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ネコと私  作者: 昼行灯
闇の一族編
141/143

140:死の行軍08

「ごしゅじんさま~、なんでなの?」

「ん? あなたの全てを手に入れたからだよ。ほら、ステータスも私と同じでしょ?」

「ほんとだ、すごくつよくなってる!」


とぅ! たしっ! 彼女の頭の上に乗るクロ君。

「リン! こいつも使い魔になるのか?」

「んー、使い魔はクロだけだよ、彼女は式神ね」

「ネコちゃん、あそぼ?」

「我の事は、(あるじ)様だと言っただろぉぉがぁぁあ!」

てしてしてし! やめて~!


力に()る者には力を示し負けを認めさせる事で(しき)とする。

その者を使役したければ名をつけることで契約とする...


「ねぇ、ごしゅじんさま。わたしのなまえをよんで?」

「んー、そうだねぇ、今までのって身元不明って言う意味でしょ?」

「そうなの?」

「そうだよ、本当の名前って覚えてる?」

「わかんない」

「我、命名。ポチと名付けよう!」

「え~、やだ~!」

「クロ、適当な名前はダメだよ、犬じゃないんだから」

「リンよ...」

「なによ?」

「かつて我にポチと言う名を付けようとした者がおってじゃな...」

「ひどいね!」

「むぅぅぅぅぅ~!」

クロ君がこっちに向かってダイブしてくる。ぱしっ!

「リーンーのーばーかぁぁぁぁ!」

「何か嫌なことでもあったの?」

「むきゃぁぁぁぁ!」


彼女の姿が揺らぐ...

「あ、れ?」

「時間だね、準備も無しに()んだからそろそろ消えちゃうね。式鬼(しきおに)ほどじゃないけど貴女も力ある存在だからきちんと準備をしないとあまり長く存在できないみたいだね」

「さらばポチ、また会う日まで!」

「クロ、ダメだって冗談だとしても今の不安定な彼女にはそれで存在が固定化されちゃう可能性があるんだから」

「我は本気なのだ! 本気と書いてギャグと読むのだ!」

「なにそれー!」


じゃあ、貴女の名前はねぇ...







現場のリンです。


現在二人の男性から口説かれ中という状況です。

一人は全裸の男性ガレムさん。どう見ても変態さんです!

もう一人は、目を充血させた男性ギルバートさん。寝不足ですかね?


変態の人は話が通じなさそうなので目を充血させた男性から説得しようと思います。


では、今からINT780のインテリな私による知的な説得開始です!

「おじいちゃん、邪魔だからどっかいって?」

「うほっ! 直球で酷い事いわれたのじゃ! 傷心のわし」

「あ、ごめんなさい。もう見た目がおじいちゃんじゃないよね」

「そこじゃないのじゃ......ところで今まで見ていたのかの?」

「さあねぇ」

曖昧に笑い糸を引く。


ぽとり、とガレムの首が落ち。


プツンッ、とギルバートの首に巻いた糸が斬られる。

「笑いながら殺そうとするとは、怖いのお」

「いつ?」気付いたの?


首の後ろに手を当てながら怖く笑うギルバート。

「管理迷宮で一度見たからのお、しかし首を落とされそうになる瞬間まで気付かなかったわい。いつ?」首に巻きつけたのかの?

「最初から」

微笑む。


糸が見えないならばやりようはあるけど、魔力を通していなかったとはいえ簡単に斬られるとは...


「私、おじいちゃんとは戦いたくないんだけどなぁ」

全力でやればなんとか殺れそうだけど、うーん。

「たった今、喧嘩売ってきたのに何を言っているんじゃ?」

魔法の鞄から数本剣を取り出し地面に刺す魔人。

「私の守りたいものを傷つけそうだから、殺せそうなら殺しとこうかと思っただけだよ。本気で戦う気はないんだけどね」


キンッ!

地面に刺した剣を刀身半ばで斬る。

「うお! 残り少ないんだから折るのはやめてくれ」

急いで魔法の鞄に剣をしまう魔人。

「本気で戦う準備をするからだよ」

キンッ!キンッ!キンッ! しまう前に糸で全ての剣を斬る。



「わし、戦いたい時は直接本人に言うから、周りの弱いやつには興味はないぞい?」

不思議そうに答える魔人。

「本気で戦うように周りを傷つけるとかはしない?」

「殺されそうになっても本気で戦わない奴なぞいないと思うのじゃがの」

「私は本気で逃げるけど?」

偉い人が言ってたけど戦うという事は下策。

戦う時点で策としては負けなのだ。

クロや藤原君、そしてこの魔人は策とか関係ないから取りあえず全力で戦うという選択から始まるんだろうなぁ。

「お嬢ちゃんはウィリアムに似ているの、奴もそうじゃがぬしらは勝ち負けの基準がわしと違うからの、無理してまで戦いたいとは思わんぞい」

「ウィリアムさんに似ているというのは心外です」

「ほっほ!」

楽しそうに笑いながらその目は攻撃の機会を(うかが)っている。


本当に...そんな剥き出しの殺気を向けられると思わず全力で戦いたくなってしまう。

クロの影響を受けまくっているよね、平常でいること、心に波を立てない事が一番大事なこと、平常でなく波が立っていては見えるものも見えなくなる。


既に四肢に糸を巻きつけてある。動けばわかる。

外の感覚は糸に任せ、目を瞑り心を落ち着かせる。



ぴこーん!


ギルバートさんって、クロに似てるよね?

「肉串をあげよう」

「なんじゃ?」

たしか、王宮の宝物庫から頂戴した武器の中に...


「あったあった、」

「???」


アイテムボックスからそれを取り出す。

「じゃーん!」

ドスンッと地に突き刺さる巨大な剣。


竜牙(ドラゴンファング):竜の牙から造られたといわれる大剣。


「なんか凄い剣じゃの?」

「国宝、竜牙(ドラゴンファング)です」

「ローランの宝剣ではないか、なぜお嬢ちゃんが持ってるのじゃ?」

にやにや笑いながら聞いてくる魔人さん。

「落ちてたので拾いました!」

適当に答える私!


「邪魔だからどっかいってくれるならあげる」

「ほ?」

「剣で困ってるんでしょ?」

「そうじゃが、よいのか?」

「言ってはなんだけど結構手詰まりでしょ、剣士のソロとかいくら魔人といっても迷宮無理っぽいし」

取りあえず壊れない丈夫な剣を手に入れるなら魔物を倒して手に入れるより、武器屋を襲ったほうが手っ取り早い。


「武器無くなったら、武器屋あたりで調達しようとか思ってたでしょ?」

「まあのお」

悪びれる様子も無く答える魔人。


竜牙をアイテムボックスにしまう。

「くれんじゃないのかの?」

「終ったらね、今あげたら絶対使うでしょ?」

「ほっほっほ」

笑って誤魔化す魔人。ほんと思考がクロに似てる。

「しばらく離れて見ててね?」

「わかったのじゃ」

素直に引く魔人。


肉串の効果は抜群だね。



落ちた首が復元スキルで復活してからずっと黙ってこちらを見ていた彼に向き直る。

「お待たせです」

「ああ、今のはアイテムボックスだな」

「ええ、貴方と同じですね」

「そうだな」


「ちなみに、貴方を殺した瞬間にアイテムボックスに収納すればそれで終ったりするかな?」

「どうかな、これはワレの死と同時に発動するからな、しかし上手くいけば収納できるかも知れんぞ」

「試す価値あり?」

「さあな、試してみればいい」

なんか妙に余裕があるけど、なんか隠し球でもあるのかな?


最後の戦いが始まる...

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