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ネコと私  作者: 昼行灯
闇の一族編
120/143

119:ガレム

数日前:

ある村からの連絡が途絶えたと報告が入る。

魔物襲来の可能性を考慮し冒険者ギルドから調査隊が派遣される。


結果は、村人全てのアンデッド化。

この規模になると発祥がただのアンデッドとは判断せず、上位種の存在を考慮する事となる。


領主から派遣された兵と、登録されている最高位の冒険者PTによる討伐隊が組まれた。


領主からは騎士(ナイト)を隊長とした回復、斥候もこなせる小隊。

この街の警備を考えると、今出せる中での最高戦力だろう。


冒険者ギルドからは、竜騎士がリーダーのSランクPT。

ナイトに侍、炎魔法を使える魔術師に光魔法使い、そして魔物を狩る事を主体とした冒険者には珍しい暗殺者(アサシン)、珍しい職が複数存在する特徴的なPTだ。


急な依頼だったため十分な準備が出来ていないと一度断ってきたのだが、領主直々の説得もあり参加することとなった。



馬上の竜騎士が愚痴をこぼす。

「久しぶりの地上戦だからあいつを呼びたかったんだがな」

「飛竜でござるか、拙者も乗ってみたいでござる」

侍特有のござる言語が炸裂する。

「あ、わたしも」

二十代半ばの若さで炎魔法を習得した女魔術師。

「ドラゲナィ?」

たまに意味不明な発言をする謎の多い暗殺者。

「あれは人の乗るものじゃありません!」

なぜか怒り出す光魔法使いの女性。

「お前ちびったもんな、あっはっは」

「うるさい!」

「ラブラブ?」

さすが暗殺者、鋭い指摘をする!

「しりません!」

「ははははは!」


「賑やかな連中だな」

「ああ、飽きないな」

仕える者のいる騎士(ナイト)と仲間と共にある騎士(ナイト)、道は違えど志は同じだ。



「隊長、見えました!」

「おう、陣を組め!」

馬上の兵を先頭に攻撃陣形が組まれる。


「戦闘準備だ、リーダーはどうする?」

ナイトが馬を下りながら竜騎士に聞く。


騎士と付く以上乗るのは竜だけではない、騎馬での戦闘も十分以上にこなせる。

「そうだな、」

空を見上げる。

「迷宮で飛竜が使えないのと同じ理由で使えなかった物もあるしな」

馬から降り、魔法の鞄から火竜の槍を取り出す。

「戦闘終了までに戻らないと勝利のポーズ取れないよ?」

「?」

ジャンプスキルについての突込みだったのだが理解されなかったらしい。

悲しそうな表情の暗殺者がウルウルと瞳に涙をにじませる。

「え、あ、ごめん?」

「べつに、いい」



準備が出来次第進軍を開始する。

主導は騎士率いる領主軍、個の戦力では冒険者PTの足元にも及ばないがこれは地上での戦闘。

昼夜の無い迷宮と違い、日の高さで戦術も異なる。

戦い方という点において、常に地上でこの領内の平和を守ってきた彼等に一日の長がある。


「家屋は残っているか?」

「はい、原形を留めている物が多数存在します」

「光魔法のターンアンデッドでいく、使えるものは馬上の騎士の後ろへ乗れ、生存者の可能性もある家屋への火魔法は控えろ」

足の速い騎馬での急接近後ターンアンデッドを詠唱そして離脱するらしい。


「接近してきたアンデッドは四肢を切り首を刎ねろ、特性を見極め後、対処法は魔術師が判断、必要と判断したならば火も使え」

「ハッ!」


「出番無いかもな」

整然と動く軍を見ながら呟く。

「拙者たちは、もしも用でござるしな」

「もしも侍でござる、残念!」

「?」

ウルウルと.........



