05
中村が部屋の前で立ち止まり、ドアをノックする。
「誰だ? 今、資料の整理で忙しいんだが」
「来栖君、私よ」
「入ってくれ、鍵は開いている」
ドア越しのやりとりを終え、中村はドアを開けて部屋に入った。その後に遊介が続く。部屋入って最初に目に入ったのは、来栖の執務机にできていた山だ。
「それで、鍛錬場の被害は?」
山の反対側から来栖の声が聞こえた。
「壁や床が穴だらけ、来栖君の力でも修復は不可能かも」
「……なら、業者に頼むしかないな。それで、被害者はいたのか?」
「いたんだけど、怪我はしてないわよ。ね? 神崎君」
いきなり話を振られ、遊介は少し驚きながら中村に頷いて言う。
「はい、大丈夫です」
執務机の上にある山の一部がどけられ、来栖の顔が見えるようになった。どけた資料の中から、一つのファイルを来栖は手に取る。
「なるほどな。それで、それだけの騒ぎを起こした二人はどこにいる?」
「医務室にいる。矢野君の方は眠ってて、天川君は付き添い」
それを聞いた来栖はファイルを資料の山に置き、別のファイルを手に取った。
「それなら、呼び出しは明日の早朝にする。原因の方は…、おおよそ想像がつくな」
ファイルに向けていた視線が、遊介に突き刺さった。
「………」
遊介が何も言えずに黙っている。原因は八つ当たりの八つ当たりであり、根本的な原因は青年と遊介が不知火の弟子だったことだ。それを十分に理解している遊介は何も反論できない。いや、反論することをあきらめている。
「まあ、それは置いておくとして。来栖君、神崎君を呼んだのは話があるからでしょなんでしょ?」
気まずくなりかけていた空気を、中村がわざとらしく明るい声でかき回す。
「当然だ。僕は、用も無いのに人を呼んだりしない」
言いながら、資料の山を足下に置いてあった箱に直していった。資料を入れて閉じた箱は白い光を発し、床へ沈んで行く。
最後の箱が床に沈むのを見ながら、来栖は遊介に聞いてきた。
「さてと、ここに来て一日も経っていないが、篠宮とはやっていけそうか?」
その質問に、遊介は今日のことを思い出そうとする。ほとんど眠っていたので、記憶が少しあやふやになっているからだ。
「…はい、篠宮さんは気を遣ってくれて優しいですから。それに真面目で、しっかりしているので助かっています」
空腹でふらふらの自分を食堂に連れて行ってくれたり、眠っている自分を起こさないでいてくれたりと気遣ってくれた。
たったそれだけのことだったが、社会不適合者である人間の側に何年もいた遊介にとって、唯の気遣いはとても嬉しいものばかりだ。
それがわかっているから、彼は厳しい言い方をされても唯を嫌いになれない。たとえ厳しい言い方をされたとしても、その後ろにある気遣いが嬉しくて仕方がないのだ。
唯のことを思い出しているうちに、遊介は彼女が猫を触っていた時のことを思い出した。そして、無意識のうちに笑みを浮かべる。
「……そうか。その様子なら、今回は上手くいきそうだな」
「何か言いました?」
彼の様子を見ていた来栖が何か呟いたが、聞き取れなかったので遊介は質問する。
「いや、こちらの話だ。気にするな」
来栖が質問に答えると、中村がクスッと小さく笑った。それを聞きとがめて来栖は彼女を睨み付けるが、中村は微笑を崩さない。
「……とりあえず、問題は無いようだな。京子、神崎に例の物を渡してやってくれ」
少し苛立たしげに来栖が言うと、中村は頷いて壁際に置いてあった箱を取った。そして、それを持って遊介に近づいて来る。
少し苛立たしげに来栖が言うと、中村は頷いて壁際に置いてあった箱を取った。そして、それを持って遊介に近づいて来る。
「はい、神官服と備品よ。任務に出る時は、ちゃんと持って行ってね」
