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ネコと私  作者: 昼行灯
管理迷宮編
112/143

111:盗賊ギルド03

閉ざされていた冒険者ギルドの扉が開き、女性が一人出てくる。


「代表の方とお話したいのですが、どなたですか?」

その服装からギルド職員と判断できるこの女性が交渉役らしい。

しかも、その見られることを意識した制服は裏方ではなく受付業務担当なのだろう、交渉内容を既に指示されているならば適材であるが、それにしても一人だけとはそれほど我々が恐ろしいのか、所詮はギルバートという一人だけの力に頼っていた烏合の衆と言うことか。


開け放たれたギルドの扉からは冒険者が我関せずの風で出てくる。

ある者は肩をすくめながら、ある者は争う意思無しの表現か両手を挙げながら距離を取りつつそれぞれギルドから離れていく。



冒険者などといっても所詮はこんなものか、暴力に頼るしか能の無い無能者共め!


同志達に目配せをし人の壁を作る、団体交渉で代表を作るのは得策でない。

そこから切り崩しに来るからだ、中で話し合いましょうなどと言い出してくる可能性もある。

あくまで団体として交渉し、公然の場で謝罪させるのが目的なのだ!


そうだ、ここで土下座させよう、冒険者達も彼女を見ている。

自分たちを使ってきた職員が目の前で土下座をしたらどう思うだろう、フフフ興奮する!

「我々に代表はいない、「貴方ですか」我わ―――あ?」


パチンッ!

と指を鳴らすのを、

ピアッシングアロー!

スナイプシュート!

スラッシュ!

キエンザン!

吹き飛ぶ手足を宙に舞った頭が驚愕の表情で見ていた。


暴徒を取り囲むように各々指定位置へ移動した冒険者達、その皆が注目していた受付嬢サラからの合図。


サラの合図と共に各PTの狩人が喋りだした者を認識指示しその対象へ四方からの武技による確殺。


「なっ!」

「ひっ!」

「あああ」

「ちっ!」

暴徒たちが何が起きたか認識する前に虐殺が始まる。


殲滅作戦、四方八方を囲み近づくことなく遠距離からの攻撃。

スラッシュ!

スラッシュ!

ハドーケン!

キコーハ!

ウィンドカッター!

ストーンランス!


「視界を塞ぐスキルは禁止だぞー!」

「費用の掛かるスキルは使うなよー!」

「木の矢なら使い捨てだからいいだろ?」

「そっちいったぞー!」


暴徒を先導していた盗賊ギルドの者達は素早く事態を認識し逃げ出そうとするが、武技の的の集団から抜け出たところを複数人で囲まれ殺されていく。



ほどなく動く者がいなくなる。



「火魔法使いは、ファイアーウォールで燃やしてくれ」

「風魔法使いは、街に臭いが行かないように頼む」


死体がファイアーウォールで燃やされていく。

「あづいぃぃ!」

「ひぃぃぃ!」

死体の下に隠れてた者や死に損なっていた者の悲鳴が聞こえる。



「すげー統率されてんな」

一瞬で片が付いたのでギルドから抜け出すタイミングを逃した俺。

「戦争経験者がいたみたいだからな、それに魔物に比べたら命のやり取りを知らない奴等なんてなぁ」

顔をしかめながら答えるライ、おそらくこの光景が後味が悪いといった理由だろう。

「しかし容赦ないな」

「見せしめの意味もあるからな、冒険者ギルドに喧嘩売ったらどうなるか」

「ギルド長が一人で全部やっちゃってたから勘違いした者が現れたんでしょう」

サラさんが話に加わってくる。


「灰になるまで燃やすの?」

「いえ、ある程度燃やしたら管理迷宮へ運びます、せっかくの養分ですしね」

さらりと怖いことを言うサラさん、死体まで有効活用するなんて

「冒険者ギルドこえー!」


っと、この気配はバカネコに吹き飛ばされた鑑定持ちのやつとガーゴイルってやつだっけか、見つかったら鑑定してくるだろうし面倒だな

「じゃ、俺今日はもう帰るわ!」

「フジワラ、メシ屋はいいのか?」

「ああ、また今度頼むそん時は奢るからさ」

「お、マジか」

「………」

「ああ、ジムの分も奢るぜ」


「フジワラさん、」

サラさんが話し掛けてくるが、もう時間が無い。

「サラさん、今から来るやつ鑑定持ち連れてきてるぜ、気をつけようが無いだろうけど気をつけてね」

「えっ?」

言い残し、扉そばにたむろする冒険者達の集団に向かいつつ、ギルドに入ってきた鑑定持ちを指差す。


サラさんの視線をそちらへと誘導しながら冒険者に紛れたところで隠密を発動し消える。




視線を逸らした一瞬で姿を消した彼の技に感心しつつ、こちらに近づいてくる冒険者二人に会釈をする。

「ヨッ!、お疲れさん、ウィリアムから依頼されてきたんだけど、既に片付いているようだな」

陽気に声をかけてくる男性は、たしかギルド長とウィリアムさんともPTを組んだ事があるというガーランドさん、今はSランク冒険者になっているという、今回の最下層攻略にも参加していたはず。


