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ネコと私  作者: 昼行灯
闇の一族編
122/143

121:重役出勤

魔道具屋:

扉に休業の札を掛け店舗保護用の魔道具を発動する。

この魔道具は空間魔法のロックを不完全ながら再現したものだ、並の者ではこの防護を敗れない。


リン達が来る時間にはまだ早い、久しぶりに報告でもしようと思い遠隔通信用魔道具に魔力を通し起動する。

朝も早い事だし相手が気付かない事もある、その時は仕様が無いので錬金でもして時間を潰そう。


繋がったようだ。


遠隔通信用魔道具からカーレラ姉さんの声がする。

「久しぶりだねえ、どうしたんだい?」

「うん、久しぶり、定時報告よ」

「おや、カーサは久しぶりという言葉の意味を解っているのかねえ?」

「別にいいでしょ、許可は出ているんだし」

「そうなんだけどねえ...」

「なんか含んだ言い方ね」

「一族の誰かさんの錬金が5になったという話があるんだけどねえ」

「レベルも上がったわ!」

「おやおや、カーサ、あんたそれ治さないとそのうち痛い目みるよ」

「なにがよ?」

「その考え無しに返答して、しかも新しい情報まで相手に与えるところさね、注意してくれる人いないのかい?」

耳を引っ張られたり、てしてしされたり、お仕置きされた記憶が蘇る。

「い、いないわ!」

「……そうかい、良かったね。あと、嘘をつくときどもる癖も直した方がいいよ」

「ぐぬぬぬぬ!」


「わかっていると思うけど、一人で迂闊に出歩かないことだよ」

「うん」

「そのお友達が凄過ぎて自分がたいしたこと無いなどと思わない事だ、我等が偽りの宝石まで使ってこの身を隠していることの意味を忘れてはいけないよ」

「うん、ってなんで姉さんにそんなわかりきった事言われなきゃいけないの?」

「なんだかねえ、雲行きが怪しいんだよ」

「どういうこと?」

「曰く付きの奴らがそちらへ向かっているらしいのさね」

「いわくつきってどんなやつなの?」

「不死のガレム、魔眼のラザム、魅惑のリリムかねえ」


不死のガレムは死なないと噂のある者、彼の者の手に掛かった犠牲者は不死者となりその配下となる。たしか対処法は、無し。

一度圧倒的戦力で不死の軍団を壊滅させたことがあったらしいが、翌日には壊滅させた軍が不死の軍団に成り果てていたという話もある。

不死の軍は一定期間命を贄として喰らわなければ消滅するらしく、狙われた街を放棄する事で沈静化を図るという。

ガレム本人をどうにかすればいいといわれているが、ガレム自体が存在しているかも定かではない。


魔眼のラザムは、その魔眼と呼ばれる瞳で全ての女性を魅了するらしい。

男性のみで対処すれば済む相手だが、男性に対しても魔眼は魅了こそしないが見られたものの動きを封じると言う。

それに魅了された女性冒険者達がラザムを守っているらしい。


魅惑のリリム、魔眼ではないがあらゆる男性を魅惑するらしい。

狂った魔術師と淫魔サキュバスのハーフとも、人と魔物との合成生物(キメラ)ともいわれる。


「混じり者まで、どういうことよ?」


「情報がねえ、錯綜しているのさ。ローランの宝物(ホウモツ)を持って失踪した宮廷魔術師が闇の手の者だったらしいのだけどね、一時はその件を境に静観を決めたみたいだったのだけどね、先日後を継いだ宮廷魔術師が死んでしまってね、どうもそやつも闇の者だったらしく、王都に戻ってきている王子による粛清か、密かに育てていた勇者の手による暗殺ではないかともいわれていてね」


「なによそれ、ローランに隷属している勇者はいない筈よ、エリック王子はその粛清っていうのをやりかねないかもしれないけど...」

「どうやらカーサのお友達がその勇者とされているらしいのさ」

「なんでよ!!!」

「情報が錯綜しているといったろう、今のローラン王都はおかしいのさ、簡単に得られるはずの情報が手に入らない、ギルバートというのは魔人化したのだろう?」

「うん」

「しかし外では魔物化として情報が広まっている」

「でもそれは冒険者ギルドの情報操作じゃない」

「暴力頼みの冒険者ギルドなのに手際が良過ぎるのさ」



「ま、結論として闇が払拭され過ぎた事を危惧して国力を削ぐことにしたらしいよ、管理迷宮の最下層攻略で他国からも戦力が集中しているから新しい戦力の確保も目的かもしれないね、おそらくお友達も対象だろうね、魔眼と魅惑そろい踏みとか初めてかもしれないからねえ」

