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幼馴染 おかん  作者: シロクマ
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特売or絆

人の為に動ける人って、素敵やねぇ

「こんなもんで良いかな?」


 俺は登っていた木から飛び降りて、地上から見上げた。

 薄桃色をした花弁が、跡形もなく散った後の緑が綺麗な葉桜の樹。それに不釣り合いな、針金で貼り付けにされているバスケのゴール。


 場所は体育館裏。雑草が自由気ままに生い茂る元焼却炉。

 ここは期間限定で設けられた、大海ネネ専用バスケットボール訓練施設だ。


「しかしこんな所、よく使用許可が下りたな。立派なゴールまであるし」

「本当だねっ! これはもう上手くならないと、真田君や先生に顔向けできないね」


 部活が原因で協力できなかった真田。

 しかしクラス一つを導く人間の行動力を見くびるなかれと言うが如く、彼は体育館裏の使用許可とこのゴールを調達してきた。

 もちろん学生一人でこんな事が実行できるわけではない。


 真田と俺の直角九十度おねがいが、担任の先生を説得。

 先生の力添えもあり、部活動で体育館に教師がいる間限定で使用許可を貰えたのだ。

 

 ぶっちゃけ使用者の大海が、普段真面目に学業へ励んでいることが大きかったけど。


 何はともあれ俺がゴールを設置する間、準備運動で身体を解していた大海は準備万端。

 直ぐにでも、練習を開始できる状態だった。


 いやぁ体操服で、身体を曲げたり反らしたりする大海。健康的で素晴らしかったなぁ。

 俺は一度自分の脹脛をツネってから、大海に話しかける。


「本番まで時間が無いし、パスとシュートだけを練習するのが良いと思うんだ」


 どんなスポーツでもそうだが、素人の付け焼刃で勝てる競技なんてない。

 しかしそれは悪魔で、相手側がプロだったらの話だ。


 今回相手するのは学力体力共に、俺たちと対して変わらない同級生達。

 勿論猪戸さんの様に経験者もいるだろうが、未経験が殆ど。

 それなら主戦力を猪戸さんに置いて、彼女をサポート出来るようになれば十分に勝負が出来るはず。


「試合中にやることは三つ。味方がパスしやすい所へ常にいる。敵にボールを取られない様にパスする」

 おれはボールを持って、ゴールの前に立つ。

 数回ドリブル。雑草と土で思うように跳ねないボールをキャッチ。


「最後に自分がゴールの近くにいる場合は、迷わずボールをシュートする」


 膝のバネを意識して、踵を上げる。手首のスナップにも注意。

 読んだことなくてもセリフだけは聞いたことある漫画に習い、俺はボールをシュートする。

 宙に弧を描いて舞う、ブラウンのボール。


 バイィィンッ!


 ゴールの縁に当たって、見事跳ね返されてきました。


「って入れへんのかい!」

「しゃあないだろ、久しぶりなんだから!」


 今ここには三人の人間がいる。

 大海とそのコーチの俺。そして遠くから、俺たちを見学しているおかん。


「何でおかんがいるんだよ?」

「何でて、ネネも謙ちゃんもウチの可愛らしい、友達やないの。協力しよと思って」


 言葉の通り、服装は体操服。

 これもおばちゃんネットワークから仕入れた中古品で、現在二つ上の学年で使われている色だ。


「いいよ別に。やってもらう事なんて無いから帰れよ」

「そんな遠慮せんでええやんか。何でも頑張るでぇ」


 パスの練習なら、本当は妨害役も必要だ。しかしおかんにその役は荷が重い。


「ほれっ」

「なっ! 何やのいきなり……ホイッ」


 俺が放ったボールは、横にダイブしたおかんの一メートル右を通り過ぎて行った。

 すぐさま起き上がり、ボールを拾い戻ってくるおかん。

 勢いよく投擲されたそのボールは、俺の頭上大よそ一メートルを通過した。


「満足したか?」

「ちゃうねん! ちゃうねん! ウチ掃除機の扱いとかはめっちゃ上手いねんで」


 それは知ってる。

 家の角や家具にぶつけず、優雅に掃除機を扱うおかんの姿は圧巻である。

 しかしそれとこれとは別。


「それに良いのか? そろそろバス乗らないと、今日の特売買い損ねるぞ」

「なぁ! 今日は惣菜全品二割引きのひぃやんか! お肉がぁ、久しぶりのお肉がぁ」


 右手に鞄、左手に制服を持った涙目のおかん。

 それでも走り出そうとはせず、アワアワと足踏みしている。

 仕方なく俺はおかんが持つ制服を受け取り、目覚ましの要領で頭を抑えた。


「いいからいけ。 財布と携帯は鞄の中だろ」

「イヤでも謙ちゃん……」

「? 他の荷物は俺が届けてやるから、さっさと行って肉をゲットしてこい」


 友達のためとはいえ、おかんがここにいても意味は無い。

 それならいつもの様に、買い物をしていた方がいくらかいいだろう。

 おかんの背中を強めに押して、強引に走らせた。


「あっあんま暗ならん内に帰っておいでよ!」


 最後にそう言い残して、おかんは校門の方へと消えていった。


「じゃぁこっちも始めようか。先ずはパスから」

「はい! 加藤先生」


 うん。いい返事だ。SNSの着信音にしたい。

 先ずはお手本として、おれはボールを胸の前で構える。

 そして手首のスナップを効かせて、内側に押し出すようにボールを打ち出す。


「大体こんな感じだけど、やってみて」


 運動音痴と言われる人は体力や筋力もそうだが、体の動かし方が下手な人を指すのだと俺は思う。

 鉄棒や跳び箱など日常生活において、中々体験することのない動き。

 そこに恐怖などの外的要因が加わり、人は正しい体の動かし方が分からなくなるのだ。


 だからそういう人に教えるには、実際の行動を説明しながら行うのが一番。

 大海は容量は悪いが頭は良いので、回数を重ねれば絶対に上手くなるはずだ。


「腕を内側に(ブツブツ)スナップを押し出す(ブツブツ)」

「じゃぁ投げてみようか」

「エイっ!」


 勢いよく打ち出されるバスケットボール。

 それは突き刺さるように地面へ叩き付けられ、巻き戻しの様な起動で大海の胸元。

 より高めの顔面へ。


「ヘブッ!」


 さっき俺がドリブルしたのと同じ地面と思えない程、鋭いバウンドでせまるボール。

 伸びきった手をガードに回すことも間に合わず、大海はそれを盛大に受けた。


 これもまた漫画とかだと使い古された設定かな?

 リアルだと、笑いごっちゃ無い。

 結局今日は、誰一人としてまともなボールの打ち方が出来なかった。

感想っていうよりも、改善点やアドバイスを良ければ御指南頂ければ嬉しいです

(^^)

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