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幼馴染 おかん  作者: シロクマ
15/22

一人の休日

動き出すには、十分な休息!

でも必要以上に取ると、動きにくくなるもんです。

 球技大会の翌日。土曜日。

 目覚ましをセットしなかった俺は、昼過ぎに目を覚ました。


 気怠く何もやる気が起こらない脱力感で、身体は布団を離れようとしない。


 あの後俺は走ってバス停まで向かった。

 しかしどこにも大海の姿は無く、バスが交差点を曲がっていくのが見えただけ。


 メールを送れば、

「大失敗しちゃいました 少し気持ちの整理をさせて下さい」

 と一応返信が来たものの、それ以降は音沙汰が無かった。


 寝ている間に返信が来たかもと、念のため携帯を手に取り画面を表示させる。

 おかんからの着信が、一二件あっただけだった。


 布団の上に携帯を放り投げる。

 結局その日は母親が食事をねだりに来るまで何もしなかったし、誰も訪ねてこなかった。

 

  ◆


 日曜日。流石に寝飽きた俺は、適当な服に身を包んで外出する。

 

 財布と携帯、ポケットティッシュだけを持って町の方まで足を運んだ。

 十代をターゲットにした服屋。アニメとコラボしたコンビニに、どこかで見たことあるような新商品の幟が上がるドーナッツ屋もある。

 どれも興味をそそるが、何故か足が何処へも向かわず素通りしていく。


 その内足が疲れてきて、適当な植え込みに腰を落ち着けた。

 用もないのに携帯を出して、画面を覗く。

 おかんからの着信が十二件。俺はモヤモヤする胸を無視して、電話帳を開いた。


 液晶に表示される、知り合いたちの名前。

 しかしその中に、気軽に電話をかけれる物が思いのほか少なかった。

 『あ』から始まり今は『お』、大海の名前が出てくる。

 

 あれはやっぱり、失敗と言う事になるのだろうか?


「立ち直った? 月曜学校には来るよな?」


 一先ずそれだけ送って、大海のプロフィールを閉じる。

 そこで携帯が鳴った。

 初めは大海かと思ったが、そこに表示されているのは別人の名前。

 

 おかん。

 それは今までずっと一緒にいたのに、今は一番会いたくない奴。


 俺は立ち上がり、ポケットに携帯を押し込んだ。来た道を戻る。

 暫くして、手に感じていた振動が止む。

 携帯を確認すれば、おかんからの着信が十三件に増えていた。


 再びアドレス帳を開き、スクロールする。

 おかんの下には、『母さん』と言う表示。程無くして電話帳が底をついた。


「友達少ねぇなぁ」


 いないと言うよりも、俺が誰かといる時は大抵おかんもいた。

 そして何時もあいつは、会話の中心にいる。

 

 二人一緒なら、アドレスもどちらか一方を知っていれば困らない。どちらかと言えば、喋ってて楽しい方のアドレスを知りたい。

 必然的に、おかんが常に選ばれて来た。


 考えると、知り合いと話せば必ずと言っていいほど話題はおかんの事になる。

 俺とおかんは常にセットで、周囲の人間に見られていたのかもしれない。

 そもそも無理だったが、俺は知り合いに連絡を取るのをやめた。


 ◆


「今日も甘露ちゃん来なかったね」

「だな」


 本当の意味での、母と息子二人だけでの食卓。

 電気もテレビも付いているのに、まるで葬式みたいに暗く会話が無い。

 

 あの後、結局俺は何時ものスーパーで夕飯の買い物をしていた。

 割引になる一時間前から、レトルト製品のコナーを陣取り時間を潰す。

 しかし半額シールが惣菜に貼られる時間を過ぎても、おかんは現れなかった。


「謙信ひょっとして喧嘩した?」


 俺は茶碗に盛られたご飯を、多めに摘まんで頬張った。

 しばらく黙って見ていた母さんも、俺が三口目を頬張ったところで食事に戻る。


「なんか喋れや!」


 思わず振り返る。

 そこには笑いを掻っ攫い、満面の笑みを浮かべたお笑い芸人がテレビに映っていた。

 バツが悪くなり、何事もなかったかのように食事に箸を戻す。


 母さんが鼻からため息を漏らす。


「別に喧嘩じゃない。喧嘩なら今頃はもう仲直りしてる」

「ちゃんと謝らないとダメだからね」


 それは今まで食べて来た中で、最も静かで味気の無い夕食だった。

ご意見、アドバイスなど頂ければ嬉しいです(^^)

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