い、バス君がランタンの準備をしている
「ライト!」
明かりの呪文を唱える、戦闘以外ではわかりやすく呪文を言おうかな
「お、いいね」
いいながらランタンをしまうバス君
「光魔法の明かりかあ、便利だなあ」
ウィン君は宙に浮かぶ明かりを杖で突きながら呟く
「奇襲とかしないなら、もう少し明るく出来ますけど」
バス君は気配察知があるから、先制攻撃がしやすいかと思い聞いてみる
「ああ、じゃあ頼む、奇襲はサンドが嫌がるからしないんだ」
「戦闘は正々堂々と戦うものだ!」
サンド君、奇襲でやられる人の典型みたいな事言っちゃってるよ!
(ふっ、若いな!)
まあ、盾の彼がそうしたいなら、いいか
「敵だ、5匹!」
先頭を行くバス君が敵の気配を察知し報告する
どんな敵が出てくるのかな?
「ゴブリンだな、仕掛けるぞ!」
バス君がクロスボウからボルトを放つ、あれ?
奇襲はダメだけど先制攻撃はいいのか、ん?、どこが違うんだろう
「グギャ!」
ボルトに頭を撃ち抜かれ1匹が沈む、威力あるなあ
けど、連射は出来ないみたい弦を引き次のボルトをセットしながら
後退して来るバス君の前にサンド君が立つ、取り合えずお手並み拝見
ゴブリンは4匹、うち2匹がファイターで残りは普通のゴブリン
迫るゴブリンにボルトと火の矢が飛ぶ、残りファイター2匹
サンド君が攻撃を盾で受け、1匹を切り伏せる
もう一匹にはジュノ君が斬りかかり両断する、凄いね
「私の出番ないですね」
特にダメージも無いので回復の必要も無い
「リンさんには、指一本ふれさせ」
「まあ、こんなところでダメージ受けてたらボスを倒せないしな」
サンド君の言葉を遮りバス君が話す、なんかこんな感じなんだね
「素晴らしい先制攻撃でした」
疑問に思った事をぶつけてみる
「うむ、戦闘が始まったら全力で戦うのが騎士の心得!」
後ろでバス君が肩を竦めている、現実的な彼が文句を言わないわけだ
皆に都合のいいように説得されていたんだね
まあ、そうだね、サンド君もこの意気で成長すれば強くなるね!
本心から奇襲は邪道と言いつつ、迷い無く奇襲とか最強だね!
その後、たまに回復を行いつつ、水の刃で戦闘に参加する
1Fボス部屋前:
「今までの感じからすると、戦士6匹か魔術が混じる感じかな?」
「レアで、ゴブリンリーダーが出る可能性もあるかもね!」
「僧侶は、まだでないよな?」
意見が交換される、ゴブリンリーダーがよくわからない
「あのー、ゴブリンリーダーってどういう能力なんですか?」
「統率というスキルを持っているらしくてね、回りの魔物の能力を
ある程度上昇させるんだ」
凄いスキルだね、軍を預かる将が持ってたらどうなるんだろう?
「準備はいいかな?」
サンド君が皆に尋ねる
「えと、一応かけとこうかな」
いいつつ、皆に時間回復を掛ける、、、そして皆が固まる
(またなんかやっちゃったの?)
(うっかりリンべえの称号を与える!)
なにそれ!
「リンさん、MP幾つあるんですか?」
ウィン君が聞いてくる
「人並み?」
適当に答えてみる
「いやいやいや、人並みじゃ全員に時間回復掛けられません!」
「じゃあ、全員に掛けられるくらい?」
「まだまだMP平気そうじゃないですかーやだー」
ウィン君が涙目だ、可愛いぞ、なぜだ?
「取り合えず時間がもったいないですし、ボス戦いきません?」
「わかりました、もういいです、」
諦めたみたいだ、ちょろいな!
(チョロイン、ウィン!)
なんか色々違う!
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名前:楠木 凛 種族:人族 性別:女 年齢:16
レベル:5
HP:60/60 MP:200/200
STR:55 VIT:45 DEX:55 MND:45 INT:200
スキル:(特殊)言語翻訳、アイテムボックス、鑑定
(技) 罠解除1
(魔法)召喚魔法(式神)、空間魔法1
水魔法2、光魔法2
装備:普通の服
白のローブ:INT20
素早さの靴:DEX10
魔力の腕輪:MP20
力の腕輪:STR10
魔法の鞄
金貨:4080
使い魔:クロ
スキル:火魔法2、風魔法2、光魔法1
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