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4.友達から彼女へ

 それにしても、本当に人気があるとしたら、どんな趣味の人間なのだろう。俺もアリスの人気を支える一人になってしまったことになるが、二度目のレンタルはないだろう。それに、どうせレンタルするなら、自分が思っているような相手よりは、まったく違った娘と遊んでみたいと思っただけなのだから。



「やっちゃんだって、私みたいのが理想だから、レンタルアンケートに書いたわけでしょ。そういう人多いんだよ~。短い時間だからこそ、楽しくはじけられる相手がいいって言う人」

 


 見た目、ダメージのショートパンツを履いて、高校生くらいに見えるが、実際は大学生ぐらいなのだろう。


 とにかく、俺はこれからの時間をこの宇宙人のようなアリスと過ごすのだ。契約時の話では、この部屋をレンタルした子と出た瞬間に、レンタルフレンドの交換は不可になるらしい。要するに交換するなら、部屋にいる今ということになる。つまりは、この短時間でよいか悪いかを決めてくれということなのだろう。


 俺は、今まで会ったことのない彼女に、かなりの興味がわいたので、交換はせずに部屋を出ることにした。アリスの方も、交換させられることがないと分かると、大きく腕を天に突き上げて伸びをした。



「この瞬間が一番嫌なんだよね。だって、交換してくれって言われると、さすがにテンション下がるじゃない! 私は、交換なんてあまりないけどさ。それでもたまに交換したいってお客がいるんだよね。だったら、最初からちゃんとアンケートに真面目に書けばいいのにさ。顔が気に入らないとかいう人もいるんだよね。顔だけはお面つけるわけにもいかないじゃないか。それって、自分の顔見てから言ってよねって思うんだよね」



 上がったり下がったりする声のトーンが、アリスの感情を絶妙に表現してくれる。そのせいか、大した話でもないのにアリスの話術に惹きこまれていく。 


 俺はアリスを伴って、店を後にした。今から八時間、俺はアリスを友達としてレンタルしたのだ。



「ねぇ、やっちゃん。どこに行くの?」



 店を出ると早速アリスが聞いてきた。



「そうだなぁ」


「どこに行くにしても、その費用はやっちゃん出しだからね」



 確かに、契約書に書かれていた。



『どこの施設に入っても、その入場料はお客様にご負担願います。また、飲食に関しましても同様とさせていただきます』



 さすがに、三十を超えたオッサンの俺が、こんな若い子に自分の分は出してくれとは言いにくいし、言いたくない。なので、この契約内容に問題はなかった。それにしても、契約書を交わして、内容を説明されているのだから、ここで言わなくてもいいと思うのだが。



「でもね。ちゃんと言っておかないと、店に入って注文して、しっかりと食べ終わってから、そんなのは知らないって怒鳴る客もいるわけよ。そしたら、こっちだって怖いから、しょうがない今回だけねって払うじゃない。そうすると付け上がって、またごねるんだ。最低な男だよね。やっちゃんは違うみたいだけど」



 違うみたいと言いながら、ちらっとこちらを見る。こうやって、客のプライドをくすぐるのだろう。くすぐられて喜ぶような、程度の低い奴は鼻の下を伸ばして、アリスの手管にはまっていくという寸法だろう。

 


「さて、どこに行くかな」

 


 アリスの手管に乗るほど俺は若くない。それに、相手が俺の理想とは真逆なのだから、チラ見されても何とも思わい。



「アリスはどこに行きたい?」


「私が行きたいところに行ってたら、何のためにレンタルしたか分からないじゃない」



 そう言って笑った。笑った顔は結構可愛い。大口開けて笑ったさっきとは、また違う笑顔だ。



「どうしてだ?」


「だって、やっちゃんが行きたいところに一人で行くのは寂しいから、友達をレンタルするわけでしょ?」


「そうなのか?」


「え? みんなそうだよ」



 アリスは真面目に驚いているようだった。



「そうかぁ。じゃぁ、動物園にするか」



 アリスのような若い子に動物園と言ったらどうなるのだろうと、観察するつもりで聞いてみた。するとアリスは、別にいいけどというように頷いた。


 そうなると、俺は本当に動物園に行きたいのかと自問してしまう。もちろん答えはノーだ。いい大人が、いくら女の子を連れているからって、お決まりのように動物園に行かなくてもいいだろう。


 結局、あそこはどうだろう、ここはどうかなと考えてるうちに疲れてしまった。



「しょうがないなぁ。じゃぁさ、カラオケに行こうよ」



 ということで、カラオケに行くことになった。カラオケなら、遠くまで行かなくてもいくらでも近くに店があるというので、アリスの言うとおりに従う。これはこれで、結構楽しいじゃないか。


 歌う歌は全く違うが、これもまた面白い。それに、年齢が離れていても客であることに変わりはないのだ。アリスとしてもそこのところは良く分かっているようで、古い歌を歌っても、もの珍しそうに聞いては、惜しみない拍手をしてくれた。



 なるほど、レンタルフレンドってやつは結構楽しいかもしれない。



 二時間ほど歌うと店を出た。その頃には、昼を少しばかり過ぎた時間になっていた。さすがに、昼飯抜きで付き合えというのは可哀想なので、どこかで美味しい物でも食べようと提案したが、これまた俺の行きたいところが思い浮かばず、考えるのが面倒になった。



「もう~。食べ物を決めるのも面倒なの? 本当に、やっちゃんって面白い人だね」



 そう言って連れて行かれたのが、ファーストフードだった。アリスは食べなれているらしく、てきぱきと注文すると、運んできてくれた。

 俺は徐々に、アリスという女性に、友達以上の関係を求めたくなっていた。



「アリス、レンタルを友達から彼女に変更したいんだけど。どうかな?」



 会って、三時間程度が経過したところでの申し出だが、これが早いのか遅いのか分からない。それでもアリスは満面の笑みを浮かべて、最後のポテトを指にはさんだ。



「そうこなくちゃね!」


「いいのか?」


「うん、だってやっちゃん、いい人だから。それに私から、まさかのコース変更はできないじゃない」



 というと、ポテトを口に押し込んだ。



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