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六花と炎と死神と。  作者: 神楽宮
白の章
3/4

2話 ギルドにて、アリアの捜し物。

開始から1ヶ月経っていないのに、早くも3件のお気に入りが!

登録してくださった皆様に感謝です!



王都ルキアは、王城を中心において円環状の城壁の中に街を造っている。街を大きな時計として見立てる事ができる形からか、ルキアで迷った者への案内は「お城から見て○時の方向」とされる事が多かった。


「冒険者ギルド・ルキア支部へようこそ! 冒険者の方はライセンスの提示をお願いします」


ギルドに入ってすぐ受付嬢に声をかけられ、ヘル・フェリ・アリアの3人は冒険者ライセンスを提示した。


「チーム〈捜し人(ザ・シーカーズ)〉ですね!? この街には、依頼(クエスト)のために?」


ヘルは曖昧に笑って、「依頼(クエスト)もありますけど・・・捜し物をしに」と言った。


依頼(クエスト)は、何か私達向けのがある?」


「り、〈六花の魔女〉様!」


声をかけたフェリに、受付嬢が飛び上がらんばかりに驚いた。〈妖精族〉(エルフ)には珍しく青い瞳を持ち氷の魔法を使うフェリは、冒険者の間では〈六花の魔女〉として有名だ。

ちなみに普通の〈妖精族〉(エルフ)は緑の瞳を持ち、植物を操り意思を疎通させる魔法を使う。彼らが〈森の民〉と呼ばれる由縁だ。


「竜退治の依頼・・・は、受けられないんでしたよね」


ヘル達3人のチーム名が〈捜し人〉(ザ・シーカーズ)なのは、それぞれに捜す物を持つからだ。アリアがある理由からとある竜を捜しているので、竜を退治などと言う事はしない。

ギルドの方も心得ているので、一応知らせこそすれ受理しない事でごねる事はなかった。


「一応、どんな竜なのか聞いてもいいですか!?」


 アリアが受付嬢に詰め寄る。そして彼女から討伐対象の竜が西洋竜種の飛竜(ワイバーン)だと聞いて安堵のため息をついた。



 アリア・ヘイルズ。

 炎を操る16歳の冒険者で、郷里では「竜狂い」と呼ばれる少女。竜―――特にカルチェ=ルクシア西部に生息する<西洋竜種>の上位種にして<西洋竜王>、<白銀竜>を捜している。


 カルチェ=ルクシアにおいて、竜という生き物は洋の東西で大きく外見と生態を変える。西部に多く生息し翼のある竜を<西洋竜種>、東部に多く生息し蛇のような身体を持つ竜を<東洋竜種>を呼び分けていた。どちらも知能が高く、<竜王>によって統治されている。アリアの捜す<白銀竜>は、<西洋竜種>の<竜王>だ。








 アリアには前世の記憶がある・・・らしい。というのも、その記憶のほとんどが失われていて思い出せないからだ。固有名詞は1つもなく、明確なビジョンの1つもなく、あるのはただ、狂おしいまでの妄執だけだ。


 私は誰かを愛していました。

 私は罪を犯しました。

 私は謝らなければなりません。

 誰に?

 ・・・もう顔も名前も声も思い出せない、誰かに。


 まだ幼かったアリアは、狂おしいまでの思慕と罪悪感を抱えてさまざまな本を調べた。そして見つけたのが、<西洋竜王>―――<白銀竜>だった。そして直感で、魂で、自分は<白銀竜>に会わねばならないと理解したのだ。家出同然に故郷を飛び出し、冒険者としてさ迷い、フェリを勝手に師匠(せんせい)と仰いで、ヘルを拾い―――<白銀竜>を捜して、今に至る。



「アリア・・・アリア? どうしたの?」


 ヘルがアリアの顔を覗き込む。「なんでもないよ!」と笑って、アリアはフェリと一緒に依頼版(クエストボード)を見た。


「これにするわ」


 フェリが取った紙は、難易度上級のSランク。

 街道を荒らす盗賊団「夜の狼」の討伐だった。

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