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タイムトラベラーボーイ・ミーツ・ガール

作者: 菜智

私は色んな時間を旅する旅人。時間っていっても、紀元前とか、世紀末だとかそんな極端な時間じゃ無くて。

【私の本来の世界が持つ、色々な世界の可能性がある時間軸】限定。

例えば【私がいた本来の世界の今】の技術がちょっと進歩していて、全てがネットワークで構成された世界。

かと思えば【私がいた本来の世界の今】の技術が進歩していなくて、未来でも変わらない生活を送る世界。

【私がいた本来の世界の今】で起こっていた各国間の擦れ違いが原因で、どっかの国の領土になっていた世界だったり。

私は、ただ、自分の世界の持っている可能性が見たいがために、時間の旅人【タイムトラベラー】を続けている。

でも、今回は少しイレギュラーな世界の話をしようかなって思う。



時間の流れに逆らう事無く、流れ着いたその世界。

多くの【私が本来居た世界の可能性】を多く見てきた中でも一番少なかった【可能性】の世界。

戦争が起こっている世界。

「……ふぅ、ん…珍しいなぁ、こんな低確率の世界引き当てるなんて」

私は、取り敢えず辺りを見回しつつ、散策した。

すると

「ねぇ」

声をかけられたから、振り向いてみれば、そこには自分が【その世界で存在している自分】が立っていた。

服は端々がボロボロで、唯一色違いの、赤色の髪も煤で汚れてしまっている。一目で、戦時中なのだと分かる位の。

「キミはどうしてココに居るの?」

「んー?どうしてって、キミこそ、どうしてココに居るの?」

「……それは…」

【こっちの私】はしどろもどろになって、口をもごもごとさせる。

「あぁ、別にいいよ。どうせ、直ぐにココを出ていかないといけないから。」

そう言いつつ、懐中時計を取り出す。時計の針は長針と短針はぴったりと6に合わさっている。

「でも、少しは時間もあるみたいだし。」

私は【こっちの私】に、ちょいちょい、と手招きして隣りに座らせる。

「な、何ですか?」

「ちょっとの時間、暇だしさぁ、ココの世界の事とかキミの事とか話してくれないかな?」

私はにっこりと笑った。



【こっちの私】の話は、全くもって世界の状況をぴったり合っていて、寧ろ、合いすぎていて怖い位だ。

戦時中のココでは、やっぱりというか、ある一定の年齢に達している男性全てが至るところにある防衛戦に参加している。そして女性は、時に、昔にあったひめゆり隊らしきモノに入ってる人もいれば、普通に国に残っている人もいるらしい。

「キミは何をしているの?」

「私は、ひめゆり隊の方に」

「ふぅ、ん。キミが、か」

私は、【こっちの私】の話をただ、聞いていた。 だって、この世界が辿りそうな運命が大体だけど分かっちゃったんだよね。だったら後は【時間が迎えに来る】まで待つしか無かった。

