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幼馴染 おかん  作者: シロクマ
13/22

告白 前編

話のストックが無くなりつつあります(◦Д◦;)

 雑草生い茂る、真っ赤な体育館裏。

 汗臭い体操服から制服に着替えた俺は、夕日に照らされながらゴールを取り外していた。


 ここ何日か、毎日通っていたこの場所。

 いつもより下校時間が早かったこともあり、校内には生徒が殆ど残っていない。

 微かにやる気のある運動部が、体育館で自主練する声が聞こえる程度。


「大海ちょっと、これ取って」

「うん」


 針金とニッパーで片手が塞がっていた為、ゴールを一旦大海に預け樹を降りる。

 

「お疲れ様。私、猪戸さんに楽しかったって誉められちゃった」

「それは良かった。楽しもうとしてた人が楽しめたなら何も言う事ないな」


 大海の持つゴールに残った針金の切れ端を取りながら、俺たちはそんな他愛もない事を話し合う。

 それは余りに日常風景すぎた。

 昨日の大海と交わしたメールも悩み事も、今日の球技大会すら気のせいだったのかと思うぐらいに。


「そういえば今日って話すの初めてだね?」

「あれ? そう言えばそうか」


 朝はボーっとして挨拶を返す暇もなかったし、昼休みはいつも通りおかんのマシンガン世間話。

 午後はバスケの試合を見に行ったが、そのあと直ぐ試合で会話するヒマもなかった。


「まだおはようも言ってなかったな。最近は毎日二人で話してたから、何か違和感がある……ッ!」

「あッ……」


 回収した針金を袋に入れて、顔を上げた目線が大海と合う。

 バスケのゴールを挟んでの会話。大海が屈んでいる俺と会話するには、その形状上お辞儀する形になってしまうのは必然。


 憧れの女の子が、髪が頬を撫でるぐらい近くにいる。

 ここまで女の子と接近した事なんて、おかんぐらいしかない。

 でもおかんの時とは、ぜんぜん違った。

 

 俺は反対側からゴールを掴み、ゆっくり立ち上がる。

 大海と目線が並び、そして追い越した。


「ありがとう。これ俺が教室まで持っていくから」


 グッ!

 受け取ろうとしたゴールを、大海が離さない。

 無理やり奪い取る訳にもいかず、若干距離が縮まった俺たち。


 大海に俺の影が映る。

 紅い世界の中の小さな黒の世界。しかしその世界の中でも、大海の頬は紅かった。

 その瞳には若干の潤い。言葉を絞り出そうとしているのか、固く結ばれた唇。

 

 ここまで来たら、勘違い何て訳がない。

 若しくは大海が誰かと結託して、俺を辱めようと言う遊びの可能性もある。

 だが大海に限って、それは無い。


 別に好きな人だから、色眼鏡で見ているわけじゃない。


「あのね加藤君、昨日のメール。私ちゃんとゴールも決めたし、話聞いてくれるよね」

「うん。でもその前に、俺にも言いたいことがある」


 俺は深く息を吸い込み、一度顔を反らして吐き出す。

 向き直れば再び、すぐ近くに大海の顔。その瞳を真っ直ぐ見て、俺の決心は固まった。

 心音だけは、ドクドクドクと五月蠅く騒いでいる。


「俺は大海が好きだ」


 言った。言って凄く気まずくなった。

 告白する事だけに、覚悟も体力も全部持っていかれてすっからかんだ。

 大海の顔は先程までと同じ紅だが、驚きの色になっている。


 永遠に感じる沈黙。しかしそれは先ほどから鳴る心音が、三拍打つ微かな間だと知れた。


「いつから?」

「えっ?」

「だから私の事、出会ってまだ一か月ちょっとなのに、いつからそういう目で見てたの?」

ご意見アドバイス頂ければ、嬉しいです。

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