告白 前編
話のストックが無くなりつつあります(◦Д◦;)
雑草生い茂る、真っ赤な体育館裏。
汗臭い体操服から制服に着替えた俺は、夕日に照らされながらゴールを取り外していた。
ここ何日か、毎日通っていたこの場所。
いつもより下校時間が早かったこともあり、校内には生徒が殆ど残っていない。
微かにやる気のある運動部が、体育館で自主練する声が聞こえる程度。
「大海ちょっと、これ取って」
「うん」
針金とニッパーで片手が塞がっていた為、ゴールを一旦大海に預け樹を降りる。
「お疲れ様。私、猪戸さんに楽しかったって誉められちゃった」
「それは良かった。楽しもうとしてた人が楽しめたなら何も言う事ないな」
大海の持つゴールに残った針金の切れ端を取りながら、俺たちはそんな他愛もない事を話し合う。
それは余りに日常風景すぎた。
昨日の大海と交わしたメールも悩み事も、今日の球技大会すら気のせいだったのかと思うぐらいに。
「そういえば今日って話すの初めてだね?」
「あれ? そう言えばそうか」
朝はボーっとして挨拶を返す暇もなかったし、昼休みはいつも通りおかんのマシンガン世間話。
午後はバスケの試合を見に行ったが、そのあと直ぐ試合で会話するヒマもなかった。
「まだおはようも言ってなかったな。最近は毎日二人で話してたから、何か違和感がある……ッ!」
「あッ……」
回収した針金を袋に入れて、顔を上げた目線が大海と合う。
バスケのゴールを挟んでの会話。大海が屈んでいる俺と会話するには、その形状上お辞儀する形になってしまうのは必然。
憧れの女の子が、髪が頬を撫でるぐらい近くにいる。
ここまで女の子と接近した事なんて、おかんぐらいしかない。
でもおかんの時とは、ぜんぜん違った。
俺は反対側からゴールを掴み、ゆっくり立ち上がる。
大海と目線が並び、そして追い越した。
「ありがとう。これ俺が教室まで持っていくから」
グッ!
受け取ろうとしたゴールを、大海が離さない。
無理やり奪い取る訳にもいかず、若干距離が縮まった俺たち。
大海に俺の影が映る。
紅い世界の中の小さな黒の世界。しかしその世界の中でも、大海の頬は紅かった。
その瞳には若干の潤い。言葉を絞り出そうとしているのか、固く結ばれた唇。
ここまで来たら、勘違い何て訳がない。
若しくは大海が誰かと結託して、俺を辱めようと言う遊びの可能性もある。
だが大海に限って、それは無い。
別に好きな人だから、色眼鏡で見ているわけじゃない。
「あのね加藤君、昨日のメール。私ちゃんとゴールも決めたし、話聞いてくれるよね」
「うん。でもその前に、俺にも言いたいことがある」
俺は深く息を吸い込み、一度顔を反らして吐き出す。
向き直れば再び、すぐ近くに大海の顔。その瞳を真っ直ぐ見て、俺の決心は固まった。
心音だけは、ドクドクドクと五月蠅く騒いでいる。
「俺は大海が好きだ」
言った。言って凄く気まずくなった。
告白する事だけに、覚悟も体力も全部持っていかれてすっからかんだ。
大海の顔は先程までと同じ紅だが、驚きの色になっている。
永遠に感じる沈黙。しかしそれは先ほどから鳴る心音が、三拍打つ微かな間だと知れた。
「いつから?」
「えっ?」
「だから私の事、出会ってまだ一か月ちょっとなのに、いつからそういう目で見てたの?」
ご意見アドバイス頂ければ、嬉しいです。




