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爆弾幼女  作者: 駿河留守
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爆発

 どうせ今日も何事もなく被害届の整理をして発生した交通事故を見に行く程度のことしか仕事はないだろうとそう思っていた。この町は静かで平和だ。特殊人間がかかわるような大事件も起きない。それが一番なのだ。だが、フェイブという特殊人間がやってきてついにこの町にも大きな災いをもたらすこととなる。

 それはそろそろ帰ろうかなと思った午後5時頃のことだった。

「フェイブ。そろそろ帰るよ」

「は~い」

 この1週間何も変わらないいつもの光景。この後、フェイブと手をつないで日が傾いているオレンジ色に染まる道をコンビニとかに寄り道しながら帰るはずだった。

 ついに奴らが動き出した。


 ドーン!


 胸の奥底に響き渡る重い爆発音。その大きさはすさまじく建物全体が揺れて机の上に置いてあった資料が床に散乱する。吊り下げてあった電灯がゆらゆらと揺れる。思わずフェイブを保護するように抱きついてしまっていた。

「今の何?」

 少しおびえながらフェイブは尋ねる。

「分からない」

 刑事課にいるのは自分とフェイブだけ。すると桧山先輩が隠れ家である取調室から出てきた。

「今の何だ?」

「知らないですよ」

 とにかく、情報を手に入れるためにテレビをつける。その時だった。

 刑事課に勢いよく飛び込んで来る人物がいた。愛田さんだった。息を切らして相当慌てている。

「どうしたの?」

 気にかけるのは自分だけ桧山先輩はテレビの画面を見る。夕方のニュースを放送している時間帯。きっと、何か情報が来るだろうとゲームを片手にテレビ前のソファーに座る。かちゃかちゃとゲーム機のボタンを押す音がテレビ画面の速報ですという言葉を聞いて止まる。同時に愛田さんが手を膝に置いて呼吸を整えて叫ぶように伝える。あの爆音についてだ。

「すごい煙が上がってるの!火事とかじゃないよ!あれは!」

「どこだ!どの方角だ!」

 いつになく行動が早い桧山先輩に愛田さんは戸惑いながらも伝える。

「東の方角です。駅の方だと」

 それを聞くと東側のドアを勢いよく開ける。

 するとフェイブが自分の袖を引っ張る。

「お兄ちゃん。あれ」

 テレビの画面を指差している。テレビ画面では慌ただしいことになっている。すぐにキャスターは繰り返し伝える。

「繰り返しお伝えします。○○市の中心部である駅の連絡通路で大きな爆発が発生しました。大きな黒煙が上がっている模様。情報が入り次第現状をお伝えします。繰り返し・・・・・・・・」

 すぐに自分も桧山先輩が覗く窓から東側を見ると大きな黒煙が空高くまで昇っている。

「狼煙だ?」

「狼煙?」

 桧山先輩はそう呟く。

「奴らがフェイブを返せと言っている」

 ついに自分にめぐって来た特殊人間による事件。この先、何が起こるのか予測は不可能だ。

「愛田さん!フェイブを頼みます!」

 そういって署に待機する愛田さんにフェイブを任せて桧山先輩、メガネくんと自分は覆面パトカーが止まっている駐車場に向けて階段を駆け下りる。自分の脳裏に浮かんだのは悲惨な光景。連絡通路を何も知らずにわたっている人たちが一瞬のうちに消し炭となり、消し炭にならなかった人は前人が燃え始めてもがき苦しむ。爆発した連絡通路の下を電車がちょうど通り、乗車していた人が落下してくる連絡通路の重量に押しつぶされてミンチみたいになってしまい、突然止まってしまった電車の後方車両は慣性の法則によって跳び上がり中にいた人たちは電車内でミキサーのように吹き飛ばされる。火災が起こり瓦礫に挟まった人たちは迫りくる日から逃げようにも逃げられず焼き死ぬのを待つのみとなる。

 そんな最悪の光景ばかりが頭の中で再生される。

 恐怖から手足が震える。

「山下」

 肩を叩く桧山先輩。

「大丈夫だきっと」

 桧山先輩は助手席に自分は後部座席に座る。運転席にはメガネくんが乗る。

「よし!行くぞ!」

 そういうとメガネくんはアクセル一気に踏み込んで急発進する。

「バカ!まだシートベルトしてない!」

「あわわわわ!」

 同じくシートベルトをしていない自分も前の座席に顔面をぶつける。

 サイレンを鳴らして駐車場をドリフとしながら現場に向かう。ものすごい速さで一般道をジグザグに進んでいく。サイレンを鳴らしていなければただの暴走族だ。

「バカ!メガネ!危ねーだろ!」

 しかし、そんな桧山先輩の悲鳴も聞こえておらず信号待ちをする車の集団と激突する。

「メガネ!前見ろ!スピード落とせ!」

 だが、パトカーは止まることなく反対車線をスピードを変えずに逆走する。交差点に差し掛かり信号無視して通過するパトカーを避けようとなんだか以下の車が事故を起こす。

「先輩!事故が起こってますよ!」

「そんな場合じゃないだろ!メガネ!元の車線に戻れ!」

 すると目の前に車が。

 それを急ハンドルを切って交わす。目の前にいた車は逆走する覆面パトカーに驚いて慌てて避けたせいで電信柱に激突する。次の交差点を右折するために信号無視をしてドリフをしながら曲がる。

「先輩!今後ろ電柱と接触しましたよ!」

「・・・・・・・・・」

「先輩?」

「やばい。吐きそう」

「メガネくん!もっと、優しく運転して!」

 と言ってものの目の前の車を追い越すために再び反対車線に。

「お願いだから普通に運転して!」

 地獄のドライブのおかげで5分ほどで現場に到着した。そこにはすでに何台かのパトカーが止まっていた。

「着いたって!止まってよ!」

 暴走する覆面パトカーはそのままパトカーに激突する。覆面パトカーのボンネットが歪み、パトカーの扉のガラスはすべて割れて跡形もなくなっている。運転席と助手席ではエアバックが飛び出している。

 とりあえず、覆面パトカーからでる。

 桧山先輩は車から出てすぐその場でリバース。メガネくんはその桧山先輩を解放しようとしてもらいゲロをしている。その現状にただただため息が出る。

「どうも、現状はどうなってますか?」

「おい、今完全に事故っただろ」

 平常心を忘れてはならない。

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