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爆弾幼女  作者: 駿河留守
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シェアハウスにて

「か・・・・・かわいい~」

 まるで人形みたいにぎゅーっとフェイブを抱きしめる榎宮さん。それをまるで受け入れるかのようにフェイブも抱きつき返す。いつもなんか暗いイメージの強い榎宮さんでもこうして頬を薄くピンク色に染める表情もできるんだなと見とれてしまう。

 榎宮さんはシェアハウスに住む住民の中で最年少である。年は15歳で現役の女子高生である。最近テニスを始めて肌が少し黒くなってきている。

「何を蛍子のことを見つめてるのよん?キモいわよ」

「キモいとかいうな」

 ちなみに蛍子というのは榎宮さんのことである。男性陣は皆上の名前とあだ名で呼び合っているが、女性陣同士は下の名前で呼び合っている。そして、自分のことをキモいと言ってきたのは現役の女子大生の八坂豊香さんだ。剣道の実績が認められてスポーツ推薦で今の大学に入学した女剣士である。

「行っておくけど、自分はひよこくんや三根といっしょにしてほしくないね」

 一応、自分は警察だ。覗動画を見ることなんて言語道断だ。

「でも、男ならあの蛍子の裸の一度や二度くらい見てみたと思わないのん?」

 ・・・・・・・思わなくもない。

 確かに榎宮さんは誰がどう見てもきれいな女性だ。何度か告白されたこともあったらしいのだが、過去の傷のせいでそれをすべて断って来たらしい。その過去の傷というものは藤見さんと喜海嶋さんしか知らないらしく自分たちには教えてくれなかった。

 ちなみに喜海嶋さんというのは女性陣の最年長でOLとして働いている。シェアハウスいちもっとも謎多き女性である。いつも無表情のポーカーフェイスだ。

「一瞬だけ悩んでしょ?」

「な、悩んでない!自分は秩序ある警察官だ!そんな破廉恥なことはしない!」

「そうだったわねん。一応刑事だったわねん」

「一応じゃなくて刑事!」

 なぜかシェアハウス内で自分は刑事と認識されていない。まぁ、普段から刑事らしい仕事は何もしていないし。今日も連続下着泥棒を捕まえるどころか足取りを掴むこともできなかった。平和すぎるのが刑事という認識を薄くさせる原因なんだ。でも、平和であるのはいいことだ。逆に事件もない方がいいのだが自分のどこかでもっと大きな事件でも起きないかなと思うのだ。

「そういえば、ひよこくんが見当たらない」

「ああ、ひよこなら職場の先輩と飲み会だって」

 ひよこくんはお酒弱いから今日中には帰ってこないだろうな。

 ちなみに藤見さんと喜海嶋さんもいないのは日ごろからよくある話なので気にしない。

「それはそうとあの子何?攫ってきたのん?」

「そんなわけないだろ!一応刑事だぞ!」

「一応ね」

 なんか八坂さんはいつもこうして自分をいじるのを楽しんでいるようにしか見えない。気でもあるのか?

「なんかうちの所に迷い込んできた子だよ。名前はフェイブっていう」

「外国の子?」

「そうだと思うけど、言語は日本語だ」

「日本暮らしだったのん?」

「さぁ~?」

「どこから来たのん?」

「さぁ~?」

「家族は?」

「さぁ~?」

「年は?」

「さぁ~?」

「あんたって本当に刑事?」

「刑事だよ!」

 自分も何も聞かされていないんだよ。

 すると今までフェイブを抱きしめ続けていた榎宮さんがフェイブを抱えて自分たちの元にやって来た。

「ねぇ!この子飼っていい!」

「ペットと一緒にするな!」

 するとようやく自分の意思を取り戻したかのようにハッとする榎宮さん。

「この子貰っていい?」

「質問の内容が変わっていない」

 溜息が出る。

 もっと、冷静に普通に対応が出来ないものかと・・・・・。

「まぁ、どちらにせよ今日はここで預かることになったから」

「フェイブ!何して遊ぶ?」

「蛍子お姉ちゃんがいればなんでもいい!」

「じゃあ、トランプやろっか!」

「うん!」

 まるで以前から知り合いだったかのように息をピッタリに合わせて手をつないでリビングに入って行った。

「榎宮さんって子供好き?」

「かもね」

 まだまだ、ここの住民について知らないことも多いようだ。

 すると足音をなるべく立てないように三根がリビングに入ろうとしているのを自分と八坂さんの目に入る。

「三根は拘束しておきましょ」

「そうだな」

「俺にも幼女の温もりをくれー!」

 それは二度と叶わないな。

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