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幼馴染 おかん  作者: シロクマ
9/22

素人完成

SNS(線)が出てきてから、メールが殆ど広告とかソシャゲのモノばかり。

これが携帯出てきたころの、公衆電話の気持ちなんですかね?

小説でもSNS(線)をそのまま書けるようになれば良いのに。

「ほいッ」


 速くは無いが、真っ直ぐ俺に向かって飛んでくるバスケットボール。

 パシッ! と小気味いい音を響かせて、それを受け止めた。


「おぉ! 今のめっちゃ綺麗な球筋やったね」 


 大海の特訓を始めて約一週間。

 おかんの言う通りパスもシュートも、敵がいない状態だが相当上達してた。

 最初はどうなるかと思ったけど、大海が毎日泥だらけになりながら練習しただけの成果はある。


「これなら十分、大海も試合で戦えると思うよ」

「本当に?」

「後は敵がいる時に、慌てないでこのボールが投げれれば間違いないよ」


 大海の顔に、満面の花が咲いた。

 子供の様にやったやったと、おかんと共に飛び跳ねる姿。これを見れただけで、俺も協力した甲斐があると言うものだ。


 本当にこの一週間いろんなことがあった。


 初日の自滅を皮切りに、最初の二日はボールを探してる時間の方が長かった。

 本格的に練習が始まったと思えば、不良が乱入したり犬が乱入して二時間近く和んだり。

 何よりも邪魔になったのは、あれだろう。


「ウチもホンマ嬉しいわぁ」


 背伸びして大海の頭をヨシヨシ撫でる、おかんこと音無甘露。

 十分おきに電話がかかって来るし、家に帰ったら帰ったで大海との事を根掘り葉掘り聞いてくる。


 色を知って二,三年の青い男女が、人気のない所で二人きり。

 同じ場所を目指すと言う共通点もあり、何度かいい雰囲気になったこともあった。だがその度に、おかんからの電話が邪魔をした。

 ホント何でおかんって生き物は、いつもいつもタイミングが悪いかな。


 ナデリナデリ


 俺が脳内で不満を垂れていると、大海の頭にあった柔らかい手が俺の上に置かれた。

 さっきよりも更に背伸びした、おかんの顔が近い。

 

「謙ちゃんもありがとぉな。 よう頑張ったなぁ」


 視界の殆どがおかんの顔で埋め尽くされ、頭の上の手が今感じる最も強い刺激になる。

 刺激と言っても、もちろん痛みではない。

 暖かい日に優しいそよ風が吹きのけた時の様な、そんな居心地の良さ。


 俺はおかんの顔に手を伸ばす。向かう先は額。

 丁度鏡写しの様な状態だ。おかんは笑うように目を閉じた。


 ピシッ!

「あ痛ッ!」


 デコピンを喰らい、大げさなくらいに首を仰け反らせるおかん。


「撫で返して貰えるとでも思ったか? 高校生にもなって、人前で頭撫でられる恥ずかしさを知れ」

「別にデコピンすることないやろ。イヤやったら口で言いや」


 今度は自分の額を摩るおかん。


 別に撫でられるのが嫌いなわけではない。寧ろ心地が良い。

 しかし自宅ではパンツで過ごす人が外出時はズボンを穿くように、人前で撫でられるのはどうにも羞恥心が擽られる。

 好きなモノだからこそ、尚更。


 俺は体育館の壁に寄せていた、自分のカバンと大海段ボールを担ぐ。

 この数日で段ボールの中身は、殆どがジャージやタオルに変わり重量は減っていた。

 それでも俺は大海と別れるバスまで、これを代わりに運んでいる。


 こいつがあれば、練習以外でも大海と一緒にいられる。

 要するに人質だ。


「明日はいよいよ球技大会本番だし、今日は早めに帰るか」

「せやね。買い物もあるし」


 おかんも自分のスクールバックを肩に担ぐ。


「アッ、待って。その前にちょっとだけお願いがあるんだけど?」


 素手の足が校門の方に向かっていた俺たちは、思わず立ち止まって振り向く。

 そこには自分のバックから、携帯を取り出す大海の姿。


「あの、加藤君のアドレス教えて欲しいな。ダメ?」

「全然いいよ!!!」


 俺の手には、気づけば携帯が握られている。

 基本的に学校でしか会わず、クラスで隣同士の席だった俺たち。

 放課後の特訓も教室から二人でここに来るので、連絡を取る必要性は無かった。


 だから俺の頭には、アドレスを交換するなんて発想が端から無かったのだ。現代っ子なのに。

 ついさっきまで、無ければ良いのにとすら思っていた携帯電話。


 しかし大海の番号が保存された今は、まるで宝物の様に感じる。


「ありがとう加藤君。甘露に教えてもらおうかと思ったんだけど、そう言う時に限って携帯持ってなくて」

「珍しいな。いつも携帯で特売の情報とかチェックしてるのに」


 少なくとも俺の記憶の中で、おかんが携帯を所持してなかったモノは無い。


「ウチかて物忘れぐらいするねんて。まぁ特売の情報は一回見たら覚えてるけどな」


 そんなことを話しながら、俺たちは三人並んで帰路に付く。

 大海に大きな進歩と俺に僅かな喜びを与え、短かった特訓の日々は終わった。

ご意見、改善点などアドバイス頂ければ嬉しいです。

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