2話 ギルドにて、アリアの捜し物。
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王都ルキアは、王城を中心において円環状の城壁の中に街を造っている。街を大きな時計として見立てる事ができる形からか、ルキアで迷った者への案内は「お城から見て○時の方向」とされる事が多かった。
「冒険者ギルド・ルキア支部へようこそ! 冒険者の方はライセンスの提示をお願いします」
ギルドに入ってすぐ受付嬢に声をかけられ、ヘル・フェリ・アリアの3人は冒険者ライセンスを提示した。
「チーム〈捜し人〉ですね!? この街には、依頼のために?」
ヘルは曖昧に笑って、「依頼もありますけど・・・捜し物をしに」と言った。
「依頼は、何か私達向けのがある?」
「り、〈六花の魔女〉様!」
声をかけたフェリに、受付嬢が飛び上がらんばかりに驚いた。〈妖精族〉には珍しく青い瞳を持ち氷の魔法を使うフェリは、冒険者の間では〈六花の魔女〉として有名だ。
ちなみに普通の〈妖精族〉は緑の瞳を持ち、植物を操り意思を疎通させる魔法を使う。彼らが〈森の民〉と呼ばれる由縁だ。
「竜退治の依頼・・・は、受けられないんでしたよね」
ヘル達3人のチーム名が〈捜し人〉なのは、それぞれに捜す物を持つからだ。アリアがある理由からとある竜を捜しているので、竜を退治などと言う事はしない。
ギルドの方も心得ているので、一応知らせこそすれ受理しない事でごねる事はなかった。
「一応、どんな竜なのか聞いてもいいですか!?」
アリアが受付嬢に詰め寄る。そして彼女から討伐対象の竜が西洋竜種の飛竜だと聞いて安堵のため息をついた。
アリア・ヘイルズ。
炎を操る16歳の冒険者で、郷里では「竜狂い」と呼ばれる少女。竜―――特にカルチェ=ルクシア西部に生息する<西洋竜種>の上位種にして<西洋竜王>、<白銀竜>を捜している。
カルチェ=ルクシアにおいて、竜という生き物は洋の東西で大きく外見と生態を変える。西部に多く生息し翼のある竜を<西洋竜種>、東部に多く生息し蛇のような身体を持つ竜を<東洋竜種>を呼び分けていた。どちらも知能が高く、<竜王>によって統治されている。アリアの捜す<白銀竜>は、<西洋竜種>の<竜王>だ。
アリアには前世の記憶がある・・・らしい。というのも、その記憶のほとんどが失われていて思い出せないからだ。固有名詞は1つもなく、明確なビジョンの1つもなく、あるのはただ、狂おしいまでの妄執だけだ。
私は誰かを愛していました。
私は罪を犯しました。
私は謝らなければなりません。
誰に?
・・・もう顔も名前も声も思い出せない、誰かに。
まだ幼かったアリアは、狂おしいまでの思慕と罪悪感を抱えてさまざまな本を調べた。そして見つけたのが、<西洋竜王>―――<白銀竜>だった。そして直感で、魂で、自分は<白銀竜>に会わねばならないと理解したのだ。家出同然に故郷を飛び出し、冒険者としてさ迷い、フェリを勝手に師匠と仰いで、ヘルを拾い―――<白銀竜>を捜して、今に至る。
「アリア・・・アリア? どうしたの?」
ヘルがアリアの顔を覗き込む。「なんでもないよ!」と笑って、アリアはフェリと一緒に依頼版を見た。
「これにするわ」
フェリが取った紙は、難易度上級のSランク。
街道を荒らす盗賊団「夜の狼」の討伐だった。