渡された箱と中村、来栖を順番に見てから遊介は箱を開けた。箱の中には、着物のような服やインカムなどが入っている。
「それは、君が〈神楽〉の〈神官〉であることを示す身分証明書のような物だ。不知火のように失くさないようにしてくれ」
最後の一言を聞いた遊介は、苦笑を浮かべて箱を閉じた。
「以上だ。部屋に戻ってくれて構わない」
――ガチャッ
ドアが開く音がし、丸くなっていた猫が目を開けてドアの方を見た。
「ただいま…。あれ、篠宮さんは?」
猫はベッドから跳び下り、シャワールームの方へと歩いて行った。それで遊介は、僅かに聞こえてくる水音に気がつく。
どうやら、唯はシャワーを浴びているらしい。それがわかった遊介は、箱を自分のベッドに置いて中のものを出して確認し始めた。
それを見た猫は妖しげに目をすがめ、鳴いてドアを引っ掻き始める。それを無視し、彼は箱の中身の確認を続けてA4サイズの紙の束を見つける。何かの資料らしい。
遊介がそれを読み始めようとしたところで、猫の鳴き声が大きくなった。さすがにうるさくなったので、遊介は顔を上げてシャワールームの方を見る。
「天岐、資料を読んでるから……」
――ガチャッ、キイィッ
遊介の言葉を遮り、シャワールームのドアが何の前触れも無く開いた。
「どうしたの?」
そう聞きながら、しゃがみこんで唯は猫を撫でた。一方の遊介は、彼女の姿を見たまま固まってしまっている。
なぜなら、唯は体の前をバスタオルで隠しているだけなのだ。しかも風呂上りのせいか、彼女の肌は火照っていて艶めかしい。さらに――
「可愛い…」
猫を撫でて幸せそうに笑っている唯は、とても可愛らしかった。見てはいけないと思いながらも、遊介は目を離せないでいる。
細く肉つきのいい腕や脚、肌は白く不思議な透明感があって綺麗だ。
「少し待っていてね」
猫をひとしきり撫でた唯は、満足した様子で立ち上がった。そして、固まったままの遊介と目が合って彼女も固まってしまう。
猫は固まってしまっている二人を交互に見た後、遊介の方に近づいて行くと彼の肩に飛 び乗った。その僅かな衝撃で、遊介は我に返る。
「…えっと、ただいま」
気まずげに言い、遊介は唯から目を顔ごと背けた。それから顔を赤くする。それを見た唯も我に返り、慌てて脱衣場に入ってドアを勢いよく閉めた。
「お前、相変わらずだな。女の裸なんて、見慣れてるだろ」
そう猫が耳元で囁いたので、遊介は猫の首根っこを掴んで投げた。空中で一回転し、猫は難なく床に着地する。
それを睨みつけ文句を言おうと口を開いたところで、脱衣場のドアが開いて唯が出てきた。彼女は遊介を見ると、すぐに顔を背けて自分のベッドの方へと歩いて行き、遊介から最も遠い位置に座る。
「………」
「………」
気まずい。非常に気まずい。
さっき事故とはいえ、お互いに変に意識してしまっているのだ。しかし、黙っていても何も始まらない。遊介は息を深く吐き、できるだけ落ち着いた。
「…えっと、篠宮さん」
「………」
話しかけてみたが、返事は無かった。しかし、構わず唯に遊介は話しかける。
「さっきは、ごめん。別に悪気があったわけじゃなくて…、その、事故だったんだ」
「………」
唯は沈黙を続ける。その沈黙に、遊介は少し焦り始めた。
「わ、悪気は無かったんだけど、見てしまったことは事実だし、僕は責められても文句は言えない。だから、その、僕にできる範囲で償いをさせてくれないかな?」
誰かに謝罪するのは、長年の旅で慣れていた。だが、遊介は自分と同じ年頃の異性に謝ったことは、ほとんど記憶に無い。だから、今の謝罪で唯が許してくれるのか不安だった。