日暮れ前に戦闘は終了した。


結果は、ただのアンデッドの集団であり魔術師の光魔法と、切断しても動き出す死体を火魔法で燃やす事で殲滅できた。


だが、

指示を出した騎士もありえないと思っていた事。

死者の地といっても過言ではないそこに生存者がいた。


名をガレム。

発見当初アンデッドかと疑い、光魔法のヒールとターンアンデッドで確認を行った。

結果は普通の人間、旅の途中に立ち寄った村がこのような惨事になり混乱しているらしい。



「殺した方がいい、これどうみてもフラグ」

珍しく意見を口にする暗殺者、彼の意見は核心を突くことが多いだけにPT内では重視される。


だが、一定数以上の集団が形成された場合、勘という曖昧なものは受け入れられない。


村から離れた野で夜を明かし、翌日の日の出と共に帰投する事となる。



しかしその夜、

PTの光魔法使いが殺されると同時に闇から死者の軍団が現れ。


そして、

地獄が始まった。









「ゴォォォォォ!」

それは魂の叫びか、竜の咆哮か。

かつて竜騎士だったものが、赤い紅い紅蓮の炎と化して襲い掛かる。


ガレムの首が落ちた地点に紅蓮の奔流が、凄まじい炎の嵐が吹き荒れる!



紅蓮の炎が大地さえも溶かし灼熱のマグマ地帯が形成される。

その中で生きているものなど存在しようもない。


その光景を呆然と見つめ、

「そんなんじゃ、キャーリューさーんって言えないよ」

命を預けてきた仲間の喪失に脱力する。


必死に逃げ出し、生きるために沢山殺し、それでも生きて、やっと手に入れた大事な仲間。


涙が止まらない、なんで、どうして?

「その油断を待っていたぞ」

背後から、耳元で囁かれる。


グッ!

首を絞められる、なんで?


なんでなんでなんで?


みんなに知らせないと......声が出せない!

ナイフで突き斬り抉る。

「痛いじゃないか、そんなことされたら死んでしまうよ?」

さっきまで首が無かった男が耳元で嬉しそうに囁く。


死にたく無い、死にたく無い、死にたく無い、死にた...く





ゴボンッ!

マグマが爆ぜる。


違う、目にも留まらぬスピードで何かが飛び出したのだ。


ああ、空を見る。


そこにはこちらへ向かい急降下する紅蓮の騎士。

しかし、その装備は槍のみで身には一切の装備が無く、虚ろな眼窩がこちらを見下ろす。


刀を抜き迎撃の体勢を取りつつ彼女を見る。


炎使いの彼女だけでも......なぜ?

彼女の体の上には先ほど宙を舞った顔が、ガレムがこちらを見て笑っている。


違う、ああ、首が無いのだ。

彼女の隣に彼女の首を持った暗殺者の姿がある。


ドンッ!

脳天から貫かれる、突いた者は骨のみの竜騎士。




地獄は、全ての死により閉幕する。






しかし、その死に近づく男が一人。

「あれ、みんな殺しちゃったのかい」

軽い口調で軽薄そうな男が話す。

「魔眼の、なんだ?」

騎士と竜騎士と侍、暗殺者、魔術師、死の軍団が攻撃態勢をとる。

「ハハ、止めてくれよ」

魔眼と呼ばれた男の周囲にも冒険者風の者達が立ち塞がる。


「ああ、それだね、もったいない」

アンデッドとなった魔術師を指差し顔をしかめる、珍しい炎魔法の使い手を手に入れようとしたのに、既に使い物にならなくなっている。

「フンッ!」

立ち去ろうとするガレムに用件を伝える魔眼。


「ボクも行こうと思っているんだ、女の子ということだしね」

「好きにしていいという事なんだな?」

「ああ、早い者勝ちだね」

「そうか、ワレはそれには興味が無いが、まあいい」


闇に消えるガレム。



「ふー、怖い怖い」

大げさにかぶりを振る男。

「じゃあ、ボク達もいこうか?」

「はい、ラザム様」

女達が頷く。

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