011:冒険者ギルドにいく
朝、
朝食の温かな香りや、宿泊客の起き出す物音が聞こえてくる時間
ある程度の危険と引き換えに、料金の安いこの通りの宿を使っているもの
駆け出しの冒険者や人に言えない荒事を生業にするもの
さまざまな人が新しい一日を始めるべく、ある者は量のみが多い食事を掻きこみ
装備を整え、他のものに美味しい依頼が取られないよう早足で通りを歩き
またある者は、そんな新米冒険者を冷めた目で眺めつつ迎え酒をあおる
慌しくも活気と退廃を織り交ぜた朝の風景の中
その通りにある店の中で、比較的まともな作りの宿、休業中なのだろうか
既に早朝という言葉がふさわしくない時間だが、扉が開く気配も人のいる気配も無い
と、そこだけ時間が止まったような異質な宿の扉が「キィ」と小さな音を立てて開き
その隙間から、茶色いローブ姿の子供が吐き出される
地理に詳しくないのだろうか、きょろきょろと周りを見回し、行き先を決めたそうだ
とことこと歩き出し、朝の騒がしい雑踏の中に消えていく
こんな場所には似つかわしくない珍客に目を向けていた者達も
既に姿の見えなくなったそれに興味を失い元の怠惰な日常生活に戻る
初めての外泊は散々なものだった、運が悪ければいきなり人生終了の危機とか
「このあたりは、治安の悪い地区みたいだね」
人通りはそれなりに多いけど、女性がほとんどいないし店もほとんど無い
先ほどから不躾な視線というか、獲物を見定める狩人の視線みたいのを感じる
「うむ、無法地帯だな!」
被ったフードの中を右に行ったり左に来たり、たまに顔だけをひょっこり出してみたり
あ、そういえばクロ召喚してからこんな人混みに出るの初めてだね
「クロ、もしかして興奮してる?」
「皆殺しだ!」
なにそれー?
後ろで人が転ぶ、3人目だ
念のため、わざと人のあまりいない場所を選び歩いている
ローブを着ているからスリとかは無いと思うけど
いきなりナイフを突きつけられるとか、無くもなさそうな感じの通りなのだ
なのでわざわざこちらに近づいてくる人は、糸で足を絡ませ転んでもらう
レベル40の魔術師とか倒していても、しょせん私はレベル1なのだ
後ろからばっさりやられれば、INTとMP以外一般人並の私は一撃で終了となる
「ところでリン、どこに行くんだ?」
「取り合えず、あっち」
と、大きな建物のあるほうを指差す
「あれは、なんだ?」
「さあ?」
知らない、取り合えず治安のよさそうなところを目指している
「大きい建物があるとことか、ここよりましっぽいでしょ?」
「そうか?」
たぶん、きっとそう
「リン、建物を鑑定したらどうなのだ?」
「あ、それは名案だクロ探偵!」
「簡単な推理さワトソン君」
えー、クロがシャーロックさんなの?、というかクロって、持ってる知識変だよね?
鑑定!、冒険者ギルド
「冒険者ギルドだってさ」
「冒険者リンの誕生だな!」
え、冒険者になること決定なの?
「うーん、やっぱり冒険者になるしかないのかなあ」
「戦闘してレベルアップしてお金ももらえる、すばらしいシステムじゃないか!」
うん、けど前提に死の危険ってのが付くよね?
「まあ、あっちのほうが治安はよさそうだし行ってみようか」
「うむ」
大通りに出る、
「おー、すごいね」
馬車が余裕ですれ違える道の両脇にさまざまな出店が並ぶ、お祭りみたい
(リン!、取り合えず肉だ!)
クロが、フードから出てくる、弾みで被っていたフードが外れる
黒髪が珍しいのか、すれ違う人がちらちらとこちらを見てくる
普通に主婦みたいな人が買い物とかしてるし、治安はよさそうだし
「まあいいか、」
(リン、あっちだ!、はやくはやく!)
クロが頬をてしてし叩いてくる、ちゃんと念話に切り替えるんだね、えらいえらい
「そうだね、食料の補充をしておこうか」
昨日寝るときに減っていたお金が、なぜか今朝増えたのだ!、不思議!
しかも、使えそうな食器やテーブル、椅子なども色々と増えたのだ!
ちなみに、お金は金貨が50枚くらい増えた、摩訶不思議!
「あのー」
クロのリクエストで、肉を串に刺して焼いている屋台に入る
「らっしゃい!、お嬢ちゃん可愛いねサービスしちゃうよ!」
威勢のいい声が返ってくる
「これで、何本買えますか?」
と、金貨を一枚見せる
「金貨かい、うちのは一本銅貨2枚だから、えーと」
「5本で銀貨一枚なんですか?」
当たりをつけて聞いてみる、おそらく金銀胴なのだろう
「そうそう、だから金貨だと50本か焼きあがるのに少し時間が掛かるけどいいかい?」
「あ、はい、ここに座って待ってていいですか?」
「いいよ!、お嬢ちゃん魔法の鞄持ってるのかい?」
マジックアイテムかな?、アイテムボックスみたいなものだろうな
「はい、お皿で2本いただいて、残りと後は5本ずつで別けて貰えますか?」
「はいよ、じゃあまず2本だ!」
焼きたての肉串が渡される、いい匂いだね
(リン、くれくれ)
クロが肩から飛び降りてきて、肉串をガン見している
(熱いよ、気をつけてね)
肉を串から外して、お皿に乗せてあげる
(火魔法の使い手である我に熱など効かんのだ!、むぐむぐむぐ)
凄いね!
金貨1枚=一万円
銀貨1枚=千円
銅貨1枚=百円
お金の価値は、こんな感じかな?、大体わかったし良しとしよう
少し塩味がして美味しい、けど、ちょっと筋が固い
クロは、むぐむぐ言ってるくせに普通に食べている、さすが獣だ!
てしてししてくるので、新たに串から肉を外してあげる、もっとゆっくり食べなね
周りを見る、そんなに珍しいのかな?、こちらを見ている人が結構いる
目が合うとそらすし、うーん、なんだかなあ
パンに肉を挟んだものや、パンがあるし小麦かな、いわゆる粉物も売っている
お好み焼きっぽいのも普通にあるね、タレはソースなのかな?
焼きソバみたいなのもあるや、飲み物も売ってるね、冷たいのかな?
お肉を焼いているおじさんに、さりげなく色々教えてもらう
ここから見える、冒険者ギルドは貴族街のギルドらしい
途中に城壁があり、簡単な検問をしているとのこと、問題発生だね
市民街のギルドは、この道を城と反対にしばらく歩かないといけないみたいだ
「どうしようかな、」
悩んでいると、おじさんに声をかけられる
「お娘ちゃん、ギルドに用があるのかい?」
曖昧な返事をする
「お忍びみたいだしそんな格好しているけど、貴族様だろ?
流石に市民街のギルドはやめといた方がいいよ、面倒が起きるだろうから」
貴族に見えるらしい、やはりあふれ出る気品は隠せないのね!
(貴族リンの誕生だな!)
そうだな!
屋台で売っている飲み物は、冷たくなかった、残念
貴族街に行けば魔道具で冷された飲み物も売っているらしい、むーん
検問を観察する、、、、、
「お前、まて!」
まったく、そんな風体でここを素通り出来ると思っているのか
「冒険者か?、ギルドカードを見せろ」
「まて、そこのお前、列に並べ!」
くそう、勝手に通ろうとするな!、馬車が来る
「ほら、そこをどけ!、馬車の通行を邪魔するな」
貴族の機嫌を損ねたら一発で俺の首が跳ぶ
くそ、またか
「まて!、勝手に通るな」
何で子供がひとりでこんなところにいるんだ
「はい?」
子供がフードを取る
「あ、失礼しました!、どうぞお通りください!」
くそ、貴族のお忍びかよ、最初から顔を見せておいてくれよ、機嫌は大丈夫か
「ご苦労様」
ふう、よかった、あ、またか
「おい、お前勝手に通るな!」
「ふふふ、みっしょんこんぷりーと!」
「さすがだリン、ぱーふぇくとだ!」
クロがぐりぐりしてくる、うむ、なでなでする
貴族街、
こっちは区画整理されているんだ、道もぐねぐねしていない、よく出来た都市だね
背後からの侵攻不可、城壁内は進軍しやすく外からは市民街の迷路で侵攻しづらい
ま、そんなこと、どうでもいいか
こちらは、屋台がほとんど無いな、ちゃんとした店が立ち並んでいる
「リン、取り合えず肉だ!」
「取り合えず肉って、なにそれ」
しかし現実は厳しい
「高いっす!、クロ君高いっす!」
「むうぅぅ!」
値段が5倍くらいになってます、肉串が1本銀貨一枚
「クロ君、こちらの宿に泊まれない可能性が出てきました!」
「ぬうぅぅ!」
たぶん、最初のとこと同じ位、一泊金貨5枚くらいな気がする
けど、安全をお金で買えるなら、うーん
「世の中厳しいね」
「うむ、諸行無常だな!」
そうだね!
宝物庫からぱくってきた物高く売れないかな?
簡単に足がつきそうだし無理かな、やっぱり損害賠償は現金にしておくべきだった!
「冒険者ギルドってとこ行こうか」
背に腹はかえられない
「殴りこみだな!、腕がなるぜ!」てしてし
鳴ってないし、殴り込みじゃないからね?
フードは被ってた方がいいのかな
「じゃあ、いこうか」
貴族街に建つ貴族の屋敷以外で、一際目立つ大きな建物、冒険者ギルド
ここは、貴族の子息の修行のため、商人の通行証代わりのギルドカード発行
市民街のギルドで一定の成果を上げさらに上を目指すものが集まる場所
確かな力を持つもののみが入ることを許される
それは、
権力
財力
武力
種類はさまざまだが、力という一点でのみ評価される
その扉を、茶色いローブを着た子供がくぐる
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名前:楠木 凛 種族:人族 性別:女 年齢:16
レベル:1
HP:20/20 MP:100/100
STR:5 VIT:5 DEX:5 MND:5 INT:100
スキル:(特殊)言語翻訳、アイテムボックス、鑑定
(魔法)召喚魔法(式神)、水魔法1、光魔法1
装備:学生服
茶色のローブ
金貨:70(50up)
使い魔:クロ
スキル:火魔法1、風魔法1
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