139:死の行軍07
ローラン軍の撤退とギルバートさんの乱入、そしてラムダ君の死亡でいい感じに目撃者がいなくなったので参戦する事にした。
このまま不死の軍団に進軍されても色々面倒なのでここでけりをつけることにしたのです。
勝算はあるのかって?
まあ、無かったら参戦しないよね。
まず、いい感じにギルバートさんに殺されたラムダ君の死体をアイテムボックスに回収する。放っておくとアンデッド化してしまうからね!
全てのけりがついたら彼を生き返らせてその辺に放置しておけば、「乱入してきた魔人ギルバートが不死の軍団ごとガレムを葬った」と証言してくれるだろう。
ラムダ君だからなぜ生き返ったかとかは疑問に持たないのだ!
さすがナイト様です都合が良くて格好も良いです!
なんてね、けどラムダ君の情報からだとそういう結論になる。
まあ、おそらくウィリアムさんとエリック王子あたりは生き返らせたのが誰かというより私だとすぐに感づくだろうけどそこは仕様が無い。当然とぼけるしあちらも追求はしてこないはず、報告を受ければ神器の威力とナイトの特殊性と教会の危険性等色々と有用な情報というか検討事項が浮かび上がる。
あまり認めたくないけど私と同じような思考の彼等ならこちらの意図、ラムダ君を生き返らせた理由も理解してくれるはず。
事後処理は、ギルバートさんの存在は無かった事にして英雄ラムダの誕生か、ギルバートさんを...いや、英雄ラムダ君が一番最適かな、後は噂程度で色々流すとかをウィリアムさんか国のそういうの担当部署がやるだろう。
実際ラムダ君自身は大失態を犯しているので英雄の打診を断れないだろうし増長する事もないから便利な傀儡英雄の誕生という事になる。英雄と言うものは早々誕生するものでないから国としてもこの機を逃さないだろう。
ガンバレ、ラムダ君!
糸を放ち、観戦に邪魔な魔物のアンデッドを処分する。
私のメイン武器聖魔の糸+5、聖なる属性と魔なる属性を合わせ持つ存在自体が矛盾したもの。
いや、そもそもこれを武器として扱う事こそ矛盾しているのか?
光の魔力を通す事で聖の属性が強化され糸に斬られた部分から灰になっていく魔物のアンデッド達。
なぜ糸で攻撃するのか? ターンアンデッドは範囲魔法なので予想以上に効果が発揮されてしまうかもしれないし、いきなり多くの魔物が灰になったらさすがに気付くと判断した。
観察する。
魔人ギルバートと不死のガレム。
勝負になっていない。魔人ギルバートが圧倒しているのだ、アンデッドやガレムの攻撃など歯牙にもかけていない。
しかし、それは逆にも言えることだ。
ギルバートの攻撃がガレムを切り刻んでも次の瞬間には何事も無かったかのように復活している。
それはアンデッドも同じで合体して以降斬撃が意味をなさなくなっている。
効いていない訳ではない、剣撃に属性は付与されていないが魔力自体は付与されている。なのでアンデッドにダメージは与えているはずだが集合体となったことで命(アンデッドにそれがあるかは不明だが)を複数持っているような状態か再生力が大幅に強化されているのか、斬られただけではどうということもないようだ。
「五月雨斬!」
それに、やはりその圧倒的な力を受けきれる剣が無いのが最大の理由かな。
飛び散った肉片のひとつが凄い勢いで増殖している。
丁度いい。
その肉片、不死のガレムを魔眼で鑑定する。
名前:ガレム 種族:人族 性別:男
HP:600/600 MP:0/0
STR:150 VIT:300 DEX:150 MND:100 INT:200
スキル:(特殊)言語翻訳、アイテムボックス、復元、感染
(武技)剣術2、槍術1、弓術5
(自動)統率1
スキルに言語翻訳がある。勇者である事は確定だけど...
1.名前に名字、ラストネームに当たるものが無い。
2.年齢が無い。
3.レベルが無い。
4.復元?
5.感染?
いや、いやいやいや、年齢とレベルが無いって魔物? 魔人?
けど、種族は人族のままだよね?
ん? 呼び出される元の世界が同じだとは限らないのかな?
いや、けどレベルが無いのはおかしい。ギルバートさんは魔人化でレベルと年齢が消えたはず。
つまり、復元と感染が何か特殊な状況を作り出している?