「なによそれ?」

「だから気をつけろという事さ、なんなら里に戻ってもいいんだよ?」

「お断りよ!」


「………取りあえずお友達と相談することさね、魔眼なんて実在しないと思うがそれでも魔眼のラザムなどとと言われるのだから相応のスキルがあるのだろうさ、下手に相対さない事だよ、魅了されたら偽りの宝石の効果が切れてしまうだろうからね、それに不死のガレムは戦おうなどとは思わ無いことさね、存在自体も定かじゃないのだからね、もし不死の軍が現れたなら迷わずお逃げ」

「………うん、このことを話してもいいのね?」

「ああ、どうせ同じような情報をローラン国も冒険者ギルドも手に入れているだろうからね」

「わかったわ」


「カーサ、よく見ておくことさ、召喚などという世界の理を捻じ曲げてまで行った術、それにより誕生した者の引き起こす歪みというやつをね」

「なによそれ、まるでリン達が悪いみたいじゃない!」

「違うよ、その子達は被害者さ、悪いのはこの世界とここに住む我々さね」

「なによそれ、」




馬車の中:

(宿を出たら馬車に乗せられた。何を言っているか解らないだろうが我は解っている!)

(マルアさんの宿を出たらウィリアムさんがどうぞ送ります、とギルド長専用馬車かはわからないけど豪華な馬車に乗せられただけね!)

(拉致られたのだ!)

(もしかして私達ピンチ?)

(我ら最大の危機なのだ!)

(ど、どうしよう!!!)


気が動転してオロオロしてる振りをしてると、向いに座るウィリアムさんがニコリと微笑み、声をかけてくる。

「リンさん、読み終わりましたか?」

「あ、はい」

ニコリと作り笑いをして資料を返すと、ニッコリと優しく微笑み返された。

笑顔が怖いなんて衝撃の新事実!


「不死のガレムさん、魔眼のラザムさん、豪腕のフリムさんですか凄いですね」

(二つ名とか(アザナ)ってやつだよね、ダサいよね?)

(格好いいのだ!)

(ぇ~)

不死のガレムさんはSランク冒険者のPTを壊滅させたらしい。

それに魔眼のラザムさんは私とお揃いのスキル持ちです。


「ローラン王都、つまりこの街に向かっているようです」

「はぁ」

「どうしましょう?」

どうしましょうと来ましたか、

「さぁ?」

困った顔をするウィリアムさん。

(ナイスだリン、もっと困らせろ!)

(ラジャー!)


「逃げちゃうとか?」

「はぁ」

この「はぁ」はウィリアム氏のため息です!



閑話休題...



「なんで私にこんな資料を見せたんですか?」

意図が読めない、まあ事前情報が手に入ってよかったけど。

「念のためです」

「念のため?」

「あなたが目的の可能性があります」

「魔眼のラザムさん?」

「はい」


「えーと、じゃあ気をつけます」

「はぁ」

この「はぁ」は以下略。


(うぅ~ん)

(リン、どうしたのだ?)

(なんか最近危機感無いよね、私)

(強くなったからなのでは?)

(うーん、けどギルバートさんには勝てない可能性もあるよね?)

(だが、まだ奴自身のスキルに耐えられる剣を手に入れてなければ楽勝だろう)

(この不死のって人は?)

(不滅では無いだろう、我の極炎で滅せぬものなど無いのだ!)


ああ、そういうことなのかなぁ


「これって、俺達はこんなに強いからどんな準備しても無駄だぜ、わっはっはってことなんですか?」

「いえ、本人達が気にしていないだけのようですね、不死のガレムについては冒険者ギルドが秘密裏に随行させた密偵による情報ですが」

「国に被害が出るとなると、もうローランと色々決めてあるんですよね?」

「ええ、しかしこれが陽動という事も考えられますし、これ以上の能力を本当に持っているならば無駄だぜというのも本当にありえます」

「けど、本当に気にしていないのならただのバカですよね?」

「知らせることでの恐慌効果というのもあると思いますが、一国に対して効果があるのかといえば不明ですね」


(ボス部屋とかさ)

(うん?)

(出たとこ勝負の戦いばっかりじゃん)

(うむ)

(レアボスとか、激レアボスとか前情報無しの敵と命張って戦ってきてるから、こんな前情報垂れ流しの人達に危機感感じないんじゃないかな)

(確かにー、策を弄する隙を与えてる時点でダメだな)


魔道具屋に到着した。


「ありがとうございました」

「いえいえ、お気をつけて、今日はテレスも休みなんですよね」

「はぁ」

「彼女新しい装備を手に入れて浮かれてましたよ、では、よろしくお願いします」

「はぁ」

なんだか、全てお見通しみたいな感じがあれです。

(むかつくのだ!)

なのだ!

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