「男の人って、病気してたり、怪我してる人も皆連れて行かれたの?」

「はい。そういう人達の場合は裏方の方で

どぉん、と遠くの方で連続して起こる爆撃の音。その音だけは遠くても、音が鳴る度に地面が緩く揺れた。

「大丈夫なのかな?こうしてあちこちで敵様の侵略行為が行われているのに、私なんかと話していても」

「私は大丈夫ですよ。死なない自信はありますから」

「大したものだ」

「貴方こそ、こんな所で話していないで避難所に向かってはどうですか」

ふぅ、ん。流石【こっちの私】だ。私と思考パターン、そこから弾き出される他人への気遣いも全てが同じ。

懐中時計を見れば、針は9の所まで進んでいた。

「その、時計……って懐中時計ですか?」 「うん。私には必須のアイテムなんだよ。これを使って、私はこの世界にやって来たんだから」

【こっちの私】が、きょとんとした顔で時計を見つめれば

「お姉さんのお話、もっと聞きたいです」

私からすれば、それは中々無かった反応だった。大体の【私】なら驚き、逃げるか、危険物と判断して殺すかなんかしてきたのに。

「そっか、ならもっと話しちゃうかな?」

そうして、私は今まで渡ってきた世界の話をした。

体が機械で出来ていた世界。

植物が全て絶えて、どこもかしこも砂漠となっている世界。

感情の起伏が、念動波として現実に発生する世界。

まぁ、後は結構似たりよったりの世界。

「そんなに世界って広いんだ……」

「まぁ、私が回っている世界は【私の本来居た世界】を中心にある世界だから、実際にはもっと多いかな」

「世界を、超えて……」

そう呟いた【こっちの私】はボロボロの服に残っている一つのポケットから、私の懐中時計とは色違いの懐中時計を取り出して、見せた。

今までに無かったから、私は訝しむ。

「……キミも【タイムトラベラー】なの?」

【こっちの私】は、ふるふる、と首を横に振った。

「ついさっき…貴方と出会う前に、一人の男の人から」


『この世界よりも、いい世界を、望んでみたくはないかい?今は無くても、いつか思うだろう。そうしたら、この時計に願うといい、きっとキミの願いを叶えてくれるだろう』


「……って」

「あー………ごめん、それ私のお父さん」

私の父であり、私を【タイムトラベラー】にした張本人。

「まぁ、詳しくは話せないんだけど。その【時間旅行が出来る懐中時計】を作ってさ……私は、それの効果を試す為の実験体?みたいな感じかな?」

私は軽く笑いながら、懐中時計を握り締めた。ジャラ、と鳴る鎖。

「使いたいって、思う?」

【こっちの私】はまた首を横に振った。

「確かに、この世界は色んな哀しみで溢れていたり、喜びとかの感情よりも哀しみが多い。それでも、簡単に世界を捨てる事は…出来ない。」

「ふぅ……ん何か意外」

今まで会った【私】は自分が住んでいた世界をあっさりと捨てて【タイムトラベラー】となる覚悟は持っていた。中には、私の懐中時計を奪う者もいたけれどね。

だから、この世界は色んな意味で珍しい。

(まぁ、大体の【私】の性格は私の性格を元にしているからなぁ)

「そっか。」

「はい」

私は【私】の手を握ると、立ち上がった。

「さて、とそろそろキミを送るよ。暗くなるし……それに」

「?」

「キミみたいな【男なのに女の格好をしている】なんてそうそういないし、今のご時世、危ないよ」

「なっ…………!!!!」

そうネタばらしすれば【私】は顔を真っ赤にした。

「何でそんな格好しているのか、大体は想像出来るけど……それにしても、綺麗だよねぇ?…全く、どこが私と同じ存在なのよ…」

「あーと……えーと…」

「ま♫【私】だから許してあげる。さ、早くいきましょ」




「ほら、着いたから私はここまで」

比較的まだ形の残っている建物の前で【私】と手を離す。

「…貴方はどうするの」

「私?私はこの時計の針が両方12の所に来たら、次の世界に行く。」

(まぁ、この時計って意地悪だから、いつその針が合わさるのか……そこは神のみぞ知る…か)

「その時計の針はいつ合わさるんですか?」

「………さぁ、ね。そればっかりは、決められる程、コイツも万能じゃないし?」

「………………ぁ」

「でも、私がいつココを去るかは私の都合。貴方とはここまで。」

私は【私】を冷たく引き離す。そうでもしないと、この【頑固者】はずっと私を捕まえるだろう。

でも、駄目なの。それじゃあ。

近くに鳴り響く轟音と爆撃の炎。

「………今回ばっかりは、ヤバい、な」

「……なら!!」

私は、何も言わず、無理やりに建物の中に【私】を押し込めて扉を閉めた。

どんどん、と叩くドアにそっと触れる。さっきまでの体温の暖かさが、嘘のようにドアの冷たさに引き寄せられて、あっさりと消えていく。

近付く爆撃。

時計の針は相変わらず回らないけれど。

聞こえないと分かっていながらも、私は


「この世界は戦争で塗れているけれど、それでも、生きていくって決めたんでしょう」


「きっとキミなら大丈夫だよ。【私】なんだから」


「清き時間の加護が


声はそこで途切れ、私の体を爆撃の煙に包まれた。   

その声が【私】に届くと信じて。




ガラスに阻まれたその向こう側で【タイムトラベラー】は煙に包まれていった。

それでも、聞こえなかった言葉を僕は確かに耳にした。

その言葉を胸に刻む。不意に触れた懐中時計を取り出して、僕は地面に落とした。頑丈そうに見えたそれは呆気なくバラバラに砕け散ってしまった。

一瞬、その行為を悔やんだが、これでいい。

これが【あの人】の僕に望んだ事なのだろうから。



「やれやれ……今回も【タイムトラベラー】にはなりませんでしたか」

爆撃の過ぎ去った場所で、一人の紳士が佇む。

「かれこれ…三回目、でしょうなぁ。やれやれ、この時計を作るのにはかなりの手間暇が必要なのですが…娘の盛大な反抗期、という事にいたしましょう」




『清き時間の加護があらんことを』


これぞ正に、やまなし、おちなし、いみなし……(;´Д`)久しぶりの短編書いてたら思いの外……時間かかるわ色んな事が…orz ブランクって凄いですな…

まぁ、さらっと読んでください。はい。深読みとか、駄目ですよ!?絶対!!

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