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ネコと私  作者: 昼行灯
管理迷宮編
109/143

108:やるか

ギルドの受付カウンター席に座る私とテレスさんに声をかけてきたエリック王子、すぐ後ろに控える隊長さんは威圧スキル持ちのなかなかの実力者、そのさらに後ろには騎士の人達が数人並ぶ


「エリック様は、冒険者ギルドに何か御用でもあったんですか?」

「今回の件をどうするかギルドとすり合わせにきたんだ」

「はぁ、王子様自らですかご苦労様です」

(リン、目上の者にご苦労様は確信犯?)

(てへ、正しい意味での確信犯!)

「リンに会えるんじゃないかと思ってね」

気にした風も無い王子と隊長さん、けど騎士の人たちは少々気色ばむ、そしてテレスさんもって、もー!


うーん、面倒臭いなぁ


(ちょっとクロ君、テレスさんが爆弾発言しないように遊んでてよ)

(やなのだ!)

(晩御飯いらないの?)

(しょうがないにゃあ)


「にゃ!」

「クロちゃん、なあに?」

「にゃん!」

「にゃ!」

ネコ語で会話しだすクロとテレスさん


「どうかなリン、王宮でお茶でも飲まないか?」

「はぁ、王宮はちょっとお断りします」

「じゃあどこかこの辺りで、確か王家と取引がある商人が営む店が」

「えっと、遠慮しておきます」

「つれないなあ」


「国としてギルバートさんの討伐とかするんですか?」

「彼は魔物という事になったからね、当面は、そうだねローランにとって不利益な存在と確認されるまでは冒険者ギルドの受け持ちだね」

だから発表は魔人じゃなくて魔物化にしたんだ、利用できる可能性も模索するのかな実際攻撃的になってたけど思考は普通だったものね


あぁ、勇者を兵器として利用する事を考える人達だ、それが魔人にかわっただけか

「………そうだね、隷属出来れば一番いいんだけど、さすがにあの強さでは無理だろうね」

「はぁ」

いきなり突っ込んだ会話をしてきたので、曖昧な返事をしておく

隊長さんが少し驚いた顔をしている、隊長さんまでが私が勇者という情報の共有者ということなのかな?

「あれを上手く動かせそうな可能性は元PTメンバーであるウィリアムが一番高いからね、国としては全面的に協力する事にしたのさ」

「はぁ、よくわかりません」

「はは、次の可能性はリンの友達のフジワラだねギルバートのお気に入りだったそうじゃないか、そういえば彼の所持スキルがアイテムボックスだけっていうのは嘘だったんだね」

いつのまにか藤原君の情報まで手に入れているんだ、身辺調査は完了していますよってことかな、けど

「無茶な事はしないほうがいいですよ?」

今ローランには鑑定持ちがゴロゴロいる、藤原君自身をどうこうしようとするか鑑定でもしようものならどうなるか、私の召喚もそうだけど藤原君のスキル強奪は絶対に知られるわけにはいかない情報だからね


「女!、エリック殿下に対してその態度はなんだ、不敬であろう!」

いきなり騎士その一に怒られた、どの辺が不敬なんだろ

(口の聞き方じゃないか?)

(えー、一応敬語じゃん?)

(じゃあ、リンが座っててカリカリ王子が立ったままのとこじゃないか?)

(えー、それなの?)

