利息過払い
三人目の登場人物・大海ネネ後編
大海ネネと言う女の子は、とにかく要領が悪った。
それは毎朝段ボールを運んでいる姿を見れば、疑いようは無い。
それは授業中も同じ。
比較的ノートを取る両が多く、古文はうちの学校で不人気な科目に分類される。
大海は頭は良がノートを丁寧に取る為、特に古文との相性が悪いらしい。
だから俺はその次の授業終わり、隣の席の大海に何となく自分のノートを貸してみた。
大海も困っていたのか、その申し出を喜んで受け取る。
それから一週間経っても、ノートは帰ってこなかった。
大海に催促をしようにも、授業中は二つのノートを広げ熱心に書き込んでいる。
更に三日が立った時。
その日古文は無かったが、ようやく俺のノートは帰って来た。
「長い間借りっぱなしになっちゃってごめんなさい。もっと早く返すつもりだったんだけど」
申し訳なさそうな大海の顔に色々不満もあったが、俺は何も言わずにノートを受け取った。
そして直ぐに、良かったと心から思うことになる。
貸し出してから今日までの板書を纏めたルーズリーフを、挟み込む為ノートを開く。
俺は凄く驚いた。
帰ってきたノートは、中身がまるで別物になっていたのだ。
ただ黒板の文字を写していた俺の字の横や、ノートの端に様々な書き込みがされていた。
レ点や現代語に直した時の注意点。一文の終わりに、顔文字で表現される状況表現。黒と赤の二色で綺麗に色分けされ、特に重要な部分はイルカのスタンプが押されていた。
ただ綺麗なだけではなく、観ていて楽しくなる様に纏められている。
「ひょっとして、俺の分までノート取ってくれてたのか?」
「えへへ。私ノート取るの遅いから次の授業に間に合わなくて」
照れ臭そうに笑う大海。
その姿を見た時、胸がざわつくのを確かに感じた。
ドラマや小説で飽きる程見た、得体のしれない嬉しい感情。本当にこんな事あるのかと動揺。
「お詫びのつもりで加藤君のノートも書いてみたんだけど、迷惑だったかな」
「いっ……イヤ全然! 逆に変な気使わせちゃって」
今まで自分がどうやって喋っていたのか、分からなくなるほど戸惑った。
要領が悪いくせに、他人のノートまで丁寧につけてしまう。
そんな不器用で変に律儀で一生懸命な、大海ネネと言う女の子に俺は惹かれていた。
出来れば改善点など頂けるとありがたいです(^^)