隣のベッドで立つ気配がする。そのまま部屋を出て行くのかと思ったが、歩いて行く様子は無い。
「……神崎さん、こっちを見てください」
落ち着いた唯の声が聞こえ、遊介は従って唯の方を向いた。彼女はベッドの上で正座し、遊介の方を見ている。
「さっきのことは、私の方も気を抜いていました。だから、神崎さんだけが悪いわけじゃありません」
言った後で、唯は頬を赤くした。言っている途中で、さっきのことを思い出してしまったのだろう。
「…そ、それに、ちゃんと謝ってくれました。だから、私は気にしてません」
それを聞いて、遊介は安心した。正直に言うと、厳しく礼儀正しい彼女に許してもらえるとは思っていなかったのだ。
「……でも、神崎さんは悪いと思ってるんですよね?」
「えっ?」
安心していたところへの不意打ちに、遊介は聞き返してしまった。
「さっき、償いをさせて欲しいって言ってましたよね?」
続けての質問に、遊介は自分の言ったことを思い出した。唯は何かを覚悟したような目で彼を見つめている。
真剣な彼女の様子に気圧され、遊介は黙ったまま頷いた。
「だったら、私のお願いを聞いてください」
何かの覚悟を宿した唯の瞳から目を離せず、遊介は黙って彼女の次の言葉を待つ。
「わ、私と、友達になってください!」
震える声で言い切った唯は、呼吸を乱れさせて俯いた。
一方の遊介は、彼女の言葉を何度も反復させた。そして、今朝の中村に言われたことを思い出す。
〈篠宮さんのことお願いね〉
唯を見てみると、彼女は震えていた。さっきの覚悟を宿していた彼女の瞳は、今は弱々しく揺れている。人付き合いの苦手な彼女にとって、今の言葉を言うのはかなり勇気が必要だったのだろう。
そんな彼女を見た遊介は心の中で一つ頷くと、ベッドから立ち上がった。正座したまま震えている唯に近づいていく。
「わかった。約束するよ」
言いながら、遊介は唯の頭を撫でる。普段の彼ならしないことだが、目の前で震えている唯を見て自然と手が伸びた。
怯えている子猫を落ち着かせるように、何度も撫でる。最初は困惑していたが、唯は俯いてされるがままになっていた。
遊介が撫でる度に、彼女の震えは小さくなっていく。
「神崎さん、もう大丈夫です」
その唯の言葉を聞いて、遊介は彼女の頭から手を離す。唯の言うとおり、もう震えはなくなっていた。瞳にもしっかりとした光が宿っている。
「……すみません、取り乱してしまって」
唯が謝ってきたので、遊介は少し苦笑気味に言う。
「別に、いいよ。相棒なんだし、何か言いたいことがあったら言ってくれればいい」
言葉通り、遊介は気にしていなかった。
取り乱した唯に驚いたのは確かだった。しかし、真面目な彼女の意外な一面を見ることができて嬉しかったのだ。
それと、これは撫でている途中で気がついたことだが、妹の頭を撫でている時と同じ感覚だったのも理由の一つだろう。
「神崎さん、ありがとうございます」
礼を言ってくる唯の雰囲気が、遊介は少し柔らかくなったように感じた。
唯の頭を撫でていた方の手を握り、遊介は妹と目の前にいる唯の面差しを重ねて見る。すぐに妹の幻影は消えてしまった。まるで、現実を彼に見させとうとするように。
一瞬だけ落胆してしまうが、すぐに気持ちを切り替えることにした。
「篠宮さん、そろそろエサの時間なんだけど、あげてみる?」
質問に唯が遠慮がちに頷いた。遊介は荷物の中から猫のエサを取り出そうとする。それに猫が反応して、彼の頬をひっかき始めた。
猫の首根っこを掴み、正座している唯の膝の上に乗せながら遊介は彼女に頼む。
「篠宮さん、天岐を捕まえといて」
猫のエサを手探りで取り出すと、ベッドの上に置いてある資料が遊介の目に映った。トラブルがあったので、ほとんど目を通せていなかったそれも持って唯の方へ行く。