「えっと、ごめんなさい、どうぞお座りください」

長く会話する気無いからそのまま話してたんだけどまいいや、エリック王子に空いている席を勧める

「どうもありがとう」

「隊長さんも、どうぞどうぞ」

隊長さんにも勧める

「かたじけない」

「騎士の方達はあちらの席にどうぞどうぞ」

「ちっがーう!、冒険者風情が殿下に対してその口の聞き方が不敬だといったのだ!」

「えぇ~、そっちなの?」

「あたりまえだ!」

それより主君の会話に割って入ってくる事の方が不敬だと思うんだけど、火に油みたいなのでいわないでおく


「ラムダ、王子の会話に割って入ることのほうが不敬だぞ?」

隊長さん、さすがです常識溢れる対応が素敵です

「ムッ、グッ、しかし!」

騎士その一はラムダ君だそうです

「ラムダは空気を読まないその態度をなおした方がいいな」

「で、殿下まで!、グヌヌヌ!」

逆に怒られるラムダ君、憐れなり


「女!、決闘だ!」

どういう思考をたどってその結論になったのかを詳しく聞いてみたいけど

「お断りします」

「冒険者の分際でふざけるな!」

「冒険者ギルドでそういう発言はやめた方がいいと思いますよ?」

「ハッ!」

ギルド内の冒険者が剣呑な目でラムダ君を見ている


「チッ、少し可愛いからって殿下に色目を使いやがって平民が!」

うわっ、決まり文句のヘイミンガーだ小声で言っても聞こえてるよ?



そう思ったその時、


カタンッ、と椅子がずれる音が鳴り

その者がスッ、と静かに立ち上がる


一連の動作が自然だ、何の力みも無い、その自然な流れの中で自然に呟かれた一言




「殺るか」




そう、

それはまるで眠くなったから「寝るか」と言うように

食事を前にして「食うか」と言うように、ただ日常の一言のような呟き


その自然な一言でギルド内が凍りつく、なぜか?

「いやいや、テレスさん、やるかの「や」の字おかしくない?」

「?」

「え、そこって「?」浮かべるとこなの?」

「たかが女二人、同時に相手にしてやってもいいぞ、なんなら盾だけで相手をしてもいいぞ?」

何言ってるのこの人、

「バカなの?」

「な、なんだとぉぉぉ!」

「あっ」

心の声を喋ってしまいました


「決闘だぁぁぁ!」

怒り心頭のバカの子ラムダ君

「殺す!」

涼しい顔で殺す宣言のテレスさん

「にゃ!」

(殺す!)

何でクロまで加わってるのさ、もー!


エリック王子を見る.....笑ってるし

隊長さんは.............苦笑してる

「いいんですか?」

「ラムダは相手を見た目で判断するきらいがあるからね、いい経験になるよ」

「あれでも親衛隊の一員ですから一筋縄ではいきませんよ?」

「いや、確実に死にますよ?」

スキルとか消える可能性ありますよ?

「さすがに死ぬ前に止めさせていただきます」

「いや、一撃で死ぬと思うんですけど......」

「親衛隊員をなめてもらっては困りますな、ははは」

「さすがに格が違うし手加減してくれるだろう?」

確実にしないよ?




「はぁ、」

どうしてこうなった、


訓練場で対峙する私と騎士その一ことラムダ君、観覧席にはずるいを連発するテレスさんとクロ君に王子御一行、それになぜかの野次馬冒険者達


見てる人多いし、ランクアップ試験と同じ武器でいいかな、これなら一応周知されてるし


アイテムボックスからひのきの棒を取り出す、クルクルクル、コンッコンッ!


野次馬冒険者が騒ぎ出す.........

「おい、あれが噂の?」

「ああ、ランクアップ試験で凄かったらしいぞ」

「特殊な武器なのか?」

「いや、ただのひのきの棒らしいぞ」

「え、それで戦えるのか?」

「槍術か魔槍のスキルがあるんじゃないかって話だぞ」

「マジか、しかしさすがに魔槍スキルはありえないだろ?」

「だけどよ、魔力通さずにただのひのきの棒で戦えるか?」

「それもそうだな、ひのき限定で特殊スキルを持ってるんじゃないか!」

「ひのきの姫か!」

「ひのきの姫だ!」

まて!、ひのきの姫ってなにさ!?


「オィィ、なめてるのか?」

「ラムダ君、言葉使いがおかしくなってきてるよ?」

「ムゥゥ、お前幾つだ?」

「16です」

「俺のほうが年上じゃないか、ラムダ様と呼べ!」

「ラムダ様」

「ムキィィィ、バカにするなぁぁぁ!」

「えぇぇ、なにそれ?」


「ラムダいい加減にしろ、そろそろ始めるぞ」

審判役をやってくれる隊長さん、もしかしてエリック王子はこの状況を最初から狙ってた?

