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ネコと私  作者: 昼行灯
闇の一族編
128/143

127:豪腕のフリム

魔道具屋:

管理迷宮最下層から転移で直接魔道具屋に帰還する。

「…………ちょっと待って」

カーサが見慣れない魔道具をいじっている。


それを見ながら藤原君が話しかけてくる。

「なあ、楠木」

「ん?」

「俺、光魔法と闇魔法5になったんだけど、この光魔法の洗脳と闇魔法の呪いってどんな感じなの?」

光と闇魔法の5で覚える洗脳と呪いの効果を聞いてくる。

「ああ、んー、ちょっと説明しづらいかな。普通に使うなら戦闘中のみの効果のものだよ、洗脳は魅了と似たような感じで敵を寝返らせたりとかで、呪いはおそらく大僧正が特化した感じだったんだと思うけど、呪い殺したりステータスを大幅に下げたりだね」

「えっと、それはつまり普通じゃなければ永続的に使用したり出来るって事?」

「うん、私達がされそうになった隷属とかは多分呪いの類だと思うし、教会とかは洗脳を上手く使っているんじゃないかな、私達の世界でもそうだったけど継続的に洗脳されればそれが普通と認識してくるしね、こっちは明確に洗脳と言う魔法があるから完全に作り変えることが出来るよ」


「えええーと、それってつまり...」

楠木先生は誰か洗脳しちゃったりしてるんですかね?


「んー、藤原君もさ、躊躇しないほうがいいよ?」

「躊躇っていうと...?」

「ここでは隷属の首輪をはめられたら終了だし、洗脳一回でもかかったら終了だし、極端な事を言えば睡眠薬入りの食事食べただけで終了なんだからね」

「リンには我がついているが小僧には誰もいないだろ、ただでさえ迂闊な行動が多いのだから十分過ぎるほど注意しろよ」

クソネコが話しに加わってくる。

「クソネコに言われなくてもそんなことわかってるって」

「もし人質や隷属で敵対するような事があったら躊躇無く殺すからな」

クソネコが俺の肩に乗って、前足で頬をぐりぐりしてくる。


俺がさ、迂闊な行動するのはお前達といる時だけだって


「俺は楠木が見て無いところでクソネコを殺そうと思ってるがな!」

「なーんーだーとぉぉぉ!」

クロと藤原君のじゃれあいが始まる。


「あ、そうだ、藤原君ちょっといい?」

「ん?」

「シネヤーワレー!」

バゴォォォォン! クロの右ストレートがクリーンヒットする。




「何回か進入をしようとした者がいたみたい」

魔道具屋に挑戦しようとする盗賊は少なくない数いるが、日に何度もというのはそうそう無いらしい。

「えーと、私は宿屋出たらウィリアムさんに待ち伏せされててここまで馬車で送られて来たから付けられたとしてもわからなかったかな」

転移する時は誰にも見られてなかったはずなんだけどな、もし気付かれないほどの手練(てだれ)だったなら色々あれだなぁ。


「私はつけられなかったわ、それよりリンちゃんそのクソギルド長の話を詳しく聞かせてくれる?」

プンプン気味のテレスさん。


いまいち理解できていない藤原君。

「ん? どゆこと?」

「えー、話したじゃん。変な人達が来てるって」

「ああ、魔王クロ?」

「我、襲来!」

「なにそれ?」




カラン、コロン、と扉の鐘を鳴らし店を出る。

「じゃあ、またね」

「うん」

「カーサ、今日は外に出るなよ?」

「うん、わかった」

クロが念を押す。


「じゃあ、私は一度ギルドに寄ってストーカーギルド長を絞めてきます」

「手加減してあげてね?」

「殺人許可証を与える!」

クロが殺人許可証を与える。


「じゃあ、俺も市民街のギルド寄ってこうかな」

「気をつけてね?」

()けて死ね!」

クロが念を押す。



私はマルアさんの宿に向かい歩き出す。


ひら、ひらひらと私のまわりを舞うもの。

スッと手をあげると、指に紙の蝶が舞い降りてくる

「………ふうん」


(クロ)

(んんん)

フードの中から眠そうな返事がする。

(眠いの?)

(んー、Zzzz)

「ふふ」

フードからクロを取り出し、優しく撫でる。

(これからが本番みたいだよ?)

