卵焼き弁当
話のストックが無くなりました
昼休み。またしてもおかんは姿をくらませる。
食堂や女子トイレの前なんかの、めぼしい所は探したが見つからない。
大海も探してくれているが、連絡はまだ。
と言うよりもいつも何処でもくっ付いて来て、おかんがどこかに行った事なんて無かった。
流石に便所飯ってのは無いだろうから、更衣室とかで昼飯でもとっているのかもしれない?
「昼飯? そうか!」
確かおかんは教室を出る時、何も持っていなかった。
つまり昼休み中に教室へ、弁当を取りに戻るかもしれない。
俺と大海がいなければ、弁当を持っていくために十数秒はそこに止まるはず。
俺は階段を駆け上り、自分の教室へ急いだ。
ちょっとカッコ悪いけど、おかんがいなければ掃除用具の中にでも隠れて待つ。
到着。扉を開き、教室中を見回す。
いない。
「よぅ加藤、どこ行ってたんだよ……っておい何してんだ!?」
掃除用具入れに閉じこもろうとした俺に話しかけてきたのは、クラスメートの真田。その手には弁当を包んだ大きめのバンダナ。
良く知っている差し出されたそれを、俺は受け取る。
手遅れだった。
「音無さんが、お前に渡しといてくれってよ。
ホント今日はどうしたんだよ? お前等」
「おかんは?」
「さぁ? 俺に弁当渡したらまた直ぐ出てったよ。自分の弁当持って」
俺は包みを開いて、弁当箱のふたを開ける。
「おぉ! でっかい卵焼きな」
真田が言うように、弁当箱には肉厚な卵焼きが堂々二つ。レタスで仕切られ衣がしんなりとしている唐揚げと、色合い栄養に口直しとマルチな役割のプチトマト。
唐揚げある為か、何も乗っていない白いご飯。
何て事のない普通の弁当。毎日の様に食べて、見飽きているほどだ。
唐揚げを一つ摘まんで、口に放り込む。
衣の旨みと、鶏肉の弾力。香ばしい風味と相まって、いつもながらに美味しかった。
「そう言えば、今日はこれにするって約束だったな」
球技大会の日、タイミング悪く現れたのはおかんのせいではない。
俺が一か月もグジグジしていたのが、一番の原因だ。
それは分かっている。
なのに上手くいかなかったイライラを、おかんに八つ当たりしてしまった。
たまたまその場に現れた、一人の女の子に。
卵焼きを摘まんで、半分ぐらいを齧る。
少し前に食べたそれよりも、少ししょっぱかった。
「うわっ、俺最低だな」
その時は頭に血が上っていたとしても十三回の着信、二日も無視までした。
今までで一番、自分の事を気持ち悪いと思う。
何時も世話をしてくれる優しい女の子に、こんな状況でも些細な約束を守ってくれる女の子にとんでもない事をしてしまった。
謝る。それしかない。
大海の言う通り何かが変わるにしても、先ずはそれからだ。
ご意見。アドバイス頂ければ嬉しいです(^^)




