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六花と炎と死神と。  作者: 神楽宮
白の章
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1話 ルキアにて、3人の旅人。

早くもお気に入り登録してくれた方がいました!

感謝感謝です♪


神が息づく世界、カルチェ=ルクシア―――




海に囲まれ、2つの月と1つの太陽を戴き、いくつかの種族と3つの大陸を擁する世界。



これは、そんな世界で紡がれる記憶の物語だ。








大陸の1つ、ラヴェンナ大陸にあるルクシエ王国。ルクシエは冬が長い土地柄故に、古来から農耕や牧畜の代わりに細工物で名を轟かせた匠の国だ。

雪が降りしきるルクシエ王国王都・ルキアに、3人組の旅人が入った。未だ朝靄の抜けきれぬ、早朝の事である。


「だ〜っ、ルキア到着ぅ〜! 寒ぃ、眠ぃ、腹減った!」


「ヘルに同感! 師匠、アリアももうお腹ペコペコです!」


「2人共、うるさいわよ。時間を考えなさい。まずは宿を確保して、それから何か食べましょう」


褐色の外套(マント)のフードを取りながら真っ先に叫んだのは、黒い髪と瞳の少年。ツンツンと立った髪を掻き回しながら、「これでしばらくは雪道を歩かなくてすむ・・・」と疲れた様子で呟いている。簡単に見た外見年齢は、15から17ほどだ。

フードを取りつつ少年に同調したもう1人は、肩にかかる程度まで伸びた黒い髪と赤い瞳の少女。右の瞳を隠す形で前髪を伸ばす少女は大人びた顔立ちをしているが、1人称に「アリア」と自分の名前を使うあたりに幼さが垣間見える。差し引きしただいたいの年齢は、少年と同じ位。

やいやいと騒がしい2人を窘めたのは、長い金髪に尖った耳を持つ妖精族(エルフ)の少女。だが大多数の妖精族(エルフ)とは違い、瞳は緑でなく青だ。見た目の年は2人と同じ位だが、短命種の通人族(ヒューム)の2人と違い長命種の妖精族(エルフ)なので外見での判断は宛てにならない。


「お腹空いたーっ!」


「あったかいシチューっ!」


黒髪の2人が、まだ朝早い街に快哉を叫ぶ。そして即座に、妖精族(エルフ)の少女の鉄拳を脳天に食らって悶絶した。


「フェリ、ちょっとぉ〜・・・本気で痛い」


「師匠、酷いですぅ」


少年の方の名前はヘルといい、苗字は持たない。少女の名前はアリア・ヘイルズといい、妖精族(エルフ)の少女の名前はフェリアンヌ・ウィルヘイミアといった。


「2人共、早く捜すわよ」


「はーい」「了解です師匠(せんせい)







―ルクシエ王国王都・ルキアの宿屋《風花亭》―



「シチューがあったかいよぉ〜!」


「パンがふかふかだ〜!」


宿屋《風花亭》の食堂に、3人組の旅人がいた。言うまでもなく、フェリ・ヘル・アリアの3人である。


「あらあら、嬉しい事を言ってくれるねぇ! そんな子達には、後で弁当作ってやろうかね」


宿屋の女将も彼らの食べっぷりは嬉しいのか、にこにこと笑いながらシチューをよそった。飢えた獣のような勢いで食べるヘルとアリアを横目に、フェリは優雅にシチューを食べている。


「あんたら、冒険者? ギルドには顔出したかい?」


「これから行く所よ。新しい街に着いたら宿屋を確保して、普段はその足でギルドに行くの。ま、その前に朝食が欲しいってこの2人がごねたから、今回は先に食べるの」


女将の問いにフェリが答える。横で「んぐぐぐー!?」「あ、アリア? そんなに急いで食べたら危ないって言おうと思った瞬間に詰まらせるとか何!? み、水ー!」と騒ぐ黒髪の馬鹿2人は、華麗に無視する。


ギルド、というのは夢に憑かれた阿呆が集う場所だ。

世界各地に支部を持ち、遺跡探索に始まり竜退治や山賊の討伐、それだけの技量を持たない者には簡単な魔物退治や薬草の採取をクエストの形で斡旋する組織だ。所属する者達は冒険者と呼ばれ、単独(ソロ)で行く者もあればチームで行動する事もある。

フェリ・アリア・ヘルの3人も、チームを組んで冒険する冒険者だ。チーム名を〈捜し人(ザ・シーカーズ)〉と言う、冒険者達の間では有名なチームだ。







街においては杯を傾ける仲間。

戦いにおいては背中を預ける戦友。

そして私生活においては、互いの捜し物を手伝う盟友。



「2人共、そろそろ行くわよ―――お代、これで足りるかしら?」


食事を終えたフェリが立ち上がり、テーブルに3人分の代金の銀貨6枚を置くと、未練がましくシチューを見る2人を引っぱって宿屋を出た。


「お弁当はいるかい?」


「いえ」


「夜までに言ってくれたら、お弁当用意するからね」


ありがとうございます、と言ってフェリは頭を下げる。子猫のように首根っこを掴まれたまま、ヘルがひらひらと手を振った。





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