(Zzzz)



人気の無い通りへ移動する。

魔眼を使い、周りをぐるりと見回す。

意識をこちらに向けている者、スキルを使っている者に特定する。


「あの!」

背後から近づいていた女性が声をかけてくる。






カラン、コロン、と音が鳴り、開いた扉から三名の人間をはき出す。


ひとりは白いローブの少女。

今回の標的である冒険者リン。

国を乗っ取ろうとしているとの話もあったがとてもそうは見えない、化け物と呼ばれる者達は見た目で判断できないといわれる。しかしそれでも隠せない雰囲気があるものだが、どうみても違うだろう。

その微笑んでいる姿には、強さのかけらも感じないのだ。


ひとりは紅いローブの少年。

ローブに隠れているが、剣を両脇に差している。

二刀流か、それなりの面構えだが相手が悪かったな、こいつの相手をする双剣のシームは剣術4に加えユニークスキル二刀流を持っている


ひとりは忍び装束の女。

おそらくマジックアイテムなのだろう、男の着るまさに忍ぶ者の服ではなく、くのいちが着る相手を魅惑する効果をもあわせ持ったものになっている。

手に装備している籠手もマジックアイテムだ、情報では相当な実力者とのことだが今回の標的では無い。


そして、開いた扉から顔を覗かせる少女。

ここの主人は老婆と聞いたが、この少女は弟子か何かだろうか?

冒険者リンと友好関係があるらしい......使えそうだな。


しかし、このような長時間何をしていたのか、既に不死の軍とローラン軍の戦いが始まっている頃だ。

「出てきたぞ配置につくよう伝えろ。後はスームに任せ我々は戦場へ移動する」



標的が現れたとの連絡を受ける。

「オ、オデはどうすれば?」

「私が背後から隙を作ります。正面から攻撃してください」

「つ、潰していいのか?」

嬉しそうに笑う豪腕のフリム。

「はい、殺せといわれております」

「そ、そうか女を潰すのは久しぶりだ」

嬉しそうに笑う。



標的が来るのを待つ。

わざわざ人気の無い道を選んでくれたらしい。


貴族や勇者という者達は危機感が無いものが多い。

己の力に絶対の自信があるためその様な行動になるのだろうが、我々のように奇襲を主としているものから言わせればただの鴨だ。


前を歩いている少女、少々槍の心得があるらしいが今は無手。

装備もちらりと覗くローブの下は軽鎧でもないただの服、東方の着物、たしか狩衣と言うものだろうか、白いローブに合わせたのか白を基調にした清楚なもの。

マジックアイテムなのだろうが、そのままの姿で貴族のパーティに参加できるほどの整い方だ。

機能性より見た目を重視したのか、その様な装備では何の役にも立たないことを今から証明してやろう。



いつも思う、世の闇を知らない光の中で生きてきた者達が、絶対的な暴力の前に絶望する瞬間の表情の変化は素晴らしいものだ。


命乞いのいとまも無く、確実な死に絶望する瞬間。


今日は特等席でそれを堪能できる。





「あの!」

後ろから声をかける。


「はい?」

振り返る少女、まだ大人になりきっていない瑞々しく生気に溢れる可愛らしい顔。


振り返った少女の背後から豪腕のフリムが音も無く駆け寄り、その右腕を振りかぶる。

「フヒィ!」

フリムの豪腕スキルが発動し、振り下ろされるコブシが数十倍の大きさに膨れ上がる!


フリムへと振り返る少女の顔を目に焼き付ける。

「ひゃは! 絶望しながら死ね、ははは!」

コブシを見上げる少女がこちらを振り返り言う。

「これ、貴女にも当たると思うんだけど?」


「あ!」

フリムを見る。

「ハヒィ!」

嬉しそうに笑っている。

「ああああ」

目の前で少女が掻き消える。

「え?」

コブシが目の前に迫る。



ゴンッ!!!


凄まじい音と共に地面がコブシの形に陥没する。


「フヒ、ヒヒヒ!」

コブシが元の大きさへ戻っていく。

「ヒヒヒヒィ、イ、ア、アデ? 居ない」

地面には絶望の表情を貼り付けて潰れた女と人の形をした紙があるだけ。


「なんだかなぁ」

背後で声がす...る......ぽとりと何かが地面に落ちる。



仲間を殺した男の首を糸で切断する。

豪腕のフリムとかいったっけ、変なスキルだったね。

しかし、こういう人達は平気で仲間を殺すなぁ。

潰れた彼女も潰した彼も両方とも暗殺スキルを持っていた。

「何人殺してきたんだか」

まあいい、こんな雑魚にかまっていても時間の無駄だ。


私たちを見張ってたであろう者達が凄い速さで街の外に移動している。

おそらく不死の何とかというののところに行くのだろう、糸を撒きつけてあるので見失う事は無いけどあまり離れ過ぎるのもよくない。

「糸使ってると転移出来ないのが玉に瑕だね」


隠密を発動し追跡を開始する。



豪腕のフリム、死亡。

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