112:次元の迷宮
仄暗い通路に一人の少女が佇んでいる。
その頼りない光源は少女の背後、行き止まりの床が不可思議な模様に輝いているだけだ。
その光も徐々に輝きを失いつつある、少女の前に広がるのは真なる闇、それはまるで全てを飲み込むかのように大きく開けられた絶望の顎門。
光を反射し美しく輝いていた絹のような少女の黒髪が闇色に染まろうとした時、それに抗うかのように黒絹の中から何かを生み出す。
しかし、
なんと言うことだろう、闇の侵食から抗うために生まれ出たそれは漆黒!
闇よりもなお暗い漆黒のそれは、少女から離れ宙に舞い、自然の理の外に存在するかのようにその場に浮き続ける。
ふよふよ~、と宙を漂うその漆黒は美しいエメラルドグリーンの瞳で少女を見つめ言葉を紡ぐ。
その言葉は闇への誘いなのか?
それとも死への誘いか?
この少女は絶望の果てにここへたどり着いたのだろうか?
漆黒の闇がその鋭い牙を隠した口を開き………
「リンー、はやくはやく!」
「はいはい、光よ!」
光魔法のライトが迷宮内を照らす。
ライトの灯りの周りをふよふよと漂うクロを捕まえながら洞窟の壁を鑑定する。
「放すのだ~!」かみかみ!
「ふよふよ浮いてたら格好の的でしょ、クロ油断し過ぎです」
クロのお願いで次元の迷宮に来てます、街にいてもなんか色々面倒な事が起きそうなのでね、まあなんていうか実際起きたしね!
管理迷宮には直接中に転移できるから閉鎖されてても行けるんだけど、調査隊とかいたら面倒だし、なによりギルバートさんに遭遇する可能性かあるから止めておいた。
二人だけっていうのも久しぶりだし、たまには隠し事無しの全力で戦っておきたいしね、クロも最近ネコのふりばっかりでストレス溜まってるっぽいしっていうかネコなんだけどね!
ゴブリンの迷宮(1/6):
「ゴブリンの迷宮だって普通だね」
「雑魚の迷宮と名付けよう!」
「6F構成かぁ、普通のとこより2F多いけど」
「グギャ、ゲギ「ヒュン!」ピャ!」
早速出てきたゴブリンの首を糸のひと薙ぎではねる。
「強さも普通だなぁ、じゃあクロ好きにしていいよ」
「うむ!」
腕の中でじたばたと遊んでいたクロが嬉しそうに飛び出し先行、手当たり次第楽しそうに虐殺を行う、まさに虐殺ネコ!
1Fボス部屋:
ゴブリンリーダー、ゴブリン×5
「衝撃の右!」
クロが右前足で地面をたしっと叩くと、ゴブリン達があっけなく潰れる。
2Fボス部屋:
ゴブリンリーダー、ゴブリンファイター×4
「撃滅の左!」
クロが左前足で地面をたしっと叩くと、ゴブリン達があっけなく潰れる。
3Fボス部屋:
ゴブリンナイト、ゴブリンファイター×2、ゴブリンメイジ×2
「抹殺の尻尾!」
クロが尻尾で地面をぺしっと叩くと、ゴブリン達があっけなく潰れる。
4Fボス部屋:
ゴブリンナイト×2、ゴブリンメイジ×2、ゴブリンヒーラー
「うりゃぁ!」
クロの掛け声と共にゴブリン達があっけなく潰れる。
「ネタ切れ?」
「にゃん!」
5Fボス部屋:
エリートゴブリン×5
右手を軽く振る、ヒィンと空気を斬る音が一度だけ鳴る。
「ギャ?」
何が起きたか理解していないエリートゴブリンご一行、剣を振りかぶりこちらへ向かい一歩踏み出した時、ズリッと腰からズレる。
「お前はもう死んでいると言うやつだな!」
「そうだね」
6Fボス部屋:
エリートゴブリン×5
「うーん、さっきと同じだね」
「うむ、極炎!」
ゴブリン達が吹き飛ぶ
宝箱を開け鑑定したらアイテムボックスにしまい脱出用魔法陣に乗る。
収穫で目ぼしいのは、剣術の巻物と火魔法の巻物と光魔法の巻物です。
「そういえばカーサ光魔法無かったよね、売ったら自分で使うかな?」
「使うだろうな、後衛なんだし丁度いいだろう」
「だねぇ、クロはこの剣術使う?」
「んーむ、いらんのだ、既に爪による斬撃は飛ばせるし、いまさらスキルとか覚えてもやりづらいだけなのだ」
「けどあれだよ、武技系のスキルって発動すると無理な体勢からでも勝手に動くみたいだよ、隙を突く時とか結構便利っぽいよ」
エリック王子の付き人ラムダ君と戦ってそう思った、スキルは使い方によっては本当に反則的な動きが出来る。
女性の前衛冒険者というのは非現実的なものだと思っていたけど、スキルがあれば男女の差など関係なくなるというのも何となくわかる。
「我は念動力があるからな、それにもう少ししたら魔闘技に覚醒するしな!」
「根拠のない自信だね!」
「むぅぅ、リンだって剣術ないじゃないか、自分で使ったらどうなのだ?」
「んー、私は糸があるからなぁ、槍術ならひのきの棒用にとってもいいけどねぇ」
「リンは何でも出来てずるいのだ!」
「クロだって何でも出来るじゃんかー」
「てれてれてれ」
照れ顔をしながら頭をぐりぐり押し付けてくるクロを撫でる、可愛いやつめ~。
まあクロの発想には色々助けられているからね、これからの予定でもクロ頼りだしね。
水辺の迷宮(1/1):
目の前に人が一人通れるかという幅の通路と、底が見えない淀んだ水というか池というか地底湖?
