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幼馴染 おかん  作者: シロクマ
16/22

おはよう が 言えないやつは……

おはようって言う事が意外と難しい人がいるんですね。

話のストックがもう殆どない!

 その日俺は、息を切らせて教室に滑り込んだ。

 時刻は朝礼が始まる二分前。何とか間に合った様ではある。


 遅れた理由は目覚まし時計をセットし忘れたと言う、単純明快なもの。

 おかんがいない時の自分のダメさも相まって、とんでもなく不快な朝だ。


「何だ今日はお前ら全員バラバラだったな」

「お前ら?」


 教室最後方。廊下側の机に座っていた真田が俺、そしておかんと大海を指さした。

 爽やかな朝日の中で、気まずい空気が目に見えるように出ている。


 いつもは先生が来ても仲良く喋っている二人が、今日はそれぞれの席に無言で座っていた。

 おれの存在に気づかないわけでも無いだろうが、二人ともこちらを向きもしない。

 とりあえず俺は、自分の席に向かう。


 どんどん近くなる大海の顔。

 それにつれて、球技大会の光景が蘇ってくる。

 でも俺は、挨拶をした。なるべくいつも道理に。


 何よりも先ず、すべきことだった。


「えっ……と……、おはようございますです」


 挨拶をすると同時こちに向き直り直角九十度、ガバッと挨拶を返してくれる大海。

 その姿が滑稽で、俺はちょっと吹き出してしまった。


「ダメだった!? あれ、なるべくいつも通りやったつもりだったのに」

「いや逆に良かったよ! 俺も緊張してたから」

「あははは。おあいこ様だね」


 俺の不安はどこえやら。最初こそぎこちなかったが、思いのほかすんなりと打ち解けた。

 鞄を机に置いて、椅子を横向きに座る。


「大海は休みの間……えっ?」


 俺は続いて言葉を綴ろうとしたのに、それは止められる。

 大海は自分の両耳を押え、瞳を閉じる。

 爽やかな音楽を聴く様に優雅な、その姿にしばらく俺は見とれていた。


 大海は瞳を開ける。手も耳から離す。

 再び俺と言う存在を認識た彼女は、その頬に桜色を灯した。


「私ね、要領の良い人間になろうと思ったんだ。しないといけない事を出来るように。

 今の私たちは、いつもの私たちじゃない。だから先ずは何時も通りに戻ることが大切なんだよ」


 大海はそのままの顔で、視線をある女の子に向けた。

 自分の席に一人で座る、俯き気味の初めて見る小柄な少女。


 いつもは訳もなく、どうでもいいことを喋り続けるような元気の塊。

 音無甘露。


 俺たちの視線に気づき、振り返る。しかし直ぐに、その視線をそらす。

 指で押せば潰れてしまいそうな、小さな生き物に見えた。


「何かが起こるにしても、先ずは何時もの私たちに戻ってからじゃない?」


 大海の視線が、俺に戻る。

 何かを期待するような、何かを訴えるような。

 本人はああ言うが、相変わらず要領の悪い奴。


 会話を止める為に両手両耳を塞いだり、こんな時まで他人の為にどこまでも気を使ったり。

 おかんの事なんて、ほっといても良い。

 何か大切なものを失うとしても、そんな事気にする必要すらないのに。

 それよりも、大きなものを手に出来るかもしれないのだから。


 俺の考えは正しいと思う。しかし大海の、その姿がとても眩しかった。

 その不器用で綺麗な心を持つ、大海に惹かれたのだ。


「だな」


 席を立ち、一人で座るおかんのところへ向かった。

 俺が動いたことに気づくと、おかんは教室を出て行こうとする。


「もう朝礼の時間だぞ、席につけぇ」


 しかしそれはチャイムと共に出席簿を肩に置きやって来た、色黒先生が阻む。


「おかん」

 ズビッ!

「座れって言ったの聞こえなかったか?」


 頭に出席簿を喰らったおかんが、俺と先生の間をすり抜け席に戻った。

 お前等もな。と言う先生の言葉で、俺たちも仕方なく戻る。

 それから授業が終わる度におかんは姿を消し、そしてチャイムと共に戻って来た。


 俺たちを避けるように。

感想やアドバイス頂けると嬉しいです(^^)

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