後ろにいる方がフジワラさんの情報では鑑定持ちという話だ。

フジワラさんはギルド長から、いや、元ギルド長から聞いたのかしら、鑑定されたくないらしく姿を消した彼を見る限り確かな情報なのだろう。


じっとこちらを見ている、何も感じないけどおそらく鑑定されているのね。

さすがにこれは気分がよくない、私のスキル不意打ちとか事前に知られていると意味を成さなくなる物が多い、ギルド職員と冒険者が敵対する事は無いけど、こんな場所で堂々とやられるとちょっと殺意がわいてしまうわね。


「こちらへ」

冒険者達から離れた場所、事務所の奥へ案内しつつ釘を刺す。

「そちらの方、鑑定禁止です」

「え?」

「そちらの連れの方、ギルド内での鑑定スキル使用禁止です」

鑑定の言葉に周りにいたギルド職員の視線が集中する、当然冒険者には聞こえない声で話している、鑑定スキルは貴重だし気に入らないからといって他の冒険者にばらすような馬鹿なことはしない。

「え、ちょ、なんで?」

「ちょっとガーランドさん、どうなってるんですか?」

「まさかまた見破られたのか?」

「取りあえずお二人のギルドカードをご提示ください」


「お前鑑定下手すぎ!」

「え、いや、えぇぇ?」

揉めている、鑑定された事を気がつける者など早々いない、実際私も全然わからなかった、けど誤解しているならばそのままにしておこう。


ギルドカードの所持スキルに鑑定が登録されている、秘密という事ではないらしい。

「ギルドカードお返しします、ウィリアムからの依頼は完了ということでカードに規定の報酬金額を追加しておきました」

対象は既に殲滅済みだがギルドからの指名依頼、市民街ギルドの無事が確認できた時点で一定量の報酬が支払われる。


「ああ、すまんな、ところで」

「ガーランドさん、もし私が冒険者でスキルを見られたのがわかったらどうするかわかりますよね?」

不意打ちというスキル、魔物を狩るより人を狩るほうが適したスキルだ、祖父は有名な暗殺者だったらしいし、先ほど殲滅した中に居た盗賊ギルドの暗部、暗殺ギルドに誘われた事もある。

いろいろあったけど最終的にギルド長に助けられて今に至るわけだけど、もし冒険者だったなら知られたことは死活問題になりかねる、昔の私だったら絶対殺しているだろう。

「俺に聞くのか?」

「貴方の指示でしょう?」

私の所持スキルも既に聞いているはずだ。

「あー、そうだなすまなかった謝罪する、ギルド内ではもう鑑定させない事を約束する」

素直に頭を下げてくる、少し拍子抜けするくらいだ。


一部のSランク冒険者は己の力を背景に傲慢に振舞うものもいるというが彼は違うらしい、もっともこういう人のほうが本質は怖かったりするのだけど、謝罪してくれて体面も保てた事だし。

「ありがとうございます、それと私のスキルは内密にお願いしますね」

「了解だ、しかしあれだ、ギルド職員辞めて俺のとこに来ないか?」

「はっ?」

も、もしかしてこれって、プ、プロポーズ?


キャー!

ガタッ!

ガタタッ!

シャキン!


黄色い声を上げる女性職員と戦闘準備をする男性職員と男性冒険者達。


「いきなりプロポーズとはいい度胸だ!」

「サラさんは渡さん!!!」

「うお、なんだなんだまてまて、」

「黙れ色男、死ね!」

「サラさんは僕の物だ!」

「うおお、やめろー!」



戦闘が始まる。


「サラ、彼Sランク冒険者でしょ、いいんじゃない」

「え、そ、そうかな?」

「カードの預金額凄かったわよ、冒険者辞めても遊んで暮らせるわよ」

「たしかに」

「譲って!」

「え?」


かしましい。



騒がしいギルド内で一人、隅に座り込みぶつぶつと呟く男が一人。

「この国おかしい、ただのギルド職員に鑑定見破られたり、ネコに蹴り飛ばされたり、ユニークスキル持ちも多すぎるし………」


あのサラという職員もおかしい。

ガーランドさんが仲間に欲しがるのもわかる、不意打ちに隠密、もしあれに暗殺が加わればSランク冒険者を一撃で葬る事も不可能ではない。


ソロで最下層を攻略するギルド職員もいるし、魔人になってしまうギルド長までいる。


帰りたい.........けど、たのしそうに暴れているガーランドさんを見る限り無理なのだろうな。

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