「うーん、1Fだけみたいだからこの通路の先がボス部屋だと思うけど」
「さかな?」
「かなぁ?」
水中に糸を放つ、底はそんなに深くない私の背より少し深いくらい、って引きずり込まれたら溺れちゃうじゃん!
「あー、なんか魚っぽいのとかが泳いでる、このまま斬ってみようかな」
手近なやつに糸を絡めてクイッと引く、むむむ
「どうだったのだ?」
「殺ったけど、沈んでった」
「むむむ?」
「ちょっと待ってね」
操る糸を一本だけにして、いたいた、絡めて絡めてー
「とおっ!」
バシャ、という音と共にグロテスクな魚っぽいのが釣れる。
「釣りキチリン平の称号を贈ろう!」
「ありがたき幸せ!」
陸でバタバタ暴れている魚っぽいのを鑑定したら魔物でした。
「これってさ、食べれたりするのかなっていうかクロ君ネコなんだから食べてみたら?」
「だが断る!」
「なんか珍しそうだし持って帰ってみる?」
「だが断る!」
「うーん、まあそうだね出所聞かれても面倒臭いしやめとこうか」
「だが断る!」
「だが断る!」
「むぅ!」
「むぅ、じゃないよ、私が何考えているか当ててみて?」
「だが断る!」
「だが断る!」
「やーなーのーだー!」
逃げ出そうとするクロをがっちりと捕まえる。
「クロバスさんボス部屋までお願いしますねー」
「むぅぅぅ!」
ふよふよ~
ふよふよ~
ふよよ~、斬!
ふよふよ~、斬斬斬!
ふよよ~、ヒュン、ズババババッ!
空を斬る音の後に水面と共に集まっていた魔物が真一文字に裂け、水底が見える。
通路なんか歩いたら引きずり込んでくださいといっている様なものだからね、クロの念動力で宙を飛んで行ってます。
魔物の姿が見えたら私の糸で一刀両断、ふよふよと不安定な空中で指先だけで操れる糸はまさに最適な攻撃手段!
「リンばっかりずるいのだ!」
「クロも念動力使いながら魔法使ってみたら?」
「むぅぅ、はっ!、リンの氷魔法で水を凍らせればいいのではないか?」
「お、さすがクロ探偵名推理です。しかしボス部屋はもう目の前なのですよ!」
「ぐぬぬ!」
ボス部屋前の陸に着地する、クロ君が頬に強めにぐりぐりと頭を押し付けてくる。
「はいはい、ごめんごめん、だけど念動力の訓練しといたほうがいいじゃんか」
「むぅぅぅ!」
「ほら、ボス部屋入るよ」
「むきゅ~!」
水辺の迷宮ボス部屋:
扉の前に少しだけ陸があり、そのほかは全て水という環境はなかなかにヘビーな戦闘条件だよね。
背後で扉が閉まり、部屋の奥の空中に蛇みたいな魔物が現れ水中に潜っていく。
「うーん、クロどうする?」
「まかしろ!」
「じゃあ、まかした?」
戦いたがっているクロ君に任せることにした。
なぜか?
だって私、氷魔法と雷魔法持ってるからさ、水を全部凍らせたら終了だし、雷を水に落としても終了だし敵からしたら相性最悪だよね!
「うぉぉぉぉぉぉおおおお!」
「燃えろ我の小宇宙!」
ふよふよ~、と宙に浮くクロ君
「喰らえぇぇぇ、ビックバンクラァァァァッシュ!」
黒い火の玉が水面に向かって飛んでいく、一気に水を蒸発させるだけの威力のある炎の魔法だ
うん、そんな気がした!
むぎゅっとクロと掴んで扉まで後退し水の壁で周りを何重にも囲みそれを凍らせる。
ジュっという音と共に凄まじい水蒸気爆発が起きたのがわかる、氷魔法で常に凍らせている水の壁が溶かされていく、んー
水の壁に糸を張り巡らせ氷魔法を展開する。
「これで平気かな?」
「リン、我の必殺技はどうだ!」
「凄いね?」
「うむ!」
わしゃわしゃわしゃ!
「なーにーをーすーるー!」
「わしゃわしゃの刑です」
「むきゃぁぁぁぁ!」
わしゃわしゃわしゃ!
「むきゅ~!」
むきゅ~なクロ君をローブのフードにしまい、宝箱を開け外に出る。
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名前:楠木 凛 種族:人族 性別:女 年齢:16
レベル:18
HP:290/290 MP:560/560
STR:285 VIT:275 DEX:305 MND:275 INT:560
スキル:(特殊)言語翻訳、アイテムボックス、鑑定
(技) 隠密5、罠解除1
(魔法)召喚魔法(式神)、空間魔法5
火魔法5、氷魔法1、雷魔法3、土魔法5
光魔法、闇魔法5
(自動)HP回復、MP回復、クリティカル
装備:普通の服、偽りの宝石、魔法の鞄
聖魔の糸+5:ALL100、HP回復、MP回復
白のローブ:INT20
素早さの靴:DEX10
魔力の腕輪:MP20
力の腕輪 :STR10
ウサギの尻尾:DEX20、クリティカル
使い魔:クロ
スキル:(特殊)念動力
(武技)格闘術5
(技) 隠密5
(魔法)炎魔法2、水魔法2、風魔法5、鉄魔法3
光魔法5、闇魔法5
(自動)HP回復、MP回復、クリティカル
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