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幼馴染 おかん  作者: シロクマ
6/22

溜息安売り

コメントありがとうございます(><) とても励まされました!

相変わらず誤字があると思いますが(一応注意はしてるんです、本当に)少しでも楽しんで頂ければ幸いです。 おかん回です(ボソ)

「はぁー」

「謙ちゃんどないしたの?」


 真田たちが昼休みに頑張ってくれたお蔭で、LHRは思いのほか早く終了。

 六限終了のチャイムと同時、クラスは解散。それぞれの放課後を過ごしていた。


 俺とおかんは柔軟な先生の判断のお蔭で、ガラガラのバスに乗って下校出来た。

 バスを降車して帰路を行く途中、贔屓のスーパーでお買い物。

 現在時刻は、夕方六時前。


「どうもしない。強いて言えば球技大会で、皆が希望の種目に入れたことが残念で」

「はぁ?」


 食料品や牛乳とキッチン用品を入れたカゴを持ち、精肉コーナー前で二人突っ立っていた。

 これ以上何かを買うつもりはないが、まだレジで清算はしない。

 少なくともあと数分は絶対粘る。


「あっひょっとして、ウチと離れ離れなんが寂しいとか?」

「そんな訳ないだろ」

「即答!?」

 

 十年近く四六時中一緒にいるのに、今更半日離れたぐらいで寂しくなる訳がないだろ。

 あの後俺は人数合わせでサッカー組に。おかんと大海は、何故かバスケ組に配属された。


 真田が言うには女子の殆どが球技大会に前向きで、やるからには勝たないと派だったらしい。

 その数なんと十二人。

 バスケ部の一人が抜けて女子サッカーの席は、俺たちの所に来た時既に埋まっていた。 


 それならウチらも謙ちゃん見習おか。だね、私頑張るよ。てな流れでお昼終わりに、議題は最終決着。

 当然そこから更に我がままを言う様なことは出来ず、今に至る。

 

「人生思い通りにならないなって事だ」

「まぁよう分からんけど。そやなぁ……」


 俺の顔を覗き込みながら、顎に指先を当てて考え込むおかん。

 そして何か閃いたのか、右手のグーで左の手皿をぽんっと叩く。


「ほな謙ちゃんが球技大会頑張ったら、その次のお弁当で好きなもん作ったるわッ!」

「じゃぁ、今朝食べた卵焼き。あれ凄い美味かった」

「よっしゃ卵焼きやな。定番やから他のおかずも、狙い過ぎへんのがえぇかな」


 おかんは精肉コーナーに視線を移し、鳥のもも肉のパックを手に取った。

 唐揚げか。確かにその二つのコンボは、日本人なら殆どの奴が好きだろう。

 おかんがその視線に気づき、意地悪な顔でもも肉揺らして煽って来る。


「でも本番頑張らな、お弁当はお預けやなぁ」

「何でだよ。まぁ手を抜く気は無いからいいけど」

「言うたな。ほなネネと二人で、謙ちゃんの応援行ったるから頑張りや」

 

 おかんが大海と応援。それは願ってもない申し出だ。

 自分でも分かるぐらい、声色が明るくなる。


「そうか! それなら頑張らないとな!」

 

 女の子にクラス単位で無く、個人として応援してもらえる。それがどれだけ幸福なことか。

 おかんの応援も勿論嬉しい。

 しかしそれは今に始まったことではなく、言ってしまえば家族が見に来るようなもの。

 憧れの女子と比べれば、失礼だがやっぱり劣ってしまう。

 おかんグッジョブだ。


 そんなことしている内に、時刻は六時を過ぎていた。

 このスーパーでは曜日ごとに特売があり、更に六時を回ると食料品は半額以下になる。

 俺はカゴの中から本日の特売商品、豆腐を二丁とり出した。


「おい、早くシール貰いに行こうぜ」

「……うん」


 鶏肉に夢中になっていたのか、俯いていたおかんは遅れて俺の後を付いてきた。

 俺たちが向かったのは、豆腐売場。

 すっかり馴染みになった店員のおっさんに、赤と黄色の派手なシールを二枚貰う。


「全く、たまには定価で買ってくれよな。常連が若いうちからこれじゃ、経費削減でおっさんその内クビなっちまう……」


 …………。

 定員さんが滑った。

 本来ならここで、おかんがツッコんで一笑い起きるはずなんだけど。

 

「ゴホンゴホンッ! 甘露ちゃん元気ねぇけど、どうかしたのかい?」

「さっきまではいつも道理、どうでもいいことベラベラ喋ってたけど」


 俺は豆腐をカゴに戻し、おかんの顔を覗き込む。

 ぼーっと歩いていたせいか、お互い思ったより顔が近づいてしまう。

 鼻の頭がちょっとぶつかった。


「にょわッ!」

「どうしたおかん、ぼーッとして。悩み事か?」

「そ、そんなことあらへんよ! あぁオッちゃん今日も男前やな」


 顔を反らして、俺を通り過ぎるおかん。

 そっからはいつも道理、店員のおっさんと低クオリティ漫才を開始した。


  ◆


 会計を済まして、エコバックの取っ手を片方ずつ二人で持つ。

 今は特に意味は無いが、小さい頃から買い物の荷物はこう持っていた。

 言うなれば、習慣だ。


「あんな謙ちゃん」

「何だ?」

「えっと、今日は湯豆腐やで」


 俺はエコバックの中をのぞいてみる。

 いつもより、口の開きが狭い気がした。

 半額の豆腐二丁に生姜と刻みネギ。湯豆腐以外だと、冷奴ぐらいしか出来なそうな材料が見える。


「もう直ぐ消費税が上がるんだよなぁ。食材や調味料は上がらないって聞くけど、それを育てる肥料やガソリンが上がんなら結局、間接的に値上げされちまうよなぁ」

「せやね」


 珍しく俺が会話の文字数で、おかんを圧勝した。

 しかもお金の話で。

誤字がない事と願って。

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