いや、それより、弱いよね?
まあいい、取りあえず詳しく鑑定しよう。
復元:肉体を復元する。
詳細プリーズ!
HP0により発動、残存する肉体の一部を基点に肉体を完全に復元する。
復元と同時に基点とならなかった部位は消滅する。
基点の詳細プリーズ!
髪の毛一本からでも可。
うひゃー!
感染:眷属と化す。
詳細詳細!
対象を直接殺すことで発動。死後感染が発動し対象をアンデッドとして復活させ配下とする。
こっちも、うひー!
色々とやばいスキルだけど何となく飲み込めた。
ここからは想像になるけど、おそらくあっているだろう。
レベルと年齢が無いことは復元スキルのせい、復元するのだから元になるステータスが変動しちゃ復元しようがない。というより、おそらくこの復元というスキルの初回発動時が問題だったのだろう、最初に死んだとき復元が発動しレベルと年齢が消えたんだと思う。その時点で固定されてしまったという事、人族が魔人になった時点でステータスが飛躍的に上がりそれ以降は成長しないように、復元のスキルが発動した時点でそのステータスが固定されたのだろう。
弱い理由はおそらくそれ、そんなにレベルの高くない時に死んだのだろう。そこで復元スキルが初期発動して全部固定されたといったところ。
さらに弱い理由は感染、この効果だと魔物を殺してもレベルが上がらないのではないか?
配下となったアンデッドに殺させれば感染発動しないだろうから、それでレベル上げは出来るだろうけど。勇者として召喚され隷属させられてたならばアンデッドの軍団とかは戦争時ならばいいがレベル上げの時は周りのイメージ的にまず使わせないだろう。
どういう経緯でこうなったのか、色々と想像はできる。
魔眼で鑑定したから詳細まで見れたが、普通の鑑定だとそこまではわからないはず。本人が素直に報告しない限りHP0で発動という事はわからない。HP0で発動という事は一度死ぬという事、それは隷属契約をさせられていた場合その時点で解除されるという事。
死なない勇者。
無限に兵を増やせる勇者。
隷属しているから安心して育てていたが、死んだ時点で隷属が消えることに気付いて処分されたか、支配者達の戯れで復元を見るため殺されたか、育成中に死んだか、自分で命を絶ったか...
彼がいた、その国か貴族の領かはわからないが滅んだのだろう。だって死なないのだから。
もしかするとこの大量のアンデッドはその時のものなのか...
ま、関係無いしどうでもいいか。
敵としてみた場合怖いのはこの感染のスキル。
この人に殺されたら蘇生出来ない。これは致命的にやばい。
けど、殺されそうな要素は今のところないんだよね。
なんか、キョロキョロしているガレムさん。
あー、ラムダ君を探してる?
目が合う。
そういえば、年齢無いって事は不老なんだよね?
で、復元で死なないって事は不老不死ってことだよね。凄い!
ギルバートさんもこちらに気付く。
「何者だ?」
貴方はどれくらい生きてきたのですか?
「お嬢ちゃん、散歩かの?」
すっかり若くなっちゃって、もうギルバートおじいちゃんって呼べないよね?
「んー、」
どうしようかなぁ...
ガレムさんは殺るとして、ギルバートさんは剣を手に入れてない今がチャンスってクロもいってたしなぁ。
けど、別に何かされたという訳じゃないんだよねぇ、あ、殺されかけたっけ。
クロ喚んだほうがいいかなぁ...
けど、クロ散らかしそうだしなぁ、髪の毛も残さず一瞬で消さないとダメだからクロの高火力の炎で蒸発させるというのもありだけど「うぉぉぉぉ、けしとべぇぇぇ!」とか言って大爆発おこしてどっかとんでもないところに肉片か骨か髪の毛かが飛んでってそこで復元でもされたら困るしなぁ、ばらばらになった時点で糸結んでおいても解けちゃうし、今見失うと面倒臭い事になりそうだしなぁ。
ギルバートさんも敵に回すと面倒臭そうだし両方いっぺんにというのは無理かな。
二人の視線が痛いです。
「秘密です」
取りあえず、秘密ですと答えるお茶目な私。
さて、みつどもえは回避しないとだから、まずは元おじいちゃんから説得かな?
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