いや、さすがに無いかな


ラムダ君の装備は、非戦闘時に着るハーフプレートにカイトシールドこれは騎士の正式装備、そして訓練場備え付けの刃の潰してあるショートソードいわゆる片手剣という出で立ち、一応気をつかってくれているらしい

フルプレート装備じゃないから頭は出てるし腕も足も籠手と脚絆部分以外は守られていない、その分動きやすいだろうけど頭かな、意識を刈り取ろう



互いに一定の距離を開け.........「始め!」戦いが始まる



相手は騎士、前衛職ではあるけど攻撃職ではない

盾を正面に構え剣は体の横で剣先を下に、盾での受けからの反撃を主体にした構えだ

「さすがに実際戦場を経験しているだけあって油断とかは無いか、攻め辛いなぁ」

今回使えるのは、このひのきの棒と既に公表している水と光魔法、うーん、けど魔法はやめておこうかな


「アーマーブースト!、マジックシールド!」

お、お、なんか防御力が上がっていってる、ラムダ君本気じゃんか!



トッ!

地を蹴る、まずは正面からひのきの棒に魔力を込め、突進の勢いと棒に回転を加え突く!!


ガッ!

盾の中心を狙った一撃、半歩前に出ることで当たりを右に逸らされる

前に受けに来るとか上手いなぁ、中心に当たれば相手が吹き飛ぶ攻撃だったんだけど力が集約される前に攻撃を受けしかも打点もずらすとか


次に備え当たる瞬間、握りを緩め棒を持つ位置を中心にずらす


ブォン、と音を立て左から剣が襲い掛かる

確実に胴体を狙った一撃、相手を倒す攻撃ではなく確実攻撃を当てダメージを与える一撃、ていうか当たったら私死んじゃうよねこれ


ガンッ!

握った手を支点に逸らされた力も利用しひのきの棒を右回転させ剣を上に弾く


まだ、回転を加速させ弾いて上がった相手の右腕の下、がら空きの胴を狙う

「シールドバッシュ!」

「むっ!」

盾がありえないスピードでこちらに突き出される、これもスキルなの?


ガッ!!!

胴を諦め盾にひのきの棒を当てる、っと弾き飛ばされる重量の差か


しかし、体勢的に盾をあんなスピードで突き出せないはずなのに、スキルって発動するとあんなことも出来るのかぁ


トッ、っと着地をし、


ふぅ、しょうがないなぁ


ドンッ!!!

爆裂歩法、からの棒の端を持ちクルンと一回転、からのぉ


「ムゥゥ、絶対防御!」


ドゴンッ!!!

「うっは、なにそれ!」

結構本気の一撃だったのにダメージ無しとか反則だよね!


弾かれたひのきの棒を地面に突き、スキル発動中は動けないのか、がら空きの背に足を乗せ


ドンッ!!!

背中に爆裂歩法、地面がえぐれるほどの爆発、これ自体が攻撃となる


宙でクルンと回転し華麗に着地、ってダメージ無しか

「ほんとに絶対防御なんだね」

けど、発動中はまったく動けないんだね


「じゃ、切れるまで待とうかなぁ」


「ムグググ、参った」


「勝負有り!」

ありゃ、なにそれ?



「絶対防御は一日一回しか使えない特殊スキルでね、使った時点で相手が無傷なら負け確定なんだよ、ご覧のとおり発動後はしばらく動けなくなるしね」

と説明してくれるエリック王子と肩で息するラムダ君

「一対一の勝負で使うとかありえん事態ですな」


こんなスキルあるならテレスさんでもよかったかなぁ

いや、縮地からの一撃だと発動する暇も無いか


(リンばっかり楽しいことしてずるいのだぁぁぁ)

ぐりぐりぐりぐり、はいはい、ごめんね


「ふふふ、絶対防御に魔闘技の究極奥義を撃ってみたいわね、それでも防げるかしら?」

何言ってるのこの人?

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