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爆弾幼女  作者: 駿河留守
23/26

心強い

 廃工場の倉庫内の一角に3人でいる。古びたコンテナの近くにあった箱に座って足をばたつかせて劣化した壁から差し込む月明かりで出来た影を見ながら暇をもてあそぶ。さすがのこの状況では桧山先輩もゲームをすることはないようだ。ピリピリと緊張した面持ちでフェイブを見守る。自分と各務課長はもしもの時のことを考えて出入り口の把握をするために廃工場の倉庫の中を練り歩く。

「相当痛んでますね」

「そうだな。組織の取り引きとかでしか使われない建物だ。改修もされないし、取り壊しもされない。誰もが不思議に思う建物だろうな」

 確かにこんないつ倒壊するか分からない建物をいつまで放置している方がおかしい。近隣住民からも苦情とか大変そうだ。廃工場の倉庫の出入り口は正面の1メートルだけ開いたシャッターと裏口がふたつ、隣の建物に繋がる空中廊下の扉が2階に存在する。正面からは入ってきたらすぐに分かる。警戒すべきはこの二つの裏口だろう。2階の扉は1階からむき出し、扉もかなり劣化していて動かしただけで金属音が建物中に響く。

「正面近くが一番安全かな?」

「組織の人とはどんな風にフェイブを引き渡すんですか?」

「車のクラクションを鳴らして合図を送ってくる。その後に使者が直接俺たちのもとに来て合言葉を交わしてからフェイブを渡す。一応、そういう手筈だ」

 そこでフェイブとはお別れだ。自分を孤独追いやったブラックボーンの情報を握ったフェイブとの別れは自分にとって本当にいいのだろうか?

「う~ん」

「どうしたんですか?」

「いや、なんか改めて考えると不可解な点があるなって思ったんだ」

「不可解な点?」

「まずはどうやって相手方はフェイブの居場所を特定したのかとか。まぁ、組織がやらかしたって言ったらそれで解決するんだろうけど、なんせ清義鈍斗が直接かかわっている感じがしたからそんな簡単にフェイブの居場所が特定されるのはおかしい気がする」

 そんなに清義鈍斗とはすごい人物なのだろうか。まぁ、特殊人間で構成された組織で秘密裏にばれずに行動するには優秀な指揮官が必要なのは分かる。

「そもそも、奴らが何を爆発させようとしているのかすら分からない。山下はフェイブから何か聞いてないか?」

 何かと言われても聞こうと思ったら爆発しそうになったのだから、聞けるはずもない。

「でも、お姉さんがってところまでいってました」

「・・・・・・お姉さん・・・・・か」

 各務課長が銃の記憶を読んだ時に姉御という言葉が出てきていた。同一人物には違いない。

「いろいろ謎なところはありますよ。ブラックボーンの重要人物を殺すように指示した尾泉議員はすでに殺されているわけですから彼らには明確な目的はもうないはずですよ」

「そうなんだよな・・・・・」

 一周してフェイブの元に戻って来た。

「お兄ちゃん!」

 フェイブが自分の胸に飛び込んで来る。それを受け止める。

「暇!」

「ちょっと我慢してくれ」

 こっちは緊張で心臓が爆発しそうなんだよ。

「場所を少し移動するよ」

 各務課長に続いて進む。何も音の聞こえない静けさだけが支配する廃工場倉庫に自分たちだけの足音が響く。正面のシャッターのすぐ真横にあるコンテナの影に身を潜める。フェイブは暇だったせいでコクリコクリと首を落として今にも眠ってしまいそうだ。

 誰もが受取人がやってくるその時をひっそりと息を潜めて待つ。

 その間に自分はブラックボーンのことを考える。ブラックボーンの目的とはなんなのか?15年前のあの思い出したくない事件をひねり出して思い出す。確かにあの時ははっきりと尾泉議員を狙ってわざわざ近寄って宣言をして爆発して行った。今回の奴らそんな明確な目的が存在しない。あの時の言葉から察するに無駄な折衝はあまり好まない感じがした。今回の囮の爆発でもそうだ。死者どころかけが人も今のところ聞いてない。

 ならば、敵は一体何を狙っている?他に彼らに恨まれるようなことした人物なんて・・・・・・。

「あ」

「どうした?山下?」

「分かりましたよ。ブラックボーンの目的」

「何だって?」

「簡単ですよ。彼らの狙う標的何て」

 そう、指示したのは尾泉議員でそれを実行したのは、

 その瞬間、静かな倉庫内に金属音が鳴り響く。扉が開く音だ。咄嗟に身を低くして課長と先輩は銃を構える。自分はフェイブに覆いかぶさるように守る。自分のやることはフェイブを守ることだ。だから、銃も携帯していない。持つ武器は八坂さんから借りた竹刀のみ。

「俺が様子を見に行く。課長と山下はここに」

「了解。気を付けて」

 各務課長の言葉に薄く笑みを浮かべて元を立てずに音のした方に行こうとした時だった。すぐ背後で足音が聞こえた。しかも、すぐ近くで。咄嗟に各務課長が銃を構えて自分と音の間に入る。

「は?メガネ?」

 そこにいたのは愛田さんの付き添い病院に向かったはずのメガネくんだった。キョトンとして自分たちの姿に驚きを隠せない表情を浮かべている。

「お前なんでこんなところに」

「待て!課長!」

 バーン。鼓膜が破れるのではないかという銃声が鳴り響き、同時に火薬のにおいが鼻を刺す。何が起きたのか一瞬理解が出来なかった。だが、目の前の各務課長が力なく倒れる姿を見てようやく何が起きたのか分かった。

 メガネくんの手には銃口から煙の出た銃が握られていた。

「山下伏せろ!」

 後方の桧山先輩がメガネくんに向かって発砲する。それを見たメガネくんは持ち前の運動能力を生かして瞬時的にシャッターの向こう側に逃げ込む。2発発砲したが一発も当たることはなかった。

「山下!フェイブを持って移動だ!」

「分かりました!課長!」

 課長はゆっくりと立ち上がる。

「防弾チョッキを着てても痛いものはいたい」

 脇腹を押さえてよろめきながらも立ち上がり奥に進む。

「やはり、内通者がいたか!」

「ああ、フェイブの居場所が敵にばれたのは大方同林のせいだな」

「でも、なんでメガネくんが!」

「知るか!」

 コンテナの角を曲がった先に銃を構えた黒ずくめの男がふたりいた。こちらを見ると発砲してくる。陰に隠れて応戦する桧山先輩。

「使者いつになったら来るんだよ!」

「分からない」

 息苦しそうに答える各務課長。フェイブもさすがに目が覚めていた。そして、状況が読み込めず混乱していて何も話せないようだ。ただ、自分にしっかりしがみつく。

「とりあえず、突破する!」

 すると桧山先輩は銃弾が飛び交う敵の正面に飛び出す。

「ちょっと先輩!」

 あの弾幕の中に言ったら蜂の巣になってしまう。止めようとしたがすでに飛び出して行ったあとだった。すぐに影から敵の方を見る。突っ込んでくる桧山先輩を狙って撃っていた。だが、それを桧山先輩は体をひねらせて銃弾を交わした。銃弾は脇の隙間をすり抜けて行った。それに驚いてしまったのか次の発砲はなかった。そのまま桧山先輩の飛び膝蹴りが減免にクリーンヒットしてひとりは気絶した。残ったひとりが至近距離から銃を構えて発砲するが、それを桧山先輩は超人的なスピードで電光石火で動いた姿は残像で見えた。かわして見せた。あれが桧山先輩の特殊。どんなものでも回避することが出来る。どんな至近距離でもかわすと思えばかわせる。それが桧山先輩なんだ。銃を柄で残った敵を殴り倒して気絶させる。

「手錠を貸せ。拘束して置いて後で捕まえる」

 初めて桧山先輩が心強く思えた。

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