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ネコと私  作者: 昼行灯
闇の一族編
131/143

130:死の行軍04

歓喜:

成功だ!

素晴らしい!

このようなスキルは見たことが無い!


落胆:

駄目だアンデッドとして蘇るぞ!

これでは迷宮で使えない!

こいつ隷属が効かないぞ!


排斥:

あいつがいると滅びる!

アンデッドにされる前に殺せ!


怨嗟:

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺す殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺す殺せ殺せ殺す殺す殺す殺せ殺せ殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!


生あるもの全てを殺す!


ワレを殺せないものを皆殺す!







前線:

「竜騎士の槍に注意を払え!」

「近づくアンデッドにはヒールを使え!」

矢継ぎ早に指示を出す。


「あ、あの」

「お前は俺の後ろにいろ!」

「は、はい!」

今回の切り札だ、ガレムを視認するまでは使えない。


「ラムダ様、炎使いのアンデッドが現れました!」

「炎はアンデッド自身の弱点でもある、上手く使え!」


「騎士の死体は魔法の鞄に入れて後方に運べ!」

ガレム本人かそれに近しい眷属に殺された者のみがアンデッド化することが判明した。

魔法の鞄はゆっくりだが時間が進む、もし鞄の中でアンデッドとして覚醒した場合は鞄自体が破壊され中身がその場にぶちまけられる。


その様な危険は回避しなくてはならない。


魔法の鞄の容量が大きいからといって死体を誰も彼も入れていくことは出来ないのだ。

身分の低いもの、身分の無いものはその場で処理する。

「死体は残すな、燃やせ!」


これは不死の軍団専用の焦土作戦だ。

これしかないとしても最低の戦術であり、このようなことしか出来ない我々は最低の騎士だ。


だが、それでもやらなくては!


「大規模魔法が来ます!」

巨大な炎の玉が落ちてくる。


「これは!」

大規模どころではない、生贄として術者の命が必要な魔法では無いか!

暗殺者(アサシン)もそうであったが、炎魔法使いまで使い捨てか!!!


「カウンターマジックは!?」

「詠唱中です!」

「落下地点だけでいい、ずらせ!!!」


「後退するぞ!」



ズズズズズズ...全てが燃える。



眼前に溶岩地帯が出来ている。

呪文の途中で炎魔法使いのアンデッドが灰となった。それにより落下地点を大幅にずらせた。


不死の軍とを隔てる溶岩地帯を見ながら呟く。

「これで少し時間が稼げるか...いや、ガレムはこれで死んだのでは?」

灰になった術者自身も巻きこんでいた、あそこにガレムがいたならば、あるいは?





コポンッ!




溶岩から湧き出た気泡がはじける。


その気泡は何かを生んだようだ。


はじけた気泡の中から焼け焦げた、ほとんど骨だけになった手が現れる。

「巻き込まれた犠牲者か...」

沈み行くその手を見ている。


!!!

今、溶岩に沈もうとしたその手は人間の手ではなかったか?

焼け焦げてなどいない、普通の手ではなかったか?



コポンッ!



すぐそばで気泡がはじけ、その中から再び出た焼け焦げた手が岸辺を掴む。


その普通の焼け焦げていない手に力が入る。


ゴボンッ!

焼け焦げた頭蓋骨が、胸骨が、腰骨が、足が地上へ這い出てくる。


その男が、そう陸地に上がった時点で生まれたままの姿の男になっているのだ!


ニヤリと嗤い、手に持った剣を突き出す。

駆けつけた騎士が俺をかばい刺される。


なんだ?

違う!

わかっている筈だ、これを。


このようなものの存在を。


そう、こいつは、

「ガレム!」

ニヤリと嗤う、視認した!


こいつがガレムだ!

溶岩の中を歩いてきた!

つまり、溶岩程度では死なないということだ!


周りを見渡す。

前線部隊のほとんどが今ここにいる。

退避する余裕は無い。


それは俺も同じだ。


刺された騎士がもう起き上がる。

なんだそれは、まるで感染する病気ではないか!


「発動しろ」

背後に隠れている奴隷に命令する。

「え?」

「命令する。神器ジャッジメントを発動しろ」

隷属の呪縛が発動する。


本人の感情を無視して命令を実行する。

「はい、神器ジャッジメントを発動します」

詠唱が始まる。


「神器だと?」

ガレムが興味を示す。

「ああ、今回の切り札だ」

不敵に笑い返してやる。

「そうか、ワレを滅ぼせるのか...」

「ああ、滅べ」


眩く、


輝く、


白い光を放ち、


ジャッジメントが発動する...



全てが光に包まれていく。


俺は、最後まで...抗う...絶対防...




後方指令所:

前線で眩い光が生まれ、天へと登っていく。

「対ショック姿勢!!!」

その号令と共に凄まじい暴風が駆け抜ける。


「早い!」

まだ突撃部隊が前線に到着していないはずだ。


先行して神器ジャッジメントとそれを使う魔力のある女奴隷を送っただけだ。

「どうなって...い、る!」

それを見れば聞くまでもない事だった。


全てがなくなっている。


「ふむ、素晴らしい」

聖騎士が満足げに頷いている。


「神器...これほどとは」




一面、白の世界。



人もアンデッドも、全てが光となって消えた。


しかし、俺は生きている。


絶対防御。

神器発動寸前、一か八か発動した。上手くいったらしい。



ただ、



ひとつだけ、



問題がある。



目の前に転がる、手。



これは、誰のものだ?




ズルリ.........腕が生える。




ゾブリ.........体が生える。




絶対防御発動中は、その絶対的な防御の恩恵の代わりに動けない。


「…………お前か」

元の姿に復元したガレムがこちらを睨む。


「己だけ助かろうなどと半端な事をするからこうなる」

手にした槍で突かれる。


ガッ!

「絶対防御か...まあいい、教会の神器...ワレを滅ぼせる器か」


誰か! 誰でもいい! 気付いてくれ!

今なら、この状況ならこいつを捕縛できる。


「...まさか、俺をどうにかできるなどと思っているのか?」

心を読んだように質問してくる。


「愚かだ」

何かを虚空から取り出す仕草をする。


ベチャ、


グチャ、


と死体が一面に出現する。


どこから出した!?


違う!


奴は剣をどこから出した?

奴は槍をどこから出した?


溶岩から出たときは裸だったはずだ!

手から復活した時もそうだ、魔法の鞄など持っていなかった!


この死体は?


この一斉に動き出したアンデッド達は?


時間と共に復活するアンデッドを死体のまま保管する事ができる可能性。


入れたものの時間を止めるユニークスキル。


その様な物を持っている者の存在は?


いや、そもそも不死などというユニークスキルを持つものなど。


生まれた時点で管理されているはず。


生まれたのではなかったら?


ある日突然この世界に現れたならば?


その様なものの存在は...


「ゆう、しゃ、なの、か?」


その男はただニヤリと嗤う。

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