「篠宮さん、手を出して」
唯は猫を捕まえたまま手を遊介の方へ出した。袋を開けて中の鰹節を彼女の手に出すと、その手を猫の鼻先へと持っていく。
次の瞬間、猫が鰹節をすごい勢いで食べ始めた。
「きゃっ!」
可愛らしい悲鳴が部屋に響いた。猫に手を舐められたのだろう。猫は気にせずに鰹節を食べ終え、次を催促するように鳴いた。
唯の手に追加の鰹節を出すと、再び猫が勢いよく食べ始める。唯はくすぐったそうにしながら、猫の食べている様子を嬉しそうに見ていた。
(この資料のことを話したかったんだけど…、天岐が食べ終わるのを待った方がいいかな)
唯の様子を見た遊介は、そう判断して自分のベッドに座った。そして、手元の資料に目を落とす。
猫はエサを食べ終えると、彼女の膝の上でアクビをして丸くなった。それを幸せそうに唯は見ている。そんな彼女に声をかけるのは少し気がひけたが、遊介は唯に話しかけた。
「あの、篠宮さん。渡された箱の中に、これが入ってたんだけど」
言いながら遊介は持っていた資料を唯に見せた。資料を見せられた唯は、寝ている猫を撫でながら言う。
「それは、任務前に読む報告書ですね。それが渡されるという事は、明日にでも任務に出ることを意味します」
「…っていうことは、やっぱりこれは間違って入れられたのか」
箱の中に入っていたので、遊介は何かの〈神楽〉についての資料かと思って読んでいたのだが、読んでみると違っていた。なので、念のために彼は唯に聞いてみたのだ
「じゃあ、来栖さんに返して来るよ」
そう言って遊介が立ち上がろうとしたところで、テーブルの上に白い光が集まって来栖が出現した。
「来栖さん、どうしたんですか?」
これから会いに行こうとしていた人物が目の前に現れたので、遊介は少し驚いた。
『探し物をしている。神崎、君に渡した箱の中に資料が入っていなかったか?』
その質問に遊介は、手に持っていた資料を来栖に見せた。
「もしかして、これですか?」
『やっぱり入っていたか。悪いが、私の部屋まで持ってきて……』
途中で言葉を切り、来栖は考え込むような仕草を見せた。そして、遊介たちを見て言う。
『いや、やはり返しに来なくていい。持っておいてくれ』
「えっ?」
「…どういうことですか?」
来栖の指示の変更に、二人がそれぞれの反応を返した。
『よく考えたら、神崎は不知火の弟子だ。当然、妖狩りに慣れているに違いない。だから、〈神官〉としての初任務に行ってもらう』
それを聞いた遊介は納得した。
普通なら入ったばかりの〈神官〉は、すぐに任務に出ることはないのだろう。しかし、不知火の弟子ということなら別なのだろう。
不知火は容赦が無く、遊介は一週間も経たないうちに一人で妖狩りをさせられた。
来栖は不知火のことをよく知っているはずだ。さらに、不知火の弟子は、遊介が初めてではない。前例がある以上、来て間もない遊介を任務に出してもいいと判断したのだろう。
そのことを含めて考えると、来栖の判断は正しかった。だが、遊介は思う。
(もう少し、後の方が助かるんだけどなぁ…)
正直に言うと、遊介は不知火から離れることができてホッとしていた。鉄拳が飛んできたり、代わりに謝罪させられる必要が無くなったからだ。
(少しぐらい羽を伸ばしても、バチが当たらない気がするけど…。〈神官〉である以上、任務には行かないといけないな)
遊介の一面である真面目さが自堕落さに勝ち、来栖の指示に従おうと――
「来栖さん、その判断には異議があります」
したところで、唯が来栖に向かって言った。
『異議か。いいだろう、聞かせてくれ』
興味深そうに見てくる来栖に頷き、唯は反対する理由を話し始めた。
「確かに、不知火さんの名前は私も聞いたことがあります。彼の弟子が優秀だということも知っています」
来栖は黙って彼女の話を聞く。
「ですが、来て間も無い神崎さんを任務に出すのは性急すぎます。考え直してください」
唯は言い終えると、来栖を見据えて彼の言葉を待った。
来栖は少し考えるそぶりし、遊介を見て彼女に言う。
『君が認識しているほど、神崎は弱くない。あの〈狗神〉の狛犬たちを一撃で消滅させた』
それを聞いた唯が、遊介の方を見て目だけで本当なのか聞いてきた。あまりの彼女の真剣さに戸惑いつつ遊介が正直に頷くと、唯は驚いたように目を見開く。
『それほどの力の持ち主なら、問題は無いだろう。それに、任務には君も行くんだ。その目で神崎の力を直に確かめてみるといいだろう』
そう言うと、来栖の姿がテーブルの上から光を放って消えた。
しばらく二人は、テーブルを見ていた。
「…まあ、〈神楽〉に所属しているから、来栖さんの指示に従うのは当然かな……」
聞こえないように遊介は呟いた。つもりだったのだが、唯が耳聡く聞き取って彼に鋭い視線を向けた。
「神崎さん、正座してください」
「えっ?」
「いいから、正座してください」
聞き返した遊介に、鋭さを増した唯の言葉が向けられた。有無を言わさない迫力に、遊介は自然と正座する。
「…えっと、篠宮さん?」
正座させられた理由と、なぜか唯が怒っている理由がわからず、聞こうと話しかけたら彼女が口を開いた。
「神崎さん、あなたは自分のことについて考えなさすぎです」
「えっ、いや、それなりに考えてるつもりなんだけど……」
「それなら、さっきの来栖さんの指示を断らなかったんですか?」
「それは、来栖さんが〈神楽〉のリーダーだから、指示に従うのは当然だよ。断る理由も無いし…」
いきなり始まった唯の説教に、少し戸惑いながら遊介は反論する。
すると、彼女は呆れたようにため息をついた。
「自覚がないんですね…。仕方がありません。少し時間がかかりますけど、一から説明してあげます」
「う、うん。お願いします」
なぜか自分が悪いような気がし、遊介から唯に頼む形になってしまった。
唯が頷いて深呼吸をし、話し始める。
「まず、神崎さんは疲れてますよね? 今日は、ほとんど眠っていました」
遊介は相づちを打った。それを見た唯が話を続ける。
「だったら、任務は断るべきだったはずです。そんな状態で行って、妖を相手に遅れをとりかねません。危険です」
「いや、たぶん明日には回復してると思うから」
心配されているのだとわかり、遊介は安心させるように優しく言った。
しかし、唯は厳しい態度を変えない。
「たぶん? そんな不確実な根拠で、大丈夫だと判断しないでください。私もあなたも数少ない〈神官〉の一人なんです。責任というものを――」
(これは、説明と言うよりも説教なんじゃないかなぁ……)
そんなことを考えながらも、遊介は彼女の話を一時間も聞き続けた。
「わかりましたか?神崎さん」
「うん、これからは気をつけるよ」
返事をしたと同時に、唯の纏う雰囲気が軟化する。
ようやく説明という名の長い説教が終わり、遊介はホッとした。
説教をしている時の唯は、厳しく静かな迫力があったのだ。不知火の迫力とは違い、新鮮なので遊介は縮こまってしまっていた。
「説明も終わりましたし、そろそろ夕食を食べに行きましょうか」
そう言って猫を抱いたままベッドから降り、唯は部屋を出て行く。
その後ろ姿を見送りながら、遊介はさっきの説教を思い出して思った。
(篠宮さんって、少し扱いづらいのかな…?)
「神崎さん、行きますよ」
ドアの外から呼ぶ声が聞こえたので、遊介はベッドから降りて部屋を出ていく。