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ネコと私  作者: 昼行灯
闇の一族編
118/143

117:豪腕

闇の中......声が響く。


「事実か?」


「報告後、連絡が途絶えた」


「確認出来ている内容を言え」


「光魔法の蘇生が使えること、エリックと知己であること、後はランクアップ試験で確認された水魔法と槍術スキルがあるのではという推測だけだ、冒険者ギルドからの情報は無い」


「ウィリアムか...奴は消すべきではないか?」


「ああ、しかしギルバートが魔物化して出奔したらしい、奴一人ならば脅威でも無いだろう、再度内通者の取り込みも容易いだろうしな」


「行方知れずの召喚持ちというのは確実なのか?」


「似ている、ということだが」


「何も分かっていないと同じだな」


「どうするのだ?」


「蘇生があるならば教会が動くだろう、召喚持ちだった場合奴等に渡るのは不味い」


「新しい神子候補が出来たと聞いたぞ、育成に夢中だそうじゃないか」


「神降ろし......神の顕現か、その神子もローランが召喚した勇者ではなかったか?」


「ローランの国崩しは頓挫しているのだろう?」


「奴がいない以上ローラン崩しは不可能だ、一度力を削ごう」


「フレデリックかエリックのどちらか、もしくは両方を消そう」


「カーライルとの紛争を起こさせる計画はどうなったのだ?」


「失敗した」


「無能が多いな」


「おまえもな」


「………」


「冒険者の捕縛もしくは抹殺、そしてローラン王族の抹殺、これでいいだろう」


「部隊を編成するか?」


「個人主義の我々が?」


「近隣の者に触れを出せばいい」


「ローランは情報が少なすぎる、目も派遣しろ」


誰が――――のだ――――


豪―――速―――――魔眼―――――魅―――――不死――――






男が一人佇んでいる。


巨漢だ。

オークと見まごうほどの巨体、服の上からでもわかる異常に発達した筋肉。

袖は肩の部分から無造作に裂かれ、そこから伸びる腕はまるで丸太のように太く、その先には自然の岩のような拳がゴロンと付いている。


「フリムさん、お願いします!」

動きやすい装備を身に着けた冒険者がすれ違いざま、巨漢、フリムという名らしいに声をかける。

「オ、オゥ」

低い、しかしよく通る声でフリムが返事をすると共に、目の前に魔物が現れる。


ロックリザード!

その体皮は岩の如く、あらゆる攻撃を跳ね返す。

有効な攻撃手段は魔法による非物理攻撃、武器での物理攻撃はスキルによる遠距離攻撃が基本、直接攻撃はその防御力ゆえに武器の破損を覚悟しなくてはならないからだ。


グオォォォ!

叫びと共にロックリザードが突進してくる。


男は浅く腰を落とし、体を少し捻り、コブシを握り。

ゴッ!

振り下ろしのフックを放つ。


まず、大きさが違う。

男よりひとまわりは大きい魔物の全身による体当たり。

男のコブシは大きいといっても小岩ほどの大きさだ、当たったとしてもその突進は止められない。


そして、名が示す通り岩の硬度を持つ攻撃に対しただの素手による攻撃だ。



ズンッ!

地面が揺れる。


冒険者がゆっくりと振り返る。

わかっているのだ、フリムという巨漢の攻撃がただの攻撃で無いことは。

震源地をみればコブシの形に抉れている地面と全身が何か大きな力により叩き潰されたロックリザードの死体。


そう、全身がそれよりも大きなゴブシの一撃により叩き潰されているのだ!



豪腕のフリム!

その巨漢の通り名だ。




ロックリザードから魔石と売れる部位を剥がしていく。

「あ、魔石欠けちゃってますよ」

「す、すまん、オデ手加減できない」

フリムさんがすまなそうに謝ってくる。

「別に気にしないでください、私は魔物を釣って来るだけで倒すのはフリムさんにまかせっきりなんですから」


部位を剥がすのにてこずっていると、フワッと一陣の風が吹きぬける。


「よしっ、取れました!」

見上げると、こちらを覗き込むフリムさんと見知らぬ男が一人。


ゾクッ、と悪寒が走る。

これは強い魔物と出合った時のそれに似ている。

「あ、あの、そちらの方は?」

フリムさんに尋ねる。

「オ、オデの仲間」

フリムさんが振りかぶる。


ズンッ!





ローラン王都に向けて旅立つ一行がある。


一人は、オークと見まごうほどの巨漢。

一人は、大きな盾を背負う重戦士。

一人は、双剣の戦士。

一人は、腰に短刀を差しただけの